鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

今浦島の上野さん

2006-04-30 | Weblog
63年ぶりに祖国の土を踏んだ上野石之助さんが28日,ウクライナへ帰国の途についた。北朝鮮の拉致問題や、ホリエモンの釈放などの影に隠れてあまり注目されなかったが、戦争の清算がまだ終わっていないことを改めて日本人に訴えかけた出来事として、忘れられないものとなった。
 太平洋戦争中に樺太の旧陸軍部隊に所属し、終戦を知ってか、知らずか,樺太の製材工場などに勤めた後,1960年ごろにウクライナに移り、現地の女性と結婚し,1男2女をもうけている。今回の一時帰国には長男のアナトリーさんも同行した。
この20日に故郷の岩手県洋野町を訪れ,弟妹らと再会し、町をあげての歓迎を受けた。63年ぶりの故郷の家や炭焼き小屋,踊りに徐徐に記憶を取り戻し、涙を見せる場面がしばしばうかがえた。  上野さんは空白の63年間について,「ただ運命だった」としか語らないが、日本政府に対する恨みがましいことは一言も発することなく、淡々と63年ぶりの故国を「すてきな国」と評し、ウクライナへ戻った。洋野町近くのスーパーで長男のアナトリーさんがみやげにフライパンと包丁を購入した、と伝えられていたが、ウクライナでの生活ぶりがしのばれ、さらに上野さんの苦労がしのばれた。
 上野さんの目に映った戦後61年の日本の風物はどんなものだったのか、日本語をほとんど忘れてしまった上野さんは多くを語らなかったので、詳細はわからないが、あまりにも変貌した日本の姿にただ驚くことしかできなかったのではなかろうか。北朝鮮の拉致家族の離反は30年でしれでも大変なことだが、上野さんの空白はそれよりさらに倍以上ある。まさに現代版、浦島太郎である。鈍想愚感子は60歳を過ぎた程度で、その生涯を上回る期間の空白になんと言って応えていいのか、言葉が出てこない。
 テレビで上野さんの動静が伝えられる度に胸を突かれる思いがしてならなかった。本当にご苦労さんでした、上野さん。
東京家庭裁判所は27日に上野さんの戦時死亡宣告を取り消し、戸籍を回復した。だからといって、上野さんの心の傷は癒されるわけではないが、日本政府がさしあたり出来ることはこんなものだろう。
いずれにしろ、最近では珍しい胸を突かれる出来事であった。
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米大統領と面会した横田早紀江さん

2006-04-29 | Weblog
 北朝鮮の拉致問題がにわかに国際的な問題として大きく前進する様相となってきた。米国下院の公聴会(国際関係委員会アジア太平洋小委員会・国際人権小委員会共催)で証言を求められ、娘の横田めぐみさんの救出を強く訴えた横田早紀江さんが29日未明、ブッシュ米国大統領と面会し、再度北朝鮮への経済制裁と拉致被害者の救出を訴えた。4年前に北朝鮮から中国の日本総領事館に亡命したハンミちゃん家族と同席しての面会だったが、一民間人が現職の米国大統領と直に会えるのは異例のことで、拉致問題が日本の市民運動から国際的な広がりをもったものになってきた表れともいえる。追い詰められたキム・ジョンイルがどう出てくるのか、予断は許さないが、いままでのように解決済みと放置できなくなったのは確かで、小泉首相も最後の仕事ができたようだ。
 米下院での横田早紀江さんの証言は「もう心身とも疲れ果てているが、子どもたちが助けを求めている間はどんなことがあっても倒れることはできません」と涙ながらに救出を訴えた感動的なものだった。公聴会に出席した誰もが胸を打たれ、こんな非道なことがあってはならないと思い、改めて北朝鮮に対する怒りを顕わにした。
 それに続いてのブッシュ米大統領との面会で、横田早紀江さんは、今年中にめぐみちゃんら拉致被害者の救出できるよう訴えた。ブッシュ大統領は「国家として拉致を許したことは信じられない」として「北朝鮮は国際社会で尊敬を得たいと思うなら人権を尊重することだ」と語った。面会後、「大統領になって以来最も心を動かされた会談だった」と述べた。
 今回の米公聴会での証言がどういう経緯で決まったのか、よくわからないが、米大統領との面会は急遽決まったことだ。イラク問題が袋小路に入って、過去最低の支持率となっているブッシュ大統領がパーフォーマンスをねらって仕組んだのだろうが、横田早紀江さんが差し出した拉致家族の会の象徴である青いリボンをさりげなく胸につけるあたり、相手のポイントをつくのがうまい。そういえば、ブッシュ大統領が面会の模様をテレビカメラを入れたまま行うのは珍しいことだ、という。大統領側近がこのところ、米軍再編経費の負担問題やイラクへの自衛隊派遣などで日米関係が以前ほどスムーズにいってないことから、ここは拉致問題への協力を見せて、点数稼ぎをしてみようか、と計算してもおかしくない。いや、十分にありうることだ。
 それに今回の証言台に立つ横田早紀江さんは日本の拉致問題の象徴的な人である。13歳の最愛の娘さんを拉致され、いまや70歳になってしまった母親である。米国社会では女性はマイノリティとして常に支えられなければならない、と考えられている。これが父親の横田滋さんだったら、恐らくブッシュ大統領の面会とはならなかったことだろう。
 そういえば、今回テレビに映る米国議会の議員はいずれも青いリボンをつけていたのは心憎い演出であった。米国人の心配りは徹底していることをうかがわせた。
 当初、拉致被害者になかなか会おうとしなかった小泉首相、およびその側近とは大違いだ。すでにレイムダックとなっている小泉首相、ここは最後の仕事としてピョンヤンは飛んで、キム・ジョンイルと3回目の対決をして、拉致問題の全面解決を図りますか。そうでもしないと、ブッシュ大統領より支持率は下がりますよ。
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またぞろホリエモン狂騒曲

2006-04-28 | Weblog
 あのホリエモンが昨夜、3カ月ぶりに東京拘置所から釈放され、その模様をNHKが午後9時のニュース枠いっぱいを使って、現場中継した。まるで冤罪の被疑者が一時釈放されたのをマスコミ各社が大挙して押しかけ、談話をとる、といった狂騒ぶりで、ホリエモンをますます増長させることになりかねない。天下のNHKまでが同調しているのは噴飯もので、貴重な視聴料をこんなことにムダ遣いするようなら、視聴料なんてさらに払う気がなくなることだろう。
 まず、犯意を否定している被疑者をどうしてこの段階で釈放してしまうのか、裁判所の決定に異議がある。検察側の2度にわたる反対を押し切って釈放してしまったのは解せない。いくら証拠隠滅の恐れのある行為はしないことになっているとはいっても、いまはインターネット、携帯電話でいくらでも連絡をつけられる。まして今回の証拠はメールのやりとりが大半だという。ホリエモンの一挙手一投足を24時間監視できるわけがない。3億円の保釈金もホリエモンにとっては何の足かせにもならないだろう。
 昨夜のNHKの報道はたまたま午後9時の通常のニュースの時間にぴったり一致したとはいえ、東京拘置所の正面とヘりコプターからの俯瞰の2カ所からの中継で、いまかいまかと待つ中継ぶりはまるで超大物の一挙手一動を追う、といった感じで見ているうちに不愉快になってきた。他の重要ニュースは付けたりといった風の報道姿勢は見識を疑う。翌朝の主婦向けの民放のワイドショーやスポーツ新聞・写真誌の記者・カメラマンが東京拘置所の正面に群がり、釈放の一瞬を撮ろう、というのならわかるが、公正報道を旨とするnhkが同じような報道をするというのは理解の範囲を超えている。
 3カ月で8キロ痩せたホリエモンは「お騒がせして済みません」と頭を下げたようだが、大勢の報道陣を見て心の中では「俺の人気もまだまだ捨てたものではない」とほくそ笑んでいることだろう。誰が見ても粉飾決算をして22万人の株主を欺き、どうあっても社長としての責任は免れない極悪人であるのに3カ月間一貫して無罪を主張してきたホリエモンはマスコミは俺を支持してくれている、と勘違いしているかもしれない。顔付きをみている限り、反省している雰囲気はまるでない。
 大勢群がったマスコミは単に被写体としての変貌ぶりに関心があっただけなのに”人気”と思ってしまうホリエモンは今後も以前と同じようなパーフォーマンスをし続ける、としたら、お笑いものだ。その責の一半はお先棒を担いだNHKにもある。
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仰天人事の横河ブリッジ

2006-04-27 | Weblog
 鋼鉄製橋梁専業最大手の横河ブリッジが監査室長に代表権を与える発表をし、話題となっている。新会社法が5月1日から施行され、企業に内部統制システムの構築が義務づけられ、企業のコンプライアンス(法令順守)が求められるなかで、思い切った人事をするもので、これで果たして不祥事の再発が防げるものなのか、そして、社員のモラルにどう影響を与えるものなのか、気になる人事である。
 横河ブリッジは昨年、日本道路公団の橋梁談合事件のリーダー的役割を果たしたとして、当時の原田康夫社長が辞任し、吉田明常務が業務本部長から監査室長に専任し、社内通報制度の整備や、全社員を対象にしたコンプライアンス研修などして、談合の再発防止に努めてきた。この3月に公正取引委員会による課徴金納付命令が出たことから、一連の事件の処理にメドがついたこととし、長谷川鍬一会長が退任するとともに吉田常務取締役監査室長に代表権を与え、内外にコンプライアンス重視の姿勢を印象づけることにした。
 そこで、疑問が湧くのは監査室は本来、監査役の下で監査業務を行うのが使命である。会計監査や、日常の業務監査も行う。で、監査役は社長以下取締役の業務の執行状況をチェックする立場にあり、当然常務取締役も対象になる。とすると、監査室は監査役の下で監査活動をしながら、監査室長にも報告し、その監査室長は監査役から仕事ぶりのチャックを受ける、しかも監査室長は会社を代表する代表権も持っている、というややこしい関係になってくる。監査役の仕事がなくなってしまうのではなかろうか。
 監査室長に代表権を与える前にそもそも監査室長に取締役を充てた昨年の人事が問題なのである。横河ブリッジにきちんとした監査ができるのか、と不安になってくる。会計監査法人は協和が担当しているようだが、当の協和監査法人がこれについてどういう見解を持っているのか、気になるところである。
 本来、コンプライアンスの最高責任者は社長がすべきことである。それを一常務取締役に担当させるからややこしいことになる。せいぜい、社長直轄とし、部長クラスが室長を務めればいい。
 横河ブリッジは年間売上高500億円で、従業員700人のいわゆる中堅企業である。いまでは横河電機の子会社の感はあるが、設立年をみると横河ブリッジのが古く、横河ブリッジが横河グループの創業会社のようだ。談合ですっかり名が売れたものの、東証一部に上場しているが、世間的にはそれほど有名な会社ではない。同族経営が長く続いてきた企業で、企業経営のなんたるかがまだあまりよくわかっていないのではなかろうか。
 日本の企業のコンプライアンスなんてこんなものかもしれない。
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なぜいまインタビュー記事が

2006-04-26 | Weblog
 日本経済新聞の昨25日の朝刊社会面の中央に大きく耐震偽装で渦中の内河健総合経営研究所所長のインタビュー記事が掲載された。2段の写真付きで「偽装の認識なかった」との談話も大見出しになっており、読者に異様な違和感を与えるのに十分な記事であった。いま、この時期にどうしてこんな記事が掲載されるのか、日本経済新聞の見識を疑わざるを得ない。
 内河所長のインタビュー記事は全7段で、工事代金の支払いなどをめぐり詐欺の疑いが浮上している「サンホテル奈良」について「引渡し時に偽装があることは知らなかった」と答えている。テレビの国会喚問で散々、うそで塗り固めた弁明を聞いているので、またか、といった感じで、インタビューそのものの内容に新味はまるでない。しかもさもインタビューに応じてくれたことがニュースであるような書き方は全く日本経済新聞のセンスがなっていないことを証明している。
 いま耐震偽装問題がどういう段階にきているのか、小嶋進ヒューザー社長、姉歯秀次姉歯建築設計事務所所長、木村盛好木村建設社長、藤田東吾イーホームズ社長ら関係者が一様に別件逮捕で逮捕され、事件の解明にメスが入れられようとしている。イーホームズなどは26日の新聞によると、顧客の信用を失ったので、来月にも廃業することにした、という。そうした連中以上の最大のワルとも言えるのが内河所長なのに、その黒幕に無実である、と言わせ、それをこのタイミングで大々的に報道する、というのはまず考えられないことだ。
 よほど政界か、経済界の大物から依頼があったから掲載に至ったのか、それとも日本経済新聞独自の判断からしたのか、わからないが、いずれにしろ日本経済新聞の大きな汚点になるのは間違いない。
 日本経済新聞はもともと経済専門紙でスタートしているが、いつからか経済を中心とする総合報道機関を標榜しだし、いまでは全国的に販売する全国紙でもある。経済関係では数々の特ダネをものにしているのは承知のことで、警察ネタや街ネタ、世相ネタの社会面はそんなに注目も期待もされてはいないかもしれないが、全国総合紙である以上、社会面の記事も充実していかなくてはならないのは自明の理でもある。それだけにこんなセンスを疑う記事が堂々と掲載されることは非常に残念なことではある。
 一体、この記事が掲載されて喜ぶ人が内河所長以外にいるのだろうか。そんな記事を掲載することは二度としてほしくない。
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根拠ない米軍移転費負担

2006-04-25 | Weblog
 額賀福志郎防衛庁長官は米ワシントンでラムズフェルド国防長官と会談し、在沖縄海兵隊のグアム移転経費問題について総額102.7億ドルのうち59%を日本側で負担することで合意した。当初米側は75%の負担を要求してきたのに対し、日本側が押し返したことになるが、なぜ59%に落ち着いたのか根拠がいまひとつはっきりしない。灰色の政治決着となったことに米国に対しノーといえない小泉外交の限界がうかがえる。
 在日米軍の再編は米軍の世界的再編の一環として始まり、日本側は自衛隊と米軍の連携強化を図ることで協力し、一方で沖縄を中心に基地負担軽減を求め、在沖縄海兵隊8000人をグアムに移転することになった。核兵器の時代に海兵隊が駐留する意味はないことから当然の動きだが、日本政府は日本から言い出したことだから、応分の負担には応じる、と言明してきた。しかし、過去に海外の米国軍の費用を日本が負担した例はない、という。今回どんな形であれ、負担に応じることは今後の先例となり、毎回費用負担に応じることになりかねない。そうなれば、総額2兆円以上にのぼるのは確実、という。
 当初、移転経費総額1兆1900億円の75%の負担を求められた時には誰しも
驚いた。慢性的に貿易収支と財政収支の双子の赤字に悩む米国が国全体としては金満である日本に対して頭を下げて頼み込んでくるのならともかく、さも当然のように要求してくるその姿勢にカチンときた。しかもそれを唯々諾々と呑んでしまいそうな小泉政権はまるで惚れたレディの言うことならなんでも聞く金満オヤジといった感じで、小泉外交の対米盲従姿勢がはっきりうかがえた。
 そういった国民感情を感じたのか、急遽額賀長官が米国へ乗り込んで行って当初予定になかった日米防衛首脳会談を開き、59%負担で手をうったようだ。額賀長官は日本側は海兵隊に兵舎、学校、庁舎、教場や、家族住宅、電力・水道などのインフラ整備などを、米川は桟橋や陸揚げ施設など基地関連施設の整備を中心にそれぞれ負担することで積算した結果、日本側の負担は全体の59%になった、と説明しているようだが、なにか釈然としない。自民党内には「せいぜい半々の負担が限度」という声が強く、どうして他人の引越に過半の負担をしなければならないのか、理解に苦しむ。
 そもそも今回の移転が本当に日本側の要請で始まったのか、米側が世界の情勢を見て戦略的に決めたのかはっきりしない。日本各地にある米軍基地についてはいま方々でトラブルめいたものが起きている。その最中に国民の神経を逆なでするような灰色の政治決着をすることは小泉自民党の本性見えたり、といった感が深い。ここは一昨日の千葉7区衆院補選で上げ潮基調に乗る小沢民主党に政府の弱腰外交の実態を断固、国民の目にさらしてほしい。
 追記 翌26日になって在日米軍再編の担当者であるローレス米国防副次官が、在日米軍再編に伴う日本側の負担が計260億ドル(日本円約2兆9900億円)の巨額にのぼることを明らかにした。普天間飛行場移設経費など日本国内の再編・移転費が今後6ー7年で約200億ドルとなり、これに先日合意した米海兵隊グアム移転費の日本側負担60.9億ドルが加わる、という。日米地位協定で日本国内の再編・移転経費は全額日本側の負担と決まっている、ともいう。本当、米国にいいように決められ、やられている、という感じがある。これに対し、安倍晋三官房長官は「積算の違い」と言うだけにとどめているが、米側の言い分は全面的に認めている。なんたる弱腰、これでは小泉と変わらないではないか。首相後継者ナンバーワンの人気がなきますよ、安倍さん。 
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反転攻勢に出る民主党

2006-04-24 | Weblog
 注目の衆院補選千葉7区で民主党候補が僅差で自民・公明党候補を破り、小沢民主党の滑らかな出足を飾ることとなった。偽メール問題で崩壊寸前まで追い詰められていた民主党がなんとか党再生の足がかりをつかみ、来年半ばの参院選を経て、政権奪取へ加速をつけることができることとなった。今回の補選の民主党の勝利は民主党の勝利というより、世界を眺め渡してみると、原油価格の高騰や米中会談、北朝鮮の拉致問題など日本を取り巻く環境は日増しに悪化しているのに、小泉首相は今年秋の退陣しか頭にないようなノー天気ぶりで、それに違和感を覚えた国民が鉄槌を下した、というのが大きいのではなかろうか。奇しくも同日行われた山口県岩国市長選でも米空母艦載機部隊の移転受け入れ反対派の候補が当選した。小泉自民党のおかしさを国民がようやく気づき始めた証拠である。
 千葉7区の補欠選挙は民主党公認の太田和美氏が87046票を獲得し、自民・公明党の推す斎藤健氏(86091票獲得)を955票の僅差で破り、初当選した。26歳と衆院議員としては最年少議員になる、という。自民党公認の斎藤氏は前埼玉県副知事で、221人の公募で選ばれた人で、小泉首相はじめ自民・公明の大物が大挙応援にかけつけていただけに僅差とはいえ、ショック度は大きい。選挙期間中、応援演説に現れた小泉首相は「今回は自民党総裁としては最後の応援演説である」と力説していたのをテレビで見ていて、なんと感傷的なことを言っているのか、と違和感を覚えた。選挙をそんな個人的なノスタルジックなものに矮小化していいのか、と疑問を感じた。一生懸命選挙活動をしている人にはがっかりする気持ちを抱かせるものだろう。あれで、自民党は負けたのだ、と正直思う。
 投票率は49.63%と昨秋の衆院選より15.12ポイント低いが、補選としては高い投票率だった。投票率が低いと組織票に強い公明党が有利のはずが逆の結果となったのは投票率をさrに低めにみていたせいか、いずれにしろ自民・公明の戦術が裏目に出たのは明らかである。
 昨秋の衆院選での圧勝、その後建築偽装、米国産牛肉輸入禁止など4点セットで一時守勢に回った自民党が民主党の自らこけた偽メール問題ですっかり立ち直ったのが、これでようやく元の軌道に戻ることになる。選挙に強い小沢一郎の面目も立った。
 本来、衆院補選など全体の政局からすればへでもないことである。たまたまタイミングが小沢民主党スタートの時期とピッタリ符合したため、小沢民主党の力を試す格好の選挙となっただけのことである。
 政権を担当している自民・公明党がやるべきことをきちんとあyっていれば、負けることはなかった選挙である。北朝鮮の拉致問題でも昨日あたり、米国民がワシントンで抗議デモを行っていることが報じられた。全然関係のない米国民でも義憤を感じているのだ。なのに当事者の自民党は前から求められている対北朝鮮への経済制裁にすらいまだ踏み切っていない。横田めぐみさんが生きているのか、いないのか、どうしてわからないままののか。口では「北朝鮮は怪しからん」とは言うものの行動では何も起こさないのは、拉致被害者にとって本当に同情していることにはならない。
 岩国市長選だけでなく、23日に選挙のあった沖縄市長選、東広島市長選でも自民党の公認候補が負けた。東広島市長選には自民党政調会長の中川秀直氏の次男が立候補して破れたというから、潮目は変わってきた。
 小沢民主党首の快進撃が続くことを期待したい。
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本当の不条理劇「マテリアル・ママ」

2006-04-23 | Weblog
 新国立劇場で岩松了作の劇「マテリアル・ママ」を観賞した。新国立劇場のシリーズ「われわれはどこへいくのか」の第二弾で、物質文明の先に見える人間関係に迫るというキャッチフレーズであったが、はっきり言って消化不足で、不条理劇そのものになってしまった。岩松了氏は自ら脚本も書き、主演クラスの出演もこなす野田秀樹がやるようなことに挑んだが、創作も演出も出演もするのはやや無理があったようで、あちこちに破綻がうかがえた。
 「マテリアル・ママ」はマドンナの歌「マテリアル・ガール」からとったもので、別に深い意味はない、という。娘の愛用していた車を大事に世話する初老の女性のところに若い車のセールスマンが毎日足繁く通ってきて、なにかとちょっかいを出す隣の男性と親しくなる。そこへセールスマンの恋人が登場し、鈴の音や、レストラン、鳥の死をめぐってお互いの関係がまずくなる。そして、隣の男性は母親の面倒をヘルパーの男性に頼み、旅に出るが、なんら解決に至らない。そうこうするうちに車の買い替えの鍵を握っているはずの娘さんがもう死んでいないことが判明し、肝心の車もどこかへ消えてしまう。何が一体幸せなのか、わからないとの女主人公の独白で劇は終わる。
 物質文明を皮肉った不条理劇のようであるが、なにか全体にもやもやしたものがあって訴えてくるものがなかった。舞台が茶の間にどでんとある車とリビングが180度回って入れ替わるのも何回もすると目障りである。主演のセールスマン役の仲村トトルはスラッとした180センチの長身で格好はいいのだが、演劇4回目のせいか、セリフまわしが気になるし、演技もイマイチの感があった。登場人物5人のなかで演技派は老女役の倉野章子1人だけといった感じで、岩松了氏もお世辞にもうまい、とはいえなかった。
休憩15分をはさんで3時間強の公演で、休憩後の第2部では妙に眠くなってしまった。隣を見ると、かみさんもこっくりこっくりやっていた。面白ければそんなことはないのに、とも思った。実際、後半はダレた感が否めなかった。
 新国立劇場で発行している機関誌「アトレ」の最近号で岩松了氏はインタビューに「いま執筆中」と答えいた。創作もしながら、配役集めも演出も、そして自ら出演もするというのはよほどの天才でない限りできない相談だろう。なぜ、自ら出演することになったのか、ひょっとしたら意中の人に断られたから、仕方なく自ら出演したのか、単に出るのが好きだから自ら買って出たのか、わからないが、ここは創作に全力投球すべきだったのではなかろうか。
 先ほどのインタビューで自ら不条理劇だ、と言っていたが、まさか本当に観た人もわからないような不条理劇になるとは思っていなかったことだろう。なにか時間がなかったとか、岩松氏の肉体的限界からか、中途半端に終わった、との感が否めない。
 大体、演劇なんて常にアドリブ的な要素があるので、こんなものなのかもしれない。新しいことに挑戦した、という岩松氏の意欲は買える、ということで次回作に期待したい。

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Sさん独立す

2006-04-22 | Weblog
 会社の同期のSさんが定年で会社を辞め、元の会社の近くにオフィスを構え、昨夜、そのオフィスの披露パーティがあった。お祝いのワインを持ってかけつけ、多くの仲間たちとが激励してきた。まだ、元の会社のなかにも机を置き、半ば個人事務所のような形でスタートする、という。初めて見る奥さんが台所で裏方を務めていたが、再出発をお祝いするとはいえ、一方では第一線で華々しく活躍していたのが、一介の個人としてやっていかなければならない一抹の寂しさもあり、乾杯する手もすんなりとは上に上がらないものもあった。
 Sさんとは大学も会社も同じで、たまたま地方から東京本社へ転勤してきた鈍想愚感子が配属された部署にSさんがいたこともあって、花の独身生活を謳歌し、銀座、赤坂あたりを徘徊した。住まいが小田急相模原から歩いて20分くらいの独身寮だったため、よく世田谷・深沢の高級住宅地の一角にあるSさんの家に泊まったことがある。最終電車に乗り遅れ、相模大野から真夜中に一時間かけて歩いたこともあり、身体がもたなくなり、Sさんと相談し、深沢に近い目黒区八雲のアパートを見つけて、移り住んだ。が、却って、Sさんとの飲み歩きが増えて良かったのか、悪かったのかわからない。ただ、親かかりのSさんとは身分が違ったのか、職場が変わったこともあってか、いつしか共に飲み歩くことはなくなっていった。
 覆水盆にかえらずというが、10数年前にまた同じ子会社に籍を置くことになったが、もう二人で飲みに行くこともなくなってしまった。若い時の飲みに行く雰囲気というものは独特のものがある。ヤマっ気というか、無鉄砲というか、何が来ても恐れはしない、飲みに行くことがファッションのような空気がある。Sさんとは一時、そうした空気を共有した。結婚して子供ができると、もう元には戻れない、青春の一道程といったものなのかもしれない。
 そのSさんも鈍想愚感子と同じく定年となった。Sさんは永らく自費出版や企業の広報誌の企画編集を受託する会社の専務取締役をしていた。経営誌の編集をしていた頃からの付き合いで、多くのお客さんを持っているので、それを生かすため、定年後も契約社員として同じ仕事を続けるが、先を考えて個人事業主への布石として元の会社から歩いて数分の距離のところにオフィスを構えたわけだ。いずれ、個人事業主として独立する。
 そのために社内外のこれまでのネットワークを大事にしなくてはと、披露パーティに及んだ、というわけだ。編集人としての一つの生きかたを示してくれた。翻って、来年か、さ来年には確実にやってくる鈍想愚感子の第二の人生をどう設計するか、Sさんのようなネットワークはないし、これといった特技もなし、のんべんだらりと余生を送るのも味気ないし、さてさてどうしたものやら、乾杯しながらふと考えさせられた。
 ともあれ、頑張れSさんとエールを送りたい、そして永年のお付き合いにも感謝を申し上げたい。ありがとうございました。
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素晴らしき歌姫キャサリン・ジェンキンス

2006-04-21 | Weblog
 昨20日夜、東京・三軒茶屋の昭和女子大学の人見記念講堂で「題名のない音楽界21」の公開録画公演に行き、英国の歌姫、キャサリン・ジェンキンスの歌に聞き惚れてきた。ルックス良し、声良し、スタイル良し、しかもブロンドですべて揃った歌手で、司会の羽田健太郎のインタビューもあって人柄もちょっぴり知ることができたし、終演後にはCDのジャケットへのサイン会をするなどサービス精神もたっぷりで、早速キャサリン・ジェンキンスのファンになってしまった。
 「題名のない音楽会」の収録はほぼ2週間ごとに行われており、以前はよく参加していたが、このところ読売交響楽団の定期演奏会の会員になって毎月演奏会へ行っていたこともあって、しばらく足が遠のいていた。予め、開演前に座席の確定したチケットに交換したうえで、入場することになっているので、時間を要するが、無料なのでそれくらいの労は仕方がない。通常、1回に2本分の収録を休憩をはさんで行う。スタート当初は司会の故黛敏郎がきっちり30分で収録を終えたので、ほぼテレビで見る通りの進行であったが、最近はあとで編集するということで1本の収録に1時間近くかけることもある。それだけテレビでは見られない生の演奏、歌を楽しむことができる。
 昨夜の最初の1本は「ビートルズがくれたメッセージ」と題して、シルクロードの民族楽器を紹介しながらシルクロードを旅するものだった。アジアの民族楽器を3500ほど収集したという若林忠宏さんがオーケストラと競演するという面白い内容。いかにもインドを思わせるシタールという珍しい楽器を奏で、オーケストラと「ノルウェーの森」を演奏した。やや強引な企画という感じもあったが、世の中にこんなことに情熱を燃やし、一生をかけている人がいるのだ、とも感心した。
 で、後半はキャサリン・ジェンキンスの独奏会。オペラカルメンから「ハバネラ」をはじめ荒川静香ですっかり有名になったオペラトウーランドットから「誰も寝てはならぬ」、「オペラ座の怪人」、「オーバーザレインボウ」など7曲をたっぷり聞かせてくれた。コンサートだと単に歌と語りだけだが、この「題名のない音楽会」では途中に音楽に造詣の深い羽田健太郎が時に鋭く切り込むインタビューがあり、それも魅力となっている。昨日は「今後やりたいことは」と聞き、「オペラをしてみたい」との回答を引き出していた。それと、英国にボーイフレンドがいることも告白していた。インタビューで話す声と歌う声が若干異なって聞こえるのは歌手としてよくあることなのかしら、と少し気になったが、大したことではない。。
 メゾソプラノ歌手なので、通常男性が歌う曲目もこなすし、クラシックからポピュラーまで幅広く歌い、声もきれいでよく通る。マイクを近くで使うのはやや気になるが、英国でデビュー以来8週間連続、ヒットチャートNo、1を獲得したことや、来年は三大テノール歌手との共演も決まっている、という。
 間近で世界のトップクラスの歌を聴けたのはうれしいことであった。終演後にロビーで買い上げたCDにサインするサービスもあり、もちろんしてもらってきた。かみさんは握手までしてもらって喜んでいた。
 あと演奏の新日本フィルハオモニー交響楽団の演奏だが、ずっと読売交響楽団の定期演奏会で耳が肥えたせいか、なにか切れがないような感じがした。有料と無料の演奏会のためなのか、よくわからないが、やはり交響楽団にも格があるのか、とも思った。
 ともあれ、こんないい企画を続けてくれている出光興産に感謝、感謝!の思いでいっぱいだ。車を所有している時はガソリンはアポロマークのSSで通していたのだが、いまはお返しする手段がない。ともあれ、出光さん、ありがとう。
 
なお、このキャサリン・ジェンキンスの出演する「題名のない音楽会」は6月11日(日)午前9時からテレビ朝日で放映される。
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