誰もが年を重ねると、運動機能が衰え、それ相応の姿へと
変わっていくのですが、50を過ぎるとその個人差は著しくなります。
20代になると早くも体重増加に伴うプロポーションの変化に気が付き
年齢が増す事への不安と恐怖をいだく方も多くなるものです。
ところで、足腰の衰えが老化の赤信号と思い、下半身を鍛えるべく
様々な運動に取り組み始めるのが30代からでしょう。
毎日ウォーキングやジョギングで下半身をトレーニングする人、
ジムに通って衰えた筋肉を強化しようとする方々など
様々な方法で老いの恐怖から逃れようと努力します。
しかしながら、多くの方々の勘違いが、筋力を増すと若返り
運動機能も高まると思う事です。
私達は見た目を気にする為、運動能力のある人たちの
外見に囚われがちで、大きな筋肉、引き締まった身体があれば
若返り健康になると思ってしまうのです。
その為、少しでも筋肉を増すためにジムに通ったり、痩せる為に
走ったりするのですが、多少は見た目良くなったように思えるのですが
人から見ると、正直、差ほど若返ったようには見えないものです。
スポーツ選手をよく観察すればわかる事ですが、キャリアの長い選手は
若い選手に比べて、筋肉容量も多く、そこから繰り出されるパワーも強くて
見た目、断然優位の様に思えるのですが、いざ、戦ってみると
キャシャな若手の方が、はるかに運動能力に優れ、その結果
ベテランは引退していくのです。
皆さんの思う逞しさや、プロポーションが決して運動能力を決定するとは
言えないのです。
最近、メディアに取り上げられる、インナーマッスルのトレーニングが
老いも若きも大切と言えば、盛んに、その筋肉を鍛えようとする方々、
また、体幹が強くなるとスポーツや健康に役に立つという記事が載ると
ジムに行けば体幹トレーニングのメニューに没頭する人々、
本当に何をしたいのか解りません。
この手のトレーニングは何十年もメディアに取り上げられ、痩身法と共に
直ぐに忘れられていきます。
なぜ、単なる流行にしかならないのでしょう。
それは、トレーニングの目的と、その鍛える部分の役割が解っていないからです。
むやみに走ったり、筋肉を付けたりするトレーニングは、部分的な筋肉を鍛えたり
大きくしたりすることはできますが、人の身体は全身と繋がって用を成しています。
沢山の筋肉がバランスよく繋がる事によって大きなパフォーマンスができるのです。
そのパフォーマンスが様々なスポーツの種類となっているのです。
確かに、筋肉が強くなったり、体幹が安定すると、運動能力が増します。
でも、それが運動のスキル、つまり技術の上達とうまくは繋がらないのです。
つまり、ベテランのスポーツ選手の体幹やインナーマッスルの強さは
若い選手よりはるかに強いのですが、実際は、若い選手の方が力強く
しなやかな運動をするのです。
冷静に考えればわかる事ですが、人の身体は神経によって動かされています。
頭の先から足の先まで、目に見えない程びっしりと血管と神経に覆われています。
スポーツが上手な人、筋肉が力強く動かせる人は、この神経の繋がりが良いのです。
いくら身体を鍛えても繋がりが悪くては運動能力は低下していくのです。
老化とは、この繋がりが悪くなって、筋肉が上手く使えず、全身が衰えることです。
そして大切なことは、頭で考えた感じたことが、反射的に全身に伝えられることです。
筋肉だけが大きくて、運動能力に欠ける方々は、その見てくれの筋肉を
頭で格好よく動かすから、ぎくしゃくして、かえって見苦しいのです。
これ見よがしに身体を見せたり動かしたりする人達は、決まって運動能力が欠けています。
年を重ねて健康な身体を一生懸命アピールする人も、一生懸命身体に命令をして
動かしていますから不自然に見えるのです。
人の身体はいかに思ったら反射的に動けるかにかかっています。
特に下半身は反射的に動けないと身体は衰えていきます。
あらゆる地上のスポーツは、上半身の意思を反射的に下半身が動く事によって
成り立っています。
もちろん、ワールドカップのサッカー選手も素晴らしい上半身の運動に
下半身が反応して動いているのです。
一見何もしていない様に見える上半身の運動能力がサッカー選手の命です。
そして、その反射能力を掌るのが脊椎神経です。
私達が運動能力を高める一番のポイントが、脊椎が常に柔らかく上体のバランスを
保っているかと言うことです。
素晴らしいスポーツ選手の共通の姿は、上半身の姿勢の美しさです。
これは武道においても同じ事が言えます。
最高に運動機能を高め、運動能力を高める方法は、
実は美しい上半身を目指す事でもあるのです。
何をしても崩れない上半身のバランスをトレーニングしていくと
あらゆる体中の筋肉が無駄なく育ってきます。