鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

歌舞伎の手法を存分に取り入れ面白く見せてくれた演劇「東海道四谷怪談」

2015-06-14 | Weblog

 14日は東京・初台の新国立劇場で鶴屋南北作の演劇「東海道四谷怪談」を観賞した。歌舞伎でお岩の幽霊が出るようなさわりの部分だけを扱ったのを観た記憶はあるが、通しで観賞したのは初めてで、主演の内野聖陽と秋山菜津子の熱演もあって非常に迫力のある演劇に仕上がっていたのに感動した。3時間弱にも及ぶ公演があっという間に過ぎ去り、観終わってしみじみ「面白かった」との思いがした。特に最後の広い舞台を十分に使っての立ち回りが印象的だった。

 「東海道四谷怪談」は内野聖陽演じる民谷伊右衛門が秋山菜津子演じる妻のお岩を徹底的にいたぶり、ついには隣家の娘と結婚することになり、邪魔者として殺してしまい、折りから盗みを働いたかどで摂関していた使用人ともども戸板に貼り付け川に流してしまう。そして隣家の娘、お梅を嫁として家に呼び入れるが、お岩の亡霊が現われ、血迷ってお梅と父親の喜兵衛を殺してしまう。お岩はかつて伊右衛門の悪行を嫌って離縁されていたのを復縁したのだったが、その舌の根も乾かぬ間にお岩の父親を密かに殺し、何食わぬ顔でお岩に「仇を討ってやる」とうそぶいていたのだった。

 これで計5人を殺し、極悪人となった伊右衛門はお岩の幽霊に取り付けれ、身の周りに鼠が出没するようになり、段々追い詰められていく。そして、ついに役人に追われ、雪の降りしきるなか大捕りものを演じることとなる。それをなんとか逃れたところ、お岩の妹の夫の佐藤与茂七がやってきて、死闘を繰り返し、弱ったところへ大量の鼠が現われて伊右衛門を食い殺し、ついには露と消えることとなる。

 大きな舞台の上にシートを広げ、ミニ舞台をしつらえ、背景にも布を垂らし縦横に動かして効果的に場面転換をしていたのが面白かった。後半には黒一色だった背景の板を大きな窓のように取り外し、そこで伊右衛門とお岩が出会いをを演じ、そのまま舞台が後ろへ遠ざかっていくことで回想シーンであることを見せていたのは素晴らしいと思わせた。

 他にも歌舞伎で用いられている手法を取り入れて伊右衛門と捕り方との立ち回りシーンを大々的に演じていったのが見せてくれた。それと、21人の出演者のうち女性は秋山菜津子ただ一人で、あとの女役は歌舞伎でいう女形を男性が演じていたのはこれまでにない演劇手法といえよう。

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