老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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「いのちの授業」山田泉さん死去

2008-11-22 11:40:22 | 教育
『乳がんとの闘病体験を教室で話し、命の尊さについて考える「いのちの授業」に取り組んだ大分県豊後高田市の元養護教諭、山田泉さんが21日午前9時12分、乳がんのため大分市の病院で亡くなった。』(朝日11/21夕刊)

私が山田泉さんと彼女が取り組んだ「いのちの授業」について知ったのはごく最近で、「婦人之友」11月号に掲載されたご自身の投稿記事によってでした。

「婦人之友」の記事冒頭には、山田さんの温かい笑顔の写真があります。他にも途中に生徒達に話しかけている写真が3枚挿入されていますが、どの表情にも生徒に対する率直な信頼を感じさせる明るさが満ちています。

記事の中で山田さんは、最初の手術と放射線治療を終えて、2年間の休職後に復職した時のエピソードを書いています。保健室に入ると、2年前に保健室を去るときにホワイトボードに書いた「元気になって戻ってくるからね」の文字が、そのまま残っていたというのです。

『「この字、なんで残ってるん?」と尋ねてみたら、「卒業した先輩たちが、消すな!ち、言いよったきなあ」と。』
『疲れが吹っ飛んだ。うれしくて、涙がこぼれた。』

再スタートした山田さんは、子供たちが「死んじょけ!」「ぶっ殺すぞ!」などの言葉を気軽に使っていることに衝撃を受け、保健室で休んでいた少女に相談。『「この学校、なんかきついなあ。今の私には、やっていく自信がないちゃ・・・」と言ったら、彼女がこう言ったのだ。「自分のいのちも大切じゃけれど、人のいのちも大切じゃち気づくような授業をしにきてよ。」』

この言葉が切っ掛けで、山田さんは「生と死」をテーマにした「いのちの授業」を始めます。最初はご自分の体験を話し、生徒達の受け止めに手応えを感じると、校長と相談。教育委員会から予算をもらって「いのちの授業」を本格的にスタート。2年間で40人の講師による心のこもった授業が実現します。

山田さんは、1年半前に学校を退職し、その時期に乳がんが転移していることが分かったものの、その後も痛みを薬でコントロールしながら、ごく最近まで講演や授業を続けていたとのことです。

記事の最後はこう締め括られています。

『「大切なことは、限られた自分の時間をどう使うかを、立ち止まって考えることができるかだと思う。「あなたは今のままの生き方でいいの?」「いっしょに考えようよ」「子供たちにそんなことを問いかける「いのちの授業」を、もう少し続けることができればと思っている。』

友人からこの記事の話を聞いた時も、記事を実際に読んだ時も、不思議な安らぎと温かさが心に満ちる感覚を覚えました。恐らくは山田さんが元々人を包み込み安心させるようなお人柄だったこともあると思います。そしてその山田さんの呼びかけに応える子供たちの素直さにも心打たれた気がします。

この度ご逝去の報に接し、余りに早い旅立ちにショックを受けました。山田さんは、子供たちにご自分のメッセージをもう十分に伝えたと、心残りなく旅立たれたのでしょうか。山田さんが安らかに眠れるのは、「いのちの授業」を受けた子供たちが、そこに込められたメッセージを心に受け止め、この生き難い社会の中で本当の意味で強く生きていくことを見届けた時なのかもしれません。

山田泉さんのご冥福を心からお祈りします。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
笹井明子

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