電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

村上もとか『JIN~仁~』第10巻を読む

2012年01月16日 06時03分34秒 | 読書
幕末にタイムスリップした現代の脳外科医が活躍する、村上もとか著『JIN~仁~』の続きを読みました。昨年から引き続き、すでに第10巻になります。表紙は、ヴェールをかぶりブーケを手にした花嫁姿で、元花魁の野風さんでしょうか。

本巻の物語は、燼の章その11「横浜の風」から始まります。腰椎ヘルニアの手術をした濱碇定吉の一座が横浜で公演をうつことになり、南方仁先生と咲さんは横浜へ出かけます。今はルロン夫人となった野風と再会、野風の治療所も見学しますが、折からの横浜の大火に出くわし、急遽、火事場の救急治療にあたります。一段落した頃、野風から診察を請われますが、乳ガンの再発でした。余命はと問われ、生存率は二年で五割と答えると、野風は二年も生きられるのはうれしいと言います。切ない喜びです。残された命で、新しい世界を見てみたい、と。野風の結婚式では、花嫁のブーケは咲さんに手渡され、次に結婚するのは仁先生と咲さんだと祝福されますが、旅立つ野風を見送る仁先生の心中は複雑なものがありました。
ところが、ペニシリンの偽薬で患者が死亡したという訴えがあり、奉行所が南方先生を取り調べるという事態が発生します。さすがに今度は揚がり座敷という牢で、食事も本膳というものでしたが、仁先生を陥れようという悪計は終わりません。今まで対立してきた本道(漢方医)の医学館と蘭方(西洋医学)の西洋医学所も、今度は長年の確執を乗り越えて、仁先生の救出に努力します。牢屋敷内でも治療にあたるところへ、横浜にいる外国の医師や各国の領事・公使が連名で嘆願書が幕府に提出されます。さらに決定的だったのは、フランスのナポレオン三世の名で出された、南方仁先生をフランスへ招待したい、という申し出でした。たしか、薩摩は英国、幕府はフランスとの結びつきが強かったはず。これは、幕府も断れませんね~。
山田先生などは、フランスへ行きた~いと期待するのですが、結局、坂本龍馬の救出という大きな課題を残していますので、招聘はお断りすることに。おしろいに由来する鉛中毒で、田之助の足も切断しなければならなくなります。無事、足の切断手術も成功します。

野風さんの花嫁姿、咲さんとの記念写真など、女性を描く作者のペン画は実に清楚で、漫画に独特の、瞳の中に星がまたたくような(^o^)表現は皆無です。それどころか、切れ長の目で流し目をする様子などは、独特のものがあります。写真は、本巻の表紙で、野風の花嫁姿です。村上もとかという漫画家の絵はなかなか魅力的で、扇子じゃなかった、センスがありますね~。

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