27日のテレビ朝日モーニングショーを見ていたら、毎日新聞の報道で9日付けで東京五輪オリンピック組織委員会の武藤敏郎組織委員会事務総長が日本看護協会に対し、オリンピック・パラリンピックの開催に看護婦500人の派遣を要請した、と伝えていた。原則5日以上で1シフト9時間以上の勤務だという。日本看護協会は大阪府の医療崩壊を筆頭に全国各地で看護師に対する派遣要請が相次ぎ、とてもそんな要請に応じられる状態にない、として対応に苦慮している様子だが、予めわかっている状況なのにどうしていま派遣の要請に踏み切ったのか疑問だが、政府が東京五輪に対し、明らかにゴーサインを出したことが国民の感情を逆なでしていることに気がついていないのだろう。これで国民のオリンピック開催への反対はさらに高まるのは必至と思われる。
東京五輪開催については看護師のみならず医師も300人は必要だと言われている。ところが、大阪府下でコロナウイルス感染者を病院に収容できずに自宅待機させている患者が26日現在で1万665人とここ1ヶ月で一挙に1万人も増えている医療ひっ迫状態に陥っており、なかには病院搬送すべく救急車を呼んだところ、収容先の病院が見つからず46時間53分救急車の中で待機した例も発生したという。救急車が他に使えなくなるうえ、酸素が不足し亡くなってしまう事態になりかねない、という。こうした事態は今後、いずれ全国各地で起きても不思議ではない感染爆発ぶりなのがいまの日本の感染状況である。
さらに頼みのコロナウイルスのワクチン接種がいま医療関係者から高齢者へと行われているが、全国一斉に始まったものの全国の市町村に沙漠に一滴程度の量しか到達しておらず、申込の電話、インターネットのいずれもが受付開始早々からつながらない状態に陥って接種希望者の願いはとても受け入れらえそうにない。申込ファーマットは全国共通化されているが、それをもとに受付体制は各地方自治体でキャパシティをどの程度見越して全体のシステムの余裕を見込んでいるのか不明なので、どこもすぐにパンクしてしまっているようだ。河野太郎ワクチン担当大臣は申込フォーマットの設計と接種後のワクチンパスポートにはタッチするが、国民との接点は地方自治体任せなので、各所で目詰まりが起きても知らぬ存ぜぬを決め込む所存のようで、いまから大混乱が起きるのは予想される。
怒らくオリンピック開催の7月末にはワクチン接種への国民の不満、不安はピークに達しており、とても無事に開催できる状況にはないことが当然予想される。もちろん、武藤事務総長の看護師の派遣、医師の派遣もできる余裕はとてもないことだろう。これまで正式の要請しなかったのはコロナウイルスの感染状況が落ち着くのを待っていたのだろうが、なかなかそんな状況に至らなくて、時期的にもう待てないということから、この時期の要請となったものか、と思われる。
さらには先週末の3度目の緊急事態宣言の記者会見の場で、菅首相が記者からの質問に答えて「東京オリンピックの開催はすでにIOC(国際オリンピック委員会)が決めている」と言い切ったことがある。それを聞いた時には大会の主催者が何も言わないうちにIOCが開催を決めてしまうということがあり得るのか、しかも記者会見の場で記者からの質問に答えてそんな肝心なことをそんな形で言ってしまう菅首相の感覚にも違和感を感じてしまう。いつも「国民の命が大事だ」言っている総理大臣がきちんとした形で国民に事実を伝えずに間接的な表現で、オリンピック開催を言うことにこの人が果たして日本の総理大臣なのか、と正直感じてしまった。コロナウイルスの感染防止よりオリンピック優先をはっきりと打ち出し、国民の命よりオリンピック開催優先を言ったのに等しい。武藤事務総長の要請は菅首相の姿勢を受けてのものといえるが、同じく国民の命よりオリンピック開催が優先と言ったのに等しい行為で、はいそうですか、というわけにはいかない。
いまの日本のコロナウイルス感染状況から見て、とてもオリンピック開催は決められない。「すでにIOCが東京オリンピック開催を決めている」と言うのなら、なぜ菅首相は主催国の首相者としてIOCに対し、異を唱え、せめて「いまのコロナウイルス感染状況からも見てもう少し待ってほしい」といえないのか、嘆かわしいことだ。こんな首相を抱いてのオリンピック開催などしてほしくないものだ。