鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

マイナンバーカードと運転免許証を一体化する、というが本当にいいことなにか、よく考えてほしいものだ

2020-10-17 | Weblog

  菅内閣が就任早々に打ち出した施策のなかでデジタル庁の新設が大きな注目を集めている。コロナウイルス対策のなかで全世帯への給付金配布についてマイナンバーカードの活用が利用しようとの計画もマイナンバーカードの普及がわずか13%程度で全世帯配布に至るまで2カ月も要したことや、コロナウイルス感染者数の把握にFAXが利用されていることが問題視」され、我が国のデジタル化がいかに遅れているかが露呈し、国を挙げてデジタル化に取り組む必要があきらかとなったことから、まず官公庁が率先して取り組もうということになった。それ自体は歓迎すべきことではあるが、ここへきてマイナンバーカードと自動車運転免許証を一体化しよう、との話が持ち上がってくるのに及んであらぬ方向へ進んでいるのではないか、と危惧される事態となってきた。

 マイナンバーカードは9月から実施されたマイナポイント事業もあって9月には2469万枚の普及となったが、まだ世帯普及率は20%そこそこにとどまっている。これをさらに高めるために打ち出されたのが今回の自動車運転免許証との一体化であろう、と推察される。しかし、実施が2026年の予定で、6年も先のことである。なぜ6年もかかるのか、理解に苦しむところである。まず、マイナンバーカードと免許証が一体化されて、一体どんな利点があるのだろうか。マイナンバーカードのICチップには免許証のデータ以上に乗せるべき個人情報はいくらでもある。そちらをさておいて、まず免許証データを載せるという理由がわからない。

 住民個人が役所へ届け出る書類には戸籍、住民票から始まって確定申告書、パスポート申請書などいっぱいある。こうした各種の書類申請にあたって、マイナンバーカードひとつで用が足せるようにしてほしい、というのが庶民の願いである。これらの申請書類には必ず印鑑を持参しないといけないが、政府は並行して行政改革の一環としてハンコの追放を進めているようだが、マイナンバーカードひとつで済むようにしてもらいたいものである。

 それにはまず各官庁で進めているIT化を共通のものとし、全官庁のシステムの統合を進めることが先決である。でないとどこの官庁へ行ってもマイナンバーカードひとつあれば用が済むということにはならない。一応、デジタル庁の発足は2022年となっているようだが、全官庁のシステム統合を以てデジタル庁の発足ということになると、とてもあと2年足らずで完成するというわけにはいかないだろう。だから、マイナンバーカードと免許証の一体化は2026年としているのかもしれないが、世界的にはデジタル化の進展は日進月歩であり、そんな悠長な計画では日本はますますグローバルな動きのなかでと取り残されてしまうことだろう。

 あと懸念されるのは仮にマイナンバーカードと免許証が一体化された段階で、交通取り締まりに当たる警察官が交通事故を起こした運転者から提示されたマイナンバーカードから免許証データをどうやって読み取るのか、という問題がある。マインバーカードの表面に運転者データが目視できるようなものが記載されているのか、だとしたら一体化する意味があまりないだろうし、読み取り機でも使って打ち出すような仕組みにするのでは手間がかかって仕方がないだろうし、いずれにしろデジタル化の意味がないこととなりかねない。

 こうした問題は今後の展開でいくらでも起きかねる問題である。マインナンバーカードのICに搭載するデータが増えれば増えるほど後処理の問題がひとつづつ増えてくることになる。便利になればなるだけ、仮にマイナンバーカードを落としたり、破損した場合のアフターケアがより複雑になってくる。データを処理する側の論理でけで物事を進めていくと、最終利用者である住民の側の負担も増していくことになる。住民へのサービス向上を図るためにはいいことでもそのためのコストや利用環境を考えると果たしていいことか、わからないこととなってくることもありうる。ここはよく考えてほしいものだ。

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思いのほかの反発をくらった日本学術会議の6人の新会員否認のつけは重い。菅内閣の致命傷となりかねない。

2020-10-06 | Weblog

 日本学術会議の新会員105人を従来通り学術会議が内閣府に任命を申請したところ、うち6人が任命されなかった問題が波紋を広げている。任命されなかった宇野重規東大教授らはいずれも過去に与党が提案した共謀罪創設などの法案に反対した経緯があり、任命しなかったのは政府の意向に逆らったとして任命されなかったと見る向きが多く、これでは学問の自由が脅かされると反発する声が強い。スタートしたばかりの菅内閣にとっては予想外の反発で、70%を超える内閣支持率に冷や水をかける出来事が致命傷になりかねない要素をはらんでいる。

 菅首相は当初「法律に基づいて適切に処理した」としていたが、5日に開いた内閣記者会とのインタビューで「日本学術会議は政府の機関であり、年間10億円の予算を使って活動している」と強調したうえ、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断した」と語った。政府の機関であるから、人事権を政府が行使するのは当然で、政府の意向に沿わない学者は任命しない、といわんばかりの姿勢だった。しかし、国民が疑問を持つ「なぜ任命しなかったのか」についての点については明らかにせず、お得意の忖度をきかせろ、といわんばかりの態度だった。

 日本学術会議については国民はほとんど知らず、会員210人に任期は6年で、半数の105人が日本に87万人いる研究者のなかから研究業績などを基に3年ごとに選任される仕組みとなっている。主な仕事は第2次世界大戦の時の学界の対応について反省し、政府に対して学術、研究の提言をすることにあり、時の政権の思惑には一切左右されないこととなっている。

 それだけにいかにも政府の言うことを聞け、と言わんばかりの今回の出来事に対し、あらゆる層から反発が起きており、学問の自由を侵すなとの声は日増しに高まってきている。菅首相は「学問の自由を侵す積もりはない」と語っているものの、6人の新規会員を除外した理由については語ろうとしないし、6人が欠員のままでいくのかどうかも明らかにしていない。

 今回の6人の否認はどうやら以前から安倍前首相が目論んでいたことで、突然辞任したことから菅首相が引き継いで実行したのが真相のようである。安倍路線の継承を標榜している菅首相としては当然のことではあろうが、ことの重大性をきちんと認識していたのかどうか、疑問が残る。単に国の予算をつけているから政府の言うことを聞くのは当然である、と思い込んでいて、霞が関の官庁の人事を内閣府に集約し、人事権を振り回すことで霞が関の人心を一手に集め、思いのままに動かしてきた手法を日本学術会議に対しても行おう、としたのではなかろうか。

 ところが、ことはそれほど簡単ではなかった。日本学術会議の援軍なるものが学者のみならずスポーツ界はじめ日本のあらゆる層に浸透していることを思い至らなかったのだ。各界の識者が「学問の自由を守れ!」と声をあげ始めたのだ。いまやそうした声はネットの世界で一気に広がり、署名運動さえ起き始めている。

 菅首相は当初は無視することにしていたのが、そうもいかなくて重い腰を上げて記者インタビューを開かざるを得なくなったし、頼みの加藤官房長官も防波堤になってくれず、この先も自らの裁量で対処していかざるを得なくなっている。安倍前政権の時は自らが防波堤となって裁いていたのが、今回はみずから火の粉を被らざるを得ないだろう。菅首相自ら思案して血路を切り開いていくにはやはり荷が重いことだろう。永らく自民党内で無派閥でやってきたデメリットがこうしたところで露呈するのは当然のことである。

追記1 9日の内閣記者会とのインタビューで、菅首相は「日本学術会議が提出した問題の105人のリストは見ていない。99人のリストを見ただけだ」と発言した。となると、一体だれが6人を削除したのか、が大きな問題となってくる。菅首相は「総合的、俯瞰的な観点から99人を選任した」と言っていたのに、元々のリストを見てなくて、どうして99人になったのかを知ったのか、内閣府のだれかが削除したのを聞いてどう思ったのか、聞いてみたいものだ。安倍前首相からの引継ぎではなくて、自らの意思で選定したといっているのと辻褄が合わないことになる。単に突っ張っているだけのことではなかろうか、とも思われる。菅首相は実は底の浅い人物であることがこれではっきりとした。発足早々の内閣支持率が70%を超え、歴代4位と言われているが、すぐに下落していくのは間違いないだろう。

追記2 13日のNHKニュースで発足1カ月の菅内閣の内閣支持率が前回から7%下落して55%となった、と伝え、過去の内閣で3番目の下落だ、という。その最大の理由が日本学術会議人事の任命拒否に「納得できない」とする人が47%に上り、「納得できる」の38%を上回ったことにある、としていた。ほかにも今月初めから全世界からの入国制限緩和に踏み切ったことについて「早過ぎた」とする意見が全体の59%、Go to Travelに東京を追加したのを「早過ぎた」とする意見が最大を占め、方々に菅内閣の綻びが目立ってきた。菅内閣は意外と早く手仕舞いになるのかもしれない。

追記3 先月26日に幕開けした臨時国会で、11月2日に菅内閣初めての衆院予算委員会が開かれ、早速この日本学術会議の会員任命拒否問題が取り上げられた。立憲民主党の江田憲司委員から「任命されなかった6人の委員を事前に知っていたか」と聞かれた菅首相は「加藤洋子さんしか知らなかった」と答えた。それでどうして任命拒否できたのか、どう考えても理解できない答弁をぬけぬけと行った。ほかの野党議員からも散々に突っ込まれ、今まで通りの「総合的、俯瞰的に判断した」だの、「会員に出身大学、年齢、男女比など偏りがある」などと繰り返すのみで、納得できる説明は一切なかった。明らかな論理矛盾の答弁を繰り返すのみで、まさに立ち往生する場面すらあった。菅首相は野党議員の質問に答えるなかで、「議員は選挙の時に公約を述べる。その公約を果たすための法案を通す際に異議を述べるような役人は排除する」と語る一方で、「更迭と任命拒否とは違う」と詭弁めいた言ったりして今回の任命拒否が確信犯であることを明白に物語った。これらで、日本学術会議会員の任命拒否問題はますます政権の致命傷となる気配が濃厚となってきた。

追記4(11月15日)この問題が表面化して1カ月半が経つが、当の菅首相は頑として改善を図る気がないようである。スタートしたばかりの内閣として一歩も譲れない構えのようである。そこで思うのだが、日本学術会議の任命された99人すべてが任命を返上して、学術会議として今後一切の業務を政府から請け負わないということにしたら、どうだろうか。日本学術会議挙げて政府に叛旗を翻し、菅政府に対し、全面的に歯向かうというのである。10億円の国費を遣っているのに怪しからんというのなら、一切の業務から手を引き、国費をゼロにする、というわけだ。その代わり、政府の諮問に一切応じないと宣言するのだ。菅首相は杉田官房副長官に一切の責任を負わせて事を収めよう、としているようだが、そんなことでは納得できない。もはや全面対決するしかない。

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世界に恥をさらした東証の金融システム障害の含むものは大きいものがある。日本は世界のデジタル社会化へのなかで生き残っていけるのか

2020-10-02 | Weblog

 1日東京証券取引所の相場情報システムに障害が発生し、朝から全銘柄の株式など終日停止した。株式の売買を終日停止したのは初めてのことで、まさか国慶節で1日から上海株式市場がお休みとなった中国にお付き合いしたことになってしまった。単に1日の取引機会を失ったのみにとどまらず、国を挙げてデジタル化へ取り組もうとしているのにデジタル化社会へ向けての日本の取り組みはそんなものか、と全世界に印象付けたことになり、我が国の先行きに大きな暗雲が立ち込めてきた。今日2日には全面回復するということだが、失った信頼を取り戻すには並大抵のことでは済まないことだろう。

 1日午後4時半から宮原幸一郎東京証券取引所社長ら4人が謝罪の記者会見に臨み、約1時間半にわたり今回の不手際を説明し、記者団からいくたの質問を受けた。東証によると、午前7時過ぎに株の売買システム「アローヘッド」の中で、取引や市場運営に関する2つの装置のうち1つが故障し、本来はもう1つの装置だけで代替運用ができるようにシステムが切り替わるはずだったが、作動しなかった、という。メモリーの故障がったというが、詳しい原因については明らかとなっていなかった。記者団の質問が相い継いだが、核心に触れる内容に至らず、双方の一方通行に終わった感じとなった。最新のテクノロジーについて共通の理解がないやりとりでは限界があったようだ。

 会見のなかで相場情報システムはハードウェアのみならずソフトウェア全般も富士通によって提供されているものであることが明らかとなったが、これだけのものを1社だけで構築されていたことに疑問が生じる。相場情報システムは当然、海外のシステムと連動しており、世界各国で金融システムに関わっている米国のIT企業が関与していなかったとしたら問題である。富士通は「当社が納入したハードウェアに障害が発生が生じて多くの関係者の皆様に多大なるご迷惑をかけた」とコメントしたが、ことはハードウェだけの問題ではない。

 システムは提供したメーカー側だけでなくユーザー側にも管理責任が問われる。いまはどの企業にもCIO(情報システム統括責任者)なる者が任命されていて、発注した段階からどのようなシステムを構築するかから始まって、納入されあt後も運用に関しては設計通りに稼働しているか、コストパーフォーマンスを含めてウオッチしていく責任が課せられている。今回のシステム障害については発注側の東証も受注側の富士通も確たる体制が構築されていたのか、極めて疑わしいところがある。

 宮原社長は1日が下半期のスタートにあたる日で日銀の景気短観の発表の日であるとともにこの日に新規上場した企業の皆様に多大な迷惑をかけたこと、さらにはグローバルな影響を与えたことをお詫びした。ただ、影響はそれ以上に重大、かつ深刻なものがある。東証の1日の株式売買高は3兆円にのぼり、このうち70%は海外からのものだ、という。今回のシステム障害で海外の金融関係者は日本のデジタル化の度会いについて疑問を持つことになるのは避けられないだろう。

 今回の問題発生で、日本のデジタル化社会への取り組みはこんなものか、と思われてしまうのは間違いないところだろう。菅首相は新たにデジタル庁なるものを新設して役所のデジタル化を推進する計画だが、いかに役所をデジタル化しても民間がそれに応じていないのなら何も進展しない。最先端の金融で露呈した欠陥で改めて民間を含めて国全体のデジタル化をしていかないと何もならないことがはっきりとした。

 日本はかつて官庁の情報システムの納入は国産業者に限るとし、国の補助金のもとにコンピューターの開発を進めてきた経緯があり、いまだに官公庁のシステムは国産メーカーに任せることになっている。その余弊で富士通が起用されたとしたら、今回の事態は極めてお粗末な結果でもある。また、東京都などは東京を世界の金融センターとして海外の金融企業を招こうとしているようだが、こんなお粗末なシステムのもとには世界の金融企業が見向きもしてくれないことは明らかである。

 まして米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)大きく差をつけられている日本のIT企業はいまやGAFAの足元にも及ばない存在になり果てている。今回の事件をきっかけにいかに日本のIT企業を底上げいていくか、議論が深まることを祈念したい。

 

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