定刻になり、議長の中村満義社長がまず議決権行使の株主は6万6428人で、前日までに行使した株主は2万971人と意外と少ないことに驚いた。議長が事業報告をすると、大したことない内容でも前方に陣取った社員株主らしき一団から拍手が湧き起こる。それと映像による報告のあと、対処すべき課題などについて議長から報告があったが、通知書に書いてある内容を棒読みするだけで、拍子抜けだった。
そして株主からの質問を受け付けたが、最初の質問は1944年に1888人もの中国人労働者を拉致してうち522人を殺したことについての補償問題を取り上げ、鹿島の責任を追及したもので、どうやら最高裁で係争中のものらしい。鹿島が中国での事業がうまくいってないのはこれをなおざりにしているからだ、とその後も複数の株主も加わって質問の矢を浴びせた。続いて質問に立った中年の男性は羽田空港の滑走路工事をめぐり玉砂利の購入で不正を行ったことや、仙台でのダンプカーの単価は1日2万8千円しか払わず、建設業法で定める工事原価を下回っているなどを取り上げ、鹿島のコンプライアンスを問題にした。
このほか、建設事業で特命比率が41.5%となっていることを取り上げ、特命にこだわるのは会社の先行きを危なくすることにつながる、と批判し、議長が「説明不足だった」と釈明する場面もあった。聞いていると同じ株主4人が代わる代わる発言している感じで、小1時間くらい続いたのを潮時と見て、前方に座っていた社員株主が採決を求める発言をし、拍手で賛同を得て、採決となり、約1時間半で株主総会を終了した。
考えてみればゼネコンは下請けに建設業者を数多く使い、いわゆる総会屋がもっとも出入りしやすい業種である。この日の総会を見る限り、総会屋と思しき人こそいなかったが、総会そのものの運営ぶりは総会屋が大挙して押しかけた往時の株主総会に備え、前方を社員株主でがっちりと固め、質問が出尽くした様子を見計らって議事進行を促すやり方は往時のものだった。株主からの質問に対する回答も木で鼻をくくったような通り一辺のもので、かみ合っていなかったし、議長の対応も時に適切さを欠くような場面もあった。会社側の説明も先のヴィジョンらしきものはほとんどなかった。
あとで判明したが、この日は株主総会の集中日で、全国で株主総会を開いた企業は1088社にものぼった。うち開催時間が2時間以上に及んだ企業は22社あった、という。鹿島はそのなかには入らなかったものの、なんら企業としての展望も見せず、無難に過ぎればいい、という昔ながらの株主総会を開催した。予想したこととはいえ、大いに失望させられた。こんな会社に子弟を就職させようとは誰も思わないことだろう