イスラム国による日本人人質事件について連日報道されていましたが、ジャーナリスト後藤健二さんが殺害されたときにイスラム国は今後も日本人をテロの標的にすると宣言しました。
日本政府は在外邦人の保護や国内でのテロの未然防止に全力を挙げる方針を発表しました。
日本国内に住む日本人だけではなく、海外に住む日本人も標的にするということで、各地の日本人学校や日系企業が安全についての対応を求められるようになりました。
ベラルーシには日本人学校がないので、日本人の子どもがまとめてテロリストに狙われるということはないと思います。
日本外務省から邦人安全を促すよう日本大使館に通知されたそうです。今のところ在ベラルーシ日本大使館から、ベラルーシに住んでいる日本人への注意喚起の連絡は来ていません。
ベラルーシはイスラム教の信者も少ないし、テロの危険性は少ないと思われているようです。
しかしイスラム国がベラルーシでテロを起こさないという100%の保証はありません。
今回の日本人人質事件が起きたとき、やっぱり自己責任の話が出てきていました。
政府が自国民の安全のために「渡航を自粛」などの注意を促していた地域へすすんで行った人が悪い、という考えです。
一方日本の憲法では行動の自由を認めているので、強制的に渡航するのを止めることができません。
自己責任で危険なところへ行った日本人は助けなくていい、という日本人がいることを知った私は「そうか、私がベラルーシで何か危険にさらされても、そんなところに住むことに決めたあんたが悪いと言われて、助けなくてもいいと思われるのか・・・」と覚悟しました。
日本政府は欧米諸国と比べて自国民を助けようという姿勢が乏しいといった意見も今回の事件を受けて出てきているのですが、私自身はこの意見に賛成も反対もできません。
今から7年前に在ベラルーシ日本大使館が「安全の手引き」というパンフレットを作成し、ベラルーシに住んでいる日本人に無料配布しました。内容は海外に住む日本人向けだけではなく、具体的にベラルーシに住む日本人向けのアドバイスです。
細かいアドバイスがあるのですが、いよいよ事態が悪化し、ベラルーシから退避するよう勧告が出た場合はどうしたらいいのかも記述があります。
1.飛行機に乗りベラルーシ国外へ脱出する。
2.空路の脱出が無理だった場合、陸路でリトアニアかポーランドへ脱出する。
3.緊急事態が発生し、大使館に集合するするよう言われることがあるので、そのときは大使館の指示にしたがうこと。
そのときの携行する荷物は最小限にとどめること。
ただし食料は各自が持参すること。
大使館(というより日本政府が)避難先への交通手段(チャーター機など)を用意することもある。ただし交通費は各自が負担。後払いOk.
・・・ということなのですが、1と2の場合、自宅から空港へ行く途中の安全などは当然保障されていないわけです。陸路の交通手段というと、列車、バス、自家用車というパターンが多いですが、そこでの安全の保障もないわけですから、とにかく自分で自分の身を守りましょう、努力してください、ということです。
3ですが、日本政府が用意するチャーター機なので、日本国籍を持っている日本人は乗れますが、そうじゃない人は乗れません。当然と言えば当然なのですが、私のように国際結婚している人はこれが困るんです。
私と子どもは日本国籍を持っているので、このチャーター機に載って日本まで帰れますが、ベラルーシ国籍の夫は乗れないんです。
つまり夫と今生の別れをするか、日本へ脱出するのはあきらめて、家族3人ベラルーシに住み続けるか決めないといけません。
家族3人いっしょにどこかへ避難する方法もありますが、陸路の場合リトアニアとポーランド、ラトビアへ行くときに日本人はビザがいりませんが、ベラルーシ人はいります。
ロシアへ行くのにベラルーシ人はビザはいりませんが、日本人はいります。つまり緊急に逃げないといけなくなったとき、家族そろって、国境を越えることができるのが、ウクライナだけなんです。
ベラルーシがこんな緊急事態に陥っているときにウクライナがどうなっているのかも分からないのですが、いよいよとなったら、ウクライナへ避難することになると思います。
こんな事態には陥りたくはないのですが、とにかくそもそも大使館や日本政府や頼りにしようとか、安全を確保してくれとかお願いする気持ちもあまりないです。
と言うか、あまり頼り切ってしまうのはよくないと思っています。できる限りのことは自分でやらないといけないよね、と自分に言い聞かせています。
大使館が上記のパンフレットを作成したとき、日本人の館員に1部いただいのですが、しばらくして、同じ大使館で働いているベラルーシ人スタッフが、同じパンフレットを日本人に配っていました。私はもういただいたのでけっこうです、と断ると、でもタダなんだしという感じでどうぞどうぞと言うので、
「あ、じゃあ1部は日本文化情報センターに置いておきましょうか。ときどき日本人旅行者がセンターに来ることもあるので。」
と言ったら、そのベラルーシ人スタッフはもう1人のベラルーシ人スタッフと顔を見合わせて、鼻で笑いました。
「Tさん、何言ってるんだろう。意味ないよねー。」と言う感じで2人はへらへら笑っていました。
はっきり言って不愉快でしたが、そのときもう1部もらってきて、実際に弊センターで閲覧できるようにしています。(最初にもらった1部は自宅に置いてあります。)
大使館員が一生懸命作ったパンフレットなのに、いっしょに働いているベラルーシ人スタッフがこんな低レベルの意識なので、大使館に全面的に自分の安全を守ってくださいと頼むつもりもありません。
自己責任ではなく、自己防衛ですよ。
ちなみに日本外務省が作成した海外安全マニュアルも大使館でもらえます。これを読むとテロ以前に偽警察に偽日本語ガイド、いかさま賭博にホテルでも盗難、ぼったくりバーに睡眠薬強盗、悪徳タクシーに麻薬の運び屋させられたとまあ、どこの外国へも行きたくなくなるような注意事項が並んでいます。
外国へ行ったら周りの外国人がみんな犯罪者に見えてしまうんじゃないかと思えてくるぐらいです。でもそんなことを気にしていたら、外国暮らしなんてできないですよねえ。
それとこのマニュアルに欠落している注意事項は「日本人だからと言って信用してはいけない。」とう点です。
外国へ行って、外国人を警戒ばかりすると、つい日本人同士かたまってしまうようになるかもしれませんが、それがまた100%安全とは限らないと思います。
日本人でも犯罪を起こす人はいっぱいいるわけですから。
結局できるかぎり自分で自分の身を守る、そのためには知識を集めて事前に準備しておくことが大事だと思います。
イスラム国が日本人を標的にすると宣言した中で、ベラルーシは宗教テロが起こる可能性は非常に少ない国ですが、日本文化情報センターとしては、日本大使館からは注意喚起の通知は来ていませんが、独自に安全確認をしておいたほうがいいだろうなと思いました。
宗教テロはないのですが、過去にはベラルーシでこのような
爆破事件が起きたこともあります。
そのときには日本大使館から日本人全員に安全確認の電話がかかってきます。
海外に住む日本人は、その国に三ヶ月以上滞在するときは現地の大使館に在留届を提出しないといけない義務があります。
地域によっては三ヶ月以下でも提出したほうがいいとされているところもあります。
この在留届を出していると、不特定多数の市民が巻き込まれる事件や事故、自然災害が発生したときに大使館から安否確認の電話がかかってきます。
2008年に
爆破事件が起きたときにも電話がかかってきてました。
ちょうどそのときに知人の日本人がベラルーシへ旅行に来ていたのも知っていたので、まず自分の安全を大使館員に伝えた後に
「あのう、私の知り合いが今ベラルーシにいるんですけど、電話番号を知っているのでその人の安否を確認しましょうか?」
と話したところ、大使館員からは「(あ、その人の安否確認は)いいです。」と返事でした。
この人が冷たい人間とかいうわけではなく、つまり在留届を出している人の安否さえ確認できたらそれでいい、という業務をこなしているだけなのです。
要するにこういう決まりになっているのです。
ここで問題なのは、在留届を提出しないといけないのは、滞在が3ヶ月以上になる人という点です。
1ヶ月の短期留学をする人もいるでしょうし、旅行でベラルーシ訪れ3ヶ月以上滞在する人はほとんどいないと思います。
ベラルーシへやって来る日本人の多くが在留届を出す義務はなく、したがって何か起きても、大使館は安否を確認してくれない(方法がない)、言い換えれば、自ら大使館に駆け込まない限り日本大使館は日本人を助けてくれないのです。
この3ヶ月というのは長すぎると思いませんか。
今回の日本人人質事件を受けて、この3ヶ月を短くしようと検討する動きが政府内で出てきました。
そのほうが対象となる日本人が増えますので、非常事態が起きたときの邦人安全確保のためには一助になると思います。
ただ、在留届を出していたらそれでいいというものではなく、やはり各人が自分でできることはできるだけするほうがいいと思います。