ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

壺井栄生誕125周年記念展示

2024-07-16 |   壺井栄
 今年、壺井栄は生誕125周年を迎えます。それを記念して8月31日まで日本文化情報センターでささやかながらテーマ展示を行なっています。
 
 生誕125年とはちょっと中途半端な数かもしれませんが、本当は5年前の120周年に壺井栄ロシア語訳作品集の翻訳を完成させる予定だったのが、コロナやら大統領選挙のせいで印刷することがなかなかできなかったという事情があり、今年、記念の展示ができるようになってよかったと思っています。
 また昨年、小豆島の壺井栄文学館に完成したロシア語訳の本を寄贈することができて本当によかったです。
 そのときに文学館の様子や小豆島の写真をたくさん撮影できたので、それも今年展示できました。

 弊館を訪れるベラルーシ人の子ども達にも「二十四の瞳」の紹介をしていますが、小学年の低学年の子どもには、「まつりご」の話をしています。
 これは壺井栄が生まれる少し前の話なので、130年ぐらい前の日本社会が描かれているのかと思うと、驚きますね。
 (小豆島へお遍路に来た父親と子ども二人。道中で父親が死んでしまった後、子どもは乞食になり、1年間物乞いをして生きていたが、何の保護も受けられない。優しい樽屋の一家が引き取ってハッピーエンド。実はこの二人は壺井栄の兄姉に当たる人だった。)
 子供の乞食がそのへんをうろうろして物乞いをしているなんて、今の日本では考えられないですよ。ベラルーシの子ども達には、乞食の子どもは日本にはいません、と話しています。

 「二十四の瞳」は反戦文学として有名ですが、今読み返してみると、貧困問題、男女差別、ヤングケアラー問題、教育機会の不平等、いわゆる親ガチャの当たり外れで人生が変わってしまう、実家が太いとラッキー、でも子どもの希望や考えを古い考えの親が理解してくれないと、やっぱりアンラッキー・・・という今の日本社会でもそこらじゅうに転がっているような社会問題が多く書かれています。
 時代が変わっても問題は消えないのだろうかとさえ思います。
 
 ただ、「二十四の瞳」の世界では戦争時代が重なっているので、どうしようもなく登場人物たちの運命がどんどん狂わされてしまいます。
 戦争が今の日本にないだけ、まだ運が良いのだと思います。日本は平和を大事に守ってほしいです。
 ロシアのウクライナ侵攻という戦争のほとんど当事国になってしまったベラルーシに住んでいる身としては、日本が戦争に巻き込まれると、上記のような社会問題を改善しようとしても、非常に難しくなるので、平和の時代にこそ解決に向けて社会が動いてほしいです。
 130年前には子どもの乞食が物乞いをしていたのが普通だった日本も、今ではそんなことはなくなったのは、先達の努力のおかげだと思いますから。
 壺井栄は反戦だけではなく、社会問題についても文学の力で、広く訴えようとしていた作家だったと感じます。
  

壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」寄贈先一覧

2023-12-27 |   壺井栄
 ベラルーシ国内図書館への壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」の寄贈作業が完了しましたので、ここで現時点での寄贈先リストを公開します。
(寄贈先一覧のロシア語版はこちらのリンク先をご参照下さい。)
 特に記載がないものは「2022年ミンスク版」を寄贈しています。

<ミンスク市>
ミンスク市立中央図書館 日本文化情報センター
ミンスク市立第5児童図書館閲覧室
ベラルーシ国立図書館
ヤクブ・コーラス名称中央学術図書館
ベラルーシ科学アカデミー図書館
ベラルーシ共和国大統領図書館
ニコライ・ヤポンスキー教会日曜学校
ハーモニー絵画教室

<モロジェチノ市>
モロジェチノ地区中央図書館
モロジェチノ市立第1図書館
モロジェチノ市立第2図書館
モロジェチノ市立第7図書館
ラドシコヴィチ町図書館

<ストルブツィ市>
ストルブツィ地区中央図書館

<ミンスク州>
ペレジルスカヤ町立学校図書室

グロドノ市
グロドノ市立中央図書館
グロドノ市立第1図書館
グロドノ市立第2図書館
グロドノ市立第3図書館
グロドノ市立第4図書館
グロドノ市立第5図書館
グロドノ市立第6図書館
グロドノ市立第7図書館
グロドノ市立第8図書館
グロドノ市立第9図書館
グロドノ市立第10図書館

<バラノヴィチ市>
バラノヴィチ市立中央図書館外国語文学コーナー、貸出コーナー
バラノヴィチ市立第1図書館
バラノヴィチ市立第2図書館
バラノヴィチ市立第4図書館

<ボリソフ市>
ボリソフ地区中央図書館

<ビテプスク市>
ビテプスク市立外国文学図書館
ビテプスク市立中央図書館
ビテプスク市立第2図書館
ビテプスク市立第3図書館
ビテプスク市立第4図書館
ビテプスク市立第5図書館
ビテプスク市立第7図書館
ビテプスク市立第15図書館
ビテプスク市立第18図書館
ビテプスク市立第19図書館
ビテプスク市立第20図書館

ゴメリ市
ゴメリ州立図書館外国語文学コーナー
ゴメリ州立児童図書館ブラチーノ
ゴメリ地区中央図書館
クリモフスカヤ村図書館
ゴメリ市立図書館


<キルギス>
キルギス日本センター図書室


<ノルウェー>
ノルウェー国立図書館


<日本国内>
二十四の瞳映画村 壺井栄文学館 書肆海風堂(仙台版とミンスク版ともに所有されています。) 
国会図書館(2021年仙台版
東京都立多摩図書館
北海道立図書館
静岡大学図書館
ANT-Hiroshima(貸し出しの可否については直接お問い合わせください。)

(2023年10月16日現在)


 また寄贈ではありませんが、「二十四の瞳」の部分訳、「坂道」「妙貞さんのハギの花」はインターネット上で読むことができます。
「二十四の瞳」部分訳(第1章から第3章までと第7章から第10章までが読めます。)
文芸誌「水源地」第4号Web版
「坂道」
文芸誌「水源池第5号」Web版
「妙貞さんとハギの花」
文芸誌「水源池第5号」Web版

 画像は壺井栄文学館内の展示のようすです。画像は壺井栄文学から提供していただきました。 
 1952年の「二十四の瞳」初版本や英語版、チェコ語版などといっしょにロシア語版が展示されています。翻訳者冥利に尽きます。また壺井栄文学が世界に広がっていることの一助になったことを嬉しく思っています。

壺井栄ロシア語訳作品集をハーモニー絵画教室に寄贈しました

2023-11-23 |   壺井栄
 11月23日、ついに最後の1冊となった壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」をミンスク市内のハーモニー絵画教室に寄贈しました。
 ハーモニー絵画教室はエレーナ・ブラト先生のご協力のおかげで、絵本「おりづるの旅」や新美南吉童話の感想画を生徒さんにたちに描いていただき、その作品が日本でも展示されました。
 ブラト先生なら、壺井栄の文学が言わんとしていることを深く理解してくださるだろうと思っての、今回の寄贈です。
 寄贈するときには特別に年長のクラス(10歳以上)の生徒さんを対象に、小豆島や壺井栄の人生の紹介もしました。

 画像はハーモニー絵画教室で撮影したものです。
 紙風船も寄贈しましたが、これも小豆島の二十四の瞳映画村で買ってきたもの。
 ロシア語に翻訳した壺井栄の作品で「まつりご」というものがあるのですが、登場人物の乞食の子どもが夜に神社の境内で紙風船で遊ぶシーンが出てくるのですが、その紙風船の説明のために二十四の瞳映画村のお土産物屋で買ってきたのです。ベラルーシには紙風船がないので、実物を見せるほうが理解してもらいやすいですよね。
 絵の勉強をしている子どもが集まっている絵画教室なので、どのように壺井栄文学を読んでくれるのか独自の視点があると思います。
 
 他にも歌川広重の浮世絵集と日本の神話と伝説の本も寄贈しました。
 ベラルーシの子どもたちに異国の文化に触れて、いろいろなことを吸収してもらえたらと思いました。
 チロ基金を通じて支援してくださっている日本の皆様に深く感謝申し上げます。地味で少しずつですが、ベラルーシで日本文化の紹介を続けています。
 
 追記です。
 ハーモニー絵画教室が短いですが動画を作ってくれました。
 リンク先はこちらです。
 2024年5月27日限定公開です。
 

文芸誌「水源地」第5号に壺井栄作品ロシア語訳が掲載されました

2023-10-16 |   壺井栄
 今日、発行された文芸誌「水源地」第5号に壺井栄ロシア語訳作品集から「坂道」と「妙貞さんのハギの花」が掲載されました。
 水源地第5号の目次のリンク先はこちらです。
 こちらのリンク先からすぐにロシア語訳を開くことができます。
「坂道」のリンク先はこちらです。
「妙貞さんのハギの花」のリンク先はこちらです。

 翻訳してくれたアーラ・ラゼルコさん、掲載の了承をありがとうございました。

 私の今年の夏訪れた「壺井栄文学館訪問記」を掲載させていただいています。リンク先はこちらです。

 今回も「水源地」編集部の皆様のご厚意でロシア語訳を掲載できました。
 「坂道」は第二次世界大戦後の話で、戦災孤児が登場するのですが、「水源地」に掲載されるころにはロシアのウクライナ侵攻も終わって戦後になっていないかなあと想像していたのですが、そんなことになっておらず、残念です。
 しかし、せっかく掲載されたのですからインターネットの力でロシア語圏内に壺井栄文学が広がってほしいです。
 

ロシア語訳作品集「二十四の瞳」を小豆島の壺井栄文学館に寄贈しました 5

2023-08-04 |   壺井栄
 画像は二十四の瞳映画村内にある銅像「せんせいあそぼ」です。
 他にもロケに使われた学校校舎など施設がたくさんあります。映画の世界が満喫できます。
 うどん屋さんもあって、大石先生と12人の子どもたちの気持ちになっていただきました。(作中のうどんはもっと素朴なものだったと思いますが。)
 お土産物屋では「まつりご」でトシと仙吉が遊んでいた紙風船を買いました。

 「二十四の瞳」を知らなくても楽しめますというのが二十四の瞳映画村の宣伝になっているようですが、映画村のほうが最初のきっかけで、その後壺井栄の本を読むことにした人も大勢いると思うんですよね。
 このような場を心を込めて創っている小豆島の方々のパワーには圧倒されました。
 去りがたかったです。でもロシア語版「二十四の瞳」を寄贈できてよかったです。聖地に大事な物をお供えしてきたような気持ちになりました。
 

 
 

ロシア語訳作品集「二十四の瞳」を小豆島の壺井栄文学館に寄贈しました 4

2023-08-04 |   壺井栄
 二十四の瞳映画村内にはブックカフェ書肆海風堂があります。
 そこでちゃんとロシア語訳「二十四の瞳」が読めるのです。 
 2021年に仙台で出版されたロシア語訳「二十四の瞳」(以下、仙台版と表記します。)がスタッフの皆さんのお計らいで目立つところに飾られていました。
 翻訳者の二人もとても喜んで本と記念撮影しましたよ。
 やはり出版した本が寄贈先でちゃんと保管、閲覧できるようになっているのを知るのは翻訳者として本当に嬉しいことです。
 今回寄贈したミンスク版のうち1冊はこのブックカフェ用の控えになると思います。

 仙台版を自らの手で製本してくださった赤間悟さんは昨年亡くなられ(奇しくもチェルノブイリ原発事故が起きた日付と同じ日)ミンスク版の完成をお見せすることができず残念でした。
 小豆島へもいっしょに行きたかったです。
 聴覚障碍を乗り越え、文学を愛し、長年製本業に携わってきた赤間悟さんが人生最後に手掛けた本が壺井栄「二十四の瞳」のロシア語訳になりました。
 小豆島のブックカフェで本好きの人に仙台版を手にとってもらえたらと願っています。

 書肆海風道には他にもいろんな国の言語に翻訳された「二十四の瞳」が読めます。
 ロシア語で読む人はたくさん小豆島に来ると思えないのですが、多くの言語に翻訳されていること自体が壺井栄文学が世界に広がり、人種を超えて共感を得ていることの現れだと考えています。

 二十四の瞳映画村の公式サイトで、見学に必要な所有時間は約60分とあるのを以前見ていた私は、実際にここへ来てびっくりしました。60分なんてまちがいですよ。
 私だったらこのブックカフェだけで少なくとも半日はいたいのに。
 

ロシア語訳作品集「二十四の瞳」を小豆島の壺井栄文学館に寄贈しました 3

2023-08-04 |   壺井栄
 ベラルーシからロシア語訳「二十四の瞳」を寄贈しただけではなく、壺井栄文学館からミンスク市立中央児童図書館に「二十四の瞳」(講談社の青い鳥文庫版)と短編集「柿の木のある家」(偕成社刊)を正式に寄贈していただきました。ベラルーシの図書館側に提出する書類も作成していただいて、本当にありがたかったです。
(日本文化情報センターは2022年9月にミンスク市立中央児童図書館に移転しました。)
 この画像は大石館長からお受け取りした際の記念撮影です。後ろに壺井栄さんの写真が写っていて、微笑んでくれているみたいで嬉しいです。
 
 その後、館内を案内していただきました。壺井栄さんの写真もたくさん飾られていて感激。
 前々から見たかったのは直筆原稿です。想像通りきれいで読みやすい筆跡でした。

 今回の翻訳プロジェクトで壺井栄の人生についてベラルーシ人に紹介しないといけないので当然いろいろ調べたのですが、私がベラルーシ国内の寄贈式でよく話すエピソードが筆跡のことなのです。
 壺井栄の人生ですが、子沢山の家庭に生まれ、7歳のときに家業が傾き子守の仕事をさせられ、学校の先生になるのが夢だったのに中学2年生以降は進級できず、船での運搬業をしていた父親の手伝いをさせられ、病気になる・・・と私がベラルーシ人に話すと、みんな同情の目つきになってしまいます。
 壺井栄も、私って運が悪いと思っていただろうなと想像します。
 家は貧乏、親は助けてくれないどころか足を引っ張る、健康は損ねた、高い学歴はない、特別美人じゃない・・・というどん底な状況だったのに、
「いや、私の字はきれいなんだ。こんな私にも一つは特技があった。」
と思いついて、きれいに字を書いた紙を郵便局長に見せて直談判、郵便局に就職することができました。
 というエピソードをベラルーシの中高生に話すと、はっと目を上げる子が毎回数人は出てくるんですよ。
 なのでこの話を寄贈式のときいつも話していたのですが、今回、直筆原稿が見られてよかったです。小豆島で本物をしっかり見てきたとベラルーシ人に話せます。
 

ロシア語訳作品集「二十四の瞳」を小豆島の壺井栄文学館に寄贈しました 2

2023-08-04 |   壺井栄
 ミンスク版2冊を二十四の瞳映画村の有本裕幸専務理事と壺井栄文学館の大石雅章館長に寄贈しました。
 画像は記念撮影したときのものです。
 私が邪魔になって壺井栄さんの写真が見えておらず申し訳ないです。 
 皆様、壺井栄文学館のHP
をご覧ください。

 両端に写っているのは、壺井栄の短編作品「坂道」と「妙貞さんのハギの花」を翻訳したアーラ・ラゼルコさんと「ともしび」の一部を翻訳担当した辰巳結重さんです。
 翻訳には25人のベラルーシ人が参加しましたが、その代表としてこの二人も今回小豆島に来ることができ、本当によかったです。

 
 

ロシア語訳作品集「二十四の瞳」を小豆島の壺井栄文学館に寄贈しました 1

2023-08-04 |   壺井栄
 8月5日は壺井栄のお誕生日です。この日に小豆島にある壺井栄文学館に、ミンスクで出版したロシア語訳作品集「二十四の瞳」(以下「ミンスク版」と表記します)を寄贈したいと計画していたのですが、私の事情で前日の4日になりました。でもお誕生日には遅れなかったから良かったと思っています。

 やっと念願が叶って小豆島へ行くことができましたよ・・・。
 出版費用を出してくださったチロ基金支援者の皆様とのお約束もようやく果たせました。壺井栄文学館の方々にも直接お礼が言えました。

 これまで長い道のりでした。しかし瀬戸内海の青い海、小豆島の上に広がる空を見たとたん、今までの苦労も消えました。
 このブログ上で数回に分けてご報告しますね。

 この画像は、渡し船から見た二十四の瞳映画村の入り口です。小豆島は想像以上に海岸線が入り組んでいて、まっすぐ渡し船で海を渡るほうが早いのです。しかも船着き場が二十四の瞳映画村の入り口の真ん前でとても便利。この映画村内に壺井栄文学館があります。
 「二十四の瞳」で大石先生が息子が漕ぐ船に乗って学校へ出勤する気持ちや、自転車で岬の学校へ通うときの気持ちがよく分かりました。

壺井栄ロシア語訳作品集をゴメリ州立図書館に寄贈しました

2023-07-06 |   壺井栄
 7月6日、壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」をゴメリ州内の図書館に寄贈するため、ゴメリ州立図書館を訪問し寄贈式を行いました。
 もともと少部数で発行した本書ですが、いよいよ手元の在庫も少なくなり、残ったベラルーシ国内用6冊をゴメリ州内の図書館に寄贈して、これでベラルーシの図書館向け寄贈作業は完了しました。

 ゴメリ州立図書館は州立だけあって規模が大きく、司書の方々のレベルも高いので、逆に言うと、辛口な批評も飛び出すかもしれないと思っていたのですが、集まってくださった方々から高評価をいただきました。
 壺井栄文学をぜひ読みたい、いろんな年齢層の来館者に紹介したいと寄贈式典の後、ご感想を司書の方々からいただきました。翻訳者冥利につきますね。

 会場には図書館職員の他、招待された小学生から高校生も出席し、ゴメリの盆栽職人ドミートリイ・ビハレフさんの盆栽が会場を飾っていました。今や盆栽だけではなく、ミニ石庭を自作していて驚きです。注文して購入しようかと思ったぐらいです。
 小学生の女の子はこの日のために日本について書かれた詩を朗読してくれました。
 大歓迎していただいて恐縮です。

 またゴメリ州立図書館は寄贈式のポスターまでデザインしてくださいました。
 寄贈式のようすはゴメリ州立図書館公式サイトでも紹介されています。リンク先はこちら。(ロシア語)

 ゴメリ州で壺井栄の作品が広く読まれるようになればと願っています。
 この司書さんたちのパワーがあれば大丈夫でしょう。本にとっては司書との出会いの運命が大事なのだと改めて感じました。



 

壺井栄ロシア語訳作品集をビテプスク市立図書館に寄贈しました

2023-06-08 |   壺井栄
 6月8日、壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」をビテプスク市立図書館に寄贈しました。
 ビテプスクには市立の図書館が多くあるのですが、その中でも日本文化の紹介に力を入れているビテプスク市立外国文学図書館、中央市立図書館をはじめ、合計11の図書館に1冊ずつ寄贈することになりました。
 6月8日にビテプスク市立外国文学図書館訪問し「二十四の瞳」の他、ANT広島さんから頼まれていた広島の原爆や平和についての絵本など、直接手渡ししました。
 この外国文学図書館も別の場所に移転しましたが、変わらずたくさんの外国語文学、教科書、辞典が数多く所蔵されており、英語の授業、毎週日曜日には多言語カラオケなどの場として市民に活用されています。

 今回の寄贈式には地元の高校1年生が出席してくれました。
 ベラルーシの高校は2年間しかないので、来年の今頃はちょうど卒業式。そして高校1年生の男子は6月は軍事教練に行きます。(女子は応急手当の仕方を勉強します。)
 高校卒業後、大学に進学しなかったら、男子は兵役義務で、秋から徴兵されます。
 1年後、この人たちはどうなっているのかと思いながら「二十四の瞳」の話をしました。

 出版に当たり、ご協力してくださった日本の皆様に厚くお礼申し上げます。
 ビテプスク(日本人にとっては画家のマルク・シャガールの生誕地で有名と言ってもいいでしょうか。)の市民に壺井栄文学が読みつがれていくと思います。
 

 
 



 

壺井栄ロシア語訳作品集をボリソフ市立図書館に寄贈しました

2023-03-23 |   壺井栄
 3月23日、壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」をボリソフ市立中央図書館に寄贈しました。
 この図書館の外国語文学室担当の司書さんから、寄贈してほしいというお申し出があり、寄贈することになりました。
 実はボリソフは寄贈先に予定していなかったのですが、それはボリソフ近郊にベラルーシ軍の大規模軍事演習場があり、この町出身の日本語教室生徒の話では、演習のときの砲撃の音のせいで、家の窓ガラスが震えることがあると聞いており、しかも軍関係者が数多く住んでいるイメージが私の中にあって、こんな町の図書館に「二十四の瞳」のような
反戦文学を寄贈して大丈夫なのだろうかと心配していたからです。
 しかし、現地の熱心な司書さんから依頼を受けたのと翻訳者の中にボリソフ出身者が2人いたことから、寄贈することに決めました。

 ボリソフに到着して、図書館まで歩いている途中、演習の砲撃の音が実際に聞こえてきて、軍事演習場が町のすぐそばにあるんだなと思いました。
 そして図書館に到着すると、贈呈式に地元の中学3年生が出席してくれて、壺井栄の紹介をしていたのですが、ベラルーシも気温も上がっていたので外国文学室の窓を開けていたら、また演習の砲撃の音が響いてくるのです。現地の人は慣れっこになっているのか、誰も驚かないどころか耳にも入ってきていない様子でした。
 本物の爆撃の音ではないと分かっているので、私も何事も気にしないふりをして話を進めていました。
 こんな環境の中、生活したり勉強したりしているボリソフの中学生のみなさんは、どんな心境なのかなあと思いました。
 6月には中学校の卒業式もあり、贈呈式の最後に尋ねましたが、みなさん進路や将来の職業もちゃんと決めていて受験勉強もがんばっているそうです。すごくしっかりしている子たちばかりだなあと感心しました。

 ボリソフ市立中央図書館はとても広くて、図書館というより市民文化センターのようでした。その中の蔵書に壺井栄文学が仲間入りできたことも光栄なことですね。長く市民の方々に読みつがれてほしいです。

 画像は外国文学室での記念撮影のようすです。(司書さんから「ここで撮りましょう。」と言われたのですが、ミッキーマウスが気になる・・・アメリカのアニメキャラですよね。。)

 ボリソフ市立図書館のサイトのリンク先はこちらです。他の画像も公開されています。
 

壺井栄ロシア語訳作品集をバラノヴィチの図書館に寄贈しました

2023-03-16 |   壺井栄
 壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」をベラルーシ各地の図書館に寄贈し回っています。
 3月16日には、バラノヴィチ市立中央図書館に寄贈するため訪問しました。
 この図書館には外国語文学室があり、英語が得意な司書が担当しています。
 贈呈式には国立バラノヴィチ大学の学生さんや、図書館関係者が訪れ、真剣に壺井栄文学の紹介を聞いてくださいました。
 司書の方は、新しい外国文学の新刊書が来た、しかも書店では販売していない稀少本だとまで表現して、喜んでいました。こちらも翻訳した甲斐があった、寄贈した意味があったと本当に嬉しかったです。

 贈呈式の様子はバラノヴィチ中央図書館のサイトで見ることができます。リンク先はこちらです。ベラルーシ語ですが画像が見られます。

 バラノヴィチの地元の新聞「ナーシ・クライ」2023年3月17日付の記事です。(ベラルーシ語)

 司書さんが撮影してくれた画像はまとめてこちらで見られます。
 

 司書の方々は、「世界に不協和音が多い時代こそ、文化活動を熱心にするべきと思って仕事をしている。」と話していましたが、同感です。
 また「二十四の瞳」のあらすじをお話しした後に「教育が大事。これで人生が変わる。」と司書の方が話すとバラノヴィチ大学の学生さんや先生がうなずいていました。会場には女性が多かったです。
 
 「二十四の瞳」の物語は12人の子どもとその先生の人生の話ですが、その過半数が女性という設定にしてあるのが、つまり女性の運命についてよりいろいろと作者は書きたいと思っていたということです。
 物語の最後では、12人の子どもたちが25歳になっており、それぞれの人生が描写されているのですが、自らの力(学力)で、希望する職業に就けたのは2人(と大石先生)だけで、この2人がなった職業が、助産師と学校教師というところに作者の意図するところが表現されていると思います。

 バラノヴィチ図書館で出会った大学生の皆さんや司書の方々、その子ども世代の人たちはこれからどんな人生を送るだろうかと思いました。
 よりよい人生を送ることができるようによりよい社会になってほしいと思いました。
 壺井栄も社会がよくなってほしいと、啓発するつもりもあって作品を書いていたと思います・・・と出席者の方々には話しておきました。

壺井栄ロシア語訳作品集をグロドノ市立図書館に寄贈しました (2)

2023-02-02 |   壺井栄
 (1)からの続きです。

 グロドノ市立中央図書館で行われた寄贈式には近くにある第6中学校1年生のみなさんも来てくれました。
 「二十四の瞳」は学校の先生の物語ということで少し詳しくご紹介しましたが、やはりこれから人生をどうしていくのか、家がお金持ちだと運がいいとは思うけど、だから絶対に幸せになれるとは限らない、日本だと男女差別がベラルーシより多いので、女性に生まれると運が悪かったという印象をこの物語から受けるかもしれないけれど、必ずしもそうではないということをお話しました。
 やはり壺井栄文学は中学生かそれ以上の年齢の人や、女性に読んでほしいですね。人種を越えて共感を得られると思います。
 
 寄贈式の後、司書の方々と話をしましたが、「二十四の瞳」の冒頭、小さい田舎の村に自転車に乗ったハイカラな女の先生がやってきて、浮いてしまったという点で、
「ベラルーシもこういうところ、あるわよ!」
という意見が出て、「現代的な若い女性が頭の固い田舎で目立ってしまって噂が一気に広がる」というのはベラルーシでも「あるある」だそうです。
 司書さんたちからは、共感が得られてよかったです。
 感想がいただけたら改めてご紹介したいと思います。

 惜しみなくご協力いただいたグロドノの司書の方々と記念撮影をしました。大切にしたいと思います。

 グロドノ市立図書館は中央図書館のほか、10の分館があるため、全部で11冊寄贈しました。
 これもチロ基金支援者の皆様のおかげです。
 協力してくださっている皆様全員に深く感謝しております。


壺井栄ロシア語訳作品集をグロドノ市立図書館に寄贈しました  (1)

2023-02-02 |   壺井栄
 2月2日、ポーランド国境に近いグロドノ市へ壺井栄ロシア語訳作品集「二十四の瞳」を寄贈しました。

 古い歴史のある町、グロドノ。(べラルーシ語読みではフロドナ)
 2003年には茶の湯の紹介にも行ったのですが、あっと気がついたら20年ぶりの訪問になりました。ミンスク以外の町で茶の湯の紹介をしたのはグロドノが最初の町ですが、そもそものご縁は「ノンちゃん雲に乗る」のロシア語版(石井桃子著。三浦みどり訳)をグロドノ市立図書館に寄贈したからでした。
 この「ノンちゃん雲に乗る」も翻訳者である故三浦みどりさんの自費出版によるもので、モスクワで印刷。三浦さんの友人でモスクワ身体障害者協会会員の方が販売して、売上はこの協会の収益の一部になっていたものをチロ基金が購入し、ベラルーシ国内の図書館に配っていたのです。
 20年以上前の本がグロドノの図書館でちゃんと保存、そして読みつがれていました。
 三浦さんと石井桃子さんがご存命だったらお知らせしたかったです。
 この本は空を表す水色の表紙ですね。いっしょに写真が撮れてよかったです。

 他にも新美南吉ロシア語訳童話集「ごんぎつね」ベラルーシ語訳童話集「手袋を買いに」もちゃんと保存されていました。(こちらは日本文化情報センター日本語教室の生徒が翻訳しました。)
 また「おりづるの旅」(うみのしほ・作 狩野富貴子・絵 PHP研究所・出版)もありました。市立中央図書館で平和教育のために繰り返し活用されているそうです。こちらのお願いしたいことを汲み取ってくださっていて、本当にありがたいことです。

 今回は新たに壺井栄ロシア語訳作品集が仲間入りでき、また一つ喜ばしいニュースを増やせました。

 本の寄贈式には地元テレビ局も取材に訪れました。ニュース映像はYoutubeで視聴できます。
 グロドノ・プラスのリンク先はこちらです。
 グロドノ・テレラジオカンパニーのリンク先はこちらです。

 またグロドノ市立図書館の公式サイトでもご紹介いただきました。リンク先はこちらです。
 

 (2)に続きます。