めぐろのめばる

目黒川近辺で日本の四季を楽しみ、未来の日本を憂う。
かつての美しい日本と日本人がいかに素晴らしかったかを思う。

父の働いていた会社を探して

2014-06-23 15:46:59 | 家族

私の父はこの夏90歳を迎えます。
いつの間にか私も高齢者の仲間入りをする歳となっていますが、
両親を見ているとまだ自分は若いような気持ちになってしまいます。

80を超えても若者に負けない様な体力があった父ですが、ここ数年
急に体力が衰えて、外出する事も少なくなって来ました。
それに伴い、体力のみならず、気力が衰えているのが目に見えて
何とか元気になってもらいたいと何かと考えるのですが、何分にも
遠く離れて住んでいる事もあって、正月ぐらいしか会えず、お互いに
寂しい思いが消える事は有りません。

とは言っても、季節ごとには美味しいものと、東京のお菓子を送ったり
するのですが、やはり直接顔を合わせ、お互いの気持ちを確かめあうには
到底及びません。

そこで、昨日、父の働いていた会社と周囲の街を写真に撮ろうと出かけました。
私は、父の会社の名前は知っていても、行ったことは有りません。
ただ、20年程前に、電車の沿線から大きな看板が掲げられた父の会社を
走る窓越しに見たことが有りました。

かつて父が働いた町と会社が今どうなっているかを写真に撮って送ってあげれば
また新たな気持ちが沸いてきて、少し元気を取り戻してくれるのでは、と思いました。

その路線の電車に乗るのも10年振りです。通過はしても外を眺める事は殆ど無く
目的の駅の近くになると、窓の外を子供のように食い入るように探しました。
駅に到着する数十秒前に大きく見えるはずです。

緑で覆われた幹線道路際に大きなビルが目に飛び込んでくるはずです。
しかし、電車がホームに滑り込むまで、それらしきビルが見えません。
記憶違いかと思い直しましたが、確かに、住所も場所も合っているはずです。
駅から下りて、前の駅に戻る様に桜並木の道路を歩きました。
駅から駅の距離は2キロ程、歩いても差ほどの距離ではありません。
カメラ片手に、一つ一つビルを確かめながら歩きました。

しばらく歩くと、この辺りと思われる場所には、目的のビルがありません。
その代わりに大学関係の新しいビルが立ち並んでいます。
私の記憶から父の想い出の一つが消えて行きました。

私が中学高校と生活した街の写真を弟が2,3年前に送ってくれたことが有りました。
懐かしい教会や団地が今だ残っているとともに、あの頃住んでいた父の会社の
社宅が全く変わらず30年以上もあったことに驚きと深い郷愁を感じたものです。

そんな思いもあって、もし、父が現役でバリバリ働いていた会社の今の姿が見られたら
父の心を動かし元気になるのではと思ったのです。
でも、残念ながらその思いは遂げられませんでした。

今の時代、なかなか両親と一緒に住めない方々も多いと思います。
本当は一緒にいてあげるのが一番なのですが、その事すらできない今の生活に
いつまでも心の負い目を取り去る事が出来ない辛さを感じます。

両親の体調を考えると、これから先何度合う事が出来るか、
その限られた日々の少なさが痛い位わかります。
家族が一緒にいられる生活が一番理想かもしれませんが、
そんな私達に気を使ってくれる両親に答えられない現状に
自分たちの不甲斐なさを心苦しく思うばかりです。