鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

出版不況でも増える雑誌

2006-04-11 | Weblog
 出版科学研究所によると、2005年の雑誌の創刊数は201点で、前年より15点減ったものの、創刊から休刊誌を引いた雑誌の純増は14誌となり、相変わらずの出版不況のなかでも雑誌の生き残りをかけた生存競争は激しくなっている。201点ということはほぼ2日に一誌創刊されていることになる。市場が縮小するなかでも読者の嗜好をとらえようと手を変え、品を変え、関心を呼びそうな雑誌を創刊せざるを得ない、出版業界の宿命でもある。創刊された雑誌のジャンルで一番多いのは趣味の58誌、そのなかでもパズルが18誌もあり、次いでアダルトの28誌、コミックの27誌、エンタテインメント24誌となっており、完全に個人志向に向かっている。
 出版科学研究所にとよる2005年の雑誌の販売金額は前年比1.8%減の1兆2767億円で、8年連続のマイナスとなった。最近の若い人は本を読まなくなったと言われて久しいが、本の購入費が携帯電話の通信料に食われているのは紛れもない事実である。いわゆる活字離れ現象に加えて、R25に代表されるフリーペーパー誌の攻勢に押されているからである。
 05年の主な創刊誌には「クーリエ・ジャポン」(講談社)、「Glamorous」(同)、「駱駝」(小学館)、「Uomo」(集英社)、「GISEle」(主婦の友社)、「Real Simple Japan」(日経BP社)、「日経Kids+」(日経ホーム出版社)などが話題となった。ジャンル別の創刊誌では女性誌16誌、ビジネス・専門9誌、医療・健康8誌、自動車8誌、男性5誌、コンピュータ、ゲーム、スポーツいずれも4誌の順となっているが、このうち注目されるのは休刊がビジネス・専門(14誌)、医療・健康(9誌)、自動車(9誌)、コンピュータ(14誌)の4分野で創刊数を上回っていることだ。
 8年連続のマイナス成長でも19998年以来創刊誌の総数を休刊誌のそれが上回ったのはわずかに2002年だけで、それもわずかに1上回ったに過ぎない。しかも8年間の雑誌の純増数は275誌にものぼる。それだけ狭くなった市場のシェア競争は増しているわけだ。
 しかも出版社にとって雑誌の販売収入と並んで大きな収入源でもある広告費が05年は前年比0.6%減の3945億円と同じく54.8%増のインターネット広告費にもうすぐ抜かれそうな傾向となっているのも痛い。
 雑誌の創刊にはコンセプトづくりから始まって、市場のニーズ調査、プロモーション計画、広告代理店、取次会社への説明など多大なエネルギーを要する。編集長にでもなった暁にはそれこそ創刊前後は夜も昼もない生活を強いられることはざらだ。しかも創刊してからも魅力ある紙面つくりはもちろん、重層的なプロモーションが適宜必要で、定着するには3年から5年かかる。出版科学研究所の調べでは昨年休刊した雑誌の43%が創刊3年以内のものだったことからもそれは裏付けられている。
 それでも出版社を標榜する以上、読者のニーズを忖度して、雑誌を出版し続けなければならない。雑誌を刊行するということはそれだけ世中の動きを的確にとらえている何よりの証拠でもあるからだ。市場全体が縮小はしていてもそのなかで数少ない勝ち組をめざして、雑誌の創刊は続くことになる。
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