鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

風化したオウム真理教の脅威がもたらした高裁の無罪判決、でも最高裁では有罪に

2015-11-28 | Weblog

 27日は東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。いつものように受付横の本日の裁判スケジュールを見ていると、午後1時半からオウム真理教の信者だった菊池直子の高裁での控訴審の判決があるとわかり、他に興味ありそうなものも」なかったので、傍聴券配布に並ぶことにした。午後1時締切の傍聴券には定員の2倍強の応募があり、難なく当たったので102号法廷に入ってみた。たまたま中央通路脇に座っていると、冒頭2分間の撮影があり、当日夜のニュースを見たら、頭の後ろの禿げ頭が写っていたが、だれも鈍想愚感子だとは思わないことだろう。

 開始早々、大島隆明裁判長は意外にも「元判決を破棄し、被告を無罪とする」というもので、それを聞いた記者の多くは脱兎の如く法廷を後にして外へ飛び出して行った。法廷でもどっと溜息ともつかぬどよめきが走り、驚愕の波が広がっていった。裁判長は無罪とした理由を「被告は確かに爆弾の材料を運ぶという作業を行ったのは確かだが、それがサリンや爆弾など人に被害をもたらすためにに使われるものだと意識していたわけではない」とし、一審で井上嘉浩死刑囚が「被告に爆弾に使われることを説明した」と証言したことが有罪となった点について不合理なものときめつけた。

 約1時間20分にわたる判決趣旨を聞いていて、オウム真理教のテロに対する恐怖は風化したとの感想を持った。翌日の各紙報道を見ていて裁判長は左翼思想の持ち主であるとの指摘があったほか、一審の裁判員裁判で裁判員を務めていた男性が「私たちの努力が覆され、無力感を覚える」とショックを隠し切れないコメントを発していたのが目立った。市民の感覚としてはあれだけの罪を犯したのに一転して無罪とは理解できないものがあるのは否定できないだろう。

 確かに罪の意識のないことに加担していたというのは法的には正しい感覚なのだろうが、オウム真理教がそういったテロ集団組織だったことを全く意識しなかったということは通常の市民感覚からすれば、そぬした組織に属することは罪がある、と思うのは当然のことである。暴力団に加盟することはいまや反社会的行為とみなされ、一般人が暴力団と関わることは忌むべきことされている。

 それに今回の無罪判決はこれまで菊池被告に対して指名手配犯として全国のポスターに貼り出され、逮捕されて第一審で5年の有罪判決を受けてきた一連の警察・検察の措置が間違っていた、というようなもので、釈然としない。それが裁判というものだといえばそうかもしれないが、法治国家というのはそいうものなのか、と考えさせられる問題を含んでいる。

 あと、これまで一貫してオウム真理教を糾弾してきた評論家の江川紹子さんが今回の無罪判決を支持していたのが注目された。オウム真理教をテロ集団に導いた幹部と一信者とは違うということかもしれないが、どこまでを幹部とするのかという問題が残る。

 もっとも検察は間違いなく最高裁へ上告することだろうし、最高裁は常識、および世論の動向を察知して有罪にすることだろう。ただ、菊池元被告はすえで3年間拘置所に服役しており、刑期をくらっても実質的にはすでに罪にふくしている、というこおtになり、いずれ釈放されることになる。

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没落貴族の末路を描いたチェーホフの「桜の園」は見ごたえあったものの………

2015-11-21 | Weblog

  21日は東京・初台の新国立劇場でチェーホフの「桜の園」を観賞した。日本で「桜の園」が上演されたのは主なものだけでも大正時代からざっと数えただけでも40近くあり、なかには俳優座公演だけでも50年ぶりに岩崎加根子が主役のラネーフスカヤを演じているケースもあるほど演劇界の定番となっている演目である。今回は田中裕子がそのラネーフスカヤ役を務めるほか、いま売出し中の柄本佑が出演するとあってか、場内は超満員の入りだった。舞台の造りも観客席の中央に歌舞伎でいう花道が拵えてあり、その花道を通って演技をする斬新な手法も目を魅いていた。

 幕が開くと柄本佑演じる商人、ロパーピンが徹夜明けでパリからラネーフスカヤ夫人一行がここ南ロシアに帰ってくるのを待ちわびているシーンから始まる。ラネーフスカヤ夫人は10数年前にここ南ロシアの邸宅でかわいい息子が川で溺れて死亡したことから、パリに引っ越してしまっていた。ところがパリでの生活に疲れ果て、お金もなくなってしまっていたうえにここ南ロシアの邸宅はかつて桜の名所として名高いものだったが、いまやその桜の園も一緒に売り払われようとしている、という。

 その一行が着いたやいなや、ロパーピンはラネーフスカヤ夫人と兄のガーエフに桜の園を競売に付すしかない、と説得するが、世情にうといラネーフスカヤ夫人は耳に入れようともしないで、お金に不自由しているのに相変わらず貧者に施しをしたり、遊興にふけっている始末で、ラネーフスカヤ夫人を取り巻く娘のアーニャや養女のワーリャも一家がそんな苦境に陥っているのを尻目に恋人を楽しいと時を送っている。

 そして一家は邸宅でかつて開いたダンスパーティを開くに至り、使用人を含めてダンスに興じているが、そこにはロパーピンも兄のガーエフが見当たらず、当の2人は桜の園を中心とする土地が競売にかけられている会場に行っていることが判明する。ダンスパーティが終わったことにようやくロパーピンらが帰ってきて、「競売で土地は売れた」と報告する。で、夫人が「誰が買ったのか」と聞かれたロパーピンは「実は競り落としたのは自分だ」と打ち明け、それを聞いた一同はびっくりするととものあきれ返る。競売に付すことを強行に主張していたのはロパーピンであり、その本人が落札することなど考えもしなかったからだ。すっかり落胆したラネーフスカヤ夫人は早々に南ロシアの土地を後に再びパリへ旅立っていくところで幕となる。

 ロシアの没落貴族の哀れな末路を描いたチェーホフの傑作ではあるが、貴い気品あるラネーフスカヤ夫人を演じるのは田中裕子といえどもやや峠を過ぎた感があったし、悪徳商人のロパーピンを演じた柄本佑がそこまで複雑な性格の持ち主を演じるにはやや役不足の感があった。それに柄本佑の声が劇場向きのよく通る声ではないことも判明し、あくまでもテレビ俳優ではないか、という感じもした。

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夫と浮気相手双方から誓約書をとったものの、高いものについたダブル不倫のツケ

2015-11-18 | Weblog

 18日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午後3時からの404号法廷での損害賠償請求裁判を傍聴した。入廷すると時間にも拘わらず録音機器が不調とかで調整に手間取り、定刻よりやや遅れて始まった。証人には原告側の夫婦らしき2人しかおらず、被告側は弁護士のみであった。原告の2人が並んで嘘を言わないとの宣誓をした後で、まず原告の夫らしき男性が証言席に座った。どうやら千葉県で外科医を開業する医師のようで、代理人は医師会の理事っを務めていたことから尋問を始めた。

 で、理事を辞めた後に医師会の事務をしていた女性との付き合いが始まった経緯について尋問が及び、男性は被告から「いつ食事に連れていってくれるんですか」と声をかけられ、月島のスペイン料理店で食事をし、その後数回デートを重ねるうちに付き合いが始まった、という。それでも男性から誘ったわけでもなく、ズルズルと関係を重ねていったが、そのうちに妻に知られるところとなり、会うのを止めるようにした。ところが、夫の浮気を知った原告が逆上して、被告を呼び出して詰問したので、今度は被告の夫が原告の夫を相手どって1000万円の損害賠償請求裁判をこすこととなり、結局100万円を払って和解することとなってしまった。 そこまで証言して原告の夫は脱兎のごとく法廷から退席した。

 続いて証言席に立った原告は弁護士に尋問に基づき、被告の本心を知りたい、と思い、被告を呼び出して被告の裸の写真を突きつけ、浮気していたことを自白させ、被告に髪を切って丸坊主になることや妊娠していない証明をすること、それに夫に近づかないことなどを誓う念書を書かせた、と語った。さらに原告はその前に夫にも2度とこうしたことをしない旨を約束する念書を書かせ、署名させていたことを明らかにした。こうした一連の行為は弁護士と相談のうえ進めたことで、夫と元の生活を取り戻したい、との一念から行ったことだった。 それでも被告の蒙った精神的被害は大きく、いあmだに精神科に通って治療を受けているうえ、いまだに夫とは別居を続けており、夫のクリニックには通う形で裏方を務めている、という。

 浮気があったのは3年前のことで、原告は「3年も経ってから損害賠償裁判に及んだのは冷静に事件を振り返ることができるようになったからだ」と語ったが、被告側の弁護士の反対尋問で「気持ちにケリをつけたかったからではないか」と切り込まれ、「そうだ」と答えていた。いくら弁護士の助けがあったとはいえ、浮気の当事者である夫と不倫相手双方から誓約書を書かせていたとはここまで用意周到な妻は聞いたことがない。そのうえ夫の不倫相手から損害賠償金をせしめよう、とは虫がよすぎるような気がしないでもない。

 裁判長が証言が終わるや否や、一切尋問もせずにいきなり判決に日時を宣言したのはそうした空気を読んでのことだのだろう。せいぜい夫の払った100万円の半額くらいの損害賠償を認めるこらいが関の山と見たがいかがなものだろうか。いずれにしろダブル不倫は高いものについたということだろう。

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