19日、東証第一部市場に話題のソフトバンクが上場した。証券会社らの期待を裏切って初値は売り出し価格の1500円を下回って1463円、その後は失望感が広がってかズルズルと売られ、結局、終値は売り出し価格を15%も下回る1282円となる史上まれにみる大暴落と相成った。ソフトバンクグループ(SDG)がソフトバンク株上場による調達額は2兆6000億円と過去最大規模の上場はSDGの総帥である孫正義氏の野望を打ち砕く惨憺たるものとなった。
SDGはソフトバンク株の配当を年75円と同業他社の利回りを上回る5%とはじき、当初から株式の売り出し価格を1500円にしていた。だから、発表当初は人気は上々だったが、今月に入ってからスフトバンク携帯の通信障害が起きて総務省が調査に入ったり、世界に中国のファーウェイ排除の動きが出ているのを見て、ソフトバンクに対する不信感が広がってソフトバンク株の上場を危ぶむ声が出始めて、熱は急速に冷えてしまった。
でも、ソフトバンク上場を強行したわけだが、予想通りの結果と相成った。上場株数は17億3000万強ののぼるが、19日はそのうち15%余にあたる2億7000万株が売り出された。残りの14億6000万株はまだ保有されたままとなっているものの、今日20日以降も保有し続けるかどうかは定かではない。19日にはこうした株式市場の動向を見て、ソフトバンクの携帯電話を解約したユーザーが1万件を超えた、という。
もともとソフトバンクは携帯電話会社ではあるものの、グローバルに企業買収を繰り返して、見方によっては携帯電話業を騙りながらIT分野での投融資を行っており、さながらマネーゲームで企業運営しているようなふしがうかがえる。総帥の孫正義氏はサウジアラビアの王族に取り入って合弁事業を立ち上げたり、米トランプ大統領と直に話し合う機会を持ったりして、国際ビジネスマンとしてマスコミに登場している。その一方で、本尊のソフトバンクが通信障害を起こした時には何の釈明もしない。パフォーマンス好きな孫正義氏らしくない振る舞いである。
昨日も午後3時半から記者会見に現われたのはソフトバンクの社長の宮内謙氏で、孫氏の姿はなかった。今回の上場劇を仕組んだのは孫正義氏であることは衆目の一致するところで、逃げたと思われても仕方がないだろう。
一方で、専門家の関心はSDGが手にした2兆6000億円の使い道に移っていて、ベンチャー投資の拡大に走るとみる向きが多い。しかし、今回の上場劇で、ソフトバンクに対する世間の見方は一変したと見るべきだろう。SDGのビヘイビアというか、パーフォーマンスは事業の中身よりマネーにあり、それに大衆や世間を巻き込んでいく、というものがはっきりしたとはいえないだろうか。一説には。ソフトバンクグループの借金は10兆円以上あるといわれており、その金利支払いだけでも普通の会社が年間に稼げる額をはるかに超えている。そんな会社がとんだり跳ねたりすることにもうこれ以上付き合わされるのはごめんだ、と思うべきなのではなかろうか。
追記 25日、東証市場はトランプショックで日経平均で前日比1010円安の1万9155円と2万円を割り、1年8カ月ぶりの低い水準となった。このなかでソフトバンク株は低値1240円、終値1270円で前日比45円安と比較的緩やかな下落にとどまったものの、ざっと計算して新規上場で2兆6000億円を集めた金額のうち4000奥円をわずか1週間のうちに投資家に失わせたことになる。今回の株価暴落はトランプショックといわれているが、これにソフトバンクショックが加わったものともみることできる。ソフトバンクの剥がれた化けの皮がさらに株式市場に追い打ちをかけるのではないか、と懸念される。