イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「佐藤優の地政学入門 (働く君に伝えたい「本物の教養」)」読了

2022年11月02日 | 2022読書
佐藤優/監修 「佐藤優の地政学入門 (働く君に伝えたい「本物の教養」)」読了

地政学の本をもう一冊読んでみた。というか、この本を最初に読もうと思っていたのだがけっこう予約が多くてやっと順番が回ってきた。

最も知りたかった、紛争や領土問題が起こっているそれぞれの場所で、なぜその問題が起こっているのかということが地域ごとに説明されているのがいいのだ。
ただ、イラスト付きで見開き2ページで説明されているのであまりにも簡単すぎる。まあ、僕でも知っている内容が大半だったのだが、改めてああ、そうだったのかと知らされるものあった。
佐藤優というと、一時、世間を騒がせたひとではあるが、実力のある人はそんな逆境にもめげず何冊もベストセラーを出すというのはすごい。世間の人は何をどの程度知りたがっているのかといことをよく知っているようだ。きっとマーケティングの能力にも優れているのだろう。名は体を表すか・・。

地政学という言葉は、ナチスドイツが他国への侵略の正当性を担保するための論理であったというのは前のブログに書いたが、これはルドルフ・チェーレンの「国家有機体説」という考えが元になっているそうだ。『生命である国家は、生命の維持に必要な(エネルギー資源)を獲得しなければならない。』だから、『国家が、その国力に応じた資源を得るため領土(生存圏)を獲得しようとするのは当然の権利である』という考えとして発展させたのがドイツの元軍人であったカール・ハウスホーファーであったのであるが、まあ、なんとも身勝手な考え方だ。この人の教え子であったのが、後にナチスの副総裁であったルドルフ・ヘスでヒトラーとつながってゆく。
現代の地政学はこういった考え方とはまったく異なる論理で構築されているようである。

新しい時代の地政学は、イギリスの地理学者、ハルフォード・マッキンダーによって拓かれた。世界中の国家をランドパワー国家とシーパワー国家という区分に分けることから始まる。アメリカの軍人、アルフレッド・マハンが提唱する、「世界島」という考えがあって、これは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸を合わせた地域を指し、その地域を、「ハートランド」と「沿岸地域」にわけて世界を考えるのだが、それをさらに発展させたのが「ランドパワー国家とシーパワー国家」というものだった。地政学とは、軍人と地理学者が共同で作り上げたもののようで、やはり、政治学や経済学との関連というよりもほぼ安全保障に関係する学問である。
マッキンダーの考えはその意味のとおり、ランドパワー国家は内陸のハートランドに位置する国家、シーパワー国家は海岸線を持つ国家である。ランドパワー国家は陸続きで他国と接しているため、侵略したりされたりという歴史を持つので国土を守るための強力な陸軍を持つ必要に迫られる。一方、シーパワー国家にはそういった歴史が少なく、土地の支配よりも交易によって得た利益を守ろうという傾向が強いという傾向がある。そして、両国家群は、宿命的に対立する性質があり、両社は実際に歴史的に戦争や紛争を繰り返してきた。
そして、その争いの舞台になったのがリムランド(周辺地帯)と言われる地域だ。温暖湿潤で人口と産業を支える国が集中しているので、『リムランドを制するものがユーラシアを制し、ユーラシアを制する者が世界を制する。』と言われているそうだ。そして、そのための重要なキーが「マージナルシー」という沿海地域である。南シナ海、東シナ海、日本海、オホーツク海、ベーリング海である。なるほど、確かにきな臭い海域であるのは確かだ。だから世界はこの地域でしのぎを削りあっているのである。

この本を読んでいると、現在の世界各地の混迷の元凶というのはきっとイギリスとアメリカなのじゃないかと思えてくる。
アメリカについては、オバマ大統領が、「アメリカは世界の警察官」ではないという宣言をしてしまって中東から手を引いたことがテロ組織のチャンスとなってISやタリバンが勢力を拡大し、2014年のロシアのクリミア併合もアメリカの弱腰が原因だと言われているそうだ。まあ、これはほかの国におせっかいを焼いている場合ではないという国内事情もあるのだろうから外野が文句をいうというのも筋違いと言われればそうなのだが、イギリスはもっとひどい。インドとパキスタン、イスラエルとパレスチナなど、現在も係争が続いているのは無責任な植民地政策とその失敗が今も尾を引いているというしかない。
そこで不思議に思うのだが、日本で暮らしているかぎり、イギリスがこういった過去の蛮行に対して非難を浴びているなどという話を聞いたことがない。むしろ、女王が亡くなったといって世界中が哀悼の意を示すし、そもそも、旧の植民地の一部は今でもイギリス連邦の一員として英国王室を崇拝しているのである。
それに対して、日本はどうだろう。中国と韓国だけかもしれないが、戦時中の様々な行為に対していまだに様々な非難を浴びている。
この違いは一体何なのだろうかとこの本を読みながら考えたのだが、これはきっと戦争に勝ったか負けたか、たったそれだけのことではないのだろうかと思い至った。勝ったイギリスは過去にどんなひどいことをしていていても誰も文句は言われない。日本は経済でどれだけ勝ち組になってもやはり戦いでは負けたのだから永遠に“悪”というレッテルを貼られたままになるのだろう。軍隊を持っていないというのも他国からなめられる原因でもあるのだろうが、これも戦争に負けたから軍隊を持てないのだと言えないこともない。

じゃあ、お前は徴兵に喜んで応じるほど愛国心があるのかと言われればそんなかけらもないのであるが、そういうことは別にしてやっぱりちょっと悔しい。

米ソの冷戦というのは遠い昔で、現在はロシアの横暴と中国の傍若無人ぶりというのが世界中の注目になっている。ロシアは脅威だといいながら、経済規模ではアメリカの10分の1もないくらいらしく、結局は核さえ封じ込めることができれば敵ではないようだ。中国は7割程度しかないとはいっても、この30年間ほどでここまでのし上がってきたというのはものすごいことだし、共産主義国はそのリソースを集中しようと思うところにいくらでも集中できるという強みがあるということを考えると、そんなに遠くない時期に世界の覇権を握るのはきっと中国なのだろうなとこういった本を読まなくてもなんとなく想像できてしまう。
「リムランドを制するものが・・・」という考え方の前には、『ハートランドを制するものが世界を制する。』という考え方が主流で、ナチスが利用した地政学が否定されたのちの新しい地政学の最初の主張であったのだが、そのハートランドの一部はまさに中国そのものだ。
様々な地政学の考えが生まれては時勢に合わせて新しい地政学に取り替わっていくのだろうが、結局、一番はじめの考えに収束していくようである。(僕の根拠のない考えなのではあるが・・)
しかし、がん細胞もそうであるが、急激に増殖するものというのはなにかと厄介で問題を引き起こす。世界情勢など僕の生活には全く無関係のはずなのだが、小さな、しかし意外と大きな部分で僕を悩ませている。
それはウイスキー問題だ。ジャパニーズウイスキーというのは最近人気があるらしく、なかなか手に入りにくくなってしまった。僕は「竹鶴」というウイスキーをちびりちびりと飲むのを楽しみにしているのだが、最近はプレミアムがついてしまって定価の倍くらいの値段で取引をされているらしい。これはもう、僕には手が届かないところまで行ってしまったということだ。
いつもとんかつソースを買う問屋さんにこのウイスキーが置いてあるのを見たので、問屋さんなら定価で売ってくれるのかもしれないと思い、聞いてみると、これはプレミアムがついているので売ることはできないというつれない返事が返ってきた。これで僕は一生竹鶴を飲むことができなくなってしまった・・。



これが最後の竹鶴だ・・。

「マッサン」の影響もあるのだろうが、これはきっと中国人がこういうものを日本で買いあさっているからに違いないのだ。
よい言葉遣いではないのだろうが、成金はお金に任せてなんでも自分のものにしようとする。負け犬の遠吠えでしかないのであるが、品のない奴はできるだけ早く退場してくれと強く言いたいのである。
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