日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「アルバイト捜し(先輩の紹介)」。「自国での『プライド』を捨てるべき事」。

2009-07-30 08:10:30 | 日本語の授業

コガネムシ

 朝、出がけに、階段に蹲っている緑色の「コガネムシ(黄金虫)」を見つけました。そう言えば、今週の初めくらいから、蝉の声も聞こえるようになりました。昨日など、朝っぱらから、飛び回っているのも見ましたし。お腹を空かせている「カラス(烏)」に見つかったらどうするのだろうと、不安に思いながら目で追っていますと、飛び方がヨロヨロして、電信柱にぶっつかったりしています。人間ならば千鳥足というところでしょうか。やっとの事で、無事に、街路樹の緑の中に潜り込めたようでしたが、最近の電信柱は、木ではなく、コンクリートですからね、かなり痛かったことでしょう。

 さて、学校です。
 不況の波は、こういう日本語学校の「就学生」をも直撃しています。「4月生」のうち、まだ、アルバイトが見つかっていない学生が、四人もいるのです。中国人学生は、何とかなるとして、大変なのは、「スリランカ人(三人)」と「ネパール人(一人)人」です。

 以前ならば、あれくらい日本語が話せたら、だいたい問題なく、近くの工場で雇ってもらえました。それが、今回は、「募集」がかかって直ぐ行っても、「もう一杯になった」と断られるか、「就学生はねえ、一日に四時間しか働けないから…」と言われるかのどちらかなのです。

 しかも、彼ら自身が、こういう事態になりうるということを、全く考えていなかったようなのです(国で、「日本には仕事がある。給料もいい。『四級」レベルの日本語だったら、大丈夫。アルバイトができるから、生活には困らない」と言われていたようなのです)。

 私たちも、ただ、この「就職難」を、「世界金融恐慌による荒波」程度にしか理解していなかったのですが、最近、ある人から、「自動車産業が不況だから、愛知県などでリストラにあった「日系人」が、大勢、千葉県に来ているようだ。ここには仕事があるという情報が流れている」ということを聞いて、やっと謎が解けました。

 名古屋圏の自動車工場で働いていた「日系の人」たちが、リストラに遭い、こちらの工場に流れてきていたのです。その結果(日系人は、一日の労働時間が決められていないのです)、一日四時間という枠が填められている「就学生」が、はじき出されてしまったというわけだったのです。

 まるで、「玉突き」ですね。もう、ドンドンはじき飛ばされています。そこから逃れるためには、一生懸命勉強して、この「話せない」レベルを超えるしかありません。誰でも、(同じ能力であれば)長く働ける人の方を雇います。それはしょうがないことです。今年は工場は無理か。けれども、コンビニやレストランで働くのは、まだ無理だし…。で、先輩連に声をかけてみました。

 「A・B合同授業」の時に、「みんなのアルバイト先で、聞いてみてくれないか」と頼んでみたのです。「Aクラス」の学生達は、既に「日本語能力試験(一級)」は超えていますから、彼らが働けるようなところでは働けません。けれども、まだ「Bクラス」の学生達は、「二級」に毛が生えたくらいですから、もしかしたら知っているかもしれないと思ったのです。それに、何人か、近くの工場で働いている学生もいることですし。

 すると、翌日、「Aクラス」の「インド人」のSさんが、「私が働いているところは無理ですけれど、日本人の友達がいます。その人に聞いてみます。でも、あまり期待しないで下さいね」と言ってくれました。それから「Bクラス」の「ミャンマー人」のMさんが、「先生、工場で聞いてみました。私の友達ならいいと言ってくれました。でも、その学生の名前を知らなくて困りました。教えてください」と言いに来てくれました。

 「スリランカ」から来た三人は、友達や兄弟が日本にいます。それで、追い詰められたと言っても、まあ、どうにかなるとして、「ネパール」から来たRさんは、どうにもなりません。それで二人に頼みました。片方がだめでも、もう一方で拾ってもらえるかもしれない…。

 こういう時、頼みになるのは、年齢が、多少、上の人たちです。半年から一年ほども日本にいれば、日本人のやり方も判るでしょうし、その上、開放的で、誰とでも友達になれるタイプだったら、まず、大丈夫。工場の日本人にとっても、何かあったら、その人に言えばいいわけですから、安心でしょう。

 ただ、こうやって、アルバイトを捜してもらったりしている間に、いくつか、腹の立つことがでてきました。

 仕事がまだ見つかっていない学生が、勉強もなおざりになっていたのです。仕事はないわけではないのです。日本語が下手だから、断られるのです。そのことを諄いほど言って聞かせました。が、「スリランカ人」のDさんは、「はい、仕事がありません。気分が悪いですから、何もしたくないです」。これを既に一ヶ月以上も言い続けていたのです。

 「勉強すれば日本語が上手になる。日本語が上手になれば、以前、断られたところでも雇ってもらえるかもしれない。だから、何もすることがない今は、勉強に精を出すべきだ。」

この道理を判っていないわけでもないのです。ただ、「気分が悪いですから、何もしたくないです」で、世の中が通ると思っているのです。彼らの国では、通ってきたのでしょうか。日本人なら考えられないことですが、いかにもそれが自分の権利のような顔をして言い続けるのです、飽きもせず、毎回毎回。もう私も、半分以上ウンザリしていました(つきあって聞いてやらないわけにはいかないでしょう)が、言うべきことは言っておかねばなりません。

 とにかく、アルバイトが見つかったら、約束した時間を厳守すべきこと、それから、休む場合は必ず電話連絡をすべきこと。

 ただ、こう言うと誤解を招くかもしれませんので、一言追加しておきますが、彼は、いい人です。人を傷つけたり、迷惑(彼らの「迷惑」で、私が言っているところの「迷惑」ではありませんが)をかけて困らせようという腹は全くありません。そう言いましても、こういう「善人」は、時によっては、とても迷惑になることもあるのです。

 そして、もう一つ、紹介してくれた学生に感謝の気持ちを持ってほしいということなのです。

 同じ学校の学生であるから、アルバイトがなかったら大変だろうからと、一生懸命、アルバイト先の日本人と交渉したり、友人の日本人に頼んだりしてくれたのです。せっかく捜してもらったのに、直ぐに、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とやらで、「あっちに、もっと時給のいい仕事があるから」と、紹介してくれた人に一言の断りもなく、やめてしまうということも、「なきにしもあらず」ですから。紹介してくれた人は、彼らの、直接の友人でも、なんでもないのです。彼らと繋がっているのは、同じ学校で勉強しているというだけなのです。

 私たちは、こういうご時世なのに、「自分だったら辛いだろうな」と、(他者の身になって)一肌脱いでくれた学生を得難く思い、感謝もしているのですが、当の「ご本人」が(困っているくせに)、「言われたから、行ってやるんだ」的な態度であったら、紹介してくれた人は救われません。また、そういう態度や考え方を捨てない限り、これからも、日本ではうまくいかないのです。

 まず、自分の国での「プライド」を捨てることです。特に、第三世界から来た人たちは、そうしなければなりません。彼らの国では、生まれた時から身分が決まっていて、向こうで豊かな暮らしをしていたと言っても、それは、本人や彼らの親の努力で得たものではないのです。日本でも、そのつもりで振る舞ったら、それは、当然、馬鹿にされます。この道理が理解できないようでしたら、また、それなりの行動がとれないようでしたら、せっかく仕事を紹介してもらっても、うまくいかないでしょうし、もうだれも(同国人以外は)仕事を紹介してくれはしなくなるでしょう。

日々是好日
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