電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第29回定期演奏会を聴く(2)

2008年12月05日 06時32分43秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団の第29回定期演奏会を聴きました。昨日の続き(*)です。
2曲目、佐藤敏直氏の弦楽四重奏曲第1番。冬の夜、山形弦楽四重奏団の演奏で、山形県鶴岡市出身の作曲家の作品を聴く。これも楽しみです。今度は中島さんが第1ヴァイオリンに、駒込さんが第2ヴァイオリンに交代します。
第1楽章、アダージョ。ヴィオラ・ソロから始まります。続いてチェロ、そして第2ヴァイオリンが入り、最後に第1ヴァイオリンも揃って、4人による、半音階的ながらどこか民謡風のところもある曲。ふるえるような不安げな背景に、ヴァイオリンが、あるいはチェロが交代して旋律を奏でるとき、他のパートが印象的なピツィカート。
第2楽章、アンダンテ・マルチアーレ、と読むのでしょうか。第1ヴァイオリンが旋律を、他がピツィカートでリズムを刻みます。そして再びヴァイオリンとヴィオラ。変なたとえですが、田んぼを見まわる農夫の足取りみたいな音楽。
第3楽章、アレグロ・ヴィヴァーチェ~ピゥ・レント~アレグロ・ヴィヴァーチェ。8ビートかと思わず身を乗り出す始まりですが、一転してゆったりとした音楽に変わります。ヴィオラの旋律がなんともいえずしっとりと。どこか悲しげなのは、音楽家が置かれた境遇なのでしょうか。再び速いリズムで、でもビートは弱まり、決然と終わります。4人が弓を上げて音の余韻を聴いているとき、私も初めての音楽の余韻に浸りました。
当日は、佐藤敏直さんの息子さんが来場、駒込綾さんから紹介がありました。亡き父親の作品の演奏を耳にする息子の気持ちは、どんなものでしょう。当方も、今年父を見送ったばかり。つい、そんなことを考えます。

ここで休憩です。ざっと見たところ、入場者数は80名くらいでしょうか、暖房がきいて、会場は充分に暖かです。要予約だそうですが、託児所もあります。駐車場も、以前は有料の県駐車場に入れていましたが、ふだんは夕方5時ころには閉まってしまうらしい無料の文翔館駐車場(建物北側の道路向かいにある)が、催し物があるときには終わりまで開いていることを知り、そこへ入れることにしています。これなら、時間前に来たときには、文翔館をゆっくり眺めて、駐車料金の心配もなく、「シベール」でお菓子やコーヒー、軽食を楽しむこともできます(^o^)/



そして、ブラームス。弦楽五重奏曲第1番、Op.88です。
第1楽章、アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・ブリオ。ああ、ブラームスだ!と思わせる、渋~い、しかし豊かな弦の響き。ヴィオラが1本増えると、こういう音がするのですね!第1ヴァイオリンだけが突出するのではなくて、互いに響きあう音。世の人々に、「ブラームスは渋い」「地味」と言わせるのに、「そこがいい」と世のブラームス好きを魅了する響きです。
第2楽章、グラーヴェ・ed・アパッショナート~アレグレット・ヴィヴァーチェ~プレスト。ed は and の意味なのかな?さすがの Google 君も、変な意味しか教えてくれません(^o^) 意味は、たぶん「荘重に、そして情熱を持って~速く、輝かしく~最速に」くらいか。このへんが、素人音楽愛好家の弱点です(^o^)/
Op.88という作品番号を持ちますが、若き日の素材を用いているのだとか。ゆっくりとした部分と速い部分が、今と昔を回想するかのように、交互に現れます。第1ヴァイオリンが美しい音色を披露しますが、でもやっぱり全体のバランスの中での役割で、合わせる響きは充実しています。思わず聴き惚れてしまって、なぐり書きのメモさえ取れませんでした。
第3楽章、アレグロ・エネルジコ。フーガです。5つのパートが絡み合う様は、実演ならではです。こういう曲になると、誰かが弱気になると全体が崩れてしまうため、各奏者の気合いが大切になるように思いますが、田中さんが入って気合い充分。正面に見えるチェロの茂木さんの目の色が、表情が、真剣です。もう、生のブラームスを満喫しました。

アンコールは、再び四人で「ソーラン節」。次回の幸松肇さんの「弦楽四重奏のための4つの日本民謡第1番」の予告でしょう。この曲目、今年の大収穫でした。とってもとっても素敵な音楽です!次回の、日本初演になる「最上川舟歌」を聴くために、しっかり前売券を購入して帰途につきました。

(*):山形弦楽四重奏団第29回定期演奏会を聴く(1)~電網郊外散歩道
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