世界を騒がせたジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー・喜多川氏による性加害問題を受け、事務所が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」(座長林真琴弁護士)は29日、記者会見を開き、性加害を認定する調査結果を公表した。調査チームは「長期間にわたり広範囲に性加害を繰り返していた事実が認められた」と指摘し、その原因として絶対的に強い立場にあったジャニー氏の性嗜好異常(パラノイア)とジャニー事務所経営陣の問題の放置と隠蔽があったとして、再発防止策として被害者への真摯な謝罪と対話の開始、それと適正な被害者救済措置制度の構築と人権方針の策定と実施を強く求めた。あわせて現経営者のジュリー景子氏の退任を求めた。
問題を指摘された企業が経営改善の手法のひとつとして外部識者によるチームの結成と助言を求めるケースはよくあるが、それを頼んだ経営陣を正面からバッサリと切り捨てる提言をするケースは極めて異例で、さすが前検事総長を務めた林真琴氏だと称賛されてもいいことである。ジャニーズ事務所のジュリー景子氏は早速30日に社長を辞任する報道が流れてきた。ただ、本人がマスコミに対して記者会見するようなことにはなっておらず、後の経営体制がどうなるかについてはまだ明らかとなっておらず、特別チームの報告を受けてどう経営改善を図るのか、いまの段階では見えていない。
もともとこの性加害問題はもともと噂としては関係者の間で取りざたされてはきているが、大手テレビ会社をバックに抱えるマスコミ各社はきちんとした形で報道せずに結果的には放置するような姿勢をとり続けてきたことがこの問題を隠すような形となってきた。それが今年3月に英国のBBCがジャニー氏のジャニーズJr.に対する性加害問題を「J-POPの捕食者 秘められたるスキャンダル」として報道したことにより、多くの性被害者が名乗り出て、我が国でも一大スキャンダルとして大きく報道されるようになって、明るみに出されることとなった。
今回, 林真琴氏を座長として迎え、大胆なメスが入れられることとなったわけだが、これで今後の人権問題について大きな前進が図られることとなったか、については何とも言えない状況である。ジャニーズ事務所が今回の提言を受けてどのように経営改善を図り、人権問題に対して社内で再発防止策についてどういう体制で臨むのか、が明らかとなっていない以上、万全とは言えないからである。
そして、今回性被害にあったタレントが順次、性被害の実態を明らかにしているが、なぜジャニー喜多川氏から目をつけられ、選ばれたのかが一切明らかになっていない。ジャニーズ事務所を代表するたとえば、SMAPの木村拓哉や中井正広らも対象になっていたのか、嵐のメンバーはどうなのか、だれもが考えるようなことについて明らかとなっていない。また、かつてジャニーズ事務所には5人の女性タレントが所属していたというが、彼女らは対象となっていたのだろうか、ジャニー喜多川氏が死んでしまっている現在、だれも答えられないことかもしれない。大手マスコミがジャニーズ事務所の性加害問題について報道しなかったことと関係ないことでもないことだろう。いずれにしろ、こうした問題を抱えたジャニーズ事務所の経営を立て直すのは容易ではないだろう。
追記(9月8日)7日午後2時から、ジャニーズ事務所は藤島ジュリー景子社長が新たに後任の社長として指名した東山紀之氏とジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦氏を従えて記者会見に臨んだ。午後6時過ぎまで4時間余となる歴史的長時間の記者会見となった。なぜ、東山氏が後継社長となったのか、今後どうするのか、といったことが述べられた後、集まった記者300人からの質問に応じたため、長時間となった模様である。民放テレビ数社が生中継したのをチャンネルを切り替えながら視聴したが、結論としてこれでジャニーズ事務所の経営改革がきちんと図られるのか、について大いに疑問が残った。いずれもが会社経営について素人で、やはりその道のプロが加わらないと物事が進まない、という印象がぬぐえないからだ。それと、藤島ジュリー社長はジャニーズ事務所の株式100%をを持ったまま代表取締役の残るというのが大きな疑問符がつくからだ。藤島ジュリー氏は賠償金を払うのに資本金を充てるようなことを語ったが、そんなお金はいくらでも調達できる筈で、それが株をそのまま保有する理由にはならない。ここでも経営者失格の面を見せたことになり、記者会見の後味を一層悪いものとしたのは否定できないだろう。
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