電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

百科事典のこと

2006年02月12日 17時06分25秒 | コンピュータ
昔、百科事典が好きだった。中学校の図書館で、本格的な百科事典を調べたとき、わくわくしたのを記憶している。高校時代には、梅棹氏の『知的生産の技術』が現代国語の教科書で取り上げられ、「学校は教えすぎる」が「方法は教えてくれない」という指摘に共感したりした。
「まず索引で調べる」「関連語句のページもメモし、一つずつあたる」
などの百科事典操縦法も、何かの新書で覚えたことだと思う。

ボンビーな大学生時代、あるアンケートで、「あるといいなぁ」の筆頭に「平凡社の世界大百科」と答えたことがある。就職して、先輩の部屋で、軽装版の「平凡社世界大百科」が並んでいるのを見て、さすが~と感動した。ときどき借りて使わせてもらったが、記述の信頼性、格調の高さにあこがれた。

時代は変わり、パソコンにCD-ROMドライブが装備されるようになると、CD辞書がブームになった。FM-TOWNSでワープロソフトFM-OASYSをバージョンアップしたときに『三省堂ワードハンター』が付いてきたのには驚いた。だが、実際にはCD-ROMドライブに常時CD辞書を入れておくわけにもいかず、入れ換えが面倒であまり使わなかった。また、Windows3.1のころに米国Compton社の英語版マルチメディア百科事典CD-ROMを購入し試したこともある。結局、日本語Windows3.1では動作せずあきらめたが、Microsoft社の「エンカルタ」が発売されたときには、日本語Windows95で使えることに喜んだものだ。

ただ、当時のエンカルタでは内容が不満足だった。高校生だった子どもの宿題で、ガンダーラ美術のことを調べようとしても、そんな項目は収録されていないのだ。米国の高校生には向いているのかもしれないが、日本の高校世界史の教科書のレベルを網羅してはいない。この頃、平凡社の「世界大百科CD-ROM」を購入してみた。本文用CDと地図・画像用のCDと2枚組となっており、これも入れ換えが面倒だ。そのうちにバージョンアップのお知らせがきてCDと一緒にDVDも届いたけれど、自宅にDVD-ROMドライブはない。指をくわえて見ているうちに常時接続の時代となり、はたと気がついた。
「そうだ、Googleこそ最大の百科事典ではないのか?」

今は、少し違う感じを持っている。ページランクを上げる抹消的なテクニックを駆使して、あまり信頼性があるとは思えないサイトが上位に来たり、ブログなど多数のリンクがはりめぐらされているページが上位にきたりすると、必ずしも百科事典のような信頼性、格調の高さはのぞめない。WEB版フリー百科事典であるWikipediaのような存在(*)もあるが、現状では充分に体系的・網羅的とは言いがたい。結局、平凡社世界大百科CDを調べ、Googleで検索し、相互につきあわせて判断する、という方式に落ち着いている。
(*):Wikipediaについて

考えてみれば、パソコンに費した金額の何十分の1で、平凡社の世界大百科事典が買えたのだが、転勤に伴う引越しで、邪魔物あつかいされてしまうのがオチだったのかもしれない。私には紙ベースの百科事典は所詮ご縁がなかったと言うべきか。
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ブラームスの交響曲第1番を聞く

2006年02月12日 10時56分41秒 | -オーケストラ
先日来、通勤の音楽で聞いてきたブラームスの交響曲第1番、今日は先日のN響アワーのブロムシュテット指揮の演奏と、続けて聞いた。この有名な交響曲は、接する機会も多く、演奏者も緊張感をもって大切に演奏しているのがわかり、そのたびに満ち足りた気持ちになることが多い。

私の基準となっているジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の全集CD(CBS-SONY 00DC-203~206)で聞く第1番は、速めのテンポで明確で透明な響きを聞かせる、リズムのきれのいい、活発で力感あふれる演奏。これは、ジョージ・セルらしい、ロマン的な雰囲気の表現を至上の価値とはしない、かっちりとした楷書のような価値観に基づく演奏だ。
クルト・ザンデルリンク指揮ドレスデン・シュターツカペレのCD(DENON My Classic Gallery シリーズ GES-9218)は、ゆったりしたテンポで、重厚な低音域の上に息の長い旋律をたっぷり歌わせる。セルの演奏とは異なり、活発な運動性やリズムの軽やかさを誇示するような方向ではなく、より情感を重視する方向。
平成18年2月5日にN響アワーで放送された、ブロムシュテット指揮NHK交響楽団の演奏は、第1楽章提示部の繰り返しを行っているためか、第1楽章が他よりも演奏時間が長くなっているが、実際はそれほどゆっくりしているわけではない。むしろ、緩急の対比を生かしながら、たたみかけるような緊迫感をくっきりと描いている演奏のように思われる。

ところで、演奏前のブロムシュテットのインタビューが面白かった。バックにあるオーディオ装置の最上段にLPプレイヤーらしきものがあったのも興味深かったが、話の中身もよかった。音楽の美しさは緊迫感にあり、ブラームスの交響曲第1番では、楽器のバランスが絶妙で、コントラバスの強調された低音と、50回以上も同じリズムで奏されるティンパニの音が、強烈な音ではない普通のフォルテなのに、聴衆に強い印象を与える、と述べていた。とてもわかりやすく、納得できる説明だった。
自宅でアンプの音量を上げて聞くと、インタビューに答えるブロムシュテットの呼吸の音が気になった。吸う息にゼイゼイするような音が聞こえる。79歳と高齢なこともあり、演奏の様子からは、情熱に衰えは見られないけれど、健康は大丈夫なのだろうか。

この日の演奏、客員コンサートマスターとしてドレスデン・シュターツカペレのコンサートマスターの一人であり、ブロムシュテットとの縁が深いペーター・ミリングさんが座った。ブロムシュテットの「英雄の生涯」盤でも演奏クレジットされているペーター・ミリング教授については、結果的には違ったようだが、こんなエピソード(*)もあるようだ。
(*): ペーター・ミリング教授、カペレの第1ヴァイオリンに島原早恵さんを推す?

参考までに、演奏データを示す。
■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
I=13'05" II=9'22" III+IV=21'01" total=43'28"
■クルト・ザンデルリンク指揮ドレスデン・シュターツカペレ
I=14'22" II=9'50" III=5'05" IV=17'15" total=46'32"
■ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団
I=15'05" II=8'48" III=4'48" IV=17'32" total=46'13"
(録画したDVDプレイヤーの時間表示によるもの。)
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