イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「量子テレポーテーションのゆくえ: 相対性理論から「情報」と「現実」の未来まで」読了

2023年11月10日 | 2023読書
アントン・ツァイリンガー /著 大栗 博司 /著,・監修 田沢 恭子/訳 「量子テレポーテーションのゆくえ: 相対性理論から「情報」と「現実」の未来まで」読了

著者は去年のノーベル物理学賞を受賞した人のひとりだそうだ。『物質を構成する原子や電子のふるまいについて説明する理論、「量子力学」の分野で、「量子もつれ」という特殊な現象が起きることを理論や実験を通して示し、量子情報科学という新しい分野の開拓につながる大きな貢献をした。』というのが授賞理由だそうだ。

この時点でさっぱりわからないのだが、SFの世界に出てくるこの手の話ならよくわかる。「三体」の中では、この理論を利用して4光年離れたアルファケンタウリになる惑星と地球との交信に使っていた。「スタートレック」では転送装置がこの理論を使って作動されている(らしい)。

この本では、この、量子テレポーテーション(量子もつれ)について、なぜそういう現象が起こるのかということではなく、そういう現象が起こっていることをどうして知ることができるようになったのかということを書いている(ように思う)。
実際にこういう実験が過去に行われ、こういう理解から量子もつれがおこっているということが証明されるのだという説明が200ページ以上にわたって続くのだが、それがさっぱりわからない。
ある大学生のカップルがその実験に参加するという形式をとっていて、実は一般人にわかりやすく説明してくれているはずなのだが、それがさっぱりわからないのである。
その実験はこんな内容だ。
量子の状態を観測できる検出器が両端にあり、その中間には量子もつれを起こした一組の光子を両方の検出器に送り出すことができる発生器がある。
両方の検出器で観測された状態が同じ結果ならば、量子もつれが実際に起こっていると確認できるというのである。
量子もつれを起こした粒子は双子のようなものなのだから両方で同じ状態が観測されるのはあたり前だと考えてはいけない。その性質が現れるのは観測された瞬間で、それまでは様々(ある意味、無限)の状態が重ね合わさっているのである。
で、それを観測するためには光の偏光具合を見るというのだが、それくらいのところからもっとわからなくなってくる。ベルの不等式の破れ、局所実在論、隠れた変数理論・・。
一応は一般向けの読み物となっているので、一般人にも理解ができるはずなのだがそれでもさっぱりわからない。だから感想文はここで終わってしまうのである。
      
これだけで終わっては感想文が短すぎるのでこの本に書かれていた面白そうなエピソードを残しておく。
アルベルト・アインシュタインがノーベル賞を受賞したのは相対性理論ではなく「光量子仮説」というものであったが、なぜ、世界で最も有名な相対性理論でなかったかという理由について書かれていた。それは、ノーベル賞の選考委員のなかにふたり、この理論が好きじゃなかった人がいたという理由だったそうである。しかし、こんなに有名な科学者がノーベル賞をもらっていないというのはノーベル賞の権威にかかわるというので別の受賞理由を付けて賞を与えたというのである。だから、受賞理由というのが、『理論物理学への貢献に対し、とりわけ光電効果の法則の発見に対し』というへんてこなことになったというのである。
純粋に理論だけが評価されるのが自然科学の世界だと思っていたが、そこには好き嫌いがあるというのが人間の世界というものかとあきれるというか、アホらしくなると思えてくる。こうなってくると、文学賞なんてもっと好き嫌いがあって、村上春樹はきっと選考委員にオベンチャラをやっていないのではないに違いない。どんな時代になっても権威とはくだらないのである。

そのアインシュタインは、こういった量子の不思議な性質のことを、「不気味な遠隔作用」と呼んだそうだが、その不思議な性質を否定するため、ボリス・ポドルスキー、ネイサン・ローゼンという物理学者と共同で論文を発表している。それは1935年のことだそうだが、そんな昔にすでにこんな小さな世界のことが解明されていたというのが驚きである。しかし、本当にそうなのかということが実験で確かめられたのは40年以上もあとになってからだそうだ。相対性理論と量子論には相容れない部分があるそうで、量子論の不思議な世界が本当に存在すると証明したのが、先に書いたベルの不等式の破れ、局所実在論、隠れた変数理論というものだそうだ。
う~ん、わからない。

「スタートレック」は1966年から放送が始まったそうだが、だから、その当時にはすでに量子論は知られていたので、「転送装置」は、作れないということはすでに分かっていた。転送する対称(人間や物)のその時点の量子レベルまでの状態を確定し、そのデータを受信器に送りそこにある物質を使ってデータ通りに作り直すというのがそのメカニズムであるが、不確定性原理によってその状態というものが確定できないというのがその理由である。
そこで、このシリーズの技術アドバイザーが考え出したのが「ハイゼンベルク補正器」なるものを考え出した。もちろんこれは架空の補正器でその仕組みはわからないが、タイム誌の記者にその働きを問われたマイケル・オクダは、「じつによく働くよ。おかげさまで。」と答えたという。かっこいい回答だ。その人が日系人だったというのもなんだかうれしかったりする。
しかし、データをコピーされて送信されても、コピーしてもらった本人はそこに残っているということになるから、それはそれでちょっとまずいのではないだろうか・・。

そして、もっとも興味を引かれるのが、観測することではじめて状態が決まるということは、世界を決めるのは観測者である人間であるといえることである。世界は客観的ではなく主観的であるといっているようにも見えるが、著者も語っている通り、これはなんだか哲学的な話になってくる。
実在を追い求めた哲学が自然科学を創り出したのであるが、その自然科学の帰結のひとつが哲学であったというのはウロボロスの蛇を見ているようなのである。

やっぱりわからない・・。
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