30日は東京・三軒茶屋の昭和女子大講堂で開かれた「題名のない音楽会」の公開番組収録にでかけた。いつになく人が多くて、開演5分前になってもホール内はざわざわとしていて、入口の近くには立ち見で臨時の席ができるのを待っている人がいっぱいいて、どうやら後半のゲスト、中村紘子目当てであることがうかがわれた。いつもなら、行けなくて捨ててしまうチケットを周りの仲間に行かないか、と打診したらほとんどが万難を排しても聴きたい、ということで、鈴なりの状態となったのだろう。
前半は「未完の大器2009」と題された10代の音楽家が3人登場した。まず最初は中国の天才ピアニスト、12歳のニュウニュウ(牛牛)君で、いきなり現代風にアレンジされたトルコ行進曲をいとも簡単に弾いた。続いて東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団を率いてモーツアルトの「ピアノ協奏曲第9番変ホ長調 第3楽章」を弾いたが、流れるようなキータッチとしなやかにピアノを操る様はとても12歳には見えなかった。つい先ごろ、この「題名のない音楽会」でお馴染みの天才ピアニストの辻井伸之君がクライバーン音楽コンクールで優勝し、天才ぶりを実証しただけに第2の辻井君が現れた感じだった。
牛牛はニックネームで、本名は張勝量というのだそうだ。司会の佐渡裕から「いつか共演したいね」と言われ、頷いていたが、曲目は何がいいかと聞かれ、「なんでも」と答えていたのには驚いた。演奏が終わって佐渡裕とハイタッチしていたのにも非凡さがうかがえた。それにしても中国人というのは音楽にかくも馴染むのだろうか。中国語の文法が英語と似通っていることが西洋音楽にかくも馴染ませるものなのか、と思った。早速、ニュウニュウ君のCDを買い、10月に行われるソロコンサートを聴きに行くことにした。
次に現れたのは14歳のヴァイオリニスト、松本紘佳さんで、お母さんがピアニストである音楽一家の少女で、見るからにあどけない。しかし、ひとたび弦を握るとそんなことは微塵も感じさせなかった。管弦楽団をバックにチィコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲ニ短調 第1楽章」を演奏したが、先日聴いたばかりの神尾真由子に一歩もひけをとらない内容だった。神尾真由子の演奏では悲壮感が漂っていたのにこちらは堂々として、むしろ楽しんで演奏している感じで、素晴らしかった。
3人目はこれも14歳のチェリスト、上野通明君で、D・ホッパーの「ハンガリアン・ラプソディ」を難なく弾き終えた。こんな若い天才が輩出するのは一体どういうことなのか、と佐渡裕はみずからの若いころを振り返って述懐していたが、確実に技術、能力は上昇していることを認めていた。それだけ豊かになったということなのだろう。
後半は「デビュー50周年!中村紘子の軌跡」と題して、聴衆お目当ての中村紘子が墨染めで「花」と大書した黒いドレスで登場し、ピアノの前に座るや否や、いかいなりショパンの「華麗なる円舞曲変イ短調」を弾きだした。優雅に弾くとばかり思っていたのが、力強いタッチで、前半のニュウニュウに負けるものか、との気迫があったのかないのか、わからないがまるで男性ピアニストが弾いているか、のような印象を受けた。
さらにグリーグの「ピアノ協奏曲イ短調」と三善晃の「ピアノ協奏曲」を弾いたが、印象は変わらなかった。最後のピアノ協奏曲は弾き終わった時点で、見ていてアッと声を上げるほどの劇的な弾き方で終了して、一瞬拍手するのを忘れたくらいだった。
途中のインタビューでいつもより緊張していた佐渡裕の質問に答えて、前半の若い音楽家の輩出について今後について「才能と努力はあるのでしょうが、幸運があるかどうか」と語っていたのと、今後の演奏活動について「指の関節が動くかどうか不安に感じている」と濁してとても抱負どころではない旨答えていたが、実際には新しいことに絶えずチャレンジしていることを隠して、あえて語らなかったことに凄さを感じた。佐渡裕は15年ぶりに間近に演奏を聴いて「進化している」と驚いていたことを考え併せると音楽家の世界も大変だ、と思わせた。
前半は「未完の大器2009」と題された10代の音楽家が3人登場した。まず最初は中国の天才ピアニスト、12歳のニュウニュウ(牛牛)君で、いきなり現代風にアレンジされたトルコ行進曲をいとも簡単に弾いた。続いて東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団を率いてモーツアルトの「ピアノ協奏曲第9番変ホ長調 第3楽章」を弾いたが、流れるようなキータッチとしなやかにピアノを操る様はとても12歳には見えなかった。つい先ごろ、この「題名のない音楽会」でお馴染みの天才ピアニストの辻井伸之君がクライバーン音楽コンクールで優勝し、天才ぶりを実証しただけに第2の辻井君が現れた感じだった。
牛牛はニックネームで、本名は張勝量というのだそうだ。司会の佐渡裕から「いつか共演したいね」と言われ、頷いていたが、曲目は何がいいかと聞かれ、「なんでも」と答えていたのには驚いた。演奏が終わって佐渡裕とハイタッチしていたのにも非凡さがうかがえた。それにしても中国人というのは音楽にかくも馴染むのだろうか。中国語の文法が英語と似通っていることが西洋音楽にかくも馴染ませるものなのか、と思った。早速、ニュウニュウ君のCDを買い、10月に行われるソロコンサートを聴きに行くことにした。
次に現れたのは14歳のヴァイオリニスト、松本紘佳さんで、お母さんがピアニストである音楽一家の少女で、見るからにあどけない。しかし、ひとたび弦を握るとそんなことは微塵も感じさせなかった。管弦楽団をバックにチィコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲ニ短調 第1楽章」を演奏したが、先日聴いたばかりの神尾真由子に一歩もひけをとらない内容だった。神尾真由子の演奏では悲壮感が漂っていたのにこちらは堂々として、むしろ楽しんで演奏している感じで、素晴らしかった。
3人目はこれも14歳のチェリスト、上野通明君で、D・ホッパーの「ハンガリアン・ラプソディ」を難なく弾き終えた。こんな若い天才が輩出するのは一体どういうことなのか、と佐渡裕はみずからの若いころを振り返って述懐していたが、確実に技術、能力は上昇していることを認めていた。それだけ豊かになったということなのだろう。
後半は「デビュー50周年!中村紘子の軌跡」と題して、聴衆お目当ての中村紘子が墨染めで「花」と大書した黒いドレスで登場し、ピアノの前に座るや否や、いかいなりショパンの「華麗なる円舞曲変イ短調」を弾きだした。優雅に弾くとばかり思っていたのが、力強いタッチで、前半のニュウニュウに負けるものか、との気迫があったのかないのか、わからないがまるで男性ピアニストが弾いているか、のような印象を受けた。
さらにグリーグの「ピアノ協奏曲イ短調」と三善晃の「ピアノ協奏曲」を弾いたが、印象は変わらなかった。最後のピアノ協奏曲は弾き終わった時点で、見ていてアッと声を上げるほどの劇的な弾き方で終了して、一瞬拍手するのを忘れたくらいだった。
途中のインタビューでいつもより緊張していた佐渡裕の質問に答えて、前半の若い音楽家の輩出について今後について「才能と努力はあるのでしょうが、幸運があるかどうか」と語っていたのと、今後の演奏活動について「指の関節が動くかどうか不安に感じている」と濁してとても抱負どころではない旨答えていたが、実際には新しいことに絶えずチャレンジしていることを隠して、あえて語らなかったことに凄さを感じた。佐渡裕は15年ぶりに間近に演奏を聴いて「進化している」と驚いていたことを考え併せると音楽家の世界も大変だ、と思わせた。