臨床心理士によって語られる沖縄のとあるデイケアの日常。そもそも精神科のデイケアってどういう場所なんだかそういえばまったく知らない。というか、精神疾患のケアってどんなことなのか、というのもまったくわからない。そんなこともあって読んでみた本である。
人は、自分が今いる場所に「いる」ことを多分当たり前だと思っている。しかし著者がデイケアで最初に躓いたのは「ただ座っている」ことの難しさだった。確かに、人は何か役割を、あるいは立ち位置――「居場所」を確保した状態でこそ無意識に「ただ、いる」ことができる。知らない土地で、あるいは見知らぬ人たちの中にひとり放り込まれたときの居心地の悪さは、つまり「居場所」がまだ定まっていないからだ。なるほどね。やっぱり、「いてもいい場所」がないと、人は何も考えずに自分のままでいることができなくなってしまうのだ。
それにしても、先輩職員たちは次々に退職していった。デイケアで働く人たちが肉体的にも精神的にも大変さを抱えていることにはなんとなくのイメージ(だけ)を持っていたのだが、やっぱりそうなんだな、という印象。しかし辞めるにあたって、デイケアに通ってくる人々(メンバーさん)に、自分がいなくなることをどう受け入れてもらうのかを辞める人それぞれが考えているのが興味深かった。心のケアを必要としている人たちをケアするのが役目なのだから当たり前のことなのかもしれないが、一般企業にいて辞め方を考えるのとはやっぱり違うんだなあと。
……と、臨床心理士と患者さんたちのコミュニケーションの話だけかと思いきや、最後には社会におけるデイケアという施設のあり方とその課題に言及がある。それはいわゆる介護・福祉の世界が抱える課題そのものである。「『いる』が経済的収支の観点から管理されている」デイケア。その場を維持していくために、現実として収支をマイナスにするわけにはいかないのは当たり前のことなのだが、利益追求が第一になってしまうと本来の目的から道が逸れてしまうことがある。
本当は、誰もデイケアを必要としないようになれば、それに越したことはない。ないけれども、それはありえない。生産性(あまり好きな言葉じゃないんだけど)を上げるのは確かに、労働者人口が少なくなっていく中で避けて通ることのできない命題ではあるが、それだけを求めてはいけないはずなのだ。デイケアだけじゃなく、社会全体において。だってそういう社会に生きてきた結果、デイケアに通うことになった人たちがたくさんいるのだ。そして、自分だって、自分の身近にいる人たちだって、いつ何をきっかけに同じ立場になるかもわからないのだから。
人は、自分が今いる場所に「いる」ことを多分当たり前だと思っている。しかし著者がデイケアで最初に躓いたのは「ただ座っている」ことの難しさだった。確かに、人は何か役割を、あるいは立ち位置――「居場所」を確保した状態でこそ無意識に「ただ、いる」ことができる。知らない土地で、あるいは見知らぬ人たちの中にひとり放り込まれたときの居心地の悪さは、つまり「居場所」がまだ定まっていないからだ。なるほどね。やっぱり、「いてもいい場所」がないと、人は何も考えずに自分のままでいることができなくなってしまうのだ。
それにしても、先輩職員たちは次々に退職していった。デイケアで働く人たちが肉体的にも精神的にも大変さを抱えていることにはなんとなくのイメージ(だけ)を持っていたのだが、やっぱりそうなんだな、という印象。しかし辞めるにあたって、デイケアに通ってくる人々(メンバーさん)に、自分がいなくなることをどう受け入れてもらうのかを辞める人それぞれが考えているのが興味深かった。心のケアを必要としている人たちをケアするのが役目なのだから当たり前のことなのかもしれないが、一般企業にいて辞め方を考えるのとはやっぱり違うんだなあと。
……と、臨床心理士と患者さんたちのコミュニケーションの話だけかと思いきや、最後には社会におけるデイケアという施設のあり方とその課題に言及がある。それはいわゆる介護・福祉の世界が抱える課題そのものである。「『いる』が経済的収支の観点から管理されている」デイケア。その場を維持していくために、現実として収支をマイナスにするわけにはいかないのは当たり前のことなのだが、利益追求が第一になってしまうと本来の目的から道が逸れてしまうことがある。
本当は、誰もデイケアを必要としないようになれば、それに越したことはない。ないけれども、それはありえない。生産性(あまり好きな言葉じゃないんだけど)を上げるのは確かに、労働者人口が少なくなっていく中で避けて通ることのできない命題ではあるが、それだけを求めてはいけないはずなのだ。デイケアだけじゃなく、社会全体において。だってそういう社会に生きてきた結果、デイケアに通うことになった人たちがたくさんいるのだ。そして、自分だって、自分の身近にいる人たちだって、いつ何をきっかけに同じ立場になるかもわからないのだから。
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