ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

甲状腺にセシウムが蓄積する(追加の内容があります)

2011-07-16 | 放射能関連情報
 先ほどの投稿記事にも書きましたが、甲状腺にはヨウ素だけではなく、セシウムも甲状腺に蓄積することが分かりました。
 正直言って知りませんでしたし、ショックでした。私は甲状腺にはヨウ素しか蓄積しないと、思っていて、しかもベラルーシでは風土病として慢性的ヨウ素不足状態が続いており、それでSOS子ども村に行ったときにはいつも
「海草を食べよう!」
と保養家族のお母さんや子どもたちに話してきたのです。
 もちろんそれは無駄ではないし、これからも続けますが、甲状腺被曝に関してはヨウ素のことだけ考えてればいい、というものではなくなってしまいました。

 確かにねえ・・・おかしいと思っていたんですよ。
 ベラルーシでチェルノブイリ原発事故後、甲状腺の異常が増え、それが放射性ヨウ素被曝によるものであるというのは事実ですが、ヨウ素の半減期は8日間ですよ。
 事故から25年経っても、SOS子ども村で癌でなくても、甲状腺肥大のある子どもにたくさん出会ってきました。もちろん年齢から言って事故後に生まれた子どもばかりです。
 晩発性によるものなのか、親からの遺伝なのか? と思っていましたが、そうではなく、セシウムが蓄積したことによる異常だったのですね。

 私はこのブログにも書きましたが、日本はベラルーシと違ってヨウ素がたくさん含まれている食品が多くあるし、それをたくさん食べる食生活を送っていますから、ベラルーシのような甲状腺癌が今後増える、というようなことは日本ではないだろう、と思っていました。
 しかしヨウ素だけが甲状腺に蓄積するのではないとしたら、日本もベラルーシ同様、今後が心配です。
 どうか皆さん、被曝対策をしてください。特にお子さんの被曝をできるかぎり防いでください。
 

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 この記事と前の記事「内臓に蓄積するセシウム」でご紹介した内容について追加の情報です。
 個々の内臓のセシウム蓄積量について研究した元ゴメリ医大の学長バンダジェフスキー氏について、入学した学生からわいろをもらった罪により、投獄されていた(だから学長もやめさせられた。)ことがある人で、信用できないといった意見や、論文内容に不適切な部分がある、という人もいます。(以下の「buveryの日記」をご覧ください。)

http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110701


 しかし、こちらの木下黄太さんのブログをご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/2b356495a621a17046356b99b27142d2


 ここにコメント欄でこのように書き込んでいるアメリカ在住の医師、と言う方がいます。「buveryの日記」の中の内容を分析されています。
 長いので、こちらで一部だけご紹介しますが、ぜひともこの方のご意見を木下黄太さんのブログのほうで読んでください。

「バンダジェフスキー博士は、当時隠蔽されていた、内部被曝という情報を公にするために、研究をされたようです。その研究のためにゴメリ医科大学を設立されたそうです。 しかし、結果的に、恐らく真実を述べられていたがために投獄されたそうです。 そして、釈放された後、恐らく、健康を取り戻しながら、研究成果を出版されたのだろうと察します。
(中略)
 第一印象としては、その研究がされた背景を考慮し、現在私達が、セシウムはカリウムと似ていて、主に筋肉に集中する、と思っている事も考慮したら、画期的な情報だと言えると思います。 筋肉の細胞は、ナトリウムとカリウムのイオンポンプを用いています。 だから、筋肉中にはカリウムの分布が多いのです。 それが、他の臓器にも蓄積される、と言うのは、大変重要な情報です。

 批判されてるブログの方が、どういう素性の方なのか分かりませんが、おそらく、統計学にも詳しく、医学論文がどうあるべきか、と言うのを御存知なのだと思われます。 しかし、論文中の3つのデータの整合性がないと言われているのは、原文を読めば、3つのグループが明らかに別々のグループである、と言うのが分かるので、整合性を求める方が無理があるのでは?とも思います。例えば、最初のデータは、生後6ヶ月未満の乳児6人から。 2つ目のデータは、ゴメリ郊外に居住していた大人と子供から。3つ目のデータは、10歳未満の子供達51-52人。最初から、3つのデータを整合しようと書かれてないように思えます。

 この方のブログエントリーの提議は、「セシウムは甲状腺に集積して、甲状腺癌を引き起こすのか?」なので、その方が出された答えの、「ある程度は集積されるかもしれないが、極端に集積する訳ではない。 ただし、小児甲状腺癌は引き起こさない。」という結論は、それなりの答えになってるのだろうとは思います。(小児甲状腺癌のデータは、別の論文から得られてます。)

 (中略)
 一般的に、放射線被曝で癌になる、ならない、が良く話されているようですが、癌まで至らなくても起こる疾患が、山ほどあるのです。免疫力の低下によって起こる様々な不具合。 

(中略)
 例えば、甲状腺癌。 早期に発見されて癌摘出手術を受けたら、あとは甲状腺ホルモンを投与すればOK、と言う風に言われてますが、その診断に至るまで、どれほどの症状が出るのか、御存知ですか?
(中略)エネルギーがなくて、体がちゃんと動いてくれず、いつも疲れていて、普通の日常生活が送れないのです。
 被曝の症状は、甲状腺が大きく取り上げてられますが、それだけではありません。

(中略)
 それを、私達は、今までのデータや研究の隠蔽のせいで、知らないだけなのです。セシウムが筋肉だけでなくて他の臓器にも蓄積されると言うのは、非常に貴重な情報です。
 インターネットのおかげで情報の共有が簡単になったから、今回の福島原発事故からの影響は、こういう木下さんのブログなどのおかげで、隠蔽は困難だと思います。

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 引用は以上です。このアメリカの医師さんと私は全く同意見です。 
 甲状腺に放射性ヨウ素が蓄積すると癌になると言われていますが、みんながみんな癌になるわけではありません。
 また甲状腺にセシウムが蓄積すると癌になるのか? ときかれると「分かりません」と答えるしかない。しかし癌にならないのだったら、放射性セシウムが甲状腺にたまってもいいのか? ときかれると、やはり蓄積するより蓄積しないほうがいいに決まっています。
 だって、放射性物質ですよ。

 それからバンダジェフスキー氏の手紙が日本語に訳されています。ぜひご覧ください。

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/etc/RFERL/Banda-j.htm


 ベラルーシに住んでいる人間からすれば、バンダジェフスキー氏の投獄事件は裏が丸見えです。
 ベラルーシは経済状態がずっと低迷し続けており、チェルノブイリ関係の国家予算を減らしたくて
「事故からこんなに時間が経ったのだから、もう大丈夫。汚染地域にみんな住めますし、元気に暮らしています。」
と強調しています。
 そこへバンダジェフスキー氏が「低レベルの被曝でも健康に影響が出る。」と警告したわけです。
 ベラルーシ政府からすれば「寝た子を起こすな」でしょう。
 アムネスティーが良心の囚人としてバンダジェフスキー氏の釈放を求めたのもうなづけます。
  

内臓に蓄積するセシウム

2011-07-16 | 放射能関連情報
 セシウムについてですが、ICRP(国際放射線防護委員会)等は筋肉など全身に分布する、としており、日本の学者にも同意見の人がいます。
 しかし、ベラルーシの研究では「セシウムは全身の筋肉に平均して分布(蓄積)するのではなく、内臓に多く蓄積する。特に心臓、腎臓、肝臓に多く蓄積する。」
とされています。
 このことについてもう少し詳しくご紹介したいと思います。(気が滅入るのですが・・・。)

 もともとどの内臓にセシウムが蓄積するのかを測定するのはとても難しいものです。それを測る特別なホールボディカウンタがありますが、ベラルーシには1台もありません。ウクライナにはあるそうです。
 しかしこれは精巧な測定ができるものではありません。だいたい
「胸部には○○ベクレル」「腹部には○○ベクレル」という結果しか出せません。
 つまりそれを使って測定したとしても、特に腹部には内臓がいくつもあるので、腹部にあるどの内蔵に具体的にどれぐらいのセシウムが蓄積しているのかまで分からないのです。

 動物(ラット)に放射線をあてたエサを与え続け、それから解剖して内臓の中のセシウムを測定する実験も行われましたが、同じことを人間でするのは人道上問題があります。
(この実験の結果でもラットでは心臓が最高のセシウム濃度で、最小のセシウム濃度は骨と筋肉組織に見られたそうです。これは以下に述べる「人体に入った放射性セシウムの医学的影響」という著書からの引用です。)
 
 しかしベラルーシのゴメリ医大では内臓に蓄積されたセシウム137をかなり正確に測定することができました。
 それは、ゴメリ市で病死した人(大人も子どもも含む)を解剖して、内臓をそれぞれ取り出してから、個々に測定し1キロ当たりのベクレルを計算して、また内蔵を元の場所に戻し、縫い合わせて遺族に返す、ということを行ったからです。

 1997年に死亡した大人と子どもの内臓のセシウム137の分布については元ゴメリ医大の学長だったバンダジェフスキー氏が発表した「人体に入った放射性セシウムの医学的影響」という著書(日本語に訳されています。)で、発表されています。
 それによると、大人は比較的平均してセシウムが内臓に分布するのですが、子どもはとびぬけて甲状腺に高い値のセシウムが蓄積しています。1キロあたり1200ベクレルです。大人では約400ベクレルです。
 
 このほか大人は蓄積が少ないのに、子どもは多い、という内臓は心筋(大人約150ベクレル、子ども約600ベクレル)、小腸(大人300ベクレル弱、子どもは700ベクレル弱)です。

 このほか、心臓や血管の病気で死亡した人の心筋と、消化器官の病気で死亡した人の心筋を比べると、前者のほうが多くのセシウム137の蓄積が見られました。

 伝染病で死亡した人と、血管と消化器官の病気(主に胃と十二指腸の潰瘍)で死亡した人の肝臓、胃、小腸、すい臓と比べると、前者のほうが多くのセシウム137の蓄積が見られました。

 このような病死者の死体解剖による個別の内臓のセシウム測定は、世界的にも珍しいです。
 検体になりうる人がたくさんいたベラルーシだからできたことではないでしょうか。

 しかし、私はこの記事を書いていると気が滅入ってくるのです。
 将来、医学や科学のために、あるいは後世の人のための情報として、有益な情報だと思ってこのような測定が行われたのは理解できますし、貴重なデータを大切にしたいと思います。
 しかし、今後日本で同様の研究を医学や科学や後世の人のために行うとすると・・・どうでしょうか?
 被曝した日本人が亡くなられた後に検体になってしまうのでしょうか。
 大規模な原発事故が起きてしまったのですから、日本でも検体になりうる方が増えてくる、ということです。
 科学のため、後世の人のため、と割り切ることができれば、自分の体を死後、研究のために差し出す人も出てくるでしょう。そのデータが、やがて生かされ、世界にも発信され、今皆さんが「ベラルーシの場合はこうだったのだな。」と思いながらこの記事を読まれているように、やがて世界の人が「日本の場合はこうだったのだな。」と読まれるようになるのか・・・と思います。
 医学の進歩は必要、しかし・・・と私は思ってしまいます。 
  
 日本では今後どうなるのか分かりません。
 とにかく以前ベラルーシで内臓のセシウム測定のため解剖された人たちがいた、その中には子どもも含まれていた、ということを忘れてほしくないです・・・。
 鎮魂と言う言葉が胸の中に浮かびます。
 この測定実験の検体となった方々の魂にお祈りしたいです。

ドイツ女医のインタビュー

2011-07-16 | 放射能関連情報
 木下黄太さんのブログ「福島第一原発を考えます」内で
「必読! 低線量被曝による「脳障害」「不妊」「糖尿病」などを警告するドイツ女医のインタビュー」
 という記事が公開されています。こちらをご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/2f7dbec88afae5b028b4215c0e4f278f


 ドイツ国営放送ARDのニュース番組、TagesschauのHPにチェルノブイリ被害者救済活動を続けるドイツ人女医、デルテ・ジーデンドルフ氏へのインタビュー記事が掲載されており、それを「福島第一原発を考えます」グループで、メンバーのドイツ在住の女性翻訳家の方が日本語に訳してくださったものです。
 翻訳していただき、本当にありがたいことです。

 この女医さんは1990年からベラルーシで医療支援活動をしている方です。
 ベラルーシでの事故後から今までの状況や、現在の状況などがよく分かります。
 私としては特に、糖尿病についてのお話の部分を興味深く読ませていただきました。チロ基金もゴメリ州モズィリ市に住む糖尿病児童への支援活動を行っていますので・・・。
 「糖尿病はチェルノブイリ事故の後、子ども達の間に急激に増加した病気の一つで、新生児でも糖尿病を発症するケースがあります。」
 という言葉にああやっぱり、と思いました。ベラルーシの糖尿病児童協会の方が話されていたことと全く同じなのです。
 大変勉強になりました。
 でもやっぱり、日本でこれから糖尿病(I型のほうです)の子どもが増えていくのだろうか・・・と考えると暗い気持ちになりました。
 そうならないように、どうか日本人の皆様、本当に放射能に気をつけてください。
 

 

日本の雑誌で紹介されました

2011-07-15 | 放射能関連情報
 光文社の雑誌「女性自身」の7月12日(火)発売号に折り込み冊子による、保存版「放射能に克つ食生活」が掲載されました。
 再び記者の方からインタビューを受けたのですが、
「夏休みに親子で読める特別企画にしたい。」
ということでした。
 あまり幼いお子さんだと、放射能の話は難しすぎるかと思いますが、ある程度大きいお子さんの場合、親子で放射能対策のことを話し合ってみたり、いっしょに楽しくご飯作りしたりするのも、大事かと思います。
 お母さんたちが、放射能について「どうしたら分からない。」と不安ばかり感じていると、どうしてもお子さんにそれが伝わります。そうではなく、楽しく食卓を囲んで
「こうすれば大丈夫なのよ。ベラルーシではこうしているのよ。」
とお母さんたちからご家族に話してあげてほしいです。
  

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 光文社の雑誌「女性自身」の6月7日(火)発売号にインタビューの内容が掲載されました。
 記事のタイトルは「必読! 被爆を防ぐ食ニュース」です。
 記事を担当された記者の方は、もっとたくさんのページをさいて詳しい記事にしたかった、とメールをくださいました。
 しかし、これでこのテーマが日本人にとって終わりなのかと言えばそうではありません。
 ベラルーシなど、25年経っても放射能とともにみんな生きています。きっと今回の取材は全部無駄ではないですよ!
 またテーマに取り上げてください。お願いします。最初の一歩が大事ですよね。 

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 朝日新聞出版の週刊誌「AERA」6月6日発売号にて、食物からできるだけ放射性物質を除去するための調理法について特集が組まれました。
 興味のある方はぜひ手にとってみてください。
 HPベラルーシの部屋管理人さばさんから
「Tさんの名前がAERAに載っていてうれしかった。」
とメールがきました。
 そうか、そんなにうれしいものなのか、よし、じゃあ次回はAERAの表紙の顔に選ばれるようがんばります!(苦笑)(^^;)

 ここから先は追加の内容です。この「AERA」を読みたいと図書館で探したけれど、見つからなかったという方からメールをいただきました。
 これは6月6日に発売されましたが、「6月13日号 No.28」のことです。(表紙は歌手の平井堅です。)
 表紙に「放射能とがん」とあり、表紙上部に「特集 放射能抜き調理法」とあります。
 
 
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 ベジタリアンのための情報雑誌「ベジィ・ステディ・ゴー!」を出版されているキラジェンヌ株式会社から
「緊急出版第2弾 放射能から子どもを守る」
という本が5月31日に発売されました。
 その中にベラルーシの部屋ブログでもご紹介した、食品から放射能を減らす調理方法が掲載されています。
 HPはこちらです。ぜひぜひ、読んでください!

http://www.veggy.jp/

 
 食生活は本当に大切です。
 この本の内容が読者の皆さんのお役に立てることを願っています。

(追記)
 この雑誌54ページに
「(Tが)真っ先にベルラド研究所によるデータの一部・・・を翻訳してくれました。尚、ロシアと日本は風土が違うので、今回は参考になる部分だけを抜粋しました。」
とありますが、ロシアではなくベラルーシです。

 他にも「チェルノブイリでは、・・・ネステレンコ博士が長年の研究によりリンゴペクチンの摂取でセシウム137を排出しやすくなることを発見し・・・」とありますが、発見したのはこのネステレンコ教授(ベルラド研究所前所長)ではありません。
 その下に記載されているサラダにかけるオイルについても、私がブログでご紹介したこととは異なる内容になっています。
 ココアについても、編集部の方からと思われるアドバイスが追加されていますが、これについては弊ブログではご紹介していません。

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 他にも雑誌ではないのですが、ベルラド研究所の所長さんの論文を日本語に訳した日本人の方が
「ベラルーシ市」「ウクライナ市」
と翻訳していて、びっくり仰天してしまいました。
 日本のみなさーん、ベラルーシはロシアにある町の名前ではありませんよー。
 ベラルーシもウクライナも国名です。
 

先ほどの画像のフランス語訳とまとめ

2011-07-14 | 放射能関連情報
 画像はベラルーシ保健省が発表したビタペクトの効果についての証明書(1ページ目)のフランス語訳です。
 他にも証明書を発行するために第3者機関が参加して、ビタペクトのことを調べた、とあります。
 第3者機関というのは、ロシア、ウクライナ、スイス、ベラルーシの複数の関係機関です。
 2ページ目以降には署名がたくさん入っています。
 ベラルーシ保健省の副首相の署名、ウクライナ科学アカデミー内の放射線医学研究センター所長、ベラルーシ食品安全鑑定評価センター副所長、ロシア環境政治学センター所長(有名なチェルノブイリ学者のヤコブレフさんですね。今回の福島第1原発事故についても今後日本人がとるべき対策についてすばらしい提言をされています。)が、ビタペクトの効果を証明し、汚染地域で活用することを勧める署名が入っています。
 またスイスのバーゼル大学熱帯医学部のミシェル・フェルネ教授がベラルーシ非常事態省の副首相にビタペクトを使用するよう推薦する文章を送っています。

 このようなわけで、ベラルーシのベルラド研究所が製造しているビタペクトは第3者研究機関からも、ベラルーシ政府からも有効である、と認められているわけです。だから薬局で販売もできるわけですし、保養所で子どもたちに飲ませています。

 たくさん投稿しましたが、日本人の皆様の疑惑が解消すれば幸いです。
 ベルラド研究所はビタペクト批判に対して
「英語だけではなく、フランス語やドイツ語の文献も読んでください。」
と話していました。
 確かにスピルリナの件では「『健康食品で解毒』を信じてはいけない」の記事によれば「スピルリナ効果は論文がない」「Pubmed(米国国立医学図書館が運営する医学論文のデータベース)でSpirulina(スピルリナ)とChernobyl(チェルノブイリ)という2つのキーワードで検索したが、該当する論文が出てこない。ほかのキーワードをいろいろと組み合わせて探したが、わからない。」
 と検索をされていますが、これだと英語に訳された論文しかヒットしないでしょう。
 今の科学者の間の常識では「論文は全て英語で書かれているべき。」なのかもしれません。
 しかし、英語で翻訳されていない論文が全て科学的に間違っているとか、真実味が乏しいとか、とういったことはないと思います。
 英語に翻訳されいなくても、誰かのために役立つことが書いている場合もあると思います。
 またネット検索して、ヒットするものだけがこの世に存在しているように思わないほうがいいと思います。(論文に限らず・・・。)
 
 私は一部ですがベルラド研究所発行の本「自分と子どもを放射能から守るには」をロシア語から日本語に翻訳して、このブログで公開しています。
 これもちょっと前までは日本人にとって存在していなかった本、ということになるのでしょうか?
「これを日本人のために日本語に訳してください。」
とベルラドの副所長さんが渡してくれたときにこんな話を聞きました。
「以前、この本の英語版はないのかとイギリス人にきかれて、ありませんと答えたら、どうして? と言われた。」
それで
「この本に書いてあることが必要なのはチェルノブイリの人たちだけですよ。英語圏の人には役立たない情報です。訳しても誰が読むでしょうか? だから英語版はないのです。」
と説明したそうです。
 そんな本が福島第1原発の事故が起きたとたん、日本人に必要な本になってしまいました。

 

ウクライナからベラルーシへ

2011-07-14 | 放射能関連情報
 ウクライナ保健省で認可を受けたヤブロペクトは同じ年の1997年にベラルーシ保健省からも認可を得ました。
 つまりウクライナからベラルーシへヤブロペクトを輸入して、摂取することが認められたのです。
 ベルラド研究所もまずヤブロペクトを使って実験を行いました。1997年にドイツのテレビ局が製作したドキュメント映画作品には、チェルノブイリ・ゾーンで
「これを飲むことをお勧めします。」
とヤブロペクトを住民に見せているベルラド研究所の初代所長の姿が写っています。

 しかしベルラド研究所はその後、独自のペクチン剤「ビタペクト」を製造することにしました。
 これは2000年にベラルーシ保健省より、効果が認められ、許可が出されました。
 画像はベラルーシ保健省が発表したビタペクトの効果についての証明書(1ページ目)です。


 

先ほどの画像のフランス語訳です

2011-07-14 | 放射能関連情報
 これも先ほどのロシア製のペクチン剤「ゾステリン・ウルトラ」についての証明書のフランス語訳です。

ウクライナからロシアへ

2011-07-13 | 放射能関連情報
 ウクライナのペクチン研究の成果は、その後ロシア、ベラルーシへと広がりました。
 例えばロシアではアクヴァミルという会社が「ゾステリン・ウルトラ」というペクチン剤を製造し、現在も販売しています。
 この会社についてはHPが最近できたようなので、興味のある方はご覧ください。英語バージョンもあります。

http://www.zosterin.spb.ru/index.html


 このHPによると「プルトニウムも1.5倍から2倍排出する」とあって、すごいと思いました。
 しかしこのプルトニウム排出のことも、ちゃんと2005年にベルラド研究所が発表した「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」に載っています。画像をご覧ください。
 こちらもロシア保健省が有効であると認めています。
 
 とにかくベルラド研究所だけが「ペクチンが放射能排出作用がある。」と言っているわけではない、ということが分かっていただければ、と思います。
 
 
 

先ほどの画像のフランス語訳です

2011-07-13 | 放射能関連情報
 先ほどの投稿記事のロシア語版のフランス語訳です。ただ、少し該当箇所がずれています。
 私はフランス語がわからないのですが、ちょっとずれている(ロシア語版より、フランス語版のほうが内容が先に進んでいます。)のは分かりました。
 でも大事な情報が載っている箇所は両方の画像に載っています。

ペクチンが体内の放射能を排出するメカニズムについて(ロシア語)

2011-07-13 | 放射能関連情報
 こちらの画像がウクライナ保健省が発表したペクチンが体内の放射能を排出するメカニズムについてロシア語で説明している部分です。
 2005年にベルラド研究所が発表した「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」という論文のうち、14ページにあたる部分です。
 画像をクリックすると拡大します。

 ここではペクチン剤が胃の中で放射性物質を吸収すること、大腸においても直腸にいたるまで、作用が残ること、吸収されたペクチンは血液の中へ移動し、内臓中のセシウムと結合し尿といっしょに体外へ排出される作用のことが書かれています。

 これもフランス語訳がありますので、読める方は次の投稿記事をご覧ください。(ちなみに私はフランス語は分かりません。)

 

フランス語版です

2011-07-13 | 放射能関連情報
 先ほど投稿した記事の画像のフランス語版です。
 残念ながら英語版はないそうです。
 ロシア語は分からないけど、フランス語は分かる、と言う方、読んでみてください。
 画像をクリックすると拡大します。

ペクチンの効果を発見・実証したウクライナ

2011-07-13 | 放射能関連情報
 そもそもペクチン剤が体内の放射能を体外に排出する働きがあることを、最初に正式に証明し、商品化したのはベラルーシ人ではなく、ウクライナ人でした。
 もともとソ連では1950年代末からペクチンの放射能排出作用について研究が始まっていたそうです。

 チェルノブイリ原発事故が起こってから、11年後の1997年にはすでに「ヤブロペクト」というアップルペクチンが開発され、商品化されました。その前にヤブロペクトが放射性物質のほか有害な物質(鉛など)も排出する作用があるということが、ウクライナ保健省から認められました。
 ちなみにヤブロペクトのヤブロ、とはリンゴのことを意味します。つまりアップルペクチン、をロシア語で言うのを縮めた言い方です。

 画像はウクライナ保健省がヤブロペクトについて認可したときの書類をコピーしたものです。(画像をクリックすると拡大します。)
 これが2005年にベルラド研究所が発表した「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」の初めのほうに引用されています。
 これがないと、ベルラド研究所も前に進めませんからね。(ビタペクトはヤブロペクトをさらに改良したものですから。)

 画像は最初の1枚だけですが、全部で3ページにわたり、ウクライナ保健省の公印も押してありますし、認可するに当たり、効果を調査した保健省下の研究機関であるウクライナ学術調査医薬品研究所のメンバーの方々の氏名と署名が13名分記載されています。

 しかしこの画像
「ロシア語だから分からない。Tは嘘をついているのではないか?」
と思う人もいるでしょう。
 この書類はフランス語版もありますので、次の記事をご覧ください。
 
 

ペクチンが体内の放射能を排出するメカニズム

2011-07-13 | 放射能関連情報
 ペクチンは放射能排出効果がない、と紹介している日本人のライターさんの記事についてベルラド研究所に問い合わせました。
 この記事の中で

 (フランスの研究所)IRSNは、この2004年の研究以外の(ベルラド研究所の)ペクチン研究も含めて評価し、現状ではペクチンが放射性物質の除去に役立つとする根拠がないことを示し、必要な試験等を懇切丁寧に提言している。
 だが、提言に沿う実験が行われ発表された気配はない。」

 ・・・とあるのですが、ベルラド研究所はどう思いますか? これだけ読むと日本人読者は
「せっかくフランス人が懇切丁寧に提言してあげているのに、耳を貸さないとはベルラド研究所は不真面目な研究所だ。」
と思ってしまうでしょうね。
 と私が言うと、ベルラド側からは
「フランスのIRSNが、私たちに提言? 聞いたことないです。」
という返事でした。
 がくっとなりましたよ。要するにフランスはアドバイスしてあげたけど、それをベラルーシ側は全く知らなかった、ということです。
「そのフランスからの提言、というのはどうやったら読めるんですか?」
と日本人の私に尋ねてきたので、リンク先を教えてあげました。今読んでいると思います。 

 さて、ペクチンが体内の放射能(セシウム)を排出するメカニズムについてベルラド研究所から資料をお借りしました。
 画像はその資料の表紙です。
 この資料は2005年にベルラド研究所が発表したものです。「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」という題名です。
 この資料の内容はもう少し詳しくご紹介しますが、ここで分かりやすくペクチンが体内の放射能を排出するメカニズムについてご説明します。

 まずペクチン剤を摂取すると、胃の中に入ります。放射性物質を含んだ食品が胃の中にあった場合、ペクチンは放射性物質を吸着させます。それはセシウムが陽イオンを持っており、ペクチンが陰イオンをもっているために、磁石のようにお互いがくっつくからです。
 さらにペクチンの作用は大腸の中でも続き、直腸まで続きます。 
 こうしてセシウムはペクチンといっしょに大便として、体外に排出されます。
 陽イオンとか陰イオンとは何だろう? と思った人もいると思いますが、化学記号の右にプラスとかマイナスとか書いてあるのを見たことがあると思います。
 Na+ こういうのや、NO3− こういうのです。このプラスが陽イオンで、マイナスが陰イオンです。

 もう一つの排出する方法ですが、まず
「セシウムについて、ICRP(国際放射線防護委員会)等は筋肉など全身に分布する、としている。」
 という前提についてです。
 チェルノブイリ原発事故の後、学者の予想としてはセシウムは筋肉に蓄積するから、そのうち筋肉に癌(肉腫)ができた、という患者が大量発生するだろう、と言われていました。
 しかし実際には筋肉の癌について発生件数は特に増えず、過去の予想が外れた、ということになっています。
 さらにベラルーシの研究では
「セシウムは全身の筋肉に平均して分布(蓄積)するのではなく、内臓に多く蓄積する。特に心臓、腎臓、肝臓に多く蓄積する。」
とされています。
(この研究については別記事で投稿します。)

 セシウムの蓄積一つをとっても、専門家で意見が分かれるところです。
 ここでは後者のベラルーシの研究結果を前提として考えます。 
 ペクチンは腸粘膜から吸収され、血液の中へ移動します。そして心臓、腎臓、肝臓などの内臓に到達します。そこでもペクチンがセシウムと結合します。
 最後には腎臓に集まり、尿といっしょに体外へ排出されます。

 ベルラド研究所では
「このようなメカニズムなので、ペクチン剤を飲んでいる人は水分もたくさんとって、おしっこの回数を増やしてください。そのほうがさらに効果があります。」
というアドバイスも受けました。

 
 

SOS子ども村の医師からペクチンについて意見

2011-07-13 | 放射能関連情報
 チロ基金はSOS子ども村で保養滞在している子どもたちにペクチン剤であるビタペクトを2002年から配り続けています。
 これも私からSOS子ども村に
「知ってましたか? ベラルーシにはこんなすばらしいペクチン剤があるんですよ。子どもたちに飲ませましょうよ。」
と勧めたわけではありません。
 もともと2002年より前からSOS子ども村ではビタペクトを保養滞在の子どもに飲ませていました。その予算はSOS子ども村の本部があるオーストリアから出ていたわけです。
 しかし、チロ基金からビタペクトをあげることができますよ、と申し出たところ、
「ありがたい。そうなるとビタペクトを購入していた予算で、ビタミン剤やフルーツジュースを購入することができます。」
というお返事をいただき、SOS子ども村は、それまでビタペクトに充てていた予算をビタミンなどに回すことができるようになったのです。
 つまりSOS子ども村はずっと前から、ペクチン剤が放射能の排出に効果があるということで、それを採用していたし、続けてもいる、ということです。
 
 私は「アップルペクチンはこてんぱん」の記事を読んで、SOS子どもで働く医師、リリヤ先生に
「こういう記事を書いている人が日本にいるんですけど・・・。」
と話してみました。するとリリヤ先生は何と言ったと思います?
「ああ、そのライターさん、買収されたのね。」
・・・。(私はそんなふうには思いませんが・・・。)
 
 リリヤ先生の意見をベラルーシで働く一人の医者として、さらに15年もチェルノブイリの子どもたちの保養滞在を支えてきた人としてご紹介します。
「そんなにアップルペクチンが効果がない、というのなら、どうしてベラルーシやウクライナでペクチン剤が放射能排出の方法として採用されているのでしょうか?」
 このブログでもご紹介しましたが低線量放射線障害「環境不適応症候群」

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/6a265307fac3231c6bb956355c0382f2


 この障害について解決方法を記してある「ベラルーシの児童における環境不適応症候群とその改善法」はベラルーシ保健省と放射線医療・内分泌学学術診療研究所が作成したものです。表紙にはベラルーシ保健省の公印が押してあります。(表紙の画像は上記リンク先を参照してください。)
 この本の中でも「環境不適応症候群とその改善法」として

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/95333e3d4ec7d1ead056b0cda97793cc

 
 ペクチン剤を摂ることを勧めています。
 ペクチン剤がそんなに効果がないのなら、ベラルーシ保健省はベラルーシ国民に低線量放射線障害の対策方法としてペクチンを勧めているのでしょうか?
 何の根拠もなく、ペクチンを勧めているのでしょうか?
 それともベラルーシ保健省は嘘つきなのでしょうか?

 またリリヤ先生は
「ペクチン剤が有効だと主張しているのはベルラド研究所だけではない。ヨーロッパの他の国の団体からも信頼がある。」
ろ話しています。
 例えば「そのほかのサプリメントについて 「スピルリナ」」でも内容を一部ご紹介していますが

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/a565b76e12b06886bc2e835f41298f50


 「住民を放射能から守る方法と助言、その効果」という本があります。表紙は画像をご覧ください。
 ベルラド研究所が2001年に発表した本で執筆者は前所長のワシーリイ・ネステレンコさんです。
 この本にはこのような実験結果が載っています。

 2000年5月から9月にかけて、イギリスのチェルノブイリ支援団体「チェルノブイリ・チルドレン・ライフ・ライン」とベラルーシ国家非常事態省内にある国際レスキュー協会、ベルラド研究所が共同で行った実験です。
 1215人のベラルーシの子どもがイギリスへ保養滞在に行く前に、体内放放射能値を測定しました。
 出発の際にはビタペクトを持たせ、イギリスで保養滞在中に摂取しましたた。(滞在の期間や場所は保養グループによっていろいろです。)
 このうち1137人の子どもがベラルーシへ帰国した後、体内放射能値を再測定できました。保養前の測定結果と比べると、平均して65.4%のセシウム137が減っていました。
 非汚染地域での保養滞在とペクチン剤の摂取を平行するとさらに放射能の排出効果がある、と本書では結論づけています。

 このイギリスの支援団体の活動は2000年で一回やってみて終わり、ではなくその後も継続しています。
 ペクチン剤が全く効き目がないなら、イギリスの団体はこのような支援活動をどうして続けているのでしょうか?

 このほかリリヤ先生のお話によると
「ゴメリ州に『セレブリャヌィエ・クリューチ』(翻訳すると「銀の鍵」と言う名称。)という国立の子ども保養所があります。これは保養所の中でも特別で、チェルノブイリ・ゾーンに住む子どもたちの中でも体内放射能測定の結果が、体重1キロあたり数百ベクレルから数千ベクレルだったという、特に被爆が高い子どもが優先して保養滞在しています。この保養所でも子どもたちにビタペクトを飲ませています。
 そのほかのベラルーシ国内の国立保養所でも、保養滞在中の子どもたちにビタペクトを飲むのを採用しているところがたくさんあります。
 ペクチンがそんなに効かないなら、どうして国は子どもたちに保養所でビタペクトを飲ませているのでしょう? 根拠もなしにそんなことするわけがありません。全く無効なら、ペクチン剤の購入にかける予算をわざわざ出さないでしょう。」
 ・・・ということでした。

 いろいろ書きましたが、ベラルーシで働く一人の医者の意見としてお読みください。
 松永さんの記事を読んで
「えっ! 私、今ペクチンサプリ飲んでいるんだけど?! 効かないの?!」
とびっくりしたり、がっかりした人もいると思います。
 松永さんの意見やフランスの研究所の意見は意見として尊重します。
 私の意見は
「ペクチン剤を飲むのは決して無意味ではない。チロ基金の活動から得た経験では効果がある。」
です。
 ベラルーシの国も効果があるとして自国民に奨励している、ということです。 

 最後にリリヤ先生から日本人にメッセージです。
「放射能排出方法にはさまざまな方法があります。しかし、できるだけ早く効能を見極めて、取捨選択をして絞り込み、これが有効だ、と思われる方法を早い時期に始めることが、日本人にとって『近道』になると思います。」

ベルラド研究所について

2011-07-13 | 放射能関連情報
 先ほどの投稿記事でご紹介した松永さんの記事内で、ベルラド研究所のことを民間組織でビタペクトを販売している、と紹介しています。
 つまり、ベルラド研究所は民間組織でビタペクトを販売し、売上金を得るためにビタペクトを販売し、売り上げを上げるためにペクチンが放射能排出に効くという論文を発表しているのだ・・・とも読み取れます。

 私はこれに反論したいです。民間組織イコール利益を求める企業で、その商品を誇大広告する、とは限りません。さらに国立国営の研究所イコール利益を求めていないから、真実だけを話している、とも言えません。

 ベルラド研究所は非国立の研究所です。これはベラルーシでは非常に珍しいです。ベラルーシは研究所に限らず、国立国営がほとんどです。公務員率も高いです。(アイドル歌手すら公務員扱いですよ。) 

 ベルラド放射能安全研究所の公式サイトはこちらなのですが、英語版はあっても日本語版はありませんので、私から簡単にご紹介します。

http://www.belrad-institute.org/


 1990年に非国立系の研究所として西ヨーロッパからの支援を受けながら、ワシーリイ・ネステレンコ教授によって設立されました。
 ネステレンコ教授はチェルノブイリ原発事故が起きた当時はベラルーシ科学アカデミー核エネルギー研究所の所長をしていました。
 事故当時の自分の体験を「チェルノブイリの祈り」という証言集の中で話しています。(スベトラーナ・アレクシエービッチ著。この本は日本語訳され、岩波書店から出版されています。ネステレンコ教授はこの中で何度も「事実をお話したい。事実のみです。」「事実が必要になるのです。」と繰り返しています。)
 この本の中でも証言しているように、核エネルギー研究所が事故の実態調査をしようとすると、圧力がかけられ脅迫を受け、研究所の放射線モニタリング装置が没収された・・・そうです。

 現在でもそうですが、国立の研究所だと、どうしても政府の意向が無理やり通されてしまいます。これについては後で書きますが、結局自由な研究をするには国立の研究所では無理があると感じて、自分たちの手で研究所を設立したと思われます。
 ちなみにベルラドとはBELRADで、BELはベラルーシのこと、RADは放射能のことをさします。名称は国立っぽいですが、国立の研究所ではありません。

 研究テーマは、土壌・水質汚染の測定、食品の測定、人体の測定ですが、その後2000年からは測定と平行してペクチン剤であるビタペクトを開発・製造・販売しています。
 私が代表を勤めるチロ基金は2002年から、日本人協力者の方々からの寄付金でビタペクトを購入し、体内被曝が体重1キロあたり20ベクレル以上だったベラルーシの子どもに無償で配る活動をしています。
 子どもたちの測定費用はSOS子ども村といういわゆる孤児施設(本部はオーストリア)が出しており、そのSOS子ども村内にある保養施設で滞在している、多子家庭の子供が対象になっています。
 このようなベルラド研究所、SOS子ども村、チロ基金という協力関係の中で支援活動をしているのですが、他の日本の団体(ボランティアや大学の研究機関)もベルラド研究所と関係があります。
 チロ基金だけではなく日本の他のボランティア団体もビタペクトを購入し、チェルノブイリの子どもたちにあげています。

 ベルラド研究所は非国立なので国から予算が下りず、経営的には大変だと思います。しかし、日本以外にもアイルランド、イギリス、オーストリア、ドイツ、ベルギー、スイス、イタリア、ノルウェー、アメリカなどの団体から支援を受けています。
 また、ビタペクトを販売して現金収入を得て、研究資金を継続している状態です。
 しかしベルラド研究所がビタペクトを販売して、大もうけをしているとはとても思えません。
 ベラルーシ政府が測定をちゃんとしてくれないので、マイクロバスにホールボディカウンタを載せて、汚染地域の学校へ測定の巡回に行っています。
 それはベルラドが「研究所」であって、「測定代行企業」とか「健康食品販売会社」ではないからです。
 子どもたちを測定するのは研究データを集めるためです。研究所だから当然です。データ提供協力のお礼として、体内放射能値が多かった子どもにはビタペクトをベルラド研究所から無料で渡しています。
 さらにパンフレット「自分と子どもを放射能から守るには」を保護者に無料で渡しています。

 もしベルラド研究所が利益のみ追求している企業なら、ただで子どもにビタペクトを配ったりしないでしょう。チロ基金などがビタペクトを購入している数より、子どもにただであげている数のほうがずっと多いからです。
 大体汚染地域に住む子どもや保護者に「被曝してるんだからビタペクト買って飲め。」と言うのも、酷でしょう。もちろん測定代もベルラド研究所側が負担しています。
 一方で製造したビタペクトの一部は、汚染地域で測定対象になっていないけれど、飲みたいと言う希望者もいるわけですから、そういう人向けに、有料で販売している、ということです。
 それにしても1個300円程度に価格を抑えていますから、良心的です。
 チロ基金もごくごくわずかながら、ビタペクトを購入しベルラド研究所を支えています。この研究所がもしなくなると、ベラルーシでのチェルノブイリ研究は大きく衰退してしまうでしょう。福島の原発で大事故が起きてしまった日本人としてはとても困ります。ベルラド研究所に教えてほしいことが、これからたくさん出てくると思います。
 
 それと間違われるのですが、ペクチンに放射能排出作用があると最初に発表したのはベルラド研究所でも、ベラルーシ人でもありません。ウクライナ研究者からの研究発表によるものです。
 ウクライナはビタペクトより先にヤブロペクトというペクチン剤を作りましたが、ベルラド研究所はドイツの研究機関と共同開発して、ペクチンにビタミン剤を加えたビタペクトを開発しました。
 しかもできるだけ安く、多くの人に飲んでほしい(富裕層だけが飲めるサプリになってほしくなかった)という希望もあって、ベラルーシでたくさん取れるリンゴをペクチンの材料に使っているのです。

 それからペクチンが放射能の排出に有効であることはベルラド研究所だけが言っているのではなく、ベラルーシ保健省、国立の放射線医療・内分泌学学術診療研究所なども、放射能汚染地域の住民に勧めています。(これについてはまた別の記事で、ご紹介します。)
 そんなにペクチンに効き目がないのなら、どうして多くの外国の団体がベルラド研究所を支援しているのでしょうか?
 それは今では非国立のベルラド研究所の存在が貴重なものになっているからです。

 ベラルーシの国立の研究所はどうなったかというと、瀕死状態です。
 何と言ってもベラルーシ政府は経済状況がよくありませんから、チェルノブイリ被災者への福祉政策を縮小したいし、研究所への予算も減らしたいわけです。事故後何十年と経っても国立研究所が
「事故の影響は続いています。深刻です。」
とデータを発表すると政府としては無視できません。なので、国立の研究所への予算をどんどん削っていきました。
 チェルノブイリ問題を環境問題と言う枠組みで扱う学問領域もありますが、国立大学の中の環境学としてのチェルノブイリ関係の研究テーマとする学科は、どんどん人員を減らされています。(募集学生数も、教員数も。)
 こうして研究者たちは予算が削られて、思うように研究ができなくなっていきました。
 ですから最近は詳しいデータが国立の研究所から発表されなくなってきています。 (このブログでご紹介した汚染地図も2004年度版で止まったままです。)
 
 数年前ベラルーシ政府は「国内にあるチェルノブイリ関係の国立研究所は全てゴメリ市に移転すること。移転しない場合は閉鎖する。」という命令を出しました。
 つまり研究機関を汚染地域にある都市、ゴメリ一箇所に集めて効率化を図ろう、という考えです。ところが研究所はミンスクに多くあり、その職員は全員ゴメリに引越ししないといけなくなりました。
 その際の職員の住居は政府が用意するのではなく、個人で準備すること、あるいは研究所が探すこと! になったので大混乱となりました。
 例えば国立の放射線生物学研究所はミンスク市内にあったのですが、職員200人の多くがゴメリへの引越しを拒否。(住むところがないんですから。日本のような単身赴任という考え方もベラルーシにはあまりありません。)
 研究所は結局ゴメリに移転し、今も継続していますが、移転したときゴメリへ引っ越していったのは職員のうち30人だけでした。
 このような状態ではちゃんとした研究が以前と同じようにはできないでしょう。
 実際には政府の狙いは、一極化して便利にすることではなく、このあたりにあったと思われます。

 ベルラド研究所は国立ではありませんから、このような政府の命令を聞く必要はなく、研究を自分たちのペースで進めています。

 国立の研究所がどこも縮小していっているので、チェルノブイリ事故から20年目のときには日本のトヨタ財団が研究費を出し、京大原子炉実験所が直接ベラルーシの研究者に資金援助して、研究してもらっているような状態です。
 そしてその研究成果は当然ベラルーシではなく、日本で発表されているわけです。
 ベラルーシの状況を日本の研究施設のほうが把握している部分もあるのです。

 このような現状です。チェルノブイリ研究に関してはベラルーシはますます減速していくと思われます。
 ウクライナの研究機関に期待したいところです。しかしチェルノブイリ原発事故当時、ベラルーシは風下だったので、汚染地域の面積はベラルーシのほうが広く、被害になった人の数も多いのです。ベラルーシの研究機関がしっかりしてほしいところです。
 そんな中、孤軍奮闘状態のベルラド研究所です。
 ネステレンコ教授が個人的に作って、ビタペクトを売って儲けている企業だか研究所だかよく分からない団体・・・などではありません。
 ベラルーシ国内では最後の頼みの綱のような機関です。
 そうでなかったら、
「日本人のために翻訳してください。」
と研究所が出版した本「自分と子どもを放射能から守るには」を震災後すぐの時期に私にくれませんよ。もちろん無料でくれました。