16日は東京・日比谷の日比谷ミッドタウンにあるTOHOシネマズでスティーブン・スピルバーグ監督の映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を観賞した。1週間くらい前のゴールデンウイーク中に見ようと思って行ったら満員で入場できなかったので、平日ならと出掛けた。米ワシントンポスト紙の社主であるキャサリン・グラハム女史がヴェトナム戦争時のニクソン大統領に歯向かって、ヴェトナム戦争の国家最高機密文書をすっぱ抜き、後のウォーターゲート事件につながり、ニクソン大統領を辞任に追い込んだ歴史的事件を扱ったもので、いま安倍政権下でマスコミの在り方が問われているなかで、他山の石としてもらいたい映画である。
「ペンタゴン・ペーパーズ」は1967年米国が国を挙げてヴェトナム戦争に取り組んでいるなか、現地サイゴンを訪れたマクマナラ国務長官が現状を探るため、前線の兵士のダンを呼んで、現下の状況をつぶさにヒアリングする場面から始まる。軍の幹部が明るい見通ししか述べないのに前線の兵士であるダンは苦戦している状況を正直に伝えると、マクマナラ長官は目の前で「よく伝えてくれた」と感謝を述べ、米軍はヴェトナム各地で苦戦していることを思い知らされる。ダンはその後米国に帰国するが、マムマナラ長官の視察の状況がランド研究所に保管されていることを知り、密かに4000ページに及ぶその文書を盗み出し、ニューヨークタイムズ紙に持ち込み、1971年になって特報として大々的に報じられる。
一方、ニューヨークタイムズ紙のライバルでもあるワシントン・ポスト紙のベン・ブラッドリー編集主幹は部下に命じてなんとかその秘密文書を手に入れることを命じ、部下がダンに接触し、全文を手に入れ、同じように特報をしようとするが、すでにニューヨークタイムズ紙に報道差し止めを命じていた米国政府は国家の反逆にもなりかねないとして社主のキャサリン・グラハムと編集主幹のベンに報道を思いとどまるように迫る。ワシントンポスト紙はニューヨーク証券市場に上場したばかりで、大手スポンサーも支援を打ち切るような措置に出るとも脅してきた。ところが、メリル・ストリプ演じるグラハム女史は断固として、はねつけ、敢然と政府追及の記事を掲載することを決断する。
社運をかけての決断は意外や、マスコミ各紙の追いかけるとこおrとなり、最高裁にまで持ち込まれた政府の「報道差し止め」命令は却下され、ワシントンポスト紙の勝利のうちに終わった。グラハム女史が重大な決断を下した際にマスコミの使命は権力の監視にあるとの言明は安倍首相にも聞いてもらいたい、とつくづく思った。
このワシントンポスト紙の国家機密文書スッパ抜き報道はすぐ後のウォーターゲート事件につながり、米ニクソン大統領を辞任に追い込んだ歴史的快挙を生んだ。安倍首相にべったりの読売新聞、産経新聞に見習ってもらいたいものだ、と深く思った次第。また、こんないい映画がことしの米国アカデミー賞の候補にもならなかったのは一体どうしてだろうか、と不思議にも思った。まさか、米国でも日本と同じように今年になってから公開された、とでもいうのであろうか、このあたりは来年のアカデミー賞の行方をみて判断するしかないのかもしれない。