日本郵政が来年秋から郵便代の値上げに踏み切るようである。過去数年、郵便事業は赤字というのが理由のようであるが、大きく疑問と思っているのは数年前に民営化したはずなのにこうした国民の生活に多大な影響を及ぼすことについて、当事者の日本郵便の経営者がなぜ値上げの理由なりについて声明を出さないのか、ということである。確か、テレビ報道を聞いていたら、総務省が発表したようで、当事者たる日本郵便の経営者はいまだに黙秘しているのか、さっぱり理解できない。
総務省によると、日本郵便はいまのハガキの料金を来年秋から現行の63円から85円に、封書の25グラム以下の料金84円から110円に値上げする、という。値上げ率はハガキが34.92%、封書が30.95%とインフレ並みの高率である。ハガキ、封書などの郵便の利用は過去10数年前に比べほぼ半分程度となっており、大幅な赤字だ、という。コロナウイルス禍がほぼ収まって以降、食品を中心とする諸物価はインフレかと思われるほど軒並み上昇の一途を辿っており、これに郵便料金も加わり、庶民の生活は一層厳しくなってきている。
それだけに今回の郵便料金値上げについては値上げの幅そのものが大きいことに加え、民営化したはずの日本郵便がなぜ自らの経営状況についての説明もなく、管轄する総務省からの発表でかく重大な値上げについて、公表しないのか、理解に苦しむところである。今回の郵便料金値上げについてテレビの報道を聞いていて、「あれっ」と思った方は鈍想愚感子に限らず大勢いたことと思われる。
一般にいまの時期に自らの商品の価格を値上げするについては関係企業は消費者に対して申し訳ない、との思いから、なぜ値上げするかについてその理由の説明をし、自らの経費節減を行う経営努力を果たしても吸収できない旨を力説したうえで、値上げに対する理解を求めるのが普通である。なのに今回の日本郵政の行ったことは所轄官庁の総務省からの発表という、通常なら考えられない手法を取ったことがなによりも解せないのである。
日本郵政はすでに民営化してかなりの時期が経っている。にも拘わらず、相変わらずかつての郵政省時代の弊が抜けていないような総務省頼みの値上げ姿勢を貫いていることがなんとしても理解の度を越えているのは許し難い気がするのである。
ここは日本郵政の社長が記者会見を開いて、国民に向かって値上げの理由を詳細に説明したうえで、値上げに対するお願いをするべきではなかろうか。民営化してもそのお役所気質なるものは全然変わっていない、ということではなかろうか。大いに反省してもらいたいものである。
百歩譲って値上げはやむなしとしても、「あの郵政民営化は何だったのか」という感じがします。土曜配達がなくなり、翌日配達もなくなり、ヤマトと競争するだけの会社になってしまい、ヤマトとの競争のない信書の郵便を大幅値上げ、小泉純一郎元首相のコメントを聞きたいものです。