今月7日のジャニーズ事務所の東山社長とジュリー代表取締役らが4時間強にわたる記者会見を開いてから2週間余経ったが、連日故ジャニー氏の性加害を受けた被害者をめぐるニュースが相次いで報じられ、最終決着までまだまだ時間がかかる見通しである。今週発売の週刊文春で、ジュリー景子前社長が問題の記者会見のあった7日夜に娘を連れてハワイに旅立ち、ワイキキビーチのホテルでゆったりと豪遊した、と伝え、さらジュリー氏がに記者会見で代表取締役に残ると明言したその理由を明らかにした。そんな豪遊の裏にはしたたかな計算がされていたわけで、どこまでジャニー氏の性加害を反省しているのかが疑われ、居直っているジュリー氏の姿が浮かび上がってきた。
週刊文春によると、ジャニーズ事務所はグループ全体で年間1000億円を超える売り上げがあり、非上場の株式の評価額はジャニー氏が亡くなった2019年7月時点で1株当たり200万円を超える水準にあった、という。その株をジュリー氏はメリー氏と50%ずつ保有する形で分け、さらに2021年にメリー氏が亡くなるとジュリー氏が全株所有することとなった。専門家によると、ジュリー氏が納めるべき株の相続税は860億円になる、という。しかし、国が2009年から中小企業の事業承継を後押しする新たに「事業承継税制」を導入したのを利用するためには、申告期限の翌日から5年間、代表取締役を務め、5年目以降も株を継続して保有しないといけない、とされている。
つまりジャニー氏が亡くなった際の相続税の申告期限は2020年5月なので、2025年5月までジュリー氏は代表取締役であり続けなければならない、ということとなる。そうすると、860億円の相続税を払わなくても済むということとなる、という。中小サービス業の場合、従業員100人以下、もしくは資本金5000万円以下のどちらかに該当すれば、この恩典に預かれる、という。
記者会見でジュリー氏が「代表取締役に残る」と明言したのは被害者への補償をするためではなく、相続税を払わなくて済むということが理由だったのである。この段階に至っても税金の課税を逃れるための代表取締役継続であったことが判明したわけである。記者会見でいかにも性被害者の補償を行うようなことが述べられたが、心の中はいかに払うべき相続税を払わずに済ますか、ということだったわけで、こんな人が今後のジャニーズ事務所経営の舵取りをしていけるのか、甚だ疑問に思えてきた。
いま、ジャニーズ事務所の社名をどうするのかとか、性被害者への補償問題をどうするのか、いままでのスポンサーやテレビ各社との関係をどうしていくのか、など関係者はジャニーズ事務所が相次ぐ難問を捌いていけるのか、関心を持って眺めている状態であるのに、肝心のジュリー氏がこんな状態ではとても関係者が納得いくような解決策を講じていけるのか、極めて疑がわしい。ジュリー氏が後任の社長に据えた東山紀之社長も過去にジャニー氏と同様な行いをしていたとされていて、もはやジャニーズ事務所は一気に解体への道を進んでいるとしか思えない状況にある。
追記(10月2日) ジャニーズ事務所への故ジャニー喜多川氏の性加害をめぐる大企業や各テレビ局の今後一切ジャニーズ事務所のタレントを使用しない、との動きに対して、いち早く10月2日に記者会見を開くとの発表を受けて、この2日行われた記者会見はいまのジャニーズ事務所を「スマイルアップ社」に名称変更し、性被害者の救済、補償に専念させ、終わった段階で会社を消滅させることと、タレントのマネジメントを専門に行う新会社を11月中旬にも設立する、と発表した。新会社名は公募で決める、としている。この日も2時間強にわたり、記者からの質疑の新会社の東山社長、井ノ原副社長、それに弁護士2人の4人が答えたが、発表事実以上のものは出てこなかったうえ、肝心のジュリー景子氏は姿を現さず、心境を綴ったメモを代わりに井ノの原副社長が読み上げただけだった。性被害者に対する補償額についても具体的な数字は全く示されなかった。記者団の中からは「茶番だ」との声もでてくる始末で、今後の経営変革に対する期待はすっかり萎み、無駄ともいえる2時間だったと思った。