老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

映画「シェーナウの想い」上映と大芝健太郎さんの講演8/28・報告

2014-08-31 14:01:02 | 民主主義・人権
8月28日に「サロン・ド・朔」で上映した「シェーナウの想い」は、チェルノブイリ原発事故を切っ掛けに、シェーナウ市の住民たちが「原発のない未来のための親の会」を立ち上げ、ついに自分たちで再生可能エネルギーの電力会社(EWS)を設立した経緯を紹介するドキュメンタリーですが、起きた事実も勿論素晴らしいですが、とりわけ、この実現に尽力した住民グループの人たちの希望と熱意に溢れ、真剣だけれどいつも明るく楽しげな表情がとても印象的な映画でした。

二度の住民投票の結果、市が電力供給の認可契約をEWSと結ぶ決定がでた瞬間に、住民グループの人々が喜びを爆発させる姿は感動的で、その後ビールやワインを酌み交わしながら寛いで談笑する姿には、自然を大切にしながら、心豊かに楽しく暮すために頑張ったこと、住民たちとの対話の中でそれが理解され、受け入れられたことへの自負と安堵が見て取れました。

http://www.geocities.jp/naturalenergysociety/

今回の上映会に参加してくださったジャーナリストの大芝健太郎さんは、昨年のシェーナウ訪問レポートの中で、この活動の中心的役割を担ってきた女性、ウルズラ・スラーデックさんが、インタビューで語った言葉を紹介しています。

『住民投票をすることによって、シェーナウの市民が賛成・反対、両方の意見を出し合って、家族内でも学校でもたくさん話しをすることになりました。違う意見の人どうしが激しく議論することもありました。政治家だけではなく、みなが議論をすることで、自分の意見を構築していく。その過程を経て、最終的に市民がEWS(シェーナウ電力会社)を選び取った。(略)これこそが、生き生きと活気に満ちた民主主義なのです。』

http://kokumintohyo.com/archives/8789

福島原発事故を経験し、日本での原発稼動はありえない選択と気付いたのに、今もなお脱原発を具体的な形にすることができずに苦慮する日本の私たちにとって、シェーナウの人たちの試みとその成功は、とても眩しい夢物語りのようにも見えます。

私たちにもできることはあるのだろうか、選挙システムや政治形態の違いはそれとして、怒り、嘆き、無力感に苛まれるばかりの私たちと、暮らしの環境を変えることを主体的に選択することに成功したドイツ・シェーナウの人々との間に、何か決定的な違いがあるのだろうか。こんな疑問に対し、大芝さんは「そもそもドイツの人は議論を娯楽のように楽しむ習慣がある」と答え、身近な人たちとの政治的な議論を避けようとする私たちとの違いを話してくれました。

大芝さんはシェーナウ訪問レポートを以下の言葉で結んでいます。

『見方を変えれば、正しさも変わる。答えは人それぞれにあるだろう。(略)もし間違っているとわかったら、正せばいい。「活気に満ちた民主主義」があれば、市民が間違いを見つけ、議論し、選択することができるのだ。』
『私は見たい。日本がシェーナウ市民のように「政治家お任せ民主主義」から脱却するときを。住民投票や国民投票を通じて、市民が考え決定する「活気に満ちた民主主義」を実現する姿を。』

思えば、シェーナウの人たちの成功も、10年に亘るたゆまぬ努力のたま物でした。「活気に満ちた民主主義」が、一朝一夕に実現するような簡単なものではないことは、洋の東西を問わない現実です。

私たちも、本当に望む暮らし方があるのなら、そうでない状態を批判するだけでなく(今の局面で、それもとても必要だと思っていますが)、自分たちで実現する方法を考えよう。そういう前向きな提案と、積極的な議論・対話を積み重ねる努力の先に、望ましい暮し方と本当の民主主義を手にする日が必ず来ることを信じよう。そう思わせてくれた、今回の「シェーナウ」上映と大芝健太郎さんのお話でした。

☆大芝さんは、9月に行われるスコットランドの独立をかけた住民投票の取材に間もなくでかけますが、渡航費調達に「クラウド・ファンディング」というプロジェクトを提案し、見事に希望の資金額を獲得しました。これもまた、「やりたいことがある」「賛同してくれる人はファンドで活動に参加して欲しい」という新たな建設的試みで、とても興味を惹かれました。スコットランド取材報告が楽しみです。

https://readyfor.jp/projects/Scotland-Referendum

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
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「おとろしい」と「おそろしい」

2014-08-31 09:59:26 | 民主主義・人権
8月31日付東京新聞朝刊「筆洗」にありました。奈良の方言について。「おとろしい」意味はやっかいとか面倒くさいとかで、「おとろしい仕事」とは「わずらわしい仕事」という意味らしいのです。

話は少し変わりますが、ヘイトスピーチ規制について、「国会周辺のデモやスピーチも規制せよ」と言う声が国会議員の間から出ているそうで、「自民党の高市早苗政調会長が国会周辺での大音量デモの規制強化を検討したい考えを示した」と筆洗氏は書いています。

同じコラムで「人種や民族の差別を煽るヘイトスピーチ(憎悪表現)の対策を検討する会合での発言だそうでヘイトスピーチと、民主主義を守る道具の平和的デモを同じ【悪口】とみなしているのか(中略)デモの音を政府を批判する【騒音】としか考えていないのでこういう発言になる」とも述べています。

ヘイトスピーチの規制を検討する場で国会議員がそのような発言をするとは、デモに対する「おそろしい」規制強化に繋がって行くのではないかと私は思います。

右に同じが好きな日本の社会ですから、「国会周辺でのデモやスピーチを規制強化せよ」という法律が出来ればあっちでも、こっちでも野火のようにそれは広がって行くのではないでしょうか。

表現の自由なんて有名無実になってしまいます。

ヘイトスピーチは規制強化が必要だと思いますが、筆洗氏が書いておられるように、憎悪を煽るようなヘイトスピーチと政府を批判するデモやスピーチを同一に扱うのは間違っています。彼ら国会議員は大きな権力と特権、報酬を得ていて、いわゆる公人なのですから、政府批判を、煩わしい、うるさいと
と感じる前に、自らの仕事を振り返り、「何故デモが発生しているのかを考えるのも、議員としての仕事」であるという筆洗氏の発言はその通りだと思います。

日本の国で、国会周辺のデモやスピーチが規制強化されたら、議員にとっては「おとろしい」事態は軽減されるかも知れないけれど、国民にとって声も上げられない「おそろしい」時代が来るような気がしてならないのです。

「護憲BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
パンドラ
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8・29朝日新聞社説を支持する

2014-08-30 11:48:07 | 安倍内閣
8月29日の朝日新聞社説は、「A級戦犯法要―聞きたい首相の歴史観」と題して下記の内容を掲載しています。

====
            
「私人としてのメッセージ」で済む話ではないだろう。

 安倍首相が今年4月、A級、BC級戦犯として処刑された元日本軍人の追悼法要に、自民党総裁名で哀悼メッセージを書面で送っていた。

「今日の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉職者の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げる」

 送付先は、高野山真言宗の奥の院(和歌山県)にある「昭和殉難者法務死追悼碑」の法要。碑は、連合国による戦犯処罰を「歴史上世界に例を見ない過酷で報復的裁判」とし、戦犯の名誉回復と追悼を目的に20年前に建立された。名前を刻まれている人の中には、東条英機元首相らA級戦犯14人が含まれている。首相は昨年と04年の年次法要にも、自民党総裁、幹事長の役職名で書面を送付していた。

 菅官房長官は会見で、内閣総理大臣としてではなく、私人としての行為との認識を示した。その上で、「A級戦犯については、極東国際軍事裁判所(東京裁判)において、被告人が平和に対する罪を犯したとして有罪判決を受けたことは事実」「我が国はサンフランシスコ平和(講和)条約で同裁判所の裁判を受諾している」と述べた。

 戦後69年。このような端的な歴史的事実を、いまだに繰り返し国内外に向けて表明しなければならないとは情けない。

 日本は、東京裁判の判決を受け入れることによって主権を回復し、国際社会に復帰した。同時に、国内的には、戦争責任を戦争指導者たるA級戦犯に負わせる形で戦後の歩みを始めた。

 連合国による裁判を「報復」と位置づけ、戦犯として処刑された全員を「昭和殉難者」とする法要にメッセージを送る首相の行為は、国際社会との約束をないがしろにしようとしていると受け取られても仕方ない。いや、何よりも、戦争指導者を「殉難者」とすることは、日本人として受け入れがたい。戦後日本が地道に積み上げてきたものを、いかに深く傷つけているか。自覚すべきである。

 首相の口からぜひ聞きたい。

 多大なる犠牲を生み出し、日本を破滅へと導いた戦争指導者が「祖国の礎」であるとは、いったいいかなる意味なのか。あの戦争の責任は、誰がどう取るべきだったと考えているのか。

 「英霊」「御霊」などの言葉遣いでものごとをあいまいにするのはやめ、「私人」といった使い分けを排して、「魂を賭して」堂々と、自らの歴史観を語ってほしい。首相には、その責任がある。

====
(8・29朝日新聞の社説)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11322160.html?ref=editorial_backnumber

一方NHKも、今回の法要に安倍総理大臣は自民党総裁の肩書きで、『「今日の日本の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられました昭和殉難者のみ霊に謹んで哀悼の誠をささげます」などとする電報を送りました。』と報じています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140827/k10014124411000.html

上記安倍首相の電文で注目すべきは箇所は、「今日の日本の平和と繁栄のため、自らの魂を賭して祖国の礎となられました」という文言です。

ところが安倍首相は8月15日の全国戦没者追悼式の式辞で同じ趣旨のことを次のように述べています。「戦没者の皆様の、貴い犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります。」です。

無意識にこのような違いは生じないと思います。

戦没者は日本の侵略戦争の犠牲になったのが真実であり、安倍首相の表現はどちらも虚言でおかしいのですが、今回の追悼文では、「今日の日本の平和と繁栄のため」と、8月15日の虚言をさらに増幅させています。これらの疑問も含めて、8月29日の朝日新聞の社説の問い掛けは当然だと思います。

「護憲+BBS」「マスコミ報道を批評する」より
厚顔
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憲法に照らし合わせて考えよう

2014-08-29 07:02:06 | 憲法
憲法九条一項二項をきちんと守れば、自衛隊は即時解散、防衛相は不要となるのかもしれない。しかし、実際には自衛隊は存在する。そして自国の防衛という個別的自衛権を越えて、安倍政権が「集団的自衛権」を閣議決定した。

私は漁村に育ったので、1952年に韓国大統領の引いた李承晩ラインによって、13年間に、4000人近い日本の漁民が拿捕されていたこと、死者も出ていたこと、その李承晩ラインが、1965年の日韓基本条約時に日韓漁業協定で、ようやく廃止された時を覚えている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E6%89%BF%E6%99%A9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3

その時、漁師のおじさん達が「えらい目におうとったが、海上自衛隊もようやっと強うなったから、悪さもされんようになったんじゃ」と言い合っていたのを覚えている。私は、「そうか、国を守るというのは、こういうことなのか」と思った記憶がある。

その記憶があるためなのか、私は平和をはっきりと謳う憲法九条を守らねばならないと思いながら、いまの世界情勢の中で、自衛隊を無くす…ということが、果たして可能なのか?という思いが拭えない。

となると、「武力を肯定しながら護憲派と言えるのか?」という厳しい声が聞こえてきそうだ。事実、全くの「非武装、自衛隊は解体」を言う方々も、護憲派には多い。

また、護憲派なら九条にあるように、「② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」であるべきで、そうでないのなら、この条文を改正する方に回るべきと言う声もある。

となると、私にとって、護憲は矛盾を起こしているかというと、そうは思わない。例えば、別の条項をみてみよう。

「第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
「第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 」

これに反対する人は、まずはいないだろう。しかし、世の中はとても平等とは言えないし、差別されないなんて、よほど運が良い人でもない限り、様々な差別に出会う。「健康で文化的な最低限度の生活」を営めない人も少なくない。しかし、それでもこの憲法条項を変えようという人はいないだろう。

つまり、憲法は政府を縛るというのは、政府は、憲法に向けて、そうなるように努力をするべきということなのだ。法律を作るときに、それが国民を何らかの形で差別を減らし、健康で文化的な生活を築き易くする方向になっているのかいないのか。照らし合わせて法律を作って行かなくてはならない。

では、「秘密保護法」はどうか。「第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 ② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」

この第二十一条は、表現の自由のための国民の「知る権利」と表裏一体と言われてきた。となると、「秘密保護法」は、情報の収集活動が公権力によって妨げられないという国民の権利と、公権力に対して情報の開示を請求する権利を、侵しているのではないか?

そして「集団的自衛権」は、明らかに「憲法九条」からより遠い方向に、国民を持って行こうとしている。

「憲法は、国民の理想」というと、「では、守らなくていいのか?」「それでは法とは言えないだろう」という声があるが、そうではない。国が法律を作るときに、照らし合わせる方向を定めているともいえるのではないだろうか?

国民の権利、国家としての在り方、政治家や官僚は、法律を作るとき、日常的に国民のために働くとき、憲法の方向を向いた仕事をしているか、背を向けてはいないかを確認すべきなのだ。

「集団的自衛権」も「秘密保護法」も、憲法に定められた国民の権利を侵害していないか、国民の生命を危険に晒す方向ではないのか? アフガニスタン支援を続ける中村哲氏も、「他国(日本)の軍隊が戦闘をすれば、その国の人々の目には侵略者に映る。侵略者に守られているNGOの職員は狙われ、かえって危険になる」「集団的自衛権の行使によって欧米同様、日本人という理由でテロの対象になれば私の仕事は続かない」と話している。

憲法の方向を向いているかどうか、そこに照らして考えたい。

「護憲+コラム」より
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ウクライナ情勢再考

2014-08-27 10:41:14 | 安全・外交
最近、ウクライナ情勢についてのニュースをほとんど聞かない。どうやら、マレーシア機撃墜事件の犯人が、米国・ウクライナ政府・西側にとって都合が悪いのだろう。あれほどある事ない事を吹きまくり、ロシアに対して経済制裁まで科した割には、最近の西側メディアの沈黙はよほど自分たちにとって都合の悪い事が起こっているとしか思えない。

以前にも指摘したが、今回のウクライナ危機。米国はじめ西側諸国が計画し、引き起こしたもので、ロシアのクリミア編入は、それに対するロシアの自衛権行使とでもいうべきものだった。この事は米国内でも指摘する専門家が出ている。

田中宇は以下のように書いている。
・・・・
米国では、外交政策決定の奥の院である外交問題評議会(CFR)が、機関誌「フォーリン・アフェアーズ」に「ウクライナ危機は、ロシアでなく米欧の責任で起きた。プーチンは悪くない。NATOの拡大策が悪い」という趣旨の論文を載せた。

http://www.foreignaffairs.com/articles/141769/john-j-mearsheimer/why-the-ukraine-crisis-is-the-wests-fault
Why the Ukraine Crisis Is the West's Fault

 著者は地政学者のミアシャイマーで、論文は「クリミアはロシアにとって最重要の軍港がある重要な影響圏で、ウクライナを反露政権にしたらロシアがクリミアを奪いに来るのは当然だった。プーチンは昔からNATOを拡大するなと言っていたのに、それを無視してウクライナやグルジアをNATOに入れようとした米欧が悪い」という趣旨を書いている。プロパガンダで塗り固め、善悪を歪曲する米国のロシア敵視策は、そろそろ限界にきている。そんな警告が、この論文から読みとれる。

http://www.washingtonsblog.com/2014/08/council-foreign-relations-ukraine-crisis-wests-putins-fault.html
・・・・

また田中は、以下のようにも書いている。
・・・・
今回のマレーシア機MH17撃墜問題、当日の衛星写真など、まともな根拠を示して説明しているのは、ロシアだけ。米国もウクライナもロシアがやったに違いないと主張しているだけで、何の証拠も提示していない。

現在、MH17の残骸の中で最も形をとどめているのは操縦室周辺。そこには、口径30mmの銃弾が貫通した跡が無数にある。このような砲弾を撃てるのは、30mm機関砲(GSh-30-2)を搭載していることが多いとされる、MH17を追尾していたウクライナの戦闘機(Su-25)だけなので、ウクライナ軍の犯行に違いないという説になっている。

http://www.globalresearch.ca/german-pilot-speaks-out-shocking-analysis-of-the-shooting-down-of-malaysian-mh17/5394111
Revelations of German Pilot: Shocking Analysis of the "Shooting Down" of Malaysian MH17. "Aircraft Was Not Hit by a Missile"
・・・・

田中の指摘でも分かるように、米国の言説は、虚偽とプロパガンダに満ちている。イラク戦争の大量破壊兵器の嘘やベトナム戦争開戦時のトンキン湾事件の嘘もそうだった。米国は、嘘でイラク戦争を仕掛け、大量のイラク人民を殺戮、イラクの国土を破壊したが、誰も責任も取らず、反省もしていない。覇権国家というものはそういうものだ、と言えば、それまでだが、そのおかげで塗炭の苦しみに陥れられる国や人民はたまらない。

実は、このやり方をロシアにしかけたのが、今回のウクライナ危機。ところがベトナムにしてもアフガンにしてもイラクにしても経済は小さく、人口も少なく、貧困国に近かった。そういう国に対して戦争を仕掛け、相手国の民衆を殺戮し、圧倒的な近代兵器で国土を破壊した。兵器の消耗量は半端ではない。この戦争のおかげで軍産複合体は大儲けした。米国の戦争が公共事業だといわれる所以である。

しかし、ロシアは違う。相手は、核兵器を米国に次いで保有している国であり、当然射程距離の長いミサイルも大量保有している。軍隊もユーロツパではNO1。こんな相手と戦争しては、米国も欧州も無事では済まない。ネオコン連中は、米国の先制攻撃(核攻撃)でロシアを無力化できると考えている、と報じられているが、ロシアも馬鹿ではない。米国の先制攻撃にどう対応するか、を準備している。

同時にわたしたちが考えていなければならないのは、戦争とはすぐれて経済的なものだ、という事である。このまま欧米が経済制裁を強化し、ロシアが天然ガス供給を止めたら、それこそ欧州もロシアも経済的に大変なことになる。欧州では、すでにポーランド・ブルガリアなどから悲鳴が上がり始めている。ウクライナは、IMFから緊縮財政をする(ギリシャと同じ)という条件で援助を受けているが、緊縮財政をしていない。その為、債券市場では、ウクライナはIMFから資金提供を受けられないのではないかという予想で、金利が上昇している。いまやほとんど破綻国家に近い。戦争で相手を圧倒すれば何とかなるかもしれないが、ロシアはそんな相手ではない。ドイツも成長率が下がり、経済的には苦境に立ちつつある。

それならこの苦境を米国が支えてくれるか、というと、米国にはそんな余裕はない。たとえば、ポーランドの農家がロシアに輸出していたリンゴがロシアに経済制裁され、大きなダメージを受けた。その保障を米国に求めたら拒否された、という話がある。米国に欧州の経済的打撃を救う余力は残っていない。

ロシアは、食料輸入を欧州からBRICS諸国などに変更し、そんなに打撃を受けていない。困っているのは、欧州。それも旧ソ連圏の諸国。それに反して、ブラジル・インドなどは喜んでいる。今やBRICS諸国は、上海に世界銀行に代わる銀行を設立、米国の通貨世界支配に公然と対抗し始めている。上海機構も中国とロシアの緊密な連携の下、無視できない力を備えつつある。明らかに米国一極支配に陰りが見えている。

さらに米国主導の経済政策(TPPなど)は米国の多国籍企業を利するもので、経済の自由の名目の下で各国独自の経済慣行を破壊するものだという事が、明らかになりつつある。新自由主義的経済政策の暴力的破壊力は、世界の怨嗟の的になっている。

今回のウクライナ危機も例外ではない。米国がウクライナへNATOを拡大するために投じた金額は約50億ドル(約5000億円)とも言われている。つまり、ウクライナの親露政権打倒のために投じられた金額である。あるネオコン幹部は、この元を取らないうちは、ウクライナから手を引けるか、と言っている。その結果、EUとロシアが共倒れしても米国の覇権が強化されれば、それは結構だというのが米国ネオコン(背後にいる多国籍企業)の立場だろう。現在のウクライナ政府は、ネオコンの傀儡政権だから、対ロ強硬政策(ウクライナ東部での民族浄化作戦=親露派排除)を続行せざるを得ない。米ソ冷戦時代世界で引き起こされた米ソ代理戦争の復刻版が、ウクライナで行われていると考えれば、そんなに外れてはいない。

今回のウクライナ危機、「人間追い込まれると何をするか分からない」とか「貧すれば鈍する」などという庶民の常識で判断すれば、ほとんど間違いはない。イラク戦争やアフガン戦争で疲弊し、リーマンショックで打撃を受けた米国は、覇権国家としての威信は大きく傷ついている。

イラクでのイスラム国家(ISIS)の台頭もエジプト軍部の暴走もイスラエルのガザ侵攻も、米国の威信の低下が大きな要因になっている。しかも、オバマ政権は、イラク戦争・アフガン戦争を終結させるのが目的の政権。と言う事は、ネオコンや産軍複合体にとっては、公共事業消失を意味している。日本のゼネコンもそうでしたが、公共事業の激減は、企業経営の基盤を失う事を意味する。彼らにとっては、戦争は企業の死活的利益を意味している。

これがウクライナでの虚偽のプロパガンダを続ける理由である。その為には、人命など「ちりあくた」と同じ。手段など選んでは居られないというのが、本質だろう。大資本やその代弁者のネオコン連中には倫理観など無用の長物なのだ。

しかし、同時に彼らは、民衆の信じている倫理観・道徳観・正義感などには、きわめて敏感である。理由は簡単明瞭。それこそが大衆操作の要諦。倫理観・道徳観・正義感をくすぐれば、彼らの支持を取り付ける事が可能になるからで、これが、大衆操作(プロパガンダ)の肝だ。

この視点で考えれば、マレーシア機撃墜事件などは、最も大衆操作(プロパガンダ)を行える最上の材料と言う事になる。今回の欧米メディア・日本メディアなどのウクライナ危機の報道は、このスタンスで大々的に報道された。最初に書いたロシア空軍の発表だけが、根拠に基づいた発表だったというのは、この憶測を裏付けている。

今回のウクライナ危機、際立っていたのは、プーチン大統領の冷静さとオバマ大統領の理性の無さである。同時に、EU各国の米国に対するスタンスの違いと、しぶしぶ米国の顔を立てる相も変わらぬ国際政治力学であろう。

その中で中国の強かさが目立つ。ロシアと協調しながら、米国・欧州に袖をひかせ、自国の権益を拡大しようという外交力を見せつけている。日本国内のメディアは相も変わらぬ反中国キャンペーンを続けているが、彼らの国際性の欠如は度し難い。ロシア一国ですら持て余しているのに、これに中国を加えるなど、EUなどは勘弁してほしいというのが本音。米国もロシアとは辛うじて戦争をやっても良いが、これに中国が参加するとなると、それこそ米国自体の沈没は避けられない。それこそ勘弁してほしいというのが、本音だろう。

事ほどさように多くの問題を包含した今回のウクライナ危機は、米国内のリベラル勢力も刺激せずにはおかない。それがフォーリン・アフェアーズの記事になったのだろう。

以前から指摘してきた【転形期の世界】では、これからもこの種の危機が頻発するに違いない。それとともに、米国の態度も【貧すれば鈍する】的力の誇示と強引さ、貪欲さが目立つに違いない。なにさま、決して謝らないのが、米国と言う国であり、アングロサクソン流の人生観だから、その迷惑のかけ方も半端ではない。没落しつつある巨人(米国)の断末魔のあがきが、これからの世界の最大の問題点になるに違いない。

「護憲+BBS」「ウクライナ情勢再考」より
流水

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日本版軍産複合体構築へ、着々!

2014-08-26 09:11:17 | 戦争・平和
米国の軍産複合体は既に巨大化し政治も動かすことで有名ですが、これに最初に警鐘を鳴らしたのは、第二次世界大戦でヨーロッパ戦線を指揮し、ノルマンディ上陸作戦を成功させ、ドイツを降伏させて、戦後米国大統領になったアイゼンハウアー大統領で、彼はその退任演説のなかで、この組織が巨大化すれば、軍需産業が政治家や軍人を操り、戦争を勃発させ、平和を阻害しかねないと危惧したそうです。まさに慧眼であり、すごい洞察力だと思います。

近年の米国を見ればまさにそのとおりで、軍産複合体の圧力に屈して、戦争の口実(大量破壊兵器の存在)をでっち上げ、戦争を仕掛け(イラク戦争)、またノーベル平和賞を授与されたオバマ大統領までが11月の中間選挙で軍産複合体の票を意識して、中東や朝鮮半島の緊張関係を維持することが米国の国益とばかりに、和平交渉促進に距離を置いて傍観しているように見えます。

一方日本の安倍政権も、先日富士演習場で陸自富士教導団の隊員ら約2300人、戦車や装甲車約80両、火砲約60門、航空機約20機などが参加。3億5千万円分の弾薬計約44トンを使って自衛隊の実弾演習を実施。アベノミクスの経済政策への貢献も兼ねてか、日本版軍産複合体構築へ着々と歩を進めているように見えてなりません。

http://www.asahi.com/articles/ASG8S61GKG8SUTIL010.html

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
厚顔
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なだいなださんのネット記事と、たまには名著も読んでね

2014-08-22 10:19:07 | 暮らし
なだいなださんを紹介したネット記事が出ました。薬剤師さんのための情報ページです。ちなみに第1回は「横溝正史」
http://goo.gl/0CFKXY
どうぞお読みください。

それから、意外になださんのご著書を読んでいらっしゃらない方もあるようで、たとえば政治を考えるのには、『権威と権力』、『民族という名の宗教』くらいはお読みになってもいいのではないかしらと思う次第です。

とてもたくさんの著作がありますが、小説は何度も芥川賞候補になっています。『影の部分』などは、べ平連運動に関与して、ひっそりと米兵を匿ったお話しが出ています。

これから読書の秋、なださんの本をぜひ手にしてみてください。

私は初めて読んだ時、ユーモアに笑いながら読み終えて、「目から鱗が落ちた!」という感じがしたものでした。その本は『片目の哲学』でしたので、多分、片目分の鱗かもしれませんが…。

「護憲+BBS」「どんぺりを飲みながら」より
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広島市の土砂災害に思う

2014-08-22 06:26:29 | 災害
世界各地から伝えられる、自然現象に起因する災害は、大袈裟に言えば、「枚挙の暇もなし」であろうか。それだけ この「地球という棲み家」は、御しがたいものなのだ。人知が及ばないと知れば、遠ざかる。まあ、触らぬ神に祟りなしが最善の策としたものであろう。

人知をもって挑戦を続け、克服できたの図を得られることを否定するものではないが、それはまさに「蟷螂の斧」の如しであり、注ぎこまれた諸々と得られたものとのバランス勘定は、多分、大幅の赤字と言うことになるのではなかろうか。

痛ましいと言うか、呆然とすると言うか、広島市で起きた土砂災害の状況写真を見て、「まさか」が第一感。「本当なのか、この住宅地」である。かつて、山裾近くまで無秩序に手を伸ばす「宅地造成」。俺の土地、死蔵していて何になる。出来るだけ金に換える。そのターゲットになるのは、なけなしのというよりも これから先の「人生」を引き換えにしてのローンに頼る弱き者たち。

「山」は崩れる。それはなけなしの「財産」にとどまらず「命」まで飲み込む。

「急傾斜地法」でそれに歯止めをかけようとしたのは、もう45年前。その後も様々な法制によって広島市の「あの光景」を作り出さないようにとする努力は続けられて来た筈なのに、である。  

情けないの一語。危険地帯に網をかけようとすると、端的に言えば、「資産価値の下落阻止」を狙った、様々な「力」の競演が始まる。

政令指定都市にどの程度県の力が及ぶかはについては疎いが、あのような「市街地形成」を看過してきた「行政」の責任は、この上なく重いと思うのだが。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
百山
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特定秘密保護法関連のパブリックコメント 締切り間近かです

2014-08-21 16:53:48 | 秘密保護法案
特定秘密保護法に関する情報保全諮問会議が第1回(H26.1.17)、第2回(H26.7.17)に開かれ現在下記の3件についてパブリックコメントを募集中です。(H26.7.24~H26.8.24)
 ① 060072401 特定秘密の保護に関する法律施行令案
       http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072401&Mode=0
 ② 060072402 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)案
       http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072402&Mode=0 
③ 060072403 内閣府本府組織令の一部を改正する政令案
       http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072403&Mode=0

上記のいずれにも諮問会議第1&2回の配布資料が添付されています。政令案および基準の本文も含め膨大な量ですが、私はそのうちコンパクトに纏められている「関連資料」(情報諮問会議HP 第1回の資料3「法律の概要 説明資料」を基に、次のコメントを送りました。

 下記により行政機関の長(実際には「その職員」)の恣意的な判断が多くなり、国民の知る権利を侵害される恐れがあるため本法律の撤回または修正を望む 
 1.秘密指定事項の指定に「その他・・・」のように曖昧な言葉が多く、
 2.秘密指定の有効期間が、30年、60年と長く解除されなかったり、解除されても廃棄される可能性がある。
 3.「適正な運用を図るための重層的な仕組み」として「保全監視委員会」、情報保全監察室」および独立公文書管理監」を設けるとあるがいずれも時の内閣内の組織であり、独立した組織チェックとは言えない。年に一度の国会への報告だけでは不十分である。
 4.「秘密取得行為(必ずしも故意呑みに非ず)の未遂、共謀、教唆又は煽動は刑事罰に処す」では余りに適用が広範囲になる。
 5.「本法の適用に当たり拡張解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならず報道/取材の自由に十分配慮すること」としつつも「取材が著しく不当な方法によるものでないこと」を前提にするなど曖昧な規定である。

なお、第2回の資料3「統一的な運用基準」を見ても上記の不安が払拭される内容は含まれていません。

「護憲+BBS」「立法・司法ウォッチング」より
tstsujinn
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(続)久しぶりだな!大物の虚偽記載報道

2014-08-20 09:12:19 | 安倍内閣
この問題は以前にサンデー毎日が載せたスクープ記事の続編ですね。

http://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/95d1d3fbca74bcb6a824e8a3247e0813

その時は、NHKサイドの姿勢を問うというニュアンスが強かったですが、その記事の中で発言していた醍醐聰さんたちが、ズバリ安倍首相の告発に踏み込んだのは(日経さえ記事にせざるを得なくなったという点を含め)「快挙」だと思います。

今後、東京地検の対応、マスコミの追及度合いに注目ですね!

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
笹井明子

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告発の経緯については8月19日の醍醐聰さんの、「醍醐聰のブログ」に詳細に掲載されていました。

http://sdaigo.cocolog-nifty.com/

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安倍首相の資金管理団体を虚偽記載で告発

2014年8月19日

 告発状、提出
 
昨日、私を含む4名は、安倍晋三首相の資金管理団体「晋和会」が総務大臣に提出した2011年分、2012年分の政治資金収支報告書に虚偽記載があったと判断し、8名の弁護士を代理人として、晋和会の会計責任者××××氏を政治資金規正法第25条1項3号(政治資金収支報告書の虚偽記載)で、同会代表者の安倍晋三氏を同法同条第2項(会計責任者の選任と監督に係る注意義務違反)で、それぞれ東京地方検察庁に告発した。

 告発に至った経過

 本件の発端は、安倍首相の資金管理団体「晋和会」がNHKの一職員(チーフプロデュ-サ-・小山好晴氏)から2011年、12年に受け取った寄附を、「NHK職員」という身分を隠し、「会社役員」からの寄附と偽って記載をしていた事実を『サンデー毎日』7月27日号が報道したことにある。
 私は、この件で同誌から取材を受け、問題の所在を知ることになった。同誌にも記載されているが、晋和会は、『サンデー毎日』から小山好晴氏の献金について取材を受けた日(本年7月10日)の翌日、小山氏および同氏の妻・小山麻耶氏の職業を「会社役員」から「会社員」に変更済みと回答したという。しかし、小山好晴氏の職業は「NHK職員」または「団体役員」とするのが正しいから、「会社員」と記載することも、なお虚偽記載である。

(以下略)

告発状全文は次のとおり。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/shinwakai_kokuhatuzyo.pdf
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「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
厚顔
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