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農業と食の問題を通して世界の潮流を考える(2)

2024-06-26 17:35:56 | 社会問題
農業と食の問題を通して世界の潮流を考える(2)
家族農業と小規模農業そしてFood Loss とFood Waste、それぞれを明確に定義し区分けし、そして世界の農業およびFood LossとFood Wasteの実態を考える

前回、農業問題を通して世界の潮流を考える、との表題で国連主導の「家族農業の10年」運動の話題を提供しました。

今回は第2回目になりますが、まずは表題を少し膨らませてみました。
理由は、農業という重要な問題をトータルに考えると、入り口の『農業』だけでなく、付随する、食べるという『食』の問題・課題も同様に重要なものとして存在しており、表題が『農業』だけでは不充分と考え『食』も表題に加えた次第です。

今後、様々な視点から「農業と食」絡みの我々が直面する課題に、光をあてたいと考えます。

問題・課題が多彩であり、また数多くあることから、話の順序や統一感や公平・公正感に懸念が出る恐れがあると考えております。この点をご了解ください。

統一感や公平・公正感に懸念が出る恐れを思う理由は、以前紹介したAGRA対AFSAの状況を思い出してもらえば容易に理解頂けると思います。

即ち、『農業と食』という問題課題を考えていく際に土台になる情報には、AGRA的情報とそれに対するAFSA的LaViaCampesina的情報が拠り所となります。

ここでAGRA的情報とは、『大規模な単一種栽培を指向し、肥料・農薬・種子メジャーらが支え、ビル&メリンダ・ゲーツ慈善基金らが応援し、世界銀行やアフリカ開発銀行の指導の下、アフリカの各国政府が取り組んでいる実態であり、従ってこのAGRA型農業システムに関わるステークホルダーはふんだんにあり、しかもそれぞれ力が強い所からの発信である。彼ら推奨の農業システムの実態を紹介する情報はふんだんで、詳細・精密を極めてその上、ある意味説得力ある主張が為されているのである。
【ここに、narrative言説・物語等の市民を誤誘導する強者側の1つの武器が見えている】

これに対してAFSA的情報に関しては、AGRA型で見られる応援団体・支援団体・多国籍巨大企業や各国政府の力の提供が殆どないことから、AFSA型農業の実態を紹介している情報の量と質に大きな期待が出来ないというハンデが、そもそも存在している。
そしてAFSAやLaViaCampesinaが力を注ぐ相手のアフリカの小規模農家(アフリカという条件を付ければ小規模農家イコール家族農家となるだろう)の実態は、当該国家・政府・行政自体からしても完全に実態を把握しきれていないのが実情である、という。

よってAFSA型の状況を、AGRAと同等に捉えること自体が困難であり、現在我々の眼前に出ている情報を頼りに『農業と食』という重大事項を考えて行く場合には、情報の質と量および迫力に差があるということを、先ずは認識しておくことが必要だと考える。

世界の『農業と食』に関して、少なくとも2つの大きく対立した考え方が存在していると思う。それら双方を平等に取り扱い、検討を行いたい思いはあるものの、入手できる情報自体にそもそもギャップがある状況下での比較検討になると感じている。

第2回目の本題に入ります。

第1回目に、国連の主導する「家族農業の10年」の紹介をしました。その紹介の中で、「家族農業」と共に「小規模農業」という言葉がふんだんに使われています。
しかもその二つを同列として扱い、同じ意味を持つ相互に交換可能なものであると、思わせるような表現が為されておりました。

その該当部分を抜き出すと、
○『国連では家族農業と小規模農業をほぼ同義語と把握しており、基本的には「家族農業・小規模農業」として包括的に使われている』としており、国連自体が「家族農業」と「小規模農業」を同義語扱いにしている。
○『労働力の過半を家族労働でまかなう農業漁業と定義される家族農業(即ちFAOの考えでは小規模農業とも置き換え可能)はFAOの調べで世界の農業経営組織の90%を占め、食糧生産規模的には80%を担っている』。

この国連FAOの「家族農業」と「小規模農業」についての認識および小規模農業が80%に達する食糧生産規模を持っていると思わせる記述の故に、様々な人が様々な議論をこのFAOの主張をもとに展開している状況がある。
が、しかし実はここに間違いがあるとする報告があり、今回は先ずその紹介から始めたい。

出典は、「小規模農家は世界の食料の1/3を生産しており、多くの論説が主張する生産割合の半分以下が実態である(Smallholders produce one-third of the world’s food, less than half of what many headlines claim.)」 Our World in Data 2021年 8月6日 Hannah Ritchie氏記す

Ritchie氏の情報の要点のみを記します。

世界の大半の農家は、小規模耕地栽培者(smallholders)。彼らは往々にして最も貧困状況にある。世界の食糧生産において、彼ら小規模耕地栽培者はどの位の貢献を果たしているだろうか?

『小規模耕地栽培者らは世界の食糧総生産量の70%を、なかには80%を生産している』と、時に報告されている。これらの主張は、国連FAOによっても為されており、この主張をもとに農業や開発の政策が組み立てられているのである。

しかし、この主張は間違っている。最近の研究によると、この70~80%という数値は高すぎであって、実態は世界食糧総生産量の約1/3であり、今までの推計の半分以下なのである。

指摘されている最近の研究結果(Vincent Ricciardi氏らのGlobal Food Security, 17,64-72,2018年)を示すと次のようになる。

農家の耕地面積規模ごとに対応する食糧生産量のデータ:
【耕地2ha未満の小規模農家】
世界の耕地面積に占める割合:24%
世界の総生産量に占める割合:29%
【耕地2ha以上20haまでの農家】
世界の耕地面積に占める割合:25%
世界の総生産量に占める割合:25%
【耕地20ha以上1000haまでの農家】
世界の耕地面積に占める割合:39%
世界の総生産量に占める割合:41%

即ち、小規模農家(耕地面積2ha未満)の世界の総生産量に占める割合は29%である。

また家族農業という観点で括ると、耕地2ha未満の小規模農家に加えて、耕地2ha以上1000haまでの下の2つの階層のかなりの部分まで網羅しているのが実態であり、家族農業の世界の総生産量に占める割合は70~80%となるのである。

何故この食い違いが出てきたかの理由は、「家族農業、family farms」と「小規模農業、smallholder farms」との2つの言葉をそれぞれ厳密に定義し、区別して使うことが行われておらず、時に混乱していたことが原因なのである。

「家族農業」の耕地面積には1haや2haといった制約はなく、それ以上に大きい様々な耕地面積で、「家族農業」事業者らは耕作を展開しているのであり、「家族農業」と「小規模農業」とがイコールだとの先入観が間違いだったのである。【世界の5.7億の農家の84%(4.8億)を占める「小規模農業」の耕作面積は2ha未満という制約が条件とされている】

権威ある国連FAOが提供している基礎データ資料の見方・読み方・捉え方次第で、実態の認識に大きな違いが起こることがあり得る、ということを示す例であり、今後『農業と食』の問題を議論していく際に、使用する用語の定義・意味を厳密に捉えておくことが極めて重要であり、必要なことである、ということを示す事例と考えます。
定義と意味するところに注意を必要とする『農業と食』に関する別の言葉に、『Food Loss』と『Food Waste』があると思う。

まずSDGsの12番目の目標を読んでみます。SDGs12.3は、原文で次になる。
「By 2030, halve per capita global food waste at the retail and consumer levels and reduce food losses along production and supply chains, including post-harvest losses」
外務省訳は、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」。
「food waste」を「食料の廃棄」に、「food losses」を「食料の損失」と訳している。

上記のSDGs12.3の原文と和訳を正確に捉えるのは、殊に「waste」と「losses」の正確な違いを意識せずに読んだ場合難しさがある、と思います。
そして先の「家族農業」と「小規模農業」と同様に、「waste」と「losses」との組み合わせも、ほぼイコールであり、相互に交換できる、と捉えてしまう可能性が大いにあります。しかし「waste」と「losses」との組み合わせにも、厳密にそれぞれが定義され、区別されているのです。
従って、SDGs12.3の原文と和訳を正確に理解し読み取るには、これら「waste」と「losses」の定義を知っておくことが求められる訳です。

『農業と食』という、我々にとって非常に大切な問題(例えば世界で6.9億人もの人々が飢えに苦しむ中、毎年13億トンもの食べ物が無駄に捨てられているという我々に突き付けられている課題)を考えていくことは非常に重要なことであり、よってこの違いを心得ておくことが必要となる訳です。

では「food waste」と「food losses」の定義と違いを紹介し、その上で食べ物が無駄に捨てられている話題についての情報の紹介に移ります。
参考とした情報は2つ。

一つ目は、『Food LossとFood Wasteとの違い(What is the Difference Between Food Loss and Food Waste?)』PopulationEducation.org,2020年9月29日、Andrea Moran氏記す。
二つ目は、『ReFEDが新たな食品廃棄物推定値を発表し、食品システムによる対策強化を呼びかける(ReFED Releases New Food Waste Estimates and Calls for Increase Action by Food System) Refed.org,2023年4月19日。

『Food Loss』と『Food Waste』の定義と違いについては、一つ目の情報からになります。

2つの用語の定義と意味するところの違いを理解することは、実は簡単です。
必要なことは、食べ物が生まれ、様々な過程を経て最終的に人々に食べられるまでに辿る食べ物の道筋を想定して、ある段階までに廃棄されるものを『food losses』とし、それ以降は『food waste』とする、ということになります。

境目は、農業や漁業の現場で生産され、次いで様々な加工業者の手による加工作業を経て商品となり、次いで配送流通業者が様々な小売店販売店レストラン飲食店等のフードサービス業者らに食品を配送し、以降小売店販売店レストラン飲食店等のフードサービス業者らを通じて消費者が食品を入手し消費していくという食べ物が辿る工程において、『配送業者』と『販売業者・フードサービス業者ら』との間に、今考えている切れ目がある、とするということです。

換言すると、農業漁業生産者と加工業者・輸送業者らが責任を持っている部分から出てくる廃棄物が『Food Losses』とされ、販売店やフードサービス業者や消費者らが責任を持っている部分から出てくる廃棄物は『Food Waste』とする、ということです。

『Food Losses』と『Food Waste』に対応する日本語は、政府が使う言葉、即ちlossesを『損失』、wasteを『廃棄』を基本に今後取り扱っていくことを考えています。

この定義を踏まえて、再度SDGs12.3を読んでみると、国連の目標がよりはっきりと捉えられると思います。

『農業と食』という重要な課題のいろいろな面を今後考えていく予定ですが、先ずは食べ物の『losses、損失』と『waste、廃棄』に関わる話題を更に紹介してみます。

ReFEDからの情報になります。因みにReFEDという組織は2015年に設立されているアメリカ国内の食料の無駄の削減を目指す非営利団体ということです。30社以上の企業・非営利団体・基金・行政府主導者らが参加しています。要点だけの紹介です。

ReFEDによると、2021年にアメリカでは9100万トンの「余剰食品」が発生していた。
【余剰食品(surplus food)とは、栽培農地から始まり、加工場・販売店を経て消費者へと繋がる食品サプライチェーンにおいて、売れ残ったり・食べられなかったものを指す】

この量はアメリカの食料供給量の38%分に相当し、年間温室効果ガス排出量の約6%に相当するという。余剰食品の約50%は家庭からのものであり、20%はフードサービス事業者からのものである(即ち70%はFood Waste食品の廃棄分と分類される)。

「余剰食品」が存在することで、発生する問題はGHG排出だけではない。例えば淡水の22%及び耕作地の16%の無駄も付随しているのであり、また「余剰食品」の栽培・収穫・輸送・冷却・調理そして最終的な廃棄に要する費用も発生するのである。
ReFEDの分析によると、「余剰食品」の経済価値は2021年分として4440億ドル(アメリカのGDPの約2%に相当)。

そしてこの「余剰食品」の量は、1490億食分に達するという(ほぼ全ての日本人が、日に3度の食事が出来、1年間続けられる量。世界で飢えに苦しむ8億人の人々に2日に一回食事を提供できる量でもある)膨大な量なのである。

ReFEDの事務局長のダナ・ガンダースさんは、「食品廃棄量の削減が進んでいることが確認できる分析結果を期待していたが、残念ながら2019年と比較してほぼ同じレベルと確認されている」として、「食品システムに関与する人々が、さらに真剣に取り組み、成果が期待される取り組み方へと変更を行っていくことが重要だ」と指摘している。

ReFEDの報告では、食品廃棄に関わる問題のパラメーターが詳細に説明されている。そして食品廃棄課題解決に関わる42種のモデル化を試みており、どのモデルが食品サプライチェーンにおけるそれぞれの事業分野に対して最も効果的にFood LossとFood Wasteを削減できるか、を求めようとしている。

これらの解決策を全ての領域において実践していくには、年間約180億ドルのコストがかかると見られる。しかし、この実践を行うことができれば、その経済的利益は740億ドルが見込まれ、コストの4倍の利益になると予測される。その上に、毎年1.09億トンのGHG排出削減が出来、6兆ガロン(約270億トンの水)の淡水節約ができ、そして10年間に6万人の新規雇用が期待できるという。

これら解決モデルを積極的に導入すれば、余剰食品の2100万トン(23%に相当)が削減できることになると見積もっている。

以上、食べ物の損失と廃棄の現状をアメリカの事例から見た情報を紹介しましたが、現状の大きな課題は、Food LossとFood Wasteとの状況を適切にモニターするという、『食べ物の無駄の見える化』システムが出来ていない・用意されていない点であると思います。ReFEDの事務局長のダナ・ガンダースさんも指摘しているように、無駄の削減の兆候が認められていない要因の一つはこの辺りになると思っています。

『見える化』が為されれば、より効果的な削減プランやアイデアは自ずと出てくるのではとも思います。

もう一つのポイントは、アフリカや中南米・アジアに散在している5億世帯にも達する小規模農家の活動や彼らが置かれている状況にもっと光を当てることが大切な視点だと思っております。彼らへの注目を拡大していけば世界の『農業と食』に関する課題の解決策は自ずと出てくるのではと思っております。

次に続きます。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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都知事選について

2024-06-17 20:19:45 | 選挙
5月27日に蓮舫が出馬表明してから、ネットや週刊誌が特集を組み騒がしくなった。

小池百合子はその騒動をじっと見つめ、蓮舫フィーバーが治まった頃少しづつ出馬表明を始めた。さすが、後出しジャンケンの魔女、じゃなかった女帝である。

新聞のテレビ欄も小池百合子の名前が網羅した。テレビのワイドショーでは、インテリタレントと呼ばれている女性が「蓮舫さんは都知事選に国政を持ち込んでいる。野党は批判ばかり。裏金問題でもワーワー騒ぐだけ。それを都知事選挙に持ち込まれても都民はウンザリするんじゃないか」と語った。

国民は怒っている、政治資金改正法だって骨抜きにされた、批判をして政権与党の誤りを正すのが野党の仕事。ウンザリは自民党応援団の貴女がテレビで言っているトンチンカンな発言。もう、聞き飽きた。

明治神宮の木を何百本も伐採することを、大企業やお友達に利益を齎す為に許可して、「民間がやる事」と逃げた都知事。

子ども食堂では、物価高騰の折寄付が集まらなくて困っているという。蓮舫は視察に行った。

そんな都民の暮らしを考えた政策を実現しようとする候補者を選ぶのか、都の予算を選挙の宣伝に使う現職を選ぶのか。
蓮舫は「私が先頭に立って都政を変える」と言っている。

告示は6月20日、投票日は7月7日。七夕の夜に奇跡が起きるのか。それは都民1人1人の投票行動に掛かっている。

一票を無駄にしないで投票には行こうよ。世田谷区保坂区長も言っている。「国がやらないなら私がやる」と。

都政が変わるかも知れない足音を、7月7日の夜、一緒に聞きたいと思いませんか。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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農業問題を通して世界の潮流を考える(1)今年は国連「家族農業の10年」の6年目

2024-06-16 21:03:46 | 社会問題
世界農業の流れの特徴は、世界の種子メジャーや肥料メジャーが国際金融機関・慈善家と協働し、各国政府を差配し支配する構造が明らかに見えてしまう所にあると考えている。

この構造に異議を唱えているのが、La Via CampesinaやAFSA(the Alliance for Food Sovereignty in Africa)等が掲げるアグロエコロジーの理念が世界の農業と食糧安保と自治権に必要なものであり、その担い手である小規模農家を支援する体制の確立が重要だという指摘である。

こういった対立構造は勿論農業だけではない。原発含めてエネルギーの分野でも、国際金融の世界でも、G7でもCOPでも国連そのものの構造にも深く影を落としていると思う。

このせめぎ合いの両者の考え方は、一方はMultilaterarism(各国市民が選挙権を行使し選んだ各国の政府が参集し、世界に関わる課題の解決策を追求する方式)が機能してきた世界の考え方であり、もう一方はMultistakeholderism(世界に関わる難題がMultilaterarismでは解決困難と称して多国籍企業の参入を認め、打開策を腕力で図ろうとの方式)が差配し支配する世界の考え方であろう。

multilaterarismには、市民が選挙権を通じて世界の課題解決に介在しているという構造が曲がりなりにもあるのに対し、multistakeholderismでは多国籍企業体の力が前面に出て、市民力の介入力が大幅に低下している構造になっている所が問題と思っている。

いわゆる「世界市民の家」を想定した際、多国籍企業体に「庇を貸して母屋を取られた」の表現がピッタリな状況が今の世界を覆っており、農業含めていろいろな分野で市民が閉塞感を感じる大きな要因となっていると感じている。

話を広げ過ぎることは避けたいので、敢えて農業の問題のみに話題を絞って現在の閉塞感の原因の問題を考える際に必要な情報を提供していきたいと思っております。

概ね話題の中心は、世界の種子や肥料の多国籍メジャーらが国際金融機関・慈善家らと協働し、各国政府を差配し支配する構造の紹介と、この世界構造に異議を唱えるLa Via CampesinaやAFSA等が掲げるアグロエコロジーの推進を中心とする自給自足的考えも含んだ食糧自治権の確立と小規模農家の存在意義を訴える活動の紹介になると思います。

では第一回目として、国連の主導する「家族農業の10年」運動の紹介から始めます。

1つ目の情報は「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の「家族農業の10年とは」です。

2017年12月20日、今後の世界の農業の方向性を左右する出来事があり、即ち国連本会議で2019年~2028年を「家族農業の10年」とする議案が全会一致で成立したことです。

コスタリカが代表となり、日本を含む104カ国が共同提案国となっていたこの運動は、2014年の国際家族農業年を10年間延長し、家族農業を国連加盟国の農業政策の中心に位置付けることを求める国連の啓発活動というものです。

「労働力の過半を家族労働でまかなう農業漁業」と定義される家族農業は、FAOの調べで世界の農業経営組織の90%を占め、食糧生産規模的には80%を担っている。耕地規模を見ると、1ha未満が73%、2ha未満で括ると85%を占めている。

これまで、先進国・途上国を問わず、小規模・家族農業の役割は過小評価され、充分な政策的支援が行われてこなかった。「時代遅れ」「非効率」「儲からない」と評価され、政策的に支援すべきは「効率的」で「儲かる」「近代的企業農業」とされてきたが、ここにきて農業の効率性を測る尺度自体が変化している。農業の効率性は、労働生産性のみで測れるものではないとされ、土地生産性は大規模経営よりも小規模経営で高いことが知られている。

また今、重要視されているのがエネルギーの効率性であり、化石燃料への依存度の高い外部投入資源(合成肥料や農薬、そして機械利用の土壌掘り起こしや灌漑設備等)を多量に使用する大規模経営農業よりも、それら外部投入資源への依存度の低い小規模・家族農業の隠れた効率性が注目されて来ているのである。

また、経済・社会・環境的に持続可能な農業として推進されている「アグロエコロジー」の実践においても、もっとも優位性を発揮するのが小規模・家族農業だと評価されています。そのため、国連の持続可能な開発目標(SDGs)(2016~2030年)の実現において、小規模・家族農業は中心的役割を果たすことが期待されている。

FAO事務局長は2013年に「家族農業以外に持続可能な食料生産のパラダイムに近い存在はない」「国や地域の開発において、家族農業を中心とした計画を実行する必要がある」と述べている。

この様に小規模・家族農業の活性化なくして食料の安定供給、貧困・飢餓の撲滅、農村地域資源管理や持続可能な社会の構築は不可能だということを、遅ればせながら国際社会が認識するようになり、政策の舵をいま大きく切っている。日本においても、政策の方向性を再検討する時です。

以上、この「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンFFPJ(Family Farming Platform Japan)」の立場は、中立的な感じがする、国連の「家族農業の10年」の理念を忠実になぞった情報の伝え方を感じます。

農水省も建前上は、同じ考え方で国連の「家族農業の10年」運動を準備怠りなく、見つめているでしょうが、具体的な行動は国内パワーバランスを見極め、現状は腰を引いて模様眺めといったスタンスと感じます。そしてもう一つの重要な、この運動の動因となって欲しいものが我々市民の動きでしょう。

残念ながら今年が、コスタリカらが求める「家族農業の10年」運動の第6年目という認識さえ、持っているかどうかが疑われる状況が日本社会の現状ではないかと感じています。

次に紹介するのは「家族農業の10年とは?日本への影響や家族農業のメリット・デメリット」 Minorasu.basf.co.jp , 2022年2月27日付けの情報です。

日本は農業後継者不足を理由に、大規模化や法人化を国の方針とし、進んでいる。国際的には農業の効率性・生産性向上が重視されるなか、従来の家族経営農業の価値も見直されてきており、今回国連が「家族農業の10年」を採択(2017年)している。

「家族農業の10年」の概要と、日本への影響を紹介する。

1.「家族農業の10年」とは?

世界的に家族農業の意義を見直す動きが出ている。この象徴が、2017年国連総会本会議で採択された2019年から2028年までの10年を「家族農業の10年」とする動きである。

この国際運動には先触れがあり、2011年の「国際家族農業年」に関する国連総会の採決であり、2014年に施行され、各種運動が展開された。

今回の「家族農業の10年」は、この「国際家族農業年」を実質的に延長したものである。

(家族農業の定義)
“労働力の半分以上を家族で賄っている農林漁業”を指している。耕地面積の大小や法人化の有無は定義上関係がない。ただし、国連では家族農業と小規模農業をほぼ同義語と把握しており、基本的には「家族農業・小規模農業」として包括的に使われている。

家族農業・小規模農業と対峙する存在が、資本的なつながりで構成された組織の「企業的農業」。営利目的で従業員を雇いビジネス展開する場合が「企業的農業」で、それ以外が「家族農業・小規模農業」と捉えられる。

(農家への影響)
家族農業・小規模農業推進のため、国連は2019年に「家族農業の強化を実現できる政策環境の構築」「家族農業における男女平等と農村のリーダーシップ促進」などからなる世界行動計画の7つの柱を策定した。

2020年にはそれぞれの加盟国が「国内行動計画」を作る段階となっていたが、コロナ禍の影響で遅れが生じており、日本も具体策案はまとまっていない。そのため現状では、国連決議が直ちに日本の農家に影響を与える可能性は低いと言える。

日本はこれまで効率化を重視し、企業化や大規模化を政府が推進してきたが、今後国連の掲げる「家族農業の10年」運動の推移により、最終年の2028年までの間に政策転換の可能性はあると言える。

2.家族農業が重要視される理由
家族農業は、世界では90%を占める農業経営基盤なのである。
【全体に占める家族農業の割合は、米国で98.7%、EUで96.2%、日本で97.6%(農水省、『国連、家族農業の10年』の情報)】

世界で進行する自由主義経済の影響から、農業の効率化(作付・農薬散布等の作業の効率化)のため大規模化が世界的規模で推進されて来ているが、その上で実際にはFAOの調査によると、家族農業が世界全体に占める割合が、数の点でおよそ90%にのぼり、生産量の点でもおよそ80%を占めるとされる。

人口増加により将来食糧不足が懸念される現状で、世界全体の大部分を占める家族農業を守ることが、持続可能な社会作りに重要な施策だと考えられているのである。

途上国では、多くの人が貧困・飢餓に苦しんでいる。そして、その多くが食の安全を求め農林水産業に従事している。従って、国連は家族農業を守ることが多くの人々を救う方策と考えていると言える。

また、家族農業では人手不足が起こりやすいことから、女性も男性と同じくらい重要な働き手と期待される。即ち女性なしでは家族農業は成り立たないとして、家族農業の推進は女性の社会的地位向上にも貢献が大きいとされ、期待されているのである。

家族農業はSDGsとも密接に関連している。SDGsの17の目標のうち、貧困撲滅・ジェンダー平等・雇用促進などの目標に関係している。

自然と共生して食糧を生みだす家族農業は、そのほかにも気候変動やエネルギー、イノベーションなどSDGsの掲げる多くの目標達成に関連している。

3.日本の家族農業の現状
農水省データによると、日本の農業事業者総数は、2015年137.7万、2022年107.5万。
内訳は、
会社法人組織:2015年1.66万(1.2%)、2022年2.0万(1.9%)
農事組合法人:2015年0.6万(0.5%)、2022年0.7万(0.7%)
各種団体法人:2015年0.3万(0.2%)、2022年0.2万(0.2%)
その他法人:2015年0.09万(0.1%)、2022年0.13万(0.1%)
法人組織合計:2015年2.7万(2.0%)、2022年3.07万(2.9%)
個人経営体:2015年134万(97.3%)、2022年103.7万(96.4%)

日本で農業を営む人の大半は家族農業である。しかし、経営難や高齢化の進行で離農が今も続いている。そして僅かながらも作業の効率化が図りやすい法人経営体が増加している。

4.家族農業のメリット
同じ品種を大きい圃場で栽培するほど生産コストが低減することから、大規模経営はスケールメリットを得られる。しかし多品目栽培をおこなう場合には向かない。

家族農業の小規模栽培はコスト面では、大規模栽培に劣るものの、様々な品種を植えても管理がしやすいというメリットがあり、病害や台風など自然災害を受けた際起こる可能性のある一度に全滅というリスクを回避できる可能性があり、大きなメリットと言える。

また、大規模経営は収穫量が膨大なため、流通網の分散化が難しい。一方小規模家族農家は付加価値の高い作物を栽培して消費者などの取引先と直接交渉することで、販売価格を高く維持することも目指せるというメリットがある。

そのほかにも、土地生産性やエネルギー効率は大規模経営より小規模経営の方が高いとの報告もある(「Handbook of Agricultural Economics」vol.4,chapter65FarmSize,NORTH HOLLAND)。

5.家族農業のデメリット
労働生産性の改善が難しいことによる労働時間の増加がデメリットとして挙げられる。

即ち、家族農業ではいくら生産性を向上させても、人手の点から栽培できる面積に限界がある。耕地面積が小さいことから、労働生産性は向上しにくく、その結果労働時間は長くなりがちである。

付加価値を高める努力と、機械化などによる生産性の向上をどう取り入れていけるかが、考えどころとなるだろう。

今後も家族農業が重視される可能性はあるが、高齢化や後継者不足の進展もあり、日本では農業の大規模化・法人化が避けられない方向であろう。

家族農業も小規模の意義やメリットを踏まえつつ、大規模化の検討も視野に入れることが求められるのではないか、と考える。

以上が2つ目の記事の情報です。

この最後の総括的文章『家族農業も小規模の意義やメリットを踏まえつつ、大規模化の検討も視野に入れることが求められるだろう』や『付加価値を高める努力と、機械化などによる生産性の向上をどう取り入れていけるかが、考えどころとなるだろう』との説明、そして文中に散見される色々な条件(例えば『日本は農業後継者不足を理由に大規模化や法人化を国の方針とし、進んでいる』『国際的には農業の効率性・生産性向上が重視される』)を含めての話の進め方に気になる点が多く感じる書き方なのである。

そしてFFPJでは、ハッキリと意義を紹介しているアグロエコロジーについては、その言葉さえいっさい伝えようとしていないのである。

実は、この情報の出所がBASF(典型的な国際的農薬メジャー)であることから敢えて紹介したのですが、国連の『家族農業の10年』運動という世界から提起された日本の農業の転換点にもなり得る状況を前にして、都合のよい方向へ世の流れを導いていこうとする動きが良く行われるところであり、このBASF情報がその一例ではないか、と紹介したものです。

BASF の認識は一面的であり、後継者不足課題は、若者らの新規参入の一つのチャンスであり、新たな雇用創出に繋がるチャンスとの考え方も出来るだろう。

そして、国連の主導する「家族農業の10年」運動と連動する形で、日本の小規模農家や家族経営農家がLa Via CampesinaやAFSA的アグロエコロジー的世界観と横のつながりを深めていく機会が拡大していくことになれば、そしてその結果、アグロエコロジー的世界観が日本の市民の間に根付いていくことを期待したいものである。
次回に続いていきます。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」を読む

2024-06-15 10:14:55 | 社会問題
1,はじめに

今回と次回で、ダグラス・ラミスさんの「本」を基に、日本の憲法政治の問題点を明らかにします。(いつもながら、コラムとは異質な論稿になる。)

ラミスさんの指摘で、日本の政治がかなり危ない状況になっていることが明白に理解できました。ラミスさんの警鐘はかなり的確であり、今回はその文章を引用、紹介します。

2,「タイタニック現実主義(本文、第1章)」

1999年9月22日の「ジャパンタイムズ」の4面に、国連環境プログラムが、「地球環境展望2000」という報告書を出したという記事があり、報告書には現在の地球環境がどれだけ危機的な状況にあるかが書いてある。そして、「先進工業国の資源消費を90パーセント減らすことを目標にすべき」と提言している。「そうしないと未来の世代は大きな生命の危機に直面するであろう」というのが報告書の結論である。

次の面は経済面、その5面に「日本経済は不景気から少し復活し始めた」という記事がある。電気の消費量が増えているのだから、経済は回復しているということだ。

4面の記事は陳腐になるほど、みんなが聞き飽きてしまったほど出ているが、この経済面には少しも影響を与えていない。

ラミスさんは、この新聞記事の二つの対比によって、「現実主義」の言葉のまやかしに異議を唱えている。

4面の国連の「報告」は国民多数が「聞き飽きた警告」であり、実際に、地球温暖化や水不足による農産物の被害の拡大などが深刻になっているのだが、世間の「常識」は、経済成長を求めて、電気の消費量が上がっても、不景気からの回復が優先されることが期待されている。

(「冷戦後でも紛争は108件も増えている」という大事な問題が書かれていますが、引用が長くなるので、省略します。)

そういう中で日本政府の「現実主義者」たちは、周辺事態法を可決させたり、憲法調査会を作って憲法第9条の廃止を準備したり、日本の半世紀ぶりの戦争への直接参加を凄まじい勢いで準備しています。(2003年当時の事項です。)

ラミスさんは、ここで、日本政府の「現実主義」をタイタニック号の比喩を使って、次のように表現しています。

3,「誰もエンジンを止めようとしない」

多くの人にとっては唯一の現実は、「タイタニック」というこの船だけなのです。
タイタニックの中にはいろいろなルーチン(日常の作業)があります。みなそれぞれにルーチンを持ち、それをやり続ける人が「現実主義者」なのです。(中略)
国連の報告を聞くまでもなく、このまま進めば氷山にぶつかるということはほとんど決まっていることなのですから。

4,今回の結論

ラミスさんの本は、新書であり、普通サイズですが、政治と経済の重要問題に言及していて、情報量は多く、日本と米国の「戦後史」に独自に視点から分析されており(私のコメントは今回は、言及できませんでした)、21世紀の現在、ウクライナ戦争とイスラエルのガザ侵攻の問題にも適用可能な論理が本書に表現されています。

特に今日のニュースでも国連の決議があり、イスラエルは「人権侵害国家」という認定があり、ラミスさんの理論はこの問題にも適用可能であるとの解釈を、次回コラムでは詳述したいと思います。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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「関心領域」隣は何をする場所ぞ

2024-06-07 09:39:49 | 民主主義・人権
緑の豊かな庭や畑、小さいながら子供用の滑り台付きのプールまであります。そこで遊ぶ子供達、おしゃべりする女性達。映画「関心領域」は、ポーランドに住むドイツ人一家の、のどかな家庭風景を描きます。
https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/

夫のルドルフ・ヘスが持ち帰るドレスなどを、妻のヘートヴィヒ(ザンドラ・ミュラー)は女中たちにも分け与え、自分は毛皮のコートを満足気に羽織って、ポケットの口紅に気付くと、さっそく塗ってみます。

子どもたちは、なんと入れ歯をおもちゃにして遊ぶ。それらの持ち主がどうなったかなどは、何も考えないのでしょうか。

塀の向こうは映らない。ただ、最初からずっと音が聞こえます。低奏音の様な焼却炉の燃える音、時々はパンパンという銃声、悲鳴。

売り込みに来た業者は、2つの炉を使い回すと「何」の焼却に効率的…と説明し、ついうっかり「500体」と漏らします。

ヘートヴィヒの母親が泊まりに来て、広い屋敷や庭に喜びます。しかし彼女は、隣の気配にいたたまれなくなって、予定を切り上げて早朝に黙って帰ってしまいます。しかし屋敷を気に入っているヘートヴィヒは、収容所長のヘスに転勤命令が出ると彼を単身赴任させる始末。

私たちはこの家の塀の向こう、アウシュビッツ収容所で何が行われたかを歴史として知っています。この映画では最後に一瞬、靴の山と、壁に掛けられた囚人服の人々の写真が映ります。裁判で「命じられたことをしただけ」と述べたヘスの行為の結果です。そして嘔吐するヘス。

それにしても、塀の向こうで行われていたことへのヘートヴィヒの無関心さには驚きます。「無関心」は人を殺す。
しかし、もしかして見て見ぬ振り?と感じた時、私たちは自分もまたヘートヴィヒではないかと愕然とさせられます。私はどれだけ「見て見ぬ振り」をして生きて来たか、そして生きていることかと。
怖い映画です。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
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蓮舫氏、都知事選に出馬表明

2024-06-06 21:11:48 | 選挙
5月27日、蓮舫参議院議員が、7月7日に投開票の都知事選への立候補を表明。記者会見を開いた。

冒頭蓮舫氏は、『今自分が身を置いている国政で起きている「裏金議員」「政治とカネの問題」への対応を岸田総理に何度も問いただしたが、本当に改革しようという本気度が感じられず、怒りと失望を覚えてきた。
 直近の衆院補選や静岡県知事選では、立憲民主党候補や野党候補が選ばれ、「裏金議員」「政治とカネの自民党」、そして、その自民党の延命に手を貸す小池都政をリセットして欲しい、という国民の声ははっきりした。今は、その先頭に立つのが自分の使命だと感じている』と今回の立候補の動機を説明。

その上で、『8年前、都議会自民党の伏魔殿、都庁のブラックボックスを壊すといって都知事選に立候補した小池さんだが、8年たった今、小池さんの七つのゼロ公約は、どこに行ったのか。
 選挙前年に決めた18歳以下の子供への五千円支給、都庁のプロジェクションマッピング、全都民に配られた小池知事の顔写真入り東京防災ブック、顔写真とメッセージ・サイン入り防災ポスターなど、今は公金を使った事前の選挙活動とも思える予算の使い方をしている』と小池都政を批判。

『こうした予算を見直して、格差で光があたらない、困っている人たちに政策を届けたい、仕事を、食べ物を、安心を届けたい、子供たちに教育の充実を届けたい』と、自らが都知事として目指す基本理念を語った。
https://www.youtube.com/watch?v=XFZEye3jI8Y

その後蓮舫氏は、記者から投げかけられた質問に呼応する形で、6月1日に都庁下の炊き出し(主催:新宿ごはんプラス、もやい)を視察。
 その上で、「プロジェクションマッピングは期間限定で集中して予算を削減し、余剰を食料配布への援助等、足りない部分に付け足していく(中略)それは知事になってすぐ考えたい」と語ったという。
https://tanakaryusaku.jp/2024/06/00030770

ちなみに、上記の田中龍作氏の記事によれば、小池都知事は10年続いている都庁下の食料配布に、一度も視察に来たことがないそうだ。

現場に足を運び、日々の暮らしを営む人たちと直接対話しようとはせず、どこか上の方で作り上げた、利権がらみと思われる政策を、トップダウンで下におろすという小池知事の姿勢は一貫しているようにみえる。

そんな利権と自己保身の体質を引きずった小池都政を今も手放したくない人たちが、「反自民」「非小池都政」を掲げるリベラル勢力「オール東京」に後押しされて立候補する蓮舫氏を当選させるわけにはいかないことは、容易に想像できる。

現に、蓮舫氏にたいするネガティブキャンペーンと、小池知事出馬待望論が、テレビやSNS上で、さっそく繰り広げられている。

しかし、2020オリンピックや、神宮外苑や日比谷公園の木々を伐採する都市再開発計画、都庁のプロジェクションマッピング等々、一見華やかそうに見えて、その実中身のない空疎な光景を、私たちの多くがもはや望んでいないことは、直近の衆院補欠選挙やいくつかの首長選、区議選の選挙結果を見ても明らかだ。

蓮舫氏が都知事選に勝利して、東京に本当の豊かさを取り戻し、東京、ひいては日本に暮らす人々に、『仕事を、食べ物を、安心を届け、子供たちに教育の充実を届ける』政策を展開する第一歩を踏み出し、都民と共に育てていくことを、心から期待したいと思う。

「護憲+コラム」より
笹井明子
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