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偏愛と放浪の記録

「富豪刑事」(著:筒井 康隆)

2021-03-10 01:32:58 | 【書物】1点集中型
 筒井作品はSF系が好きでそっち方面はいくつか読んでいるものの、ドラマになったりアニメになったりしているこちらは長いこと未着手だった。で、そのBULを観る機会があって、じゃあやっぱり読んでおくかと手を出した次第。当然、全然話は違っているわけだけども。そもそも原作に加藤春自体いないし。大助のキャラの空気感も全然違うし。まあBULはBULで先入観がなかったので(ドラマは観てなかったから)面白く観たし、シャーロック・ホームズ原典と「エレメンタリー」ほどの違いはなかったので、全然問題なかったんですけども。

 それはそうとこの「富豪刑事」原典であるが、ちょっとおどおどしてる感のある大助が微笑ましかったのである。あー、そういう理由で富豪刑事なんだねーというおおもとの父親のキャラクターがバカでまたいい。そもそもこんな捜査方法は現実的にはあり得ないだろうから、その発想の飛躍も筒井作品だなあと。いかにも「らしい」ドタバタ満載のエンタメなのでそういうところのリアリティは必要ない、とそんな感じで割り切ってしまえる感じ。登場人物が突然読者に語りかけたりするあれなんかも、本来だったら小説でそれやるか、と思っちゃうのだが筒井作品のこのノリにかかるともはやどうでもよくなる(笑)。というか、それが問題なくなる雰囲気の作品なわけだ。同じ筒井作品であってもたとえば「旅のラゴス」でこれやったら絶対にマッチしないんだし。
 その意味では、漫画的なこの世界観も、こういうのもいいよねなんせ筒井ワールドだし、と思える範囲に収まる絶妙のバランスなんだろうなあと。多分に実験的要素が見られるようなつくりも含めて。まあ、自分自身がナンセンス系のやつ(筒井作品もそうだけど、バカSFとかも)が好きだからというのも多分にあると思われるが。

 筒井作品の刑事ものというかミステリというか、この手のジャンルは初めてだったんだけれども、結果的には筒井康隆以外の何ものでもなかった。筒井康隆といえばついついSFとかブラックな短編とかのほうに手を出してしまうのだけど、やっぱり「ロートレック荘事件」も読まないと。


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