電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『探梅ノ家~居眠り磐音江戸双紙(12)』を読む

2008年12月22日 05時48分19秒 | -佐伯泰英
勢州村正の事件や南町の与力暗殺未遂事件の背後などで、速水左近とのつながりを深くした坂崎磐音さん、相変わらずの長屋暮らしですが、おこんと桜子の二人が前面に出て白鶴太夫はぐっと影がうすくなっています。男と女の関係は、一般に時間に比例し距離に反比例するのが普通ですので、これはやむをえないことでしょう。ではこの巻では?

第1章「吉祥天の親方」。江戸の師走です。焼き立ての秋刀魚を食べ損ね、今津屋の由蔵に頼まれた用件は、鎌倉の建長寺への代参でした。今津屋に泊まった夜、火事騒ぎの中の押し込み現場で、湯で会った吉祥天の彫り物を背負う初老の男を再び見かけます。そして、店の中二階に生き残りの少女を発見します。その少女が呟いたのが、「吉祥天の親方より稼ぎがいい」という言葉でした。
第2章「水仙坂の姉妹」。今津屋の由蔵との2人旅、建長寺にお艶の遺髪と戒名を捧げて代参を終えます。泊まりは相模屋で、亡きお艶の兄、赤城義左衛門が、小田原の脇本陣の主である小清水屋右七の娘お香奈を今津屋吉右衛門の後添えにと図ったことでした。ところが、お香奈は失踪してしまいます。磐音と奈緒の運命を知ったお香奈の妹お佐紀は、姉の恋と決死の道行きを認めます。
第3章「師走の騒ぎ」。磐音は、落ち着いたお佐紀の聡明さ、情深さを挙げ、大店のお内儀としてふさわしいのはむしろ妹であると指摘します。一晩考えた結果、お佐紀は見合いのための江戸行きを承知します。坂崎磐音と月下氷人の役割は、何とも不似合いですが、信頼を寄せるに足る人物と感じたのでしょう。この物語の普通の若い娘なら、「磐音さん、ステキ!」となりそうなものですが(^o^)/
品川柳次郎救出劇は、やっぱり時代物にはチャンバラ場面が必要とする作者のサービス精神でしょうか。
第4章「二羽の軍鶏」。新たな登場人物です。若くてイキのいい2人の若者、土佐の重富利次郎と、旗本の次男坊の松平辰平です。若い辰平が悪い仲間を抜けて剣に集中することに。おこんと磐音は神田明神と湯島天神に初詣に行きますが、言葉はすれ違っているようで。
第5章「白梅屋敷のお姫様」。桂川国端の白梅屋敷に招かれた中川淳庵と磐音でしたが、桂川国端さんの狙いはどうも織田桜子さんにあるようで、磐音がすげなくするのですから、当然ですね。どう考えても、この組み合わせの方が自然です。今津屋吉右衛門とお佐紀の見合いはうまくいきそうです。目下、うまくいかないのは磐音だけ。君、取り残されるよ!でも、それはあり得ない。作者がそうはさせませんって!
(^o^)/
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