ぐうたら里山記

兵庫の西の端でただのほんと田舎暮らしをしています。ぐうたらです。のん兵衛です。

「新しき村」の百年

2017年12月05日 17時48分27秒 | 本の中から
「新しき村」の百年~という本を読んだ。
武者小路実篤が宮崎・日向で作った「新しき村」
今からもう100年も前、作家や芸術家などが集まって新しい村づくりを始めた。
今でも田舎でいい物件を探すのは難しい。
まして100年も前のこと、いろいろさがした後やっととっても辺鄙な痩せた土地を見つけた。
そこは宮崎の山奥。
そこに武者小路実篤など20人が移り住んだ。
一日8時間共同作業をして後は自分たちの好きなように時間を過ごす。

そんなユートピア作りがはじまった。
農業経験者は一人だけ、あとはみなずぶの素人。
そこは水道も電気もない、井戸も掘れない・・・そんなところに移住した。

そこにあるのは何だろう?
経済基盤がまるでない。
あるのは夢だけ理想だけ。
たちまちいさかいが起き多くの人が去っていった

その原因は何だったのだろう?
移住してきた人はほとんど20代の若い男女。
男女の問題でトラブルがあったとしか認識していない。
その視線はとっても卑しい。
もっともっと調べたら、「新しい村」構想の問題点が浮かび上がってきただろう。
でもこの著者はそんな問題には何の関心もないらしい。
そもそもこの著者は農業そのものがまるで分っていないし何の関心もないのだろう。
ほんの少しでも農業に関心があったならばもっともっと違ったレポートができただろう。
この人に関心があるのは「新しき村」とはまったく違ったこと、この本のあちこちに出てくる、「新しい村」とは何の関連もない記事

 ・中国の尖閣諸島海域への進出や北朝鮮の核ミサイルを口実に軍備を増強する日本政府・・・
 ・一党支配のもと、民意をふみにじった原発最稼働やマイナンバー制度、個人情報保護法、安保法テロ等準備法・・・

こんな風な文章がやたら目に付く。
いったいこの著者は何を言いたいのか?!

しかし気になるいさかいの原因は何だったのだろうか?
去っていった人に何のインタビューもしていない。
残った人にもその原因を聞いていない。
ここをもっと掘り起こしたら、「新しい村」作りの問題点が浮き彫りになっただろう。

それにいったい一日8時間労働(のちに6時間になる)、1週間に一日休み。
こんなことが可能なのだろうか?
農繁期の時はどうする?
農閑期の時も雨の時も8時間労働か?
もちろん実際には(明確に書かれてはいないけど)年間を通しての8時間労働なのだろうが、
それをするためには細かなスケジュール管理が必要になるし、それをしないと不公平になる。
まして機械化されてない昔のこと、ましてやせた土地、1日に8時間まして6時間労働で農業ができるわけはない。
そのために寄付でしのいでいた。
自助・共助・公助が暮らしの基本。
それを自助をいい加減にして共助を他人の助けを当てにし続けてきた。
これが「新しい村」ではなかったか。

その後日向の「新しき村」はダムができて3分の1が水に沈むことになった。
そのため1世帯を残してみんな新しい土地、埼玉に移っていった。
開村して20年後のことだった。
3分の1が水沈したからと言ってどうしてみんなほかの土地に移っていったのか?
それは完全に今までの農業が失敗だったからではないか?
それを口実に移っていたのではないか?
ここらへんの掘り下げがまるでない。
20年も農業をやってて自活さえもできていないのだ。
ただ大半を武者小路実篤の寄付、残りをそのほかの賛同者の寄付で暮らしていた。
(武者小路実篤は開村して数年後都会に移っていた)
こんなの農業じゃない。
寄生虫だ。ダニだ。完全に「新しき村」構想は失敗なのだ。
例によってこの著者はここら辺の掘り下げもまったくない。

さて埼玉に移って、相変わらず赤字は続く。
そこでたまたま当たった養鶏。
ケージ飼いで1500羽くらいまで飼育を広げてやっと黒字になる。
「新しい村」作りが始まって40年。
普通の農家はとっくにつぶれている。
その後養鶏を1万羽までに広げる。
ところが鶏卵の暴落。
たちまち養鶏を縮小してついにはやめてしまう。
養鶏についても詳しい記述はない。
餌は?糞は?肉は?
どのようなところにどのようにして販売したか?

野菜作りも最初は普通に農薬を使っていたけどそのうち世間の流れをみて無能薬の野菜作りを始めた。
ここらへんも農業に対するビジョン、主体性が感じられない。

今この「新しき村」は日向も埼玉も高齢化に悩んでいるらしい。
きっと新参者を拒むそんじゃそこらの普通の田舎になったのだろう。
もうきっと今は「新しき村」じゃなく「古き村」になってしまったのだろう。
そしてあとは後は静かに死をまつだけ・・・

この本を読んでる限りそんな印象しか浮かんでこない。
まだ「新しき村」が続いていたことを知った以外、何の収穫もないつまらない本だった。


 

コメント
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