電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

新聞連載と単行本化~『白畑孝太郎、ある野の昆虫学者の生涯』

2008年01月26日 08時39分20秒 | -ノンフィクション
大都市部に限らず、地方でも、新聞連載シリーズが好評だと単行本となって刊行される場合があります。最近の例では、地元紙・山形新聞夕刊に連載された、『白畑孝太郎、ある野の昆虫学者の生涯』(永旙嘉之著、無明舎出版、1,785円)が代表的なものでしょう。

この本は、毎日新聞の「今週の本棚」で、こんなふうに紹介(*)されています。

白畑孝太郎は山形県の巡査で、家庭の事情で警察勤めをしたが、その一方で昆虫の研究を生涯にわたって続けた。虫の好きな人なら、その名前をどこかで目にしているはずである。兵役で中国にも行った。幸い輜重(しちょう)兵で、捕らえた虫の一部は、特別の配慮で内地に持ち帰ることが許された。厳しいとはいえ、よき時代でもあった。著者は山形に住み、白畑の事跡をいつの間にか追いかけることになる。著者もまた、若い気鋭の昆虫学者だからである。それでこの本ができた。

山新夕刊に連載されていた当時から、白畑孝太郎の事績は、身近な自然を舞台にしているだけに、興味深く読んでいました。こうして単行本としてまとまってみると、一貫した人物像が浮かびあがって来ます。

本書は、次のような構成になっています。

第1章、標本に埋もれて
第2章、生い立ち
第3章、警察官として
第4章、大陸に渡る
第5章、断たれた夢
第6章、新たなる幕開け
第7章、研究の途
第8章、博物館に託した思い
第9章、『山形県昆虫誌』の構想
第10章、夢の軌跡

経済的事情から進学を果たせず、警察官として勤務するかたわら趣味の昆虫採集を続け、地味ながら貴重な業績を残した個人の歩み。それを丹念に追う気鋭のナチュラリスト。良い組合せです。

(*):『白畑孝太郎 ある野の昆虫学者の生涯』~毎日新聞「今週の本棚」新刊

山形新聞夕刊では、昨年の藤沢周平没後10年を記念した特集が組まれました。この単行本化を切に希望します。

さて、本日は山響ニューイヤーコンサートの日。夕方から、妻と一緒に出かける予定です。
コメント