ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

チロ基金の活動「ビタペクト2&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村 第128回」

2012-01-24 |   ビタペクト配布活動
 2012年最初の活動報告となりました。

 1月23日にビタペクトTと「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピー無料配布運動として、SOS子ども村への第128回目の配布を実施いたしましたので、ご報告いたします。
 今回はビタペクトTを13個、そして「放射能と栄養」のコピーを10部渡しました。
 これで今までに配布したビタペクト2とビタペクトTは合計1896個、「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーは1670部となりました。
 今回で通算138回目のビタペクトT(ビタペクト2)と「チェルノブイリ:放射能と栄養」の配布となりました。
 延べ人数ですが、1896人の子どもにビタペクトT(ビタペクト2)を、1670家族分の「放射能と栄養」のコピーを配布したことになります。

(これまでのビタペクト2配布運動について、詳細はこちらをご覧ください。)

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/bitapekt/index.html


http://blog.goo.ne.jp/nbjc/c/e1e67d76a4796f3c95377bb7bdabd215


(またこの活動報告を読むにあたり、「チロ基金の活動『ビタペクト2無料配布』について追加のご説明」も併せてご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/67c3b73ea2f30e880c3d4eb8bedded13


(ビタペクト2とビタペクトTについてはこちらをご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/5cab63b65562dd2f64a820a7e4298a0b


(「チェルノブイリ:放射能と栄養」について詳細はこちらをご覧ください。)

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/chel/index.html


(SOS子ども村についてはこちらをご覧ください。) 

http://belapakoi.s1.xrea.com/jp/no2/2001/soschild.html


(ビタペクトTを開発、製造、販売しているベルラド放射能安全研究所の公式サイトはこちらです。)

http://www.belrad-institute.org/


(ベルラド研究所について日本語でご紹介している記事はこちらです。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/c382ef7eca8660531e895c8a646e7f2a



 今回は1家族が保養滞在していました。この家族は2010年3月にもビタペクト2を渡しています。
 そのときのようすはこちらです。
 チロ基金の活動「ビタペクト2&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村 第100回」(家族A)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/b9981c1bf7a611c83e4c49da5e81edd5

 
 この家族は家庭タイプ孤児院の家族です。今回はお母さんが実子2人と養子9人と知人の養子3人を引率していました。
 前回の体内放射能測定の結果と今回の結果はこのとおりです。○印の子どもにビタペクトTを渡しました。

母親(事故発生時6歳)7ベクレル → 16ベクレル 
長女(14歳) 11ベクレル → 22ベクレル ○
長男(12歳) 12ベクレル → 33ベクレル ○
女子(15歳) 19ベクレル → 25ベクレル ○
女子(14歳) 24ベクレル ○ → 28ベクレル ○
女子(12歳) 25ベクレル ○ → 37ベクレル ○
女子(12歳) 21ベクレル ○ → 25ベクレル ○
女子(12歳) 14ベクレル → 23ベクレル ○
女子(10歳) 14ベクレル → 15ベクレル ○

 前回保養滞在していた21ベクレルの女の子(当時14歳)と22ベクレルの男の子(当時10歳)は今回滞在していません。
 女の子のほうは年齢が高くなり、今回の保養に参加できませんでした。男の子のほうは実の両親の元へ戻ったため、今はこの家族と暮らしていません。

 さらに最近養子にした子ども2人と知人の子ども3人は今回初めての保養滞在だったので、測定も初めてとなります。

女子(14歳) 27ベクレル ○
男子 (8歳) 25ベクレル ○
女子(11歳) 17ベクレル ○
女子(10歳) 16ベクレル ○
女子 (8歳) 35ベクレル ○

 この家族はゴメリ州ジトコフ地区にあるビリチャ村(チェルノブイリ原発から約190キロ)に住んでいます。知人はその村から8キロ離れたところにあるグリャダ村に住んでおり、やはり家庭タイプ孤児院の家庭だそうです。たくさん養子を育てていますが、そのうちの3人が今回引率されて保養に来ていました。

 今回は体重1キロ当たり20ベクレル以下の子どもにもビタペクトTを渡していますが、お母さんが今回の測定結果が前回より悪くなっているのを見てびっくりし、15ベクレルでもビタペクトTを飲ませたいと強く希望したので、渡すことにしました。
 みんなでなかよく飲みましょう、とお母さんは子どもたちに話していました。
 前回飲んだ子どもたちにも特に下痢のような症状はなかったようです。
 
 どうして今回は高い数値が出たのか、お母さんは分からない、と話していました。しかしもしかすると
「夏に村の近くの森で集めたビルベリーのせいかもしれない。」
とも言っていました。食品の測定をしたほうがいいですよ、とSOS子ども村の医師リリヤ先生がアドバイスすると、村の中にある保険所で測定をしているそうです。
 でもビルベリーを測定しようとは思わなかったそうです。しかし同じ村に住む両親が家庭菜園でたくさん作ったキュウリを青空市場で売ろうと思ったので、測定に行ったそうです。市場で売るとなると測定済みであることが条件になっているそうです。
 その結果大丈夫だったので、そのキュウリは市場で売ったそうです。
 測定そのものは有料ですが、「とても安い料金だったと母が話していました。」・・・そうです。あまりにも高額だと、キュウリを売った売り上げが測定代に消えてしまういますよね。そうすると誰も市場で野菜を売ろうとしなくなります。

 子どもたちの健康状態ですが、8歳の男の子を除いてみな健康だそうです。
 この男の子の生母は妊娠したときに、子どもはすでに何人かいるしもうこれ以上生みたくない、と中絶しようとたのですが、法律上、中絶をしてもいい期間を過ぎていました。
 それで知り合いの医者に頼んで、(どうやら嘘の)診断書を出してもらいました。それには「母子ともに危険があるので、出産は望ましくない。期間は過ぎているが中絶するほうがいい。」と書いてありました。
 それを持って病院に行き、ありとあらゆる薬を飲んだり、注射したりしたそうです。
 ところが子どもは死なず、未熟児のまま生まれました。母親はすぐに親権放棄。子どもは施設に入れられました。
 2歳になっても全くしゃべることができず、とても体が弱かったのですが、1年ほど前この家族に引き取られました。
 今では少ししゃべるようになりましたが、どもりがひどく、またしょっちゅう気管支炎にかかるそうです。
 しかし養母は特殊学校ではなく、普通の学校に入学させたいと希望し、去年小学1年生になったのですが、成績はいいけれど、ほとんど話をしたりすることがないそうです。

 12歳の女の子のうち1人は、育児放棄(両親がアル中、今は服役中。)にあっており、引き取られた直後、
「ここでは毎日パンが食べられるの?」
ときいたそうで、喜んで出されたご飯を食べていたら、腹痛を訴え、入院しました。腸炎と診断され、手術をし、今は健康ですが、医者からは
「幼少のときから極端に少ない量の食生活を送っていたのが急にたくさん食べたので、慣れていなかった消化器官がびっくりいして炎症を起こした。」
と説明されたそうです。

 最近引き取った14歳の女の子は、中学生の年齢なのに、顔や体、髪の毛の洗い方が全く分かっていなかったそうで、養母が一生懸命教えたそうです。今まで生みの親とどんな生活をしていたのでしょうか?

 国はこのような家庭タイプ孤児院が増えることを奨励していますが、一方で肉親と暮らすことが子どもにとって最良である、という考え方も示しています。
 それは当然なのですが、生みの親が育児放棄したり、無職だったり、暴力を振るったり、というような場合はどうなのでしょうか?
 以前引き取っていた男の子は生みの親が刑務所から出所したとたん、
「やっぱりいっしょに暮らしたい。」
と言い出し、そうなると養親より肉親のほうが法律的に立場が強くなるので、子どもはいやいや生みの親の元へ戻ったそうです。
 養母がその子のようすを見に行くと、あばら家のような家で、レンガを自分たちで組み立てた薪ストーブがあるだけ、しかも幼い兄弟もたくさんいる、という状態だったそうです。
 養母さんはかつてに養子に「何かあったらいつでもうちに戻っておいで。」と言って心配しながら別れたそうです。
 行政ももうちょっと、肉親側の生活条件や経済状況を厳しくチェックして、ある程度の基準をパスした両親にだけ子どもを戻すようにするとか、法律改正をするべきだ、と思いました。 

 他にも生みの父が出所したとたん、「うちの子どもを返せー!」と夜中に電話を何回もしてきたり、子どもにストーカー行為をしたり・・・といった大変な苦労話を聞きました。
 それにしてもこのお母さんには尊敬の一言です。
 今は12人の養子がいるそうですが、うち1人は検査入院中で、保養に行けませんでした。
「病気になったのですか?」
と尋ねると、
「この子も最近引き取ったのですが、落ち着きがなく、行動に異常がある、と学校側から言われ、神経系統の病気かもしれないから、念のため検査入院するように言われた。」
のだそうです。お母さん自身は
「心理カウンセラーに相談したこともあるのですが、神経の異常などではなく、幼少時に親から優しくされたり、甘えたり、ということがなかったのが、原因だと私は思っています。うちで暮らしていくうちに治ってくると信じています。」
と話していました。

「海草を食べましょう。」と話をすると、
「海草や魚は嫌い!」と言う子と「好きです。」と言う子に分かれました。嫌いと言う子は最近引き取られた子でした。
 でも「このお母さんと暮らしていくうちに海草を好きになるよ。」と「先輩」格の子どもが言っていました。

 今回もいつものように子ども達に折り紙、リアルな野菜やお菓子の形をした消しゴム、おもちゃの笛、定規などをプレゼントしました。お母さんにはアクリルたわし。折鶴をあげるととても喜んでいました。

 最後になりましたが、ビタペクトTの購入費、そして「放射能と栄養」をコピーするために必要な経費を寄付してくださった方々、折り紙や手作りのアクリルたわしなど子どもたちへのプレゼントを寄贈してくださった方、また日本ユーラシア協会大阪府連主催のバザーなどでSOS子ども村への交通費を捻出してくださった多くの日本人の皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。
 多くの方々に支えられて、この活動が続いています。
 ベラルーシの子どもたちもお母さんたちもSOS子ども村の職員の方々も皆様に大変感謝しております。本当にありがとうございました。



ゴメリ州の障害者

2012-01-10 | 放射能関連情報
「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 2010年に障害者として認定された人の数は6815人です。そのうち447人が15歳以下の子どもでした。
 就労可能年齢層(15歳以上60歳以下)の人は3018人でした。

 障害者になった理由ですが、最も多いのが循環器系の病気によるもの(33.3%)です。
 2位はがん。(30.5%)
 3位は骨髄系と結合組織の病気。(6.9%)
 4位は外傷によるもの。(5%)
 5位は内分泌系の病気。(4.9%)
 
 ・・・となっています。6位以下は精神障害、7位は神経系の病気、8位は眼病、9位は消化器官の病気、10位は呼吸器系の病気、11位は結核、12位はその他、13位は泌尿器、生殖器の病気、14位は先天性疾患・・・となっています。

 これを就労可能年齢層の障害者にだけに絞って見ると順位が少し変わります。
 1位はがん。(29.8%)
 2位は循環器系の病気。(24.3%)
 3位は骨髄系と結合組織の病気。(8.7%)
 4位は外傷によるもの。(8.0%)
 5位は内分泌系の病気。(5.3%)
 6位は神経系の病気。(4.9%)
 7位はその他で(17.9%)

 18歳以下の未成年者の障害者ですが、2000年にゴメリ州では人口1万人に対し20.2人の割合でした。
 同じ年のベラルーシ共和国全体の割合は、人口1万人に対し、17.5人です。
 つまり国の平均よりゴメリ州のほうが未成年の障害者数が多い、ということです。
 この国よりゴメリ州のほうが多い、という状態は2009年まで続いていました。
 しかし2010年に逆転しています。
 ゴメリ州では16.0人でしたが、ベラルーシ全体では16.7人でした。
 
 2000年から2010年までゴメリ州でもベラルーシ全体でも新規認定を受ける未成年の障害者の数はゆるやかですが減少しつつあります。

 未成年が障害者になった理由ですが、2010年のゴメリ州の場合ではこのようになっています。
 1位は先天性疾患。(28.2%)
 2位は神経系の病気。(14.7%)
 3位は内分泌系の病気。(11.2%)
 4位は精神障害。(9.8%)
 5位は聴覚の病気。(7.4%)
 6位はがん。(6.9%)

 このがんについてはこの資料では2009年には原因の4位だったのが2010年には6位になったとわざわざ記述しています。
 それからベラルーシでは障害の重さにより、1級、2級、3級の3段階に障害者を分けています。
 1級が一番重く、3級は一番軽い障害です。日本と比べてかなり大雑把な分け方となっています。
 この級により受けられる福祉の内容なども変わってきます。

 ゴメリ州全体では1級障害者の割合が23.0%、2級障害者が49.8%、3級障害者は27.2%です。
 しかし就労可能年齢層に限って見ると、1級障害者の割合が10.5%、2級障害者が46.1%、3級障害者は43.4%です。

 ベラルーシではチェルノブイリ原発が原因で障害者になった人に対する救済措置を別枠で定めていましたが、今では一般の障害者と同じ枠組み内で行っています。
 つまり、チェルノブイリ原発が原因で障害者になった場合、以前はその条件に当てはまる人だけを対象にした救済策があったのですが、今はチェルノブイリ原発は関係なく、負っている障害の内容のほうを見て、他の理由で障害者になった人と同じ条件で福祉を受ける、という仕組みに変わっています。
 被ばくは関係なく、障害者は障害者として救済という枠組みに変更された、ということです。

 
・・・・・・・

 以上で「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋、翻訳を終えます。
 この資料中には何年に何パーセントといった数値がたくさん載っていますが、
「どうしてこの数が増えたのか?」「どうしてこの年にこうなったのか?」
といった詳細な分析や解説はほとんど記述されていません。
 私が読んだ限りでは、チェルノブイリ原発事故のことも全く載っておらず、当然放射能被ばくとの関連性の記述もありません。
 分析は各々でやってください、ということなのか、あるいは数字は調べているけど、理由についての研究がなされていないのか、それとも研究がされているけどはっきり分かっていないので記載できないのか・・・私には分かりませんでした。
 ともかく数字は出ていることは出ています。
 日本人の皆様もぜひ自分で分析されてください。 

ゴメリ州の甲状腺の病気

2012-01-10 | 放射能関連情報
「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 この資料には甲状腺の病気について細かく記載しています。
 子どもの甲状腺癌の増加は唯一、放射能被ばくとの関連が堂々と証明されている病気です。
(裏返して言えば、それ以外の病気については、今でも証明されてない、ということです。)

 まずヨウ素欠乏による甲状腺肥大についてです。
 この病気について詳しくはこちらをご覧ください。

http://www.aranonji.com/hidai-s-t.html


 ゴメリ州ではチェルノブイリ原発事故後、3年目の1989年に人口10万人に対し、53.8人の甲状腺肥大が認められました。
 これを14歳以下の子どものだけに絞って見てみると、子どもの人口10万人に対し、発症率は19.5人です。
 1993年には子どもの発症率が110.2人に増え、1994年には376.6人に増えました。 
 1995年には317.6人に減りますが、チェルノブイリ事故発生後10年目の1996年になると、849.4人に急増します。1997年には747.8人に減りますが、1998年には953.3人、と最高の発症率を記録しています。
 1999年からは減少傾向となり、2002年に381.7人と1994年と同じレベルになります。

 これは14歳以下の子どもだけを見た数字なので、事故発生後14年目に当たる2000年以降のデータは、全て「チェルノブイリ原発事故発生後生まれた子どもを対象としている」ことになります。

 2003年には発症率は再び増加し始め、事故発生後19年目の2005年に792.2人と再びピークが訪れます。
 2006年には526.7人、2007年には664.0人、2008年には551.3人、2009年には635.9人、2010年には546.0人・・・と増えたり減ったりしています。
 しかし、1989年の水準にはなかなか戻りそうにありません。

 全年齢で見てみると、1989年に53.8人だった発症率がやはり事故発生後10年目の1996年に722.6人にまで急増し、ピークを迎えます。
 その後は減少し続けます。2005年に子どもに再びピークが訪れたため、全年齢でも382.5人とやや増加しますが、その後もまた緩やかに減少し続け、2010年は267.0人となっています。

 もともとベラルーシはヨウ素の欠乏が風土病としてあった地域ですが、チェルノブイリ原発事故後、急激に甲状腺肥大が増えた時期があるため、放射能の影響があったと言わざるをえません。

 次に結節性甲状腺腫についてです。この病気について詳しい説明はこちらをご覧ください。

http://www.kanaji.jp/koujyousen/kessetusyu/p1.htm


 ゴメリ州ではチェルノブイリ原発事故が起きた1986年に人口10万人に対し、24.3人の結節性甲状腺腫が認められました。
 その後発症率は少しずつ増え続け、事故発生後5年目の1991年にはやや減少しますが、1993年に149.2人、という最初のピークが来ます。1994年には106.6人、1995年には120.4人、と減少しますが、1996年に251.5人、と急増します。これが第2で最高のピークです。
 その後は減少傾向となります。増えたり減ったりを繰り返し、2010年には107.1人となっています。
 
 これを14歳以下の子どもだけを対象に見てみます。すると1986年には子どもの人口10万人に対し、1.8人の発症率でした。1988年には0.3人、と減少しますが、1990年から増加し始めます。1994年には11.5人、1995年には26.8人、事故発生後10年目の1996年には36.9人となります。
 1997年には57.7人、1998年には65.7人とピークが来ます、その後は減少傾向に転じます。
 しかし2003年から再び増加し始めます。
 事故発生後19年目の2005年には79.7人と第2のピークが訪れています。
 2006年には51.6人と減り、その後横ばい状態が続くのですが、2010年に92.8人とまたピークが来て、しかも最高の発症率となっています。

 14歳以下の子どもと、全年齢層を対象とした調査では、ピークの年にずれがあります。
 もちろんこれも、2000年以降の「14歳以下の子どもを対象とした」データは、全て「チェルノブイリ原発事故発生後生まれた子どもを対象としている」ことになります。

 次に甲状腺機能低下症についてです。これは甲状腺から分泌されるホルモンの量が減る病気です。詳しくはこちらをご覧ください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E6%A9%9F%E8%83%BD%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E7%97%87


 ゴメリ州では1987年に人口10万人に対し、3.3人の甲状腺機能低下症が認められました。
 チェルノブイリ原発事故発生から5年目の1991年には5.1人となり、10年目の1996年には11.1人になります。15年目の2001年には30.3人に急増し、20年目の2006年には29.4人に減るのですが、2008年には46.6人に再び急増します。2010年では41.6人となっています。
 
 これも14歳以下の子どもに絞って見てみます。1987年には子ども人口10万人に対し、1.7人の発症率でしたが、1989年には0.7人に減少します。1990年には3.7人に再び増加しますが、1991年には0.5人に減ります。
 1992年にはまた3.7人になり、1993年も3.7人、と同じ水準です。
 ところが1994年から増加傾向に変わります。1996年には4.5人になり、1997年には7.1人になります。
 しかし1998年には3.5人、1999年には6.6人、2000年には3.2人・・・と増減を繰り返します。
 そして2000年以降のデータはチェルノブイリ原発事故発生後生まれた子どもを対象としていることになります。

 2001年には6.9人となり、その後は1010年まで増加傾向となります。
 2005年には13.6人となり、事故発生後20年目の2006年には12.4年と減少しますが、2007年には21.0人、2008年には25.8人となります。
 2009年には19.3人と減りますが、2010年には32.3人、と最高の発症率となっています。

 事故後生まれた子どもたちにすら影響を与え続けていると言えます。
 それにしても、甲状腺をはじめ、内分泌系の病気というのは怖いですね。全身にさまざまな症状が出て、原因が何なのか一般の人にはすぐに分からないですよね。
 ふつう「何だか体がだるい・・・。内分泌系の病気かしら?」なんてあまり思わないですよね。

 
 
 

ゴメリ州におけるガンの罹患率

2012-01-10 | 放射能関連情報
 「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 ゴメリ州のおけるガン患者について詳しく見てみます。
 2010年ゴメリ州では6840件の新たなガン発症を確認し、登録しました。これは人口10万人に対し475.5件の罹患率です。
 単位が人ではなく、件なのは1人の患者さんが複数の箇所のガンを発症していることが分かる場合があるからです。

 この件数ですが、1988年以降のデータがこの資料に載っています。それによると1988年(チェルノブイリ原発事故から2年後)の時点では人口10万人に対し、240.9件だったのですが、その後じわじわと上昇し続け、2010年には475.5件となっています。
 つまり22年間でガンの罹患率がおよそ2倍に増えた、ということです。

 そしてガンによる死亡率ですが、人口10万人に対し、1988年には164.4人、1989年には146.1人に減少。その後横ばい状態が続き、最高だったのが2002年の201.9人、そして2010年には189.5人、となっています。

 症状が出て病院へ行き、確認されたという時期ですが、年齢で言うと60歳代が最も多く、64.2%となっています。14歳以下では0.5%です。
 
 ガンの発生部位別に見ると、最も多いのが皮膚がん(黒色腫を除く)で、20.2%です。
 2位は肺がん(10.6%)
 3位は結腸と直腸のがん(9.2%)
 4位は胃がん(7.4%)
 これを読んで意外と皮膚がんが多いことに驚きました。

 しかし性別で分けるとこの順序は変わります。
 男性の場合、1位は肺がん(19.5%)
 2位は皮膚がん(15.6%)
 3位は前立腺がん(10.1%)
 4位は胃がん(9.0%)

 女性の場合、1位は皮膚がん(24.5%)
 2位は乳がん(16.4%)
 3位は生殖器のがん(15.4%)
 4位は胃がん(5.9%)

 以上はがんの発生部位別に見たものです。次にがんの死亡率を見てみましょう。
 死亡率が高いがんは部位別に見ると、1位が胃がんと腸がん。
 2位は肺がん。
 3位は乳がん。
 4位は泌尿器系のがん。
 5位は造血組織系のがん。
 6位はリンパ腺組織のがん。
 7位はその他・・・となっています。

 死亡率が高いわけではないですが、皮膚がんの患者が多いような気がします。ゴメリ州で
「私はがん患者です。」
と言う人の5人に1人が皮膚がん、ということになります。

 ちなみに日本では男性は胃がん、肺がん、前立腺がん、結腸がん、肝臓がんの患者さんが多く、女性では乳がん、胃がん、結腸がん、子宮がん、肺がんの患者さんが多いです。
 皮膚がんが多いのはベラルーシ人の特徴なのかもしれません。
 
・・・・・・・・・・・・・・
 
 この記事を投稿した後、SOS子ども村のリリヤ先生に皮膚がんについて質問しました。
 ゴメリ州に限らず、ベラルーシは皮膚がんが多いのだそうです。一番皮膚がんが多い地域はビテプスク州だそうです。
 その理由はいろいろですが、日光浴のしすぎが最大の原因、ということです。
 ベラルーシは夏が短く、冬が長く、日照時間が少ないので、夏になるとついうれしくなって、日光をたくさん浴びようと日光浴をする人がたくさんいるのです。しかしベラルーシ人の皮膚はは民族的に(遺伝子的に)紫外線に弱いので、皮膚がんができやすいのだということでした。
 しかも昔から
「夏に日焼けすると冬、風邪を引かない。」
と言われており、それを信じる人たちが、進んで日光浴をしているのだそうです。
 青白い顔色より、日に焼けた顔のほうが健康的だ、という考えもあります。
 このような理由で皮膚がんが多いのだそうです。
 

ベラルーシ共和国全体とゴメリ州の発病率の比較

2012-01-10 | 放射能関連情報
 「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 15歳以上の年齢で病気になった人についてベラルーシ共和国全体とゴメリ州のデータがあります。
 2003年(チェルノブイリ事故発生から17年後)国全体でその年何らかの病気になった人の割合は人口1000人に対し、732.6件です。これも1人の人が1年以内に複数の病気に罹ることがあることや、一度に複数の病気を発病することがあるので、単位は人ではなく、件数になっています。
 国全体のデータで最新のものは2009年のもので、858.0件、となっています。
 2003年から2008年でまでは700件台の数字が続いていたのですが、2009年に突然800人台に増えました。ちなみに前年の2008年は782.3件でした。

 ゴメリ州の場合、人口1000人に対し、2003年は760.0件です。発病率はこの資料で示されている限りは、2003年から2009年まで、常に国全体の平均よりゴメリ州のほうが発病率が高いです。
 2005年には803.7件・・・と800件台になり、2009年には900.9件と増えました。
 ゴメリ州のデータは2010年のものもあり、817.0件と発病率は2003年以降、初めて減少しました。
 
 2003年から2010年にかけての期間に限定すると、この間に最も増加率が高かった病気は精神障害と行動障害です。その次に増えたのは先天性異常。それから循環器系の病気です。
 逆にこの間、最も減少した病気は神経系の病気。そして妊娠28週目から出産後168時間以内の期間に発生した異変も減っています。

 この「妊娠28週目から出産後168時間以内の期間に発生した異変」とは何かと言うと、つまり妊娠中の病気や出産直後のお母さんの病気、ということになります。
 妊娠28週目を過ぎると中絶は(ふつう)しませんから、異変と言っても、この中に中絶は含まれません、ということを意味しています。

 この資料にはゴメリ州の中の20の地区とゴメリ市をあわせた21の地域の発病率も載っています。
 人口1000人あたりの件数で示されていますが、2010年その件数が1000件を超えている地区が3箇所あります。
 人口より、病気の件数のほうが多いということです。その地区の人全員以上が病気?・・・のわけがありませんので、1人の人が複数の病気を抱えているケースがとても多い、ということになります。
 ちなみに2010年最も発病率が低い地区では551.2件でした。

 2010年ゴメリ州における病気の種類です。(年齢は15歳以上。)
 一番多い病気は呼吸器系統の病気です。(49.4%)
 2位は外傷や中毒症状。(9.1%)
 3位は皮膚病・皮下組織の病気。(5.4%)
 4位は骨組織・筋組織の病気。(5.2%)
 5位は泌尿器・生殖器の病気。(4.4%)
 6位は眼病・視覚器の病気。(4.0%)
 7位はその他。(22.4%)

 以上のデータは年齢が15歳以上のものです。
 次に中高生だけを調べたデータをご紹介します。
 中高生と書きましたが、厳密には12歳から17歳までの年齢を対象としています。
 18歳は日本では高校生ですが、ベラルーシでは18歳で成人なので、大人扱いになります。

 ゴメリ州では中高生(12歳から17歳まで)と大人(18歳以上)が罹っている病気の種類などに違いがあります。
 2010年、中高生がかかった病気のうち、最も多かったのは大人と同じ呼吸器系統の病気です。
 しかし全体を占める割合を見ると、中高生は65.2%だったの対し、大人は34.8%でした。
 つまり2010年病気になった中高生の半数以上が呼吸器系の病気だった、ということです。これが大人だと3人に1人になります。

 次に中高生が多くかかった病気は外傷・中毒でした。6.6%の割合を占めています。大人は12.5%です。
 大人のほうが子どもよりアルコール中毒になりやすい、また事故や怪我をしやすい(職場)環境にいることが多い、ということだと思います。

 3位は中高生が皮膚と皮下組織の病気(4.8%)です。大人の3位は骨組織、筋肉組織の病気(7.8%)となっています。
 4位は中高生が消化器官の病気(3.5%)で、大人は泌尿器系、生殖器系の病気(6.4%)となっています。

 中高生の5位以下の病気を見てみると5位と6位が泌尿器系、生殖器系の病気(3.1%)、眼病・視覚器に関する病気(3.1%)です。7位はその他の病気で13.6%となっています。


 
 

ゴメリ州における死因

2012-01-10 | 放射能関連情報
 「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 ゴメリ州で2010年に死亡した人の死因についてです。
 第1位は「循環器系統の病気」で、56.1%を占めています。
 日本では死因の1位はガンですが、放射能に汚染された地域が一番多いゴメリ州での死因の1位はガンではないのです。
 放射能被ばく、と言うと、すぐにガンを連想する人が多いですが、私から言わせれば、放射能のせいでなる病気はガンだけではないです。

 それから「日本人の3人に1人はガンになるのだから」放射能被ばくのせいで、ガンになる人が微増したとしても、そんなのは数のうちに入らないから、放射能のことをいたずらに怖がるな、という人がいます。
 しかし、ガンになるよりならないほうがいいに決まっています。被ばくをいたずらに怖がるだけ、というのは確かによくありませんが、できるだけ被ばくしないように注意することは大事だと思います。

 そのガンですが、ゴメリ州では死因の2位となっています。それでも13.5%です。日本では30%です。
 放射能の高汚染地域もたくさんあるゴメリ州のほうが日本よりガンで死亡する可能性は低いのです。

 そして死因の3位です。何と「死因不明」です。
 私にはこれが一番驚きでした。ゴメリ州の死因の10.3%が死因不明なのです。
 去年亡くなった人のうち10人に1人が「どうして死んだのか分からない」のです。
 これは専門家が検死したのにも関わらず「分からなかった」と結論付けたものです。
 ゴメリ州の医療や検死技術のレベルが低いのか、死因を確定しようという意識が乏しいのか、よく分かりませんが、10.3%が死因不明とは多すぎると思います。

 4位は9.9%の「外傷死、事故死、中毒死など」です。つまり病死(老衰を含む)と死因不明を除いたもの全てがここに該当します。
 当然、自殺もこの中に入ります。
 詳しく見ると、2010年にはゴメリ州で2200人の死亡者の死因がこれに該当しています。この2200人のうちの78.6%が男性です。
 さらにその男性を年齢別に見ると就労可能年齢層(15歳から60歳まで)の人がほとんどで男性の中の72.1%を占めています。

 この4位の死因にはいろいろな種類のものがありますが、その中で一番多かったのがアルコール中毒死でした。(19.4%)
 その次に多かったのが「自殺など」で15・7%です。
 この自殺など、というのは何かと言えば「自殺、ならびに自分に原因があるもの」という表現になっています。
 つまり、死亡した状況において、他人は関与していない死因、ということになります。具体的には「線路への飛び込み自殺と思われるが、もしかすると酔っ払っていて線路に落ちてはねられた。」というような自殺なのかどうなのかよく分からないけど、自分に原因があると判断されるもの。
 あるいは火事で焼死したが、状況からして死んだ本人の寝タバコが出火の原因のもの。(本人が焼身自殺しようとして家に放火したわけではなく、火事で死にたいと思ったわけではないが、結果として自分で自分を殺してしまった。)
 ・・・といったケースも含まれます。

 それから就労可能年齢層に限って言うと、死因の第1位は循環器系統の病気ですが、第2位はこの「外傷死、事故死、中毒死など」になります。ガンで死ぬ人より多いのです。

 続いて5位は「消化器系統の病気」で3.8%
 6位は「呼吸器系統の病気」で2.0%
 7位は「感冒症あるいは寄生物による病気」1.7%
 8位は「その他」となっています。

 この資料ではガンで亡くなった人のうち2010年は男性が73%を占めている点、男性が病気以外の事故などで死亡する率が高い点を指摘しています。 
 ガンについてはまた別に詳しい記事を投稿します。

 新生児の死因についてもゴメリ州のデータがあります。
 1997年、1000人の出生児に対し、16人の死産がありました。
 その後この死産の割合は減少し、2010年には1000人の出生に対し4.9人の死産、となっています。

 新生児(生後1年以内)の死因について最も多いのが、妊娠28週目から出産後168時間以内の起こった異変によるもの(47.0%)となっていますが、新生児の死因についての説明なので、生まれてから168時間以内に亡くなった、というケースがここでは数えられています。
 分かりにくくてすみません。この「妊娠28週目から出産後168時間以内」の期間を表す言葉がロシア語だとたったの2語なのですが、日本語で表現する用語がないようなので、このように訳が長ったらしい説明になっています。

 次に多い死因が先天性異常。生育異常。(16.9%)
 3位は死因が不明。(12.0%)
 4位は外傷。(7.2%)
 5位は感染症。寄生物によるもの。(6.0%)
 6位はその他。(10.8%)

 やっぱり死因不明というのが3位になっているのが気になるところです。
 
 

ゴメリ州住民の平均寿命

2012-01-10 | 放射能関連情報
「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 ゴメリ州では1990年代半ばから平均寿命が急激に短くなりましたが、1998年以降延びてきました。
 1997年から2009年にかけて平均寿命は2.4歳延び、69.6歳になりました。
 男性の平均寿命は1997年には62.7歳だったのが、2009年には63.6歳になりました。
 女性は73.9歳から75.9歳になりました。

 ベラルーシ共和国全体では平均寿命は2009年の調査で70.5歳です。
 男性は64.7歳、女性は76.4歳です。
 やはり全国平均よりゴメリ州の平均のほうがやや短いです。

 比較するために、他の国の平均寿命もご紹介しましょう。
 ロシアでは男性61.4歳。女性73.9歳。
 ウクライナでは男性62.5歳。女性74.3歳。
 アルメニアでは男性70.2歳。女性76.6歳。
 ヨーロッパ各国では男性はだいたい75歳から78歳。女性は80歳から84歳です。
 日本は男性が79歳。女性は86歳・・・とこの資料でも取り上げています。
 
 チェルノブイリ被爆国であるベラルーシ、ロシア、ウクライナの中ではベラルーシが一番平均寿命が長くなりました。
 しかし他のヨーロッパの国と比べると、短いですね・・・。

 

ベラルーシ共和国全体とゴメリ州との人口比較

2012-01-10 | 放射能関連情報
 「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 ゴメリ州では2010年、人口1000人に対する死亡率は15.1人でした。これに対し、ベラルーシ共和国全体の死亡率は14.4人です。
 つまりゴメリ州のほうが全国平均より死亡率が高い地域である、と言えます。
 出生率は人口1000人に対してゴメリ州は11.6人、全国平均は11.4人です。ゴメリ州のほうがやや出生率が高いです。

 結果として人口の自然増加率(出生率から死亡率を引いた数)は全国平均がマイナス3.0人で、ゴメリ州はマイナス3.5人となります。
 何だか絵本「もし世界が100人の村だったら」を思い出しました。
 「もしベラルーシが1000人の村だったら」・・・この人口自然増加率がこのまま変わらないとすると、毎年3人ずつ人口が減っていくんですね・・・。

 ゴメリ州にはゴメリ市のほか21の区(日本で言うところの郡のような区分)があります。これにゴメリ市を足して22の地域の出生率や死亡率、人口自然増加率が示されているのですが、バラつきがあります。
 出生率は一番高い地域と一番低い地域との差は3人、とあまり差がないのですが、死亡率は一番高い地域と一番低い地域との差が14.5人と大きな差があります。
 当然、人口自然増加率も差があります。
 しかし一箇所を除きマイナスばかりです。唯一プラスの地域(ジロービン地区)がありますが、それでもたったの0.2人です。
(「もしジロービン地区が1万人の村だったら」・・・そしてこの人口自然増加率が変わらなければ、1年後やっと人口が1万ちょうどから1万2人になるということです。)

 ちなみにゴメリ州22の地域の中で、最も出生率が高いのがナロブリャ地区の13.5人で、最も低いのがオクチャブリ地区の10.5人です。
 死亡率が最も高いのがペトリコフ地区の25.5人で、最も低いのがゴメリ市の11.0人です。
 人口自然増加率が最も高いのはジロービン地区で、最も低いのは死亡率が高いペトリコフ地区のマイナス14.6人です。

 新生児死亡率は全国平均が人口1000人に対し4.0人です。(2010年)
 ゴメリ州は4.9人です。つまりゴメリ州は全国平均より新生児死亡率が高い、ということになります。
 新生児死亡率はゴメリ州の全ての地区での統計がありませんが、16の区とゴメリ市のデータはあります。
 その中で言うと新生児死亡率が最も高いのはベトカ地区の13.8人です。
 全国平均に比べてずいぶん高い数字だと思いました。 
 
 

ゴメリ州における年齢別人口の割合

2012-01-10 | 放射能関連情報
 「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 ゴメリ州では全住民数に対する子ども(15歳未満)の数が減少傾向にあり、2010年の時点では15.2%になっています。
 都市部では15.1%で、農村部では15.6%となっています。
 15歳から59歳までの人口が占める割合は、都市部で68.9%で、農村部で58.0%となっています。
 60歳以上は都市部で16.0%で、農村部で26.4%です。 

 ゴメリ州では65歳以上の人口が占める割合は1986年は10.9%でした。
 しかし2010年には14.3%となっています。つまり高齢者が占める割合が増えた、ということになります。
 けれど平均寿命がベラルーシの場合短くなっている(特に男性)のに、高齢者の割合が増えた、ということは、若年層人口がが急に減った、ということになります。
 つまり出生率が下がり、子どもの数が減ってしまったので、高齢者が占める割合が増えた、ということになります。

 ベラルーシでは15歳から60歳までを就労可能年齢としています。実際には10代で就職して働いている人は少ないですし、定年退職もベラルーシでは男性が60歳で、女性は55歳です。
 でも15歳から60歳までを就労可能年齢層とし、それ以外の年齢の人は非就労可能年齢層として分類します。
 1996年には就労可能年齢層1000人に対し、非就労可能年齢層は725.8人でした。
 2010年には就労可能年齢層1000人に対し、非就労可能年齢層は601.8人となっています。
 平均寿命が縮まっていて、非就労可能年齢層の人口が減っている、ということは、つまり15歳以下の子どもの数が減ったということです。

 就労可能年齢層を年代別に見た統計があります。
 チェルノブイリ事故が起きてから4年後の1990年当時25歳から29歳だった人が就労可能年齢層全体に対して占める割合は15%でした。しかし当時40歳から44歳だった人が占める割合は8%だけです。
 私の個人的な印象ですが、ずいぶん差があるように感じました。

  この世代は第二次世界大戦終戦後5年以上経過した1950年から1954年にかけて生まれた世代です。
 1940年から1944年にかけて生まれた戦中世代が占める割合は1990年で12%です。
 終戦直後の1945年から1949年生まれの世代は1990年で9%の割合です。
 戦争が終わってから生まれた1950年から1954年生まれの人が1990年のときに8%の割合しか占めていないのはどうしてなのか、この資料には理由は書いていません。
 
 10年後の2000年には、1990年当時40歳から44歳だった人たちは50歳から54歳になっています。
 そして割合は8%から7%に減っています。

 1990年に当時25歳から29歳だった人は10年後の2000年には35歳から40歳になっています。
 割合は15%から14%に減っています。
 さらに10年後の2010年には45歳から50歳になっていますが、割合は13%に減っています。
 減っていますが、それでもこの年齢層が占める割合が就労可能年齢層の中では一番多いです。
 1965年から1969年にかけて生まれた人たちがベラルーシ社会の中では多く、現在社会を引っぱっているのだな、と感じました。

 2010年の調査結果を見ていると、15歳から19歳の年齢層の人は10%です。そして2010年の時点では就労可能年齢層の中でこの年齢層が最も少ないのです。
 つまり10代後半の年齢層の人口が15歳から60歳までの間では、一番少ない、ということです。
 この人たちは1995年から1999年生まれの世代です。

 これが5年後の2015年にはどうなっているのだろう、と予想してみると、この人たちは20歳から24歳になっていますが、人数が少ないので、職場に新人、新入社員があまり入ってこない、ということになります。
 この世代は就活が楽、という見方もできますが、ベラルーシ経済が低迷したままだと、新人枠そのものが狭まって、就職しにくくなるでしょう。

 現在人数が多く、がんばっている45歳から50歳の人たちも10年後の2020年には55歳から60歳となり、定年を迎えます。それ以降は全人口に対して就労可能年齢層が占める割合が、急激に減ってしまうかもしれません。
 
 日本も人口に関しては問題を抱えていますが、ベラルーシも2020年代以降から、人口問題が社会に大きな影響を与えるようになるかもしれません。
 

ゴメリ州の出生率と死亡率

2012-01-10 | 放射能関連情報
 「ゴメリ州住民の健康と環境」からの抜粋記事の続きです。

 1993年から2010年にかけてゴメリ州では死亡率が出生率を上回った状態が続いています。
 1996年以降2010年までのデータがこの資料に載っていますが、そのうち、死亡率が最も高かった年は2002年です。人口1000人に対し、15.5人の死亡者数、となっています。
 この期間の中で最も死亡率が少なかった年は1996年で人口1000人に対し、13.7人となっています。もう少し詳しく見てみます。
 1997年は13.9人。
 1998年は14.2人。
 1999年は14.8人。
 2000年は14.0人。
 2001年は14.6人。
 2002年は15.5人。
 2003年は15.0人。
 2004年は14.6人。
 2005年は15.0人。
 2006年は15.0人。
 2007年は14.4人。
 2008年は14.5人。
 2009年は14.7人。
 2010年は15.1人・・・となっています。

 では出生率のほうはどうかと言えば、1997年に人口1000人に対して9.1人というのが、1996年から2010年の期間で限って言うと、1997年が最低で、最高なのは2009年です。
 1996年は9.5人。
 1997年は9.1人。
 1998年は9.5人。
 1999年は9.7人。
 2000年は9.6人。
 2001年は9.6人。
 2002年は9.2人。
 2003年は9.2人。
 2004年は9.3人。
 2005年は9.4人。
 2006年は10.0人。
 2007年は10.9人。
 2008年は11.4人。
 2009年は11.8人。
 2010年は11.6人・・・となっています。

 つまり2006年からようやく出生率が微増に転じたわけです。
 その理由はいろいろありますが、最大の理由はさまざまな少子化対策をベラルーシ政府が打ち出したからです。
 しかし人口1000人に対する死亡者数のほうが出生児数を上回っています。
 したがって人口の自然増加率はずっとマイナスのままです。
 死亡率が高く、出生率がまだ増えていなかった2002年の人口自然増加率が最も低く、出生率が増えてきた2006年以降は自然増加率も増えています。

 このまま自然増加率がマイナスの水準が続けば、ゴメリ州の人口は減っていく一方だと予想されます。
 この傾向はゴメリ州だけではなく、ベラルーシ全体にも言える傾向です。
 
 どうしてベラルーシはこんなに死亡率が高いのか・・・にもいろいろな理由があります。
 こちらの記事を参考にしてください。(気分的に暗くなりますが・・・。)
「自殺率世界一の国はベラルーシ」

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/393d96c656ebc93416af37156fea35b5
  

 妊娠が可能な年齢を15歳から49歳と限定するとします。
 2010年ゴメリ州でこの年齢層に当たる女性1000人に対し、出生した数(死産数を除く)は44.5人でした。
 しかしゴメリ市(日本で言うところの県庁所在地に当たる都市)では36.9人で、少ないです。
 ゴメリ市を除くゴメリ州の地域では出生率が高く、45.0人から60.4人です。ゴメリ市だけ平均より極端に出生率が少なく、そのためゴメリ州全体の平均の出生率を押し下げているような状態です。
 
 ゴメリ州全体の平均の出生率44.5人という数字ですが、これは13年ぶりに元の水準に戻ったいう数字です。
 つまりゴメリ市ではまだ元の水準に戻っていない、ということになります。

ゴメリ州の人口

2012-01-10 | 放射能関連情報
 ゴメリ州における糖尿病児童数について12月に投稿しました。


http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/dcd1f973b03f5278012960753ccf551e


 元の資料は「ゴメリ州住民の健康と環境」(ゴメリ州立衛生・伝染病学・公衆健康センター発行。2011年度版)ですが、ここに掲載されているグラフをこのブログで引用できないかいろいろ試したのですが、うまくいかないので、日本語文章で説明しています。糖尿病児童数の推移についてももっと詳しく数字を訳して追加しましたので、ご覧ください。

 ロシア語版しかありませんが、ゴメリ州立衛生・伝染病学・公衆健康センターはサイトを持っており、そこで「ゴメリ州住民の健康と環境」以外にもゴメリ州の健康状態に関するさまざまなデータを見ることができます。

http://gmlocge.by/ru/Reviews/


 この資料にはさまざまな病気のデータが掲載されています。抜粋してこのブログで日本語でお知らせします。
 
 まずゴメリ州の人口についてです。
 1996年(チェルノブイリ原発事故発生から10年後)の時点でゴメリ州の人口は159万2千人でしたが、その後人口は毎年減り続け、2010年には143万7900人になっています。特に農村部の人口が減少しています。
 もっとも人口が減っているのはゴメリ州だけに限った話ではありません。ベラルーシ全体で人口は減っています。
 詳しくは2009年に行われた人口の調査結果についてこちらをご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/f3a29ab4afbf65cb9383d531a234718d


 2010年のゴメリ州の人口構成は男性が46.4%で、女性は53.6%です。
 これは女性1000人に対し、男性は864人いる、ということになります。これが都市部だと855人で、農村部だと887人になります。つまり都市部は男性が少ない、ということです。
 
 ところが年齢と地域でもう少し詳しく見てみると、女性のほうが少ないことも分かります。
 2010年の調査では1歳から15歳までだと男性1.0人に対し、女性は0.9人です。居住地域は無関係です。
 簡単に言うとゴメリ州では男の子より女の子が少ないのです。

 もっとも男の赤ちゃんのほうが生まれる率は高く、これは世界的な傾向です。
 統計によれば男の赤ちゃん105人が生まれるのに対し、女の赤ちゃんは100人です。日本でも男の数のほうが女の子の数より多いです。
 ただゴメリ州の場合は女の子100人に対し、男の子は111人となりますので、世界的な平均よりやはり男の子の数が多い、ということになります。 

 さらにこの女性人口が少ないという傾向は農村地域では55歳まで続いています。男性1.0人に対し、女性0.8人から0.9人、という状態です。ところが55歳以上の年齢になると急に男性の数が減っています。
 例えば65歳から69歳までの年齢層では、男性1.0人に対し、女性は1.5人。80歳以上の年齢層では男性1.0人に対し、女性は3.5人となります。これは第二次世界大戦の影響もあると思います。

 都市部のほうを見てみると20歳から24歳までの年齢層で男性1.0人に対し、女性1.0人となり、30歳から34歳までの年齢層では男性1.0人に対し、女性は1.1人、と女性のほうが増えています。
 35歳から39歳の年齢層では男性1.0人に対し、女性1.2人。
 50歳から55歳では女性1.3人。
 65歳から69歳では女性1.5人。
 80歳以上で女性2.8人。
 ・・・と年齢が高くなればなるほど女性の人口が増えていきます。
 
 つまり、ゴメリ州では男の子のほうが女の子より多いけれど、男性が短命傾向にあり、全体で見ると男性人口のほうが女性人口より少ない、ということになります。

  
 

毎日新聞の記事

2012-01-05 | 放射能関連情報
 2011年12月30日付の毎日新聞の記事
「暮らしどうなる? チェルノブイリの経験から 内部被ばく減らす食事を」です。

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20111230ddm013040013000c.html


 ベラルーシだけではなく、ウクライナの事例も紹介されていますので、ぜひご覧ください。