ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

ウクライナからロシアへ

2011-07-13 | 放射能関連情報
 ウクライナのペクチン研究の成果は、その後ロシア、ベラルーシへと広がりました。
 例えばロシアではアクヴァミルという会社が「ゾステリン・ウルトラ」というペクチン剤を製造し、現在も販売しています。
 この会社についてはHPが最近できたようなので、興味のある方はご覧ください。英語バージョンもあります。

http://www.zosterin.spb.ru/index.html


 このHPによると「プルトニウムも1.5倍から2倍排出する」とあって、すごいと思いました。
 しかしこのプルトニウム排出のことも、ちゃんと2005年にベルラド研究所が発表した「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」に載っています。画像をご覧ください。
 こちらもロシア保健省が有効であると認めています。
 
 とにかくベルラド研究所だけが「ペクチンが放射能排出作用がある。」と言っているわけではない、ということが分かっていただければ、と思います。
 
 
 

先ほどの画像のフランス語訳です

2011-07-13 | 放射能関連情報
 先ほどの投稿記事のロシア語版のフランス語訳です。ただ、少し該当箇所がずれています。
 私はフランス語がわからないのですが、ちょっとずれている(ロシア語版より、フランス語版のほうが内容が先に進んでいます。)のは分かりました。
 でも大事な情報が載っている箇所は両方の画像に載っています。

ペクチンが体内の放射能を排出するメカニズムについて(ロシア語)

2011-07-13 | 放射能関連情報
 こちらの画像がウクライナ保健省が発表したペクチンが体内の放射能を排出するメカニズムについてロシア語で説明している部分です。
 2005年にベルラド研究所が発表した「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」という論文のうち、14ページにあたる部分です。
 画像をクリックすると拡大します。

 ここではペクチン剤が胃の中で放射性物質を吸収すること、大腸においても直腸にいたるまで、作用が残ること、吸収されたペクチンは血液の中へ移動し、内臓中のセシウムと結合し尿といっしょに体外へ排出される作用のことが書かれています。

 これもフランス語訳がありますので、読める方は次の投稿記事をご覧ください。(ちなみに私はフランス語は分かりません。)

 

フランス語版です

2011-07-13 | 放射能関連情報
 先ほど投稿した記事の画像のフランス語版です。
 残念ながら英語版はないそうです。
 ロシア語は分からないけど、フランス語は分かる、と言う方、読んでみてください。
 画像をクリックすると拡大します。

ペクチンの効果を発見・実証したウクライナ

2011-07-13 | 放射能関連情報
 そもそもペクチン剤が体内の放射能を体外に排出する働きがあることを、最初に正式に証明し、商品化したのはベラルーシ人ではなく、ウクライナ人でした。
 もともとソ連では1950年代末からペクチンの放射能排出作用について研究が始まっていたそうです。

 チェルノブイリ原発事故が起こってから、11年後の1997年にはすでに「ヤブロペクト」というアップルペクチンが開発され、商品化されました。その前にヤブロペクトが放射性物質のほか有害な物質(鉛など)も排出する作用があるということが、ウクライナ保健省から認められました。
 ちなみにヤブロペクトのヤブロ、とはリンゴのことを意味します。つまりアップルペクチン、をロシア語で言うのを縮めた言い方です。

 画像はウクライナ保健省がヤブロペクトについて認可したときの書類をコピーしたものです。(画像をクリックすると拡大します。)
 これが2005年にベルラド研究所が発表した「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」の初めのほうに引用されています。
 これがないと、ベルラド研究所も前に進めませんからね。(ビタペクトはヤブロペクトをさらに改良したものですから。)

 画像は最初の1枚だけですが、全部で3ページにわたり、ウクライナ保健省の公印も押してありますし、認可するに当たり、効果を調査した保健省下の研究機関であるウクライナ学術調査医薬品研究所のメンバーの方々の氏名と署名が13名分記載されています。

 しかしこの画像
「ロシア語だから分からない。Tは嘘をついているのではないか?」
と思う人もいるでしょう。
 この書類はフランス語版もありますので、次の記事をご覧ください。
 
 

ペクチンが体内の放射能を排出するメカニズム

2011-07-13 | 放射能関連情報
 ペクチンは放射能排出効果がない、と紹介している日本人のライターさんの記事についてベルラド研究所に問い合わせました。
 この記事の中で

 (フランスの研究所)IRSNは、この2004年の研究以外の(ベルラド研究所の)ペクチン研究も含めて評価し、現状ではペクチンが放射性物質の除去に役立つとする根拠がないことを示し、必要な試験等を懇切丁寧に提言している。
 だが、提言に沿う実験が行われ発表された気配はない。」

 ・・・とあるのですが、ベルラド研究所はどう思いますか? これだけ読むと日本人読者は
「せっかくフランス人が懇切丁寧に提言してあげているのに、耳を貸さないとはベルラド研究所は不真面目な研究所だ。」
と思ってしまうでしょうね。
 と私が言うと、ベルラド側からは
「フランスのIRSNが、私たちに提言? 聞いたことないです。」
という返事でした。
 がくっとなりましたよ。要するにフランスはアドバイスしてあげたけど、それをベラルーシ側は全く知らなかった、ということです。
「そのフランスからの提言、というのはどうやったら読めるんですか?」
と日本人の私に尋ねてきたので、リンク先を教えてあげました。今読んでいると思います。 

 さて、ペクチンが体内の放射能(セシウム)を排出するメカニズムについてベルラド研究所から資料をお借りしました。
 画像はその資料の表紙です。
 この資料は2005年にベルラド研究所が発表したものです。「ベラルーシのチェルノブイリ・ゾーンにおける住民の放射線モニタリングとその食品」という題名です。
 この資料の内容はもう少し詳しくご紹介しますが、ここで分かりやすくペクチンが体内の放射能を排出するメカニズムについてご説明します。

 まずペクチン剤を摂取すると、胃の中に入ります。放射性物質を含んだ食品が胃の中にあった場合、ペクチンは放射性物質を吸着させます。それはセシウムが陽イオンを持っており、ペクチンが陰イオンをもっているために、磁石のようにお互いがくっつくからです。
 さらにペクチンの作用は大腸の中でも続き、直腸まで続きます。 
 こうしてセシウムはペクチンといっしょに大便として、体外に排出されます。
 陽イオンとか陰イオンとは何だろう? と思った人もいると思いますが、化学記号の右にプラスとかマイナスとか書いてあるのを見たことがあると思います。
 Na+ こういうのや、NO3− こういうのです。このプラスが陽イオンで、マイナスが陰イオンです。

 もう一つの排出する方法ですが、まず
「セシウムについて、ICRP(国際放射線防護委員会)等は筋肉など全身に分布する、としている。」
 という前提についてです。
 チェルノブイリ原発事故の後、学者の予想としてはセシウムは筋肉に蓄積するから、そのうち筋肉に癌(肉腫)ができた、という患者が大量発生するだろう、と言われていました。
 しかし実際には筋肉の癌について発生件数は特に増えず、過去の予想が外れた、ということになっています。
 さらにベラルーシの研究では
「セシウムは全身の筋肉に平均して分布(蓄積)するのではなく、内臓に多く蓄積する。特に心臓、腎臓、肝臓に多く蓄積する。」
とされています。
(この研究については別記事で投稿します。)

 セシウムの蓄積一つをとっても、専門家で意見が分かれるところです。
 ここでは後者のベラルーシの研究結果を前提として考えます。 
 ペクチンは腸粘膜から吸収され、血液の中へ移動します。そして心臓、腎臓、肝臓などの内臓に到達します。そこでもペクチンがセシウムと結合します。
 最後には腎臓に集まり、尿といっしょに体外へ排出されます。

 ベルラド研究所では
「このようなメカニズムなので、ペクチン剤を飲んでいる人は水分もたくさんとって、おしっこの回数を増やしてください。そのほうがさらに効果があります。」
というアドバイスも受けました。

 
 

SOS子ども村の医師からペクチンについて意見

2011-07-13 | 放射能関連情報
 チロ基金はSOS子ども村で保養滞在している子どもたちにペクチン剤であるビタペクトを2002年から配り続けています。
 これも私からSOS子ども村に
「知ってましたか? ベラルーシにはこんなすばらしいペクチン剤があるんですよ。子どもたちに飲ませましょうよ。」
と勧めたわけではありません。
 もともと2002年より前からSOS子ども村ではビタペクトを保養滞在の子どもに飲ませていました。その予算はSOS子ども村の本部があるオーストリアから出ていたわけです。
 しかし、チロ基金からビタペクトをあげることができますよ、と申し出たところ、
「ありがたい。そうなるとビタペクトを購入していた予算で、ビタミン剤やフルーツジュースを購入することができます。」
というお返事をいただき、SOS子ども村は、それまでビタペクトに充てていた予算をビタミンなどに回すことができるようになったのです。
 つまりSOS子ども村はずっと前から、ペクチン剤が放射能の排出に効果があるということで、それを採用していたし、続けてもいる、ということです。
 
 私は「アップルペクチンはこてんぱん」の記事を読んで、SOS子どもで働く医師、リリヤ先生に
「こういう記事を書いている人が日本にいるんですけど・・・。」
と話してみました。するとリリヤ先生は何と言ったと思います?
「ああ、そのライターさん、買収されたのね。」
・・・。(私はそんなふうには思いませんが・・・。)
 
 リリヤ先生の意見をベラルーシで働く一人の医者として、さらに15年もチェルノブイリの子どもたちの保養滞在を支えてきた人としてご紹介します。
「そんなにアップルペクチンが効果がない、というのなら、どうしてベラルーシやウクライナでペクチン剤が放射能排出の方法として採用されているのでしょうか?」
 このブログでもご紹介しましたが低線量放射線障害「環境不適応症候群」

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/6a265307fac3231c6bb956355c0382f2


 この障害について解決方法を記してある「ベラルーシの児童における環境不適応症候群とその改善法」はベラルーシ保健省と放射線医療・内分泌学学術診療研究所が作成したものです。表紙にはベラルーシ保健省の公印が押してあります。(表紙の画像は上記リンク先を参照してください。)
 この本の中でも「環境不適応症候群とその改善法」として

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/95333e3d4ec7d1ead056b0cda97793cc

 
 ペクチン剤を摂ることを勧めています。
 ペクチン剤がそんなに効果がないのなら、ベラルーシ保健省はベラルーシ国民に低線量放射線障害の対策方法としてペクチンを勧めているのでしょうか?
 何の根拠もなく、ペクチンを勧めているのでしょうか?
 それともベラルーシ保健省は嘘つきなのでしょうか?

 またリリヤ先生は
「ペクチン剤が有効だと主張しているのはベルラド研究所だけではない。ヨーロッパの他の国の団体からも信頼がある。」
ろ話しています。
 例えば「そのほかのサプリメントについて 「スピルリナ」」でも内容を一部ご紹介していますが

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/a565b76e12b06886bc2e835f41298f50


 「住民を放射能から守る方法と助言、その効果」という本があります。表紙は画像をご覧ください。
 ベルラド研究所が2001年に発表した本で執筆者は前所長のワシーリイ・ネステレンコさんです。
 この本にはこのような実験結果が載っています。

 2000年5月から9月にかけて、イギリスのチェルノブイリ支援団体「チェルノブイリ・チルドレン・ライフ・ライン」とベラルーシ国家非常事態省内にある国際レスキュー協会、ベルラド研究所が共同で行った実験です。
 1215人のベラルーシの子どもがイギリスへ保養滞在に行く前に、体内放放射能値を測定しました。
 出発の際にはビタペクトを持たせ、イギリスで保養滞在中に摂取しましたた。(滞在の期間や場所は保養グループによっていろいろです。)
 このうち1137人の子どもがベラルーシへ帰国した後、体内放射能値を再測定できました。保養前の測定結果と比べると、平均して65.4%のセシウム137が減っていました。
 非汚染地域での保養滞在とペクチン剤の摂取を平行するとさらに放射能の排出効果がある、と本書では結論づけています。

 このイギリスの支援団体の活動は2000年で一回やってみて終わり、ではなくその後も継続しています。
 ペクチン剤が全く効き目がないなら、イギリスの団体はこのような支援活動をどうして続けているのでしょうか?

 このほかリリヤ先生のお話によると
「ゴメリ州に『セレブリャヌィエ・クリューチ』(翻訳すると「銀の鍵」と言う名称。)という国立の子ども保養所があります。これは保養所の中でも特別で、チェルノブイリ・ゾーンに住む子どもたちの中でも体内放射能測定の結果が、体重1キロあたり数百ベクレルから数千ベクレルだったという、特に被爆が高い子どもが優先して保養滞在しています。この保養所でも子どもたちにビタペクトを飲ませています。
 そのほかのベラルーシ国内の国立保養所でも、保養滞在中の子どもたちにビタペクトを飲むのを採用しているところがたくさんあります。
 ペクチンがそんなに効かないなら、どうして国は子どもたちに保養所でビタペクトを飲ませているのでしょう? 根拠もなしにそんなことするわけがありません。全く無効なら、ペクチン剤の購入にかける予算をわざわざ出さないでしょう。」
 ・・・ということでした。

 いろいろ書きましたが、ベラルーシで働く一人の医者の意見としてお読みください。
 松永さんの記事を読んで
「えっ! 私、今ペクチンサプリ飲んでいるんだけど?! 効かないの?!」
とびっくりしたり、がっかりした人もいると思います。
 松永さんの意見やフランスの研究所の意見は意見として尊重します。
 私の意見は
「ペクチン剤を飲むのは決して無意味ではない。チロ基金の活動から得た経験では効果がある。」
です。
 ベラルーシの国も効果があるとして自国民に奨励している、ということです。 

 最後にリリヤ先生から日本人にメッセージです。
「放射能排出方法にはさまざまな方法があります。しかし、できるだけ早く効能を見極めて、取捨選択をして絞り込み、これが有効だ、と思われる方法を早い時期に始めることが、日本人にとって『近道』になると思います。」

ベルラド研究所について

2011-07-13 | 放射能関連情報
 先ほどの投稿記事でご紹介した松永さんの記事内で、ベルラド研究所のことを民間組織でビタペクトを販売している、と紹介しています。
 つまり、ベルラド研究所は民間組織でビタペクトを販売し、売上金を得るためにビタペクトを販売し、売り上げを上げるためにペクチンが放射能排出に効くという論文を発表しているのだ・・・とも読み取れます。

 私はこれに反論したいです。民間組織イコール利益を求める企業で、その商品を誇大広告する、とは限りません。さらに国立国営の研究所イコール利益を求めていないから、真実だけを話している、とも言えません。

 ベルラド研究所は非国立の研究所です。これはベラルーシでは非常に珍しいです。ベラルーシは研究所に限らず、国立国営がほとんどです。公務員率も高いです。(アイドル歌手すら公務員扱いですよ。) 

 ベルラド放射能安全研究所の公式サイトはこちらなのですが、英語版はあっても日本語版はありませんので、私から簡単にご紹介します。

http://www.belrad-institute.org/


 1990年に非国立系の研究所として西ヨーロッパからの支援を受けながら、ワシーリイ・ネステレンコ教授によって設立されました。
 ネステレンコ教授はチェルノブイリ原発事故が起きた当時はベラルーシ科学アカデミー核エネルギー研究所の所長をしていました。
 事故当時の自分の体験を「チェルノブイリの祈り」という証言集の中で話しています。(スベトラーナ・アレクシエービッチ著。この本は日本語訳され、岩波書店から出版されています。ネステレンコ教授はこの中で何度も「事実をお話したい。事実のみです。」「事実が必要になるのです。」と繰り返しています。)
 この本の中でも証言しているように、核エネルギー研究所が事故の実態調査をしようとすると、圧力がかけられ脅迫を受け、研究所の放射線モニタリング装置が没収された・・・そうです。

 現在でもそうですが、国立の研究所だと、どうしても政府の意向が無理やり通されてしまいます。これについては後で書きますが、結局自由な研究をするには国立の研究所では無理があると感じて、自分たちの手で研究所を設立したと思われます。
 ちなみにベルラドとはBELRADで、BELはベラルーシのこと、RADは放射能のことをさします。名称は国立っぽいですが、国立の研究所ではありません。

 研究テーマは、土壌・水質汚染の測定、食品の測定、人体の測定ですが、その後2000年からは測定と平行してペクチン剤であるビタペクトを開発・製造・販売しています。
 私が代表を勤めるチロ基金は2002年から、日本人協力者の方々からの寄付金でビタペクトを購入し、体内被曝が体重1キロあたり20ベクレル以上だったベラルーシの子どもに無償で配る活動をしています。
 子どもたちの測定費用はSOS子ども村といういわゆる孤児施設(本部はオーストリア)が出しており、そのSOS子ども村内にある保養施設で滞在している、多子家庭の子供が対象になっています。
 このようなベルラド研究所、SOS子ども村、チロ基金という協力関係の中で支援活動をしているのですが、他の日本の団体(ボランティアや大学の研究機関)もベルラド研究所と関係があります。
 チロ基金だけではなく日本の他のボランティア団体もビタペクトを購入し、チェルノブイリの子どもたちにあげています。

 ベルラド研究所は非国立なので国から予算が下りず、経営的には大変だと思います。しかし、日本以外にもアイルランド、イギリス、オーストリア、ドイツ、ベルギー、スイス、イタリア、ノルウェー、アメリカなどの団体から支援を受けています。
 また、ビタペクトを販売して現金収入を得て、研究資金を継続している状態です。
 しかしベルラド研究所がビタペクトを販売して、大もうけをしているとはとても思えません。
 ベラルーシ政府が測定をちゃんとしてくれないので、マイクロバスにホールボディカウンタを載せて、汚染地域の学校へ測定の巡回に行っています。
 それはベルラドが「研究所」であって、「測定代行企業」とか「健康食品販売会社」ではないからです。
 子どもたちを測定するのは研究データを集めるためです。研究所だから当然です。データ提供協力のお礼として、体内放射能値が多かった子どもにはビタペクトをベルラド研究所から無料で渡しています。
 さらにパンフレット「自分と子どもを放射能から守るには」を保護者に無料で渡しています。

 もしベルラド研究所が利益のみ追求している企業なら、ただで子どもにビタペクトを配ったりしないでしょう。チロ基金などがビタペクトを購入している数より、子どもにただであげている数のほうがずっと多いからです。
 大体汚染地域に住む子どもや保護者に「被曝してるんだからビタペクト買って飲め。」と言うのも、酷でしょう。もちろん測定代もベルラド研究所側が負担しています。
 一方で製造したビタペクトの一部は、汚染地域で測定対象になっていないけれど、飲みたいと言う希望者もいるわけですから、そういう人向けに、有料で販売している、ということです。
 それにしても1個300円程度に価格を抑えていますから、良心的です。
 チロ基金もごくごくわずかながら、ビタペクトを購入しベルラド研究所を支えています。この研究所がもしなくなると、ベラルーシでのチェルノブイリ研究は大きく衰退してしまうでしょう。福島の原発で大事故が起きてしまった日本人としてはとても困ります。ベルラド研究所に教えてほしいことが、これからたくさん出てくると思います。
 
 それと間違われるのですが、ペクチンに放射能排出作用があると最初に発表したのはベルラド研究所でも、ベラルーシ人でもありません。ウクライナ研究者からの研究発表によるものです。
 ウクライナはビタペクトより先にヤブロペクトというペクチン剤を作りましたが、ベルラド研究所はドイツの研究機関と共同開発して、ペクチンにビタミン剤を加えたビタペクトを開発しました。
 しかもできるだけ安く、多くの人に飲んでほしい(富裕層だけが飲めるサプリになってほしくなかった)という希望もあって、ベラルーシでたくさん取れるリンゴをペクチンの材料に使っているのです。

 それからペクチンが放射能の排出に有効であることはベルラド研究所だけが言っているのではなく、ベラルーシ保健省、国立の放射線医療・内分泌学学術診療研究所なども、放射能汚染地域の住民に勧めています。(これについてはまた別の記事で、ご紹介します。)
 そんなにペクチンに効き目がないのなら、どうして多くの外国の団体がベルラド研究所を支援しているのでしょうか?
 それは今では非国立のベルラド研究所の存在が貴重なものになっているからです。

 ベラルーシの国立の研究所はどうなったかというと、瀕死状態です。
 何と言ってもベラルーシ政府は経済状況がよくありませんから、チェルノブイリ被災者への福祉政策を縮小したいし、研究所への予算も減らしたいわけです。事故後何十年と経っても国立研究所が
「事故の影響は続いています。深刻です。」
とデータを発表すると政府としては無視できません。なので、国立の研究所への予算をどんどん削っていきました。
 チェルノブイリ問題を環境問題と言う枠組みで扱う学問領域もありますが、国立大学の中の環境学としてのチェルノブイリ関係の研究テーマとする学科は、どんどん人員を減らされています。(募集学生数も、教員数も。)
 こうして研究者たちは予算が削られて、思うように研究ができなくなっていきました。
 ですから最近は詳しいデータが国立の研究所から発表されなくなってきています。 (このブログでご紹介した汚染地図も2004年度版で止まったままです。)
 
 数年前ベラルーシ政府は「国内にあるチェルノブイリ関係の国立研究所は全てゴメリ市に移転すること。移転しない場合は閉鎖する。」という命令を出しました。
 つまり研究機関を汚染地域にある都市、ゴメリ一箇所に集めて効率化を図ろう、という考えです。ところが研究所はミンスクに多くあり、その職員は全員ゴメリに引越ししないといけなくなりました。
 その際の職員の住居は政府が用意するのではなく、個人で準備すること、あるいは研究所が探すこと! になったので大混乱となりました。
 例えば国立の放射線生物学研究所はミンスク市内にあったのですが、職員200人の多くがゴメリへの引越しを拒否。(住むところがないんですから。日本のような単身赴任という考え方もベラルーシにはあまりありません。)
 研究所は結局ゴメリに移転し、今も継続していますが、移転したときゴメリへ引っ越していったのは職員のうち30人だけでした。
 このような状態ではちゃんとした研究が以前と同じようにはできないでしょう。
 実際には政府の狙いは、一極化して便利にすることではなく、このあたりにあったと思われます。

 ベルラド研究所は国立ではありませんから、このような政府の命令を聞く必要はなく、研究を自分たちのペースで進めています。

 国立の研究所がどこも縮小していっているので、チェルノブイリ事故から20年目のときには日本のトヨタ財団が研究費を出し、京大原子炉実験所が直接ベラルーシの研究者に資金援助して、研究してもらっているような状態です。
 そしてその研究成果は当然ベラルーシではなく、日本で発表されているわけです。
 ベラルーシの状況を日本の研究施設のほうが把握している部分もあるのです。

 このような現状です。チェルノブイリ研究に関してはベラルーシはますます減速していくと思われます。
 ウクライナの研究機関に期待したいところです。しかしチェルノブイリ原発事故当時、ベラルーシは風下だったので、汚染地域の面積はベラルーシのほうが広く、被害になった人の数も多いのです。ベラルーシの研究機関がしっかりしてほしいところです。
 そんな中、孤軍奮闘状態のベルラド研究所です。
 ネステレンコ教授が個人的に作って、ビタペクトを売って儲けている企業だか研究所だかよく分からない団体・・・などではありません。
 ベラルーシ国内では最後の頼みの綱のような機関です。
 そうでなかったら、
「日本人のために翻訳してください。」
と研究所が出版した本「自分と子どもを放射能から守るには」を震災後すぐの時期に私にくれませんよ。もちろん無料でくれました。

ペクチンについてこのような意見があります

2011-07-13 | 放射能関連情報
 いろいろなサプリメントについて、このブログ上で情報をご紹介しましたが、ここで
「じゃあ、ペクチンはどうなのか? 効き目はあるのか?」
と質問される人もたぶんいるだろうな、と思いました。
 すると、すでにこのような記事「『健康食品で解毒』を信じてはいけない」がありました。松永和紀さんという科学ライターが書いた記事で、スピルリナとアップルペクチン(ビタペクト)への批判記事です。
 引用すると長くなるので、記事の前半のスピルリナの記事「スピルリナ効果は論文がない」について関心のある方はリンク先をご覧ください。


http://www.foocom.net/column/editor/4494/


 ペクチンについてはここで抜粋します。以下をご覧ください。 < >内の文は私が記入したものです。

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アップルペクチンは論文あるが、こてんぱん

 サンデー毎日は「セシウムを排出するアップルペクチンの効能」というタイトルで記事化している。紹介しているのは、ベラルーシの研究機関「BELRAD研究所」が行ったという研究。アップルペクチン(2g相当)を添加した食品を3週間食べさせた場合と食べさせない場合の体内セシウム量を比較したところ、未摂取の子どもは13.9%減だったが、摂取した子どもは63.6%減っていた、という。

 pubmedで、pectin(ペクチン)とcaesium(セシウム)という二つの言葉で検索すると、たしかに2004年に、Institute of Radiation Safety Belradが論文を2つ出している。

 この研究所は、ウェブサイトによれば、民間組織であり、アップルペクチンにビタミン類や微量元素等を加えた食品添加物「Vitapect」を作り、売り出していることが明記されている。そして、21日間子どもに食べさせた結果、プラセボ群は体内の放射性セシウムが14%減、Vitapectを食べさせた群は66%減となったことが説明されている。この内容がサンデー毎日の記事に近い。

 では、論文の中身はどうか?
 Vitapect摂取による体内セシウム濃度や心臓疾患への影響などを調べている。地元でできる汚染された食品を食べながら、Vitapectを1日に2回、5gずつ16日間にわたって摂取した結果、もともと体内セシウム濃度が中程度のグループでは、体内セシウムが39%減った。高程度のグループでは、28%減である。心臓血管系や心電図の異常も、Vitapect摂取により軽減されたという結果が出ている。

2004年1月の論文 2004年12月の論文 <当ブログからこの論文には飛べません。元になった記事からアクセスしてください。>
  
 ところが、興味深いことにこの2つの論文を、けちょんけちょんにけなしている公的機関があるのだ。フランスの放射線防護原子力安全研究所(IRSN)である。2005年に「Evaluation of the use of pectin in children living in regions contaminated by caesium」という報告書が出ている(IRSN ニュース)。

 ベラルーシに駐在するフランス大使がペクチンの効果についての評価を依頼してきたので、IRSNが検討したようだ。だが、論文をとことん批判している。実験設計がおかしく、説明されるべきことが説明されていない、被験者の数に矛盾がある等、容赦ない。
 
 IRSNは、この2004年の研究以外のペクチン研究も含めて評価し、現状ではペクチンが放射性物質の除去に役立つとする根拠がないことを示し、必要な試験等を懇切丁寧に提言している。

 だが、提言に沿う実験が行われ発表された気配はない。一つだけ、2007年にBELRAD研究所とドイツの研究者の共著で論文が出ている。取り寄せて読んだが、これまた奇妙な研究だ。
 今度は、子どもたちに放射性物質に汚染されていない食事を摂らせながら、Vitapectと食べさせた群と食べさせないプラセボ群で比較している。Vitapect摂取群は体内セシウムが33%減、非摂取のプラセボ群が14%減という結果だ。論文には、セシウムが消化管内に分泌してくるので、食べたペクチンがセシウムと化学的に結合して排出される、という“仮説”が書かれている。

 だが、論文では仮説の前提となるべき文献が示されていない。セシウムが消化管に選択的に蓄積しているという研究結果、筋肉や内臓など全身にあるとされるセシウムがわずかの間に選択的に消化管内に集まってくるという証拠が、なにも示されていないのだ。セシウムについて、ICRP(国際放射線防護委員会)等は筋肉など全身に分布する、としている。これでは、仮説は受け入れられない。
 この研究は、論文として発表されたが、BELRAD研究所の関係者以外からは引用されていない、という事実も付け加えておこう。要は、レベルの低い論文である、ということだろう。

 ちなみに、フランスでラットを用いて、実際に被ばく治療に使われたことがあるプルシアンブルーという物質とアップルペクチンのセシウム排出効果を調べた結果が、2006年に論文として発表されている。結果は、プルシアンブルーは「効果あり」、アップルペクチンは「なし」である。


効く「健康食品」はない
 
 ほかにもいくつか、「効果がある」と話題になった食品があるが、どれもいい加減な説である。内部被ばくの軽減については、放射線治療や事故における被ばく対策として、医学的研究がかなりの程度蓄積しているが、決め手に欠ける(緊急被ばくの医療研修のホームページ参照)。<このホームページについては以下をクリックすると見られます。>

http://www.remnet.jp/lecture/forum/sh10_03.html


こうしたことからみても、特定の食品による排出効果など期待できない。そんなものがあれば、とっくの昔に放射線治療を受けている患者さんの食事に活かされているはずだ。

 科学的な検証を確認せずに、「あれがいい」「これがいい」と報道し、それを信じてしまうのは、特定の業者の利益につながるだけだ。報道機関の倫理が問われている。その事実に、消費者も早く気がついてほしい。

 厚生労働省が今年3月、「健康食品の正しい利用法」というパンフレットを作成した。役所のパンフレットには珍しく、実に小気味よく明確に、健康食品の問題点を指摘している。合わせて読んで、判断を。<こちらもこのブログから直接アクセスできません。>


・・・・・・・・・・・・

 引用は以上です。
 というわけで、「こてんぱん」の「けちょんけちょん」にけなされてしまいました。
 確かに「ラットを使った実験では、プルシアンブルーは効果あり、アップルペクチンはなし」なのかもしれません。
 でも効果があると言われても、プルシアンブルーにはこのような報道もありますし

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/705d8300ad09ec8eef6436c22545923e


 私は効果があると言われてもプルシアンブルーはあんまり飲みたいとは思いません。
(胃袋の中が真っ青になるイメージです。これ飲まなかったら今日中に100%の確率で死ぬ、と言われたら飲むと思いますが。)

 それと上記の緊急被ばくの医療研修のホームページですが、開いてみて私は
「わあ、放射能排出効果があるものって、こんなにたくさんあるんだー。すごーい!」
と感動しました。しかし松永さんに言わせるとそれもこれも「決め手に欠ける」で、効く「健康食品」はない、そうです。

 日本はなかなか薬事法が厳しくて、認可が下りにくいです。時間も費用も被験者も膨大な数が必要です。
 そうこうするうちに病状が悪化して亡くなってしまう人もいます。
 でもそんなに健康食品に効果がないなら、なんで健康食品、というもの(分類名)が存在するのか・・・とも思います。
 
 さらに松永さんは「女性週刊誌を信じるな!」といった記事を書かれていたり、

http://www.foocom.net/column/editor/3733/

(この記事の続きに当たる記事はこちらです。「風評被害は起きて当たり前。市民をバカにしないでほしい」)

http://www.foocom.net/column/editor/3769/



 今、日本は戦争勃発に匹敵するような事態に陥っているわけですから、読者も記事を書く側も混乱している部分があると思います。
 あまりにも真っ赤な嘘を記事にしたり誇大広告を出すのはいけないと思います。しかし「医学的根拠があるものだけ書け。」と言われると、放射能に関してはほとんど何も書けなくなってしまいます。日本では研究が進んでいません。
 なぜなら放射能が人体に与える影響について調査しようとすると多くの被験者がまず必要です。その被験者とは被爆していないといけません。
 放射能被爆を受けている人は癌患者などに比べるとその数は非常に少なかったわけです。
(現在は被爆した人の数が増えていくと思いますので、これからその方々を使った研究が進むでしょう。)
 
 日本には表現の自由があると思います。AERAが記事にするのも自由ですし、松永さんの意見も表現の自由、私のブログもそうだと思います。
 他の記事や論文を批判されるのがこの方のお仕事のようですが・・・。 
 そんなに科学者としての知識があるなら、そして健康食品や食材の調理方法にも、効果がない、栄養も抜けてまずくなる、と言われるのなら、どうしたらいいのか教えてください!
 批判も結構ですが、ご自分に科学的な知識があるのなら、ペクチンなどに代わる放射能を排出する最善最高の対策を教えてください、頭のいい人、お願いします・・・! と思いました。
 それとも「排出する方法など全くない。」と決め付けられているのでしょうか? 
 多くの読者はそんな死刑宣告みたいな言葉、聞きたくないですよ・・・。
 だから、女性週刊誌も売れるんです。

 他にも食に関しては「チェルノブイリを教訓にするのは的外れ」とも書かれていますが、本当ですか?
「『不検出』なのに、放射能抜き指南?」

http://www.foocom.net/column/editor/4420/


 そんなにチェルノブイリを教訓にすることは一つもないのですか? 全く? 今後も?
 松永さんがこの記事を書かれたときにはまだ報道されていなかったと思いますが、すでに放射能に汚染された牛肉が出荷され、販売され消費者の口に入っています。

 ・・・いろいろ書きましたが、ペクチンが放射能を排出するメカニズムについてはちゃんと説明したいと思いました。
 この点についてはベルラド研究所に質問してきましたので、このブログで公開します。(長くなりそうなので、別の記事にして投稿します。)
(しかしベルラド研究所やビタペクト配布活動をしている私の説明など、最初から聞いてくれない人もいるでしょうね・・・。)

 そして確かにSOS子ども村でビタペクトを子どもたちに配っている者の実感としても、ビタペクトが効いているときと効いていないと思うときがあります。チロ基金の活動「ビタペクト2&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村」をご覧ください。
 
 http://blog.goo.ne.jp/nbjc/c/e1e67d76a4796f3c95377bb7bdabd215

 
 もう少しこまめに体内測定ができたら、効果のほどがはっきり分かっていいんですけどね・・・。(まずは自分と子どもの結果をお見せしなくては。被験者たったの2名ですが。)
 
 正直言いまして、このような「アップルペクチンはこてんぱん」といった記事を私のブログで公開するのは、勇気がいりました。
 なぜなら2002年からずっとチェルノブイリの子どもたちにペクチン剤である「ビタペクト」を日本人の方々からの善意の寄付金で購入し、渡し続けている活動をチロ基金はしているからです。
 そこへいきなり「こてんぱん」と批判されると、読者によっては「ああ、そうなのか。だったら、このような活動をしているチロ基金は怪しい団体だ。」と思われるからです。
 しかし、現在の日本で、多くの方が放射能に対して不安を抱えており、何とか対策をしようとしてらっしゃることを考え、またチロ基金がこの活動を続けてきた意味と今後も続ける意味も考えて、さらにアップルペクチンに関するご意見は、反対意見も合わせて、公開するほうが多くの日本人の方々の、判断材料の一つにもなるかと思い、あえて今回の記事を投稿・公開することにしました。