今月9日に首都圏を襲った台風15号の猛威はほぼ3週間経過したいまも観測史上最大の風速57.5メートルの猛風が吹き荒れ、93万軒の停電をもたらし、いまだにその被害から逃れられない人々が多数いる。いまだに停電に悩む人がいる一方で、倒れてきたゴルフ場の鉄骨の下であえぎ2次的被害を蒙っている家屋が存在する事実に言葉を失う。こうした事態に対し、安倍首相をトップとする政府はなんら対策を講じようともせずに内閣改造に次ぐ国連総会に勤しんでまさに国民不在で自らのパーフォーマンスを楽しんでいるといるとしか見えない。最大の被害地である千葉県の森田健作知事は適切な手を打とうともせず、県民の間にリコールの声が広がりつつある。悲しき事態である。
以前から感じていることだが、こうした自然災害は土日に起きることが多いが、政府はじめ官公庁は土日にはお休みのことが多く、事態を報道するマスコミも同じように動きが鈍くて災害の実態を報道するのに手抜きの感が強い。気象情報も気象庁が週末の金曜日に発表した天気図をもとに報道を構成しており、最新の台風の動きをリアルに追跡しているような感じがしない。だから、土日にかけて襲来する台風の進路を自らの判断で予測したりする能力を持ち合わせていないので、まだるっこしい感がぬぐえない。首相官邸はじめ役所も同じで金曜日の気象庁の予報を知っているだけで、それをもとに警戒・避難情報を流しているだけなので、どうしても最新の情報をもとに住民に接しているようには見えない。大体が土日に出勤している人は当番制なので、必ずしも災害に即対応できるような体制が組めず、なにか事が起きるとどうしても糊塗的なものしかできないのが実情である。
だから首相官邸はじめ都道府県、市町村の災害担当者は台風シーズンには土日を含め常に災害が起きた時に必要な対策が立てられるような体制を築いて置くことが欠かせない。金曜日までの段階で、土日を含めた災害の広がりを予め予測したうえで必要な対策を講じた体制を築いておくことが必要となる。このことは災害の実態を世に中に伝える役割りを担っている新聞、テレビの報道担当者にも求められる。今回の台風15号で大規模停電を招いた東京電力にも同じようなことが言えるだろう。しかも8年半前の東日本大震災のような地震があることを考えれば、こうしたことはなにも台風に限らず、常に押さえておかなければならないことでもある。
冷静に考えて、今回の台風15号がそこまで甚大な被害をもたらすと予測した人がどれだけいたのか、ということになるとそんなにはいなかったことだろう。来てみて、終わってみなければ言えないことなのかもしれない。一般に雨量にしろ、風速にしろ、気象観測上で過去30年間に起きていないことが起きれば「異常気象」という。けれども最近、この異常気象が頻繁に起きているのは確かで今回の風速57.5メートルの風が起きたのもはっきり言って異常気象である。異常気象が起きるとは常人には予測不可能なことであるが、最近のように度々異常気象が起きる理由として地球温暖化があげられている。ということは地球温暖化の研究をさらに進めて、異常気象がどのくらい進んでいくのかをぜひ突き止めてもらいたいものだ。
さらに異常気象が常態化しているいま、いまの法制度をぜひとも見直してもらいたい。ひとつには家屋の建築の基準となっている建築基準法をいまの気象実態に照らして実態に合ったものに改正しなくてはならないのではなかろうか。六法全書を繙くと、建築基準法では「建築物は自重、積載、加重、風圧、土圧、及び水圧、並びに地震その他の震動、及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる構築物の区分に応じ、それ相当該各号に定める基準に適合しなければならない」(第20条)と定められており、具体的な基準は政令で定めるとされている。残念ながら六法全書ではその詳細は明らかとされていない。今回、千葉県では多くの家屋の屋根が吹き飛ばされたが、いまの建築基準法では風速17メートル程度と定めれている、と聞いている。これでは多くの屋根が吹きとばされたのも無理はない。だとしたら、実態に合うように早急に建築基準法を改正すべきだろう。こんな事態が他でも多くみられるのではないだろうか。いまの災害の程度に応じて、まずは一刻も早く法律を改正すべきだろう。