電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベルリオーズ「イタリアのハロルド」を聴く

2008年01月07日 06時48分10秒 | -オーケストラ
前に掲載した今井信子さんの本(*1)をきっかけに、ちょいとヴィオラの音楽に触れてみたくなり、ベルリオーズの「イタリアのハロルド」を聴いています。この曲について書こうとした場合、ジャンル分けをどうするかかなり迷ったのですが、一応、ヴィオラ独奏つき交響曲という副題にしたがい、「協奏曲」ではなく「オーケストラ」に入れました。前半は間違いなくヴィオラ協奏曲でしょう。

正式には、《イタリアのハロルド》作品16 ~4部からなるヴィオラ独奏つき交響曲~ というのだそうです。演奏は、ユーリ・バシュメット(Vla)、エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団、1988年3月にフランクフルトのアルテ・オーパーでPCM(デジタル)録音されたDENON盤(COCO-70708)。録音も、たいへん明解です。インバルの演奏のテンポは、第1・第4楽章はややゆっくりめ、第2・第3楽章はやや急ぎめ、といったところでしょうか。

第1楽章、山におけるハロルド、憂愁、幸福と歓喜の場面。中低音主体で不安気な始まり。ハープを従えて、ヴィオラの登場。うん、この楽章は間違いなくヴィオラ協奏曲でしょう。
第2楽章、夕べの祈祷をうたう巡礼の行進。本来なら緩徐楽章という位置づけではありますが、むしろインテンポの魅力が聴かせどころの一つかと思います。弦楽の内声部の魅力を再認識します。
第3楽章、アブルッチの山人が、その愛人によせるセレナード。リズミカルな主題が楽しく、イングリッシュ・ホルンの素朴な響きも親しみ深いです。
第4楽章、山賊の饗宴、前景の追想。バシーンと衝撃的に開始されるのは、山賊たちの登場を表すのでしょうか。たしかにこの楽章は、ヴィオラ協奏曲という範疇には入らないですね。

パガニーニに依頼されて、ヴィオラ独奏のための協奏曲を書き始めたのだけれど、途中で依頼者が気に入らず、交響曲にしちゃった、という経緯があるのだとか。うそかほんとかわからない話のよう(*2)ですが、最初はヴィオラ協奏曲でだんだん交響曲になっていく、というのが信じられてしまう不思議な音楽。

1834年にパリで初演されています。このときは、ショパンやリストなどの音楽家のほかにも、ヴィクトル・ユーゴー、アレクサンドル・デュマ、ハインリヒ・ハイネなども一緒に聴いたのだとか。バイロンの詩をもとにした音楽だから、と言うことなのでしょうが、なんともきら星のような人たちばかりです。この年、ドイツでは関税同盟が発足しており、後年のドイツ統一の動きへとつながる重要なできごとでしょう。同年はローベルト・シューマンが「新音楽時報」を創刊し、「謝肉祭」や「交響的練習曲」を作曲した頃。ロマン派の花盛りの頃と言ってよいのかな。

先に、コレルリのクリスマス協奏曲のところで言及した、1968年12月19日のクリーヴランド管弦楽団の定期演奏会で、エイブラハム・スカーニックのヴィオラ・ソロにより、この曲が取り上げられています。堅物のジョージ・セルとベルリオーズ。なんだかイメージが合わないような印象を持ちますが、実は最後の来日公演の演目にもベルリオーズは取り上げられています。本作品の正規録音が発売されていないのが、なんとも残念無念です。

■バシュメット(Vla),インバル指揮フランクフルト放響盤
I=15'10" II=6'45" III=5'54" IV=12'33" total=40'22"

(*1):今井信子『憧れ~ヴィオラとともに』を読む~「電網郊外散歩道」
(*2):「イタリアのハロルド」~Wikipediaの解説
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