ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

甲状腺にセシウムが蓄積する(追加の内容があります)

2011-07-16 | 放射能関連情報
 先ほどの投稿記事にも書きましたが、甲状腺にはヨウ素だけではなく、セシウムも甲状腺に蓄積することが分かりました。
 正直言って知りませんでしたし、ショックでした。私は甲状腺にはヨウ素しか蓄積しないと、思っていて、しかもベラルーシでは風土病として慢性的ヨウ素不足状態が続いており、それでSOS子ども村に行ったときにはいつも
「海草を食べよう!」
と保養家族のお母さんや子どもたちに話してきたのです。
 もちろんそれは無駄ではないし、これからも続けますが、甲状腺被曝に関してはヨウ素のことだけ考えてればいい、というものではなくなってしまいました。

 確かにねえ・・・おかしいと思っていたんですよ。
 ベラルーシでチェルノブイリ原発事故後、甲状腺の異常が増え、それが放射性ヨウ素被曝によるものであるというのは事実ですが、ヨウ素の半減期は8日間ですよ。
 事故から25年経っても、SOS子ども村で癌でなくても、甲状腺肥大のある子どもにたくさん出会ってきました。もちろん年齢から言って事故後に生まれた子どもばかりです。
 晩発性によるものなのか、親からの遺伝なのか? と思っていましたが、そうではなく、セシウムが蓄積したことによる異常だったのですね。

 私はこのブログにも書きましたが、日本はベラルーシと違ってヨウ素がたくさん含まれている食品が多くあるし、それをたくさん食べる食生活を送っていますから、ベラルーシのような甲状腺癌が今後増える、というようなことは日本ではないだろう、と思っていました。
 しかしヨウ素だけが甲状腺に蓄積するのではないとしたら、日本もベラルーシ同様、今後が心配です。
 どうか皆さん、被曝対策をしてください。特にお子さんの被曝をできるかぎり防いでください。
 

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 この記事と前の記事「内臓に蓄積するセシウム」でご紹介した内容について追加の情報です。
 個々の内臓のセシウム蓄積量について研究した元ゴメリ医大の学長バンダジェフスキー氏について、入学した学生からわいろをもらった罪により、投獄されていた(だから学長もやめさせられた。)ことがある人で、信用できないといった意見や、論文内容に不適切な部分がある、という人もいます。(以下の「buveryの日記」をご覧ください。)

http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110701


 しかし、こちらの木下黄太さんのブログをご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/2b356495a621a17046356b99b27142d2


 ここにコメント欄でこのように書き込んでいるアメリカ在住の医師、と言う方がいます。「buveryの日記」の中の内容を分析されています。
 長いので、こちらで一部だけご紹介しますが、ぜひともこの方のご意見を木下黄太さんのブログのほうで読んでください。

「バンダジェフスキー博士は、当時隠蔽されていた、内部被曝という情報を公にするために、研究をされたようです。その研究のためにゴメリ医科大学を設立されたそうです。 しかし、結果的に、恐らく真実を述べられていたがために投獄されたそうです。 そして、釈放された後、恐らく、健康を取り戻しながら、研究成果を出版されたのだろうと察します。
(中略)
 第一印象としては、その研究がされた背景を考慮し、現在私達が、セシウムはカリウムと似ていて、主に筋肉に集中する、と思っている事も考慮したら、画期的な情報だと言えると思います。 筋肉の細胞は、ナトリウムとカリウムのイオンポンプを用いています。 だから、筋肉中にはカリウムの分布が多いのです。 それが、他の臓器にも蓄積される、と言うのは、大変重要な情報です。

 批判されてるブログの方が、どういう素性の方なのか分かりませんが、おそらく、統計学にも詳しく、医学論文がどうあるべきか、と言うのを御存知なのだと思われます。 しかし、論文中の3つのデータの整合性がないと言われているのは、原文を読めば、3つのグループが明らかに別々のグループである、と言うのが分かるので、整合性を求める方が無理があるのでは?とも思います。例えば、最初のデータは、生後6ヶ月未満の乳児6人から。 2つ目のデータは、ゴメリ郊外に居住していた大人と子供から。3つ目のデータは、10歳未満の子供達51-52人。最初から、3つのデータを整合しようと書かれてないように思えます。

 この方のブログエントリーの提議は、「セシウムは甲状腺に集積して、甲状腺癌を引き起こすのか?」なので、その方が出された答えの、「ある程度は集積されるかもしれないが、極端に集積する訳ではない。 ただし、小児甲状腺癌は引き起こさない。」という結論は、それなりの答えになってるのだろうとは思います。(小児甲状腺癌のデータは、別の論文から得られてます。)

 (中略)
 一般的に、放射線被曝で癌になる、ならない、が良く話されているようですが、癌まで至らなくても起こる疾患が、山ほどあるのです。免疫力の低下によって起こる様々な不具合。 

(中略)
 例えば、甲状腺癌。 早期に発見されて癌摘出手術を受けたら、あとは甲状腺ホルモンを投与すればOK、と言う風に言われてますが、その診断に至るまで、どれほどの症状が出るのか、御存知ですか?
(中略)エネルギーがなくて、体がちゃんと動いてくれず、いつも疲れていて、普通の日常生活が送れないのです。
 被曝の症状は、甲状腺が大きく取り上げてられますが、それだけではありません。

(中略)
 それを、私達は、今までのデータや研究の隠蔽のせいで、知らないだけなのです。セシウムが筋肉だけでなくて他の臓器にも蓄積されると言うのは、非常に貴重な情報です。
 インターネットのおかげで情報の共有が簡単になったから、今回の福島原発事故からの影響は、こういう木下さんのブログなどのおかげで、隠蔽は困難だと思います。

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 引用は以上です。このアメリカの医師さんと私は全く同意見です。 
 甲状腺に放射性ヨウ素が蓄積すると癌になると言われていますが、みんながみんな癌になるわけではありません。
 また甲状腺にセシウムが蓄積すると癌になるのか? ときかれると「分かりません」と答えるしかない。しかし癌にならないのだったら、放射性セシウムが甲状腺にたまってもいいのか? ときかれると、やはり蓄積するより蓄積しないほうがいいに決まっています。
 だって、放射性物質ですよ。

 それからバンダジェフスキー氏の手紙が日本語に訳されています。ぜひご覧ください。

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/etc/RFERL/Banda-j.htm


 ベラルーシに住んでいる人間からすれば、バンダジェフスキー氏の投獄事件は裏が丸見えです。
 ベラルーシは経済状態がずっと低迷し続けており、チェルノブイリ関係の国家予算を減らしたくて
「事故からこんなに時間が経ったのだから、もう大丈夫。汚染地域にみんな住めますし、元気に暮らしています。」
と強調しています。
 そこへバンダジェフスキー氏が「低レベルの被曝でも健康に影響が出る。」と警告したわけです。
 ベラルーシ政府からすれば「寝た子を起こすな」でしょう。
 アムネスティーが良心の囚人としてバンダジェフスキー氏の釈放を求めたのもうなづけます。
  

内臓に蓄積するセシウム

2011-07-16 | 放射能関連情報
 セシウムについてですが、ICRP(国際放射線防護委員会)等は筋肉など全身に分布する、としており、日本の学者にも同意見の人がいます。
 しかし、ベラルーシの研究では「セシウムは全身の筋肉に平均して分布(蓄積)するのではなく、内臓に多く蓄積する。特に心臓、腎臓、肝臓に多く蓄積する。」
とされています。
 このことについてもう少し詳しくご紹介したいと思います。(気が滅入るのですが・・・。)

 もともとどの内臓にセシウムが蓄積するのかを測定するのはとても難しいものです。それを測る特別なホールボディカウンタがありますが、ベラルーシには1台もありません。ウクライナにはあるそうです。
 しかしこれは精巧な測定ができるものではありません。だいたい
「胸部には○○ベクレル」「腹部には○○ベクレル」という結果しか出せません。
 つまりそれを使って測定したとしても、特に腹部には内臓がいくつもあるので、腹部にあるどの内蔵に具体的にどれぐらいのセシウムが蓄積しているのかまで分からないのです。

 動物(ラット)に放射線をあてたエサを与え続け、それから解剖して内臓の中のセシウムを測定する実験も行われましたが、同じことを人間でするのは人道上問題があります。
(この実験の結果でもラットでは心臓が最高のセシウム濃度で、最小のセシウム濃度は骨と筋肉組織に見られたそうです。これは以下に述べる「人体に入った放射性セシウムの医学的影響」という著書からの引用です。)
 
 しかしベラルーシのゴメリ医大では内臓に蓄積されたセシウム137をかなり正確に測定することができました。
 それは、ゴメリ市で病死した人(大人も子どもも含む)を解剖して、内臓をそれぞれ取り出してから、個々に測定し1キロ当たりのベクレルを計算して、また内蔵を元の場所に戻し、縫い合わせて遺族に返す、ということを行ったからです。

 1997年に死亡した大人と子どもの内臓のセシウム137の分布については元ゴメリ医大の学長だったバンダジェフスキー氏が発表した「人体に入った放射性セシウムの医学的影響」という著書(日本語に訳されています。)で、発表されています。
 それによると、大人は比較的平均してセシウムが内臓に分布するのですが、子どもはとびぬけて甲状腺に高い値のセシウムが蓄積しています。1キロあたり1200ベクレルです。大人では約400ベクレルです。
 
 このほか大人は蓄積が少ないのに、子どもは多い、という内臓は心筋(大人約150ベクレル、子ども約600ベクレル)、小腸(大人300ベクレル弱、子どもは700ベクレル弱)です。

 このほか、心臓や血管の病気で死亡した人の心筋と、消化器官の病気で死亡した人の心筋を比べると、前者のほうが多くのセシウム137の蓄積が見られました。

 伝染病で死亡した人と、血管と消化器官の病気(主に胃と十二指腸の潰瘍)で死亡した人の肝臓、胃、小腸、すい臓と比べると、前者のほうが多くのセシウム137の蓄積が見られました。

 このような病死者の死体解剖による個別の内臓のセシウム測定は、世界的にも珍しいです。
 検体になりうる人がたくさんいたベラルーシだからできたことではないでしょうか。

 しかし、私はこの記事を書いていると気が滅入ってくるのです。
 将来、医学や科学のために、あるいは後世の人のための情報として、有益な情報だと思ってこのような測定が行われたのは理解できますし、貴重なデータを大切にしたいと思います。
 しかし、今後日本で同様の研究を医学や科学や後世の人のために行うとすると・・・どうでしょうか?
 被曝した日本人が亡くなられた後に検体になってしまうのでしょうか。
 大規模な原発事故が起きてしまったのですから、日本でも検体になりうる方が増えてくる、ということです。
 科学のため、後世の人のため、と割り切ることができれば、自分の体を死後、研究のために差し出す人も出てくるでしょう。そのデータが、やがて生かされ、世界にも発信され、今皆さんが「ベラルーシの場合はこうだったのだな。」と思いながらこの記事を読まれているように、やがて世界の人が「日本の場合はこうだったのだな。」と読まれるようになるのか・・・と思います。
 医学の進歩は必要、しかし・・・と私は思ってしまいます。 
  
 日本では今後どうなるのか分かりません。
 とにかく以前ベラルーシで内臓のセシウム測定のため解剖された人たちがいた、その中には子どもも含まれていた、ということを忘れてほしくないです・・・。
 鎮魂と言う言葉が胸の中に浮かびます。
 この測定実験の検体となった方々の魂にお祈りしたいです。

ドイツ女医のインタビュー

2011-07-16 | 放射能関連情報
 木下黄太さんのブログ「福島第一原発を考えます」内で
「必読! 低線量被曝による「脳障害」「不妊」「糖尿病」などを警告するドイツ女医のインタビュー」
 という記事が公開されています。こちらをご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/2f7dbec88afae5b028b4215c0e4f278f


 ドイツ国営放送ARDのニュース番組、TagesschauのHPにチェルノブイリ被害者救済活動を続けるドイツ人女医、デルテ・ジーデンドルフ氏へのインタビュー記事が掲載されており、それを「福島第一原発を考えます」グループで、メンバーのドイツ在住の女性翻訳家の方が日本語に訳してくださったものです。
 翻訳していただき、本当にありがたいことです。

 この女医さんは1990年からベラルーシで医療支援活動をしている方です。
 ベラルーシでの事故後から今までの状況や、現在の状況などがよく分かります。
 私としては特に、糖尿病についてのお話の部分を興味深く読ませていただきました。チロ基金もゴメリ州モズィリ市に住む糖尿病児童への支援活動を行っていますので・・・。
 「糖尿病はチェルノブイリ事故の後、子ども達の間に急激に増加した病気の一つで、新生児でも糖尿病を発症するケースがあります。」
 という言葉にああやっぱり、と思いました。ベラルーシの糖尿病児童協会の方が話されていたことと全く同じなのです。
 大変勉強になりました。
 でもやっぱり、日本でこれから糖尿病(I型のほうです)の子どもが増えていくのだろうか・・・と考えると暗い気持ちになりました。
 そうならないように、どうか日本人の皆様、本当に放射能に気をつけてください。