鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

OBの応援など要らない、非情な情報の遮断

2009-03-31 | Weblog
 毎週木曜日になると、退任前に在籍していた会社のの社内掲示板にアクセスするのを習慣としていた。ところが、先週から何回ログインしようとしても「パスワードが違います」といってはね返され、見ることができなくなってしまった。最近、外部とのやり取りや興味のあるホームページを見に行った際にも不具合いが起きているので、当方のパソコンのせいかな、とも思っていたが、やはり何らかのシステム変更でも行われたのだろう、と思って、旧知の担当者に問い合わせのメールを出して置いた。といっても金曜日の夜だったので、返事は土日には来なかった。
 退任時には会社のメールアドレスはそのままなので、しばらく自宅のパソコンに転送してもらうように頼み、それと後輩の消息を知るのに、毎週木曜日に開かれる幹部会で人事異動が発表されるし、お知らせで訃報が出るので、その内容をチェックすることで、たまに会ったりした時に最近の状況が頭に入っていて何かと都合が良かった。時には親会社の人事も掲載され、新聞には載らないような人事を知ることもあり、ある意味では重宝していた。
 もちろん、その幹部会では冒頭に社長の現況報告がり、月に1回業況報告があり、それを見ていれば会社の状況を掴むことができた。だから、いまのような広告情勢が厳しい時にはその実態をつぶさに知ることができた。
 で、30日に親会社の株主総会があり、出席したところ、バッタリとTさんと会い、話しているうちに掲示板が外部にシャットアウトされたことになり、なんとTさんは早々と事情を知り、関係者に電話で抗議していたことが判明した。だれかの指示で、たとえOBといえども掲示板にアクセスできないようにした、というのである。業況が厳しくなっているので、一切の情報漏洩を防ぐことにしたのだ、いう。
 家に帰ってメールをチェックしたところ、果たしてシステム担当者からその旨を伝える返信が届いていた。曰く「上からの指示です」と申し訳なさそうに打ってきた。
 この3月中旬に同期の連中が集まる会合があり、そこで会社の現況について少し話した記憶があるが、一瞬そんなことが伝わって今回の措置につながった、と考えたが、まさかそんなことはないだろう。業況が厳しく、直近のOBをも信じられなくなってきて、当事者としてはそこまで追い込まれている、ということなのかもしれない。会社の機密情報が含まれている幹部会の内容は掲示板などに掲載せずに社員にメールで出せばいいのに、と思うが、それも外部の勝手な言い分と片づけられてしまいそうである。
 OBとしては元いた会社が健在であってほしい、と願う気持ちは十分にあり、少しでもお役に立つことがあれば力を貸すことも辞さない、考えであるが、そのためには置かれた状況がどうなのか、を判断する手がかりくらいはほしいものだ。
 そんな思いも断ち切られて、ちょっぴり淋しい気にさせられたが、たまには後輩と酒でも飲んで、コミュニケーションと図れ、ということなのだろう。
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本当に安全なのか、NHK衛星放送の「海外安全情報」

2009-03-30 | Weblog
 先日夕刻、NHK衛星テレビを見ていたら、「海外安全情報」なるものを流していて、聞いていたら、米国シアトルで路上に駐車して車から離れる時には車内にあるカーナビの装置を外から見えないようにするか、装置を外して持って出るように、とアナウンスしていた。外から見えるところに置いてあると、ウインドウを割られて持っていかれてしまう、というのがその理由で、発展途上国ならともかく米国でもそんな物騒なことになっているのか、と驚いた。
 続いて、米国で飛行機に搭乗する時には機内へ持ち込む鞄に貴重品を入れるようにと話している。搭乗する際に荷物を預ける際には荷物には鍵はかけないようになっているので、貴重品があると盗まれてしまう、だから貴重品は絶対に預ける荷物には入れないで、機内持ち込み用の鞄に入れるように、としている。女性のアナウンアサーが真顔で話しているので、どうやらブラックジョークではなさそうで、NHKがそんなブラックジョークを流すはずがない。
 でも考えてみれば、2つとも変な話である。シアトルのカーナビの盗難は警察に取り締まってもらえばいい話で、車からちょっと離れるのにわざわざカーナビの装置を外して持参するのはおかしな話である。米国の警察はそんな軽微な盗難は取り締まらないとでもいうのだろうか。そんな治安状態では市民が安心して生活を営むことができないのではないだろうか。シアトルにはイチローの所属するマリナーズがあり、日本国総領事館もあると聞いている。
 飛行機に乗る際の貴重品云々の話もいつから預ける荷物は鍵をかけないようになったのだろうか。搭乗する際に厳重な荷物チェックをするので、そこで危険な物品は持ち込めないようにできるはずではないのだろうか。それを鍵をかけずに預けさせるのではなんでも自由に持っていって下さい、と言っているようなものだ。機内持ち込みだけでは盗まれて困るようなものは収まりきれない人がほとんどだろう。
 NHKは社団法人日本放送協会で、一般に公共放送として認識されており、国がやっているような印象がある。だから、NHKの放送は間違いないものだ、との思い込みがあるが、とんでもないことで、NHKといえども時には誤った情報を流さないとも限らない。海外安全情報となっているので、いかにも外務省のお墨付きのような公式の情報のように思うのだろうが、せいぜい海外の特派員が街で流布している話を聞いてきて、まとめている程度なのだろう。まさか視聴率に低い衛星放送だから影響もない、いい加減でいい、とは思っていないだろうが、流す以上は確認して正確な情報にしたうえで放送してほしいものだ。
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北朝鮮のミサイル発射の裏にある意図は?

2009-03-29 | Weblog
 北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン2号」などの発射準備に入ったことで、国際社会が揺れている。日本も早速、迎撃態勢に入り、日本海、太平洋上に艦船を配置しているが、国連では北朝鮮に対する制裁を強めようとする動きが出ており、世界の孤児、北朝鮮に対する包囲網を形成しつつある。ただ、なぜいまの時期に北朝鮮が国際世論の反発を招くような行為に踏み切ろうとしているのか、、また、懸案の拉致問題はどうなるのか、気になるところである。
 北朝鮮のミサイル発射は米NBCテレビが26日に「北朝鮮が人口衛星打ち上げと称して長距離弾道ミサイルを発射台に設置した」と報じたことから明らかとなった。さらに、北朝鮮は中・短距離ミサイルの発射についても4月4日から8日に発射の準備を進めていることも明らかとなり、その軌道下にあたる日本では浜田靖一防衛相が初の「破壊措置命令」を下し、日本海、太平洋上の艦船を配置したほか、秋田、岩手県内に地対空弾道弾パトリオット(PAC3)を配置して、迎撃態勢を整えた。
 日本だけでなく各国は国連安保理では平成18年に北朝鮮に対し「大量破壊兵器と弾道ミサイル計画の完全なる廃棄」を求めた制裁決議1718号に違反するものである、として計画の断念を求めている。ロシアだけが「ミサイルに人工衛星を搭載していれば国連制裁決議に違反しない」とこれには同調しない構えを見せているが、単なる人口衛星だけではないのは明らかで、国際社会の北朝鮮に対する非難は高い。
 公明党の太田明宏代表も28日の講演で「北朝鮮がミサイルを発射るようなことがあれば、経済制裁を強めるべきだ」と発言し、経済制裁強化の方向に向かう見通しとなっている。
 北朝鮮の置かれた状況をみると、いま人口衛星なり、ミサイルを発射して国の威信を高める時ではないのは明らかである。わずかGNPが4000億円しかないのに莫大な費用を投じて宇宙・防衛に力を入れる余裕はない。にもかかわらず、そうせざるを得なかった事情は一体何なのだろうか。
 ひとつはかねて懸念されている金正日総書記の病状が思わしくなく、国内体制になんらかの障害が起きており、それを外に向けることで雲散させようとしていることが考えられる。もうひとつは先の日韓両国による大韓航空爆破事件の犯人、金賢姫元死刑囚と日本の拉致家族との面会で拉致問題についての国際世論の関心が高まったのに対するメッセージであり、恐らくは「もうこれ以上拉致問題に触れるな」といいたいのではなかろうか。金元死刑囚は「北朝鮮のプライドを尊重して粘り強く交渉すれば拉致問題は遠からず解決する」と語ったが、解決するにもそんなカードはもはや持ち合わせていないことを言いたかったのではなかろうか。
 いずれにしろ、北朝鮮からのメッセージを読み取れる人は日本の外務省周辺にはいなくなってしまったのは確かなことである。
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アジアの自動車産業の中心が東京から中国に移った

2009-03-28 | Weblog
 28日付けの毎日新聞によると、来月中国の上海で開催される中国のモーターショーの展示面積が過去最大の17万平方㍍になる、という。世界金融危機の影響で出展を取りやめるメーカーもあるものの、全体では規模が大きくなるというから驚きだ。今月はじめに日本自動車工業会がこの秋に開く日本の東京モーターショーは前回の2年前に比べ半分の規模になる、と発表したばかりで、いよいよ日本市場は中国市場の後塵を拝することになることがはっきりとした。
 4月20日から上海で開催されるモーターショーにはイタリアのフィアットや日本のダイハツ、それに多数の部品メーカーが出展を取りやめるほか、米フォード・モーターや日産自動車が展示面積を縮小することにしているが、一方でトヨタ自動車やドイツのメルセデス・ベンツなどが前回より展示規模を大幅に拡大する、という。この結果、全体の展示面積が過去最大となったもので、この背景には欧米を中心に自動車需要が急速に冷え込むなかで、中国の自動車需要は堅調で、今年はじめには世界ナンバーワンの売れ行きを示し、世界の自動車メーカーの目が一斉に中国市場に向いている表われ、といえる。
 翻って、日本の市場をみると、すっかり冷え込んでしまい、先ごろ日本自動車工業会が発表した今年10月の東京モーターショーには前回の11カ国241社の出展から8カ国122社で、展示面積も4万4587平方㍍から2万2594平方㍍と半減する。さすがに日本の自動車メーカーで不参加を表明したところは少ないが、海外ではGMはじめフォード・モーター、クライスラーのビッグスリーからフルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツ、ルノー、ボルボなど欧米の名だたるメーカーが軒並み不参加を決めている。
 東京モーターショーは今年で41回目を迎えるが、千葉・幕張メッセの展示会場をフルに使い、来場者が100万人を超える日本最大の展示会で、展示会関係者のみならず日本の産業界を代表するイベントでもあった。鈍想愚感子が展示会関係の業務についた10数年前に幕張メッセでモーターショーを見に行って、いつになったらこんな大きな展示会に関与できるようになるのかしら、と度肝を抜かれた記憶がある。規模の面でも、来場者数でもいまだにモーターショーの記録を破る展示会はなく、歴史に残る展示会でもある。
 それが、世界金融危機で一挙に中国に抜き去られてしまった。日本の自動車メーカーの台頭が日本の旺盛な国内の自動車需要に支えられていたのが、一挙に崩れ去り、お隣りの中国市場に取って代わられようとしている。これまで、開発の拠点として国内に置かれていたのもこれからは徐々に中国に置かれるようになっていくことになるのかもしれない。
 その意味では上海モーターショーの隆盛はアジアの自動車産業の中心が東京から中国へ移ったという象徴的な出来事といえるだろう。
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楽曲誕生の背景を理解したうえでの音楽鑑賞はまた格別でした

2009-03-27 | Weblog
 26日は東京・初台の東京オペラシティへ「題名のない音楽会」の公開番組収録に行った。前半でいきなり、司会の佐渡裕が「3週間で何ができるか」とアシスタントの女子アナにふったので、自分たちの休暇のことでも話しているのか、と聞いていたら、どうやらジョージ・ガーシュインの名曲「ラプソディ・イン・ブルー」が誕生するまでわずか3週間しかなかったことを言っているのだ、とわかった。舞台中央のピアノの横に電話が置いてあり、どうしてかな、と思っていたら、ゲスト奏者の松永貴志と佐渡裕が小劇を演じるための小道具だった。
 1924年1月3日に米国の新聞に約1カ月後にガーシュインが演奏会で新作を発表する、と出ていたのを見つけたガーシュインの兄がガーシュインに電話をすると、何も聞かされていなかったガーシュインは驚くが、もともとジャズピアニストだったので、なんとかなるだろう、と思い、早速作曲にとりかかる。編曲のグローフェなどの協力もあって3週間でなんとか仕上げるものの、本番での自身の演奏については全くの白紙で、ピアノ演奏はお得意の即興で臨むこととなった。
 で、1924年2月12日に当時の有名な音楽家が聞き入るなかで、「ラプソディ・イン・ブルー」が演奏され、それを東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団をバックに松永貴志のピアノでそれを再現した。過去に何回も聞いているはずだが、こうして曲の生まれた背景を順序立てて説明されたうえでの演奏となると、一味違う新鮮なものとして聞かれ、改めていい曲だな、と思った。
 後半はベートーベンの交響曲第5番「運命」徹底解剖と題して、最初のジャジャヤジャーンの出だしのところを一拍置いて演奏したらどうなるかとか、他の楽器を加えて演奏したらどうなるか、など日頃親しんでいる交響曲をさまざまな角度から分析していった。
 同じ楽曲でも指揮者によって、その時代のテンポやホールの残響を考えたり、また、楽団の奏者の位置を変えたりすることによって、音の出方が変わってくることもよくわかった。運命が作曲された当時はテンポが早かったのと、楽団の奏者の配置がいまのとは違って第1バイオリンの対抗位置に第2バイオリンがいて、コントラバスも右手でなく左手にいた、という。当時の演奏のスタイルで演奏するのをペリオデイックというが、その方式で第1楽章を演奏してくれ、なるほどこれが当時の「運命」かと納得できたような気がした。
 この日は珍しく前から2番目のいい席だったので、司会の佐渡裕の表情が手にとるように見えたのと、演奏者の汗いっぱいの表情も見え、十分に演奏を楽しめた。また、最前列に陣取った裏方の動きもよくわかり、半分進行に参加しているような気分にもさせられた。
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小沢代表の涙は民主党の再出発を物語っているのでは

2009-03-26 | Weblog
 小沢一郎民主党代表が窮地に立っている。公設第1秘書の大久保隆規を政治資金規正法違反で東京地検から起訴されたにもかかわらず、代表続投を決めたところ、内外の批判が強く、代表の座を退かざるを得なくなりつつあるからだ。検察の起訴に対し、あくまでも自身の潔白を主張しているが、それとは反対に一般の受ける印象はクロで、少なくともそんな人を政党の代表者に担ぐ民主党からも人心は離反していくのは避けられない状況になっている。
 大久保秘書は当初「西松建設からの政治献金とは知らなかった」と否認していたが、25日の新聞報道などによると、翻している、という。となると、小沢代表の管理責任が問われることになり、法的にはシロであっても同義的責任は逃れられなくなってくる。一議員ならともかく、政党の代表者が企業からの政治献金を看過したとあっては党全体のイメージにもかかわってくることだろう。
 にも拘わらず、24日に開かれた民主党の役員会で小沢代表の続投を決めたのはなぜだろうか。党として外部には言えない小沢代表に大きな借りでもあったのか、それとも今後の政権奪取にあたって小沢代表でなければできないことがある、とでもいうのだろうか。確かに霞が関あたりでは小沢代表が総理の座に就くと、これまでの官僚主導の政治がすべて覆される、との話が囁かれている、という。だから、小沢代表がこけるようなことがあれば霞が関あたりでは大歓迎、というのだ。
 しかし、だからといって民主党が小沢代表の続投を決めた理由にはなりにくい。ひとつ「世論の動向をみて」との下りがあったが、すでに世論は小沢代表続投については「ノー」の判断を下している。29日に行われる千葉県知事選の結果を見てということなら、いまの段階で民主党支持候補の敗北は見えている。いまさら世論調査をするもでもないことだろう。民主党がそんな世論の動向を推し量れないとしたら、自浄能力どころか、世の中の動向をキャッチするセンサーすら壊れている、ということになる。そんな党には政権を任せられない、とうことにもなりかねない。
 22日のTBSテレビの「時事放談」でパネラーのジェラルド・カーチス支氏が今回の逮捕について「検察はなぜいまなのかをきちんと説明すべきだ」とか語ったのを受けてか、今回の大久保秘書起訴にあたって東京地検は異例の記者会見を開き、2時間強にわたって「収支報告書で実態を偽って記入することは国民を欺くこと」などと説明した。さらに谷川恒太次席検事名で「本件はダミーの政治団体の名義を利用する巧妙な方法により、特定の建設業者から長年にわたり多額の金銭を授受してきた事実を国民に目から覆い隠したもので、看過し得ない重大悪質な事案」とのいコメントも発表した。
 それでも検察の説明は不十分とする声がないでもないが、当の民主党は小沢代表の続投を決めた。その直後に記者会見した小沢代表は時に涙を浮かべ、そのことを聞かれて「みなさんの支持に感極まってのこと」と説明したが、政治家にとっての涙は健康問題と同じく人様に見せるものではない、との言がある。その禁則を破ったのは心の底では退陣を覚悟していて、はしなくもその一端を見せてしまったのかもしれない。それまで必死できていた緊張の糸が切れてしまったのだろう。
 ともあれ、小沢代表の続投は同じように麻生首相のもとで瀕死状態にある自民党を一時蘇らせてしまった感がある。まさに敵失で、みすみす点を啓上してしまったような感がある。逆に民主党はすでに掌中に収めつつあった政権がスルリと逃げていったような状況で、ここは小沢代表には退任してもらって、岡田克也新代表のもとで自公政権追い落としに邁進してもらいたいものだ。
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イチロー大活躍でWBC優勝の舞台裏で何が起きている?

2009-03-25 | Weblog
 3月はじめから開幕したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で24日行われた宿敵、韓国との決勝戦に勝って、日本が2回連続チャンピオンの座に就いた。昨年夏の北京オリンピックで星野仙一監督率いる日本が韓国、米国、キューバの前に惨敗したのを見事にリベンジしてくれた。原辰徳監督では優勝は難しいと思われたが、リーダーシップのなさをコーチ、選手がカバーしてくれたようで、星野氏と違って妙な野心がなかったのが、チーム一丸となって実力を発揮したようだ。
 今回の日本チームは最初から最後までイチローが主役であり、途中あまりにも打てなくてあれがイチローか、と落胆させられるような場面がいくつかあったが、24日の決勝戦では第1打席からセンター前にヒットを放ち、チーム全体を乗せてくれたうえ、延長の10回表には2死ランナー2、3塁でこれもセンター前にクリーンヒットを放ち、勝ち越し打を叩き出し、5対3での勝利の立役者となった。全体では44打数12安打で打率2割7分3厘と3割打者のイチローとしては振るわなかったが、最後の勝利打点ですべて帳消しとなり、ヒーローとなった。
 今回のシリーズで、米メジャーリーグでも数々の記録をうち立てているので、相手チームの研究も進んで、イチローだけには打たせるわけにはいかない、と必死にマークされたこともあって、イチローは苦しんだ。夕刊紙にはイチローへの非難めいた見出しが踊ることも度々だった。
 優勝決定後のパーティで、いみじくもイチロー自身「先輩を先輩とも思わないおまえたちのふてぶてしさがよかった」と発言していたが、イチローの心の底に先輩だといいう意識があったのが、いいところを見せようとの力みを生んだとも考えられる。グランドに立つ以上、ベテランも新人もない、しかもイチロー以外の日本人選手は相手にデータがないうえに3年前と比べれば進化しているのは明らかで、イチロー自身それを感じて、余計に「やらねば」との意が強くなっていって、平時の力がだせなくなったのだろう。
 イチローは決勝打を放った瞬間のことを聞かれて、「神が舞い降りてきた」と語っていたが、直前にはいろいろなことを考えたものの、その瞬間は全く無心だったことがうかがえる。だからこそ、打てたのかもしれない。イチローは安打製造機と言われているが、決定的な場面では意外と打っていない印象がある。それだけにこの決定打は本人も「壁を越えたかもしれない」とい述懐しているようにイチローのなかでもなにかはじけるものになるかもしれない。
 今回のWBCはイチローに始まり、イチローに終わった、といっても過言ではないだろう。予想以上に日本国中がWBCで沸き立ち、最高の結果となって非常に喜ばしい。できれば、3年後のWBCでもイチローの活躍する姿が見たいものである。
 ところで、新潮45の4月号でスポーツライターの玉木正之氏が「これでいいのかWBC」と題して、3年後のWBCの2ラウンド以降の試合は日本で行われることと、同時に日本は6球団1リーグに再編成され、勝ったチームが米国のワールドシリーズのワイルドカードに出ていき、ワールドチャンピオンにもなることもできる計画が米国から打診されているという。つまり、日本は米メジャーリーグの1下部組織に位置づけられる、というわけで、日本の野球ファンとしては納得できるものではない。
 2回のWBCを日本が制した舞台裏では密かにこんな計画が進められている、とあっては浮かれてばかりいられないだろう。オりンピックでの野球競技がなくなったいま、それに代わるものとしてはWBCしかない。日本、韓国が目の色を変えて必死に取り組んでいるのは国の威信があるのはもちろん、数多くの青少年の夢が象徴されているからに他ならない。それが、少数の人の利権のためだけに利用されるようなことだけにはなってほしくない。

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「ニンテンドーDS」史上最速で1億台販売突破の先に見えるもの

2009-03-24 | Weblog
 この3月6日に任天堂のゲーム機「ニンテンドーDS」の世界販売台数が1億台を突破した。04年11月21日に米国で発売開始以来、4年3カ月と2週間での1億台突破で、家庭用ビデオゲーム機としては史上最速での記録という。日本ではそのうち2500万台販売されており、5人に1人が購入したことになり、世帯
普及率は50%強にもなる。携帯電話と並んでゲーム機は世界金融危機のなかでも着実に市場を形成している製品で、世の中の今後の動向を読み解くカギとなりそうだ。
 「ニンテンドーDS」のDSはDual Screenの意で、従来のゲーム機になかった「擦る」、「叩く」操作を導入したことで、ブームを巻き起こした、といわれている。特に05年5月に「脳を鍛える大人のDSトレーニング」を売り出し、大人のゲーム機市場を開拓したことが爆発的な売れ行きにつながった。従来、ソニーコンピュータエンターティンメントの「プレイステーション2」が05年11月に1億台販売を達成したが、5年9カ月を要しており、「ニンテンドーDS」はこの記録を破った。任天堂の最初の家庭用ゲーム機、ファミリーコンピュータは累計6191万台を販売しているが、「ニンテンドーDS」はこれをも上回るスピードで記録を達成したことになる。
 ファミリーコンピュータが売り出された当時、鈍想愚感子が住んでいた川崎市宮前平の駅前のディスカウントショップで正月のセールでファミリーコンピュータが目玉商品として売り出されて購入したことがあり、しばらく親子4人でファミリーコンピュータに興じた記憶がある。「スーパーマリオブラザース」や「テニス」、「麻雀」などのゲームをした。そして、何回も東京・神田にあった任天堂のサービスセンターに修理に持っていって直してもらったことがあった。
 次男などはいまだにテレビゲームから卒業できなくて、時間があればゲームをしているようなふしがみられる。鈍想愚感子は宮前平から溝の口に転居した14年前あたりからテレビゲームとはおさらばして、いまは特にテレビゲームをしたい、とも思わないし、「ニンテンドーDS」なるものにも触れたことがない。仕事柄、ゲームの展示会には足を運んだことはあったが、自身ゲームで楽しもうとは思わない。だから、電車の中でいい大人が携帯電話でゲームに興じている姿を見て、つい「そこまですることないのに」と思ってしまう。
 ただ、家庭用テレビゲーム機がこれだけ普及しているということは単なる趣味ではなく、いまや文化の領域になってきていることは確かである。携帯電話のコンテンツとしても音楽と並んで一大マーケットを形成している。メーカーの任天堂がカルタ制作会社から一大エンターティンメント会社へ変身を遂げたようにゲーム市場は人に夢を与える総合エンターティンメント産業ともなっている。出版の世界ではコミック本の売れ行きがいまひとつであるが、一方では宮崎駿監督のアニメーション映画は依然として隆盛を保っている。ゲーム市場のさらなる飛躍はアナログのコミックとアニメーションといかに融合を図っていくか、にありそうな気がする。
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大日本印刷のジュンク堂本店子会社化の報道に違和感

2009-03-23 | Weblog
 22日は東京駅大丸で開かれていた「ミロ展」を見た後に日本橋・丸善本店へ行き、3階のレストランで名物のハヤシライスを食べた。丸善創業者の早矢仕有的が考案したとされているハヤシライスの舌づつみを打って、外へ出ると、折りからの雨もものかわ、東京シティマラソンのランナーが次から次へとやってきて、通り過ぎていった。車道を封鎖しての一大イベントでこれだけのエネルギーをかけて行われる意味はあるのだろうか、とふと思った。
 丸善本店へ来たのは久し振りだったが、そういえば先日、日本経済新聞に丸善の筆頭株主に大日本印刷がなっている、と出ていたのを思い出した。その記事は大日本印刷が書店売上高5位のジュンク堂本店の株式の51%を取得した、と報じるもののくだりで言及していたもので、意外な感じを持ったのを思い出した。家に帰って、会社情報で調べると、確かに丸善の株式の38.9%を大日本印刷が所有し、筆頭株主となっていた。
 大日本印刷は印刷業界で凸版印刷と並ぶガリバーで、ワープロ、パソコンの登場・普及で全国の中小印刷会社が転廃業していくなかで、シェアを伸ばし、いまや印刷業界のみならずエレクトロニクス、生活・産業分野にも事業の幅を広げている企業である。売上高は連結で1兆5、6000億円にも達する巨大コングロマリットである。
 印刷会社が出版社から書籍・雑誌の印刷を受注して、取り次ぎに納品した本や雑誌が書店に並ぶのが流通ルートであるが、その書店を大日本印刷が掌中に収めてしまうことに違和感を持ったのだ。もちろん、書店は全国に3万店近くあり、丸善、ジュンク堂本店を傘下に収めたくらいでは全体の微々たるシェアを得るに過ぎないし、ファッション・メーカーがファッション専門店を持って消費動向を探るようなものと言えばいいのかもしれない。
 大日本印刷はすでに丸善のほか、全国の図書館向けに本を配本している図書館流通センターも子会社化しており、印刷から書籍の流通、書店経営まで一貫体制を築こう、としているように見える。そのうちに経営がおかしくなっている出版社も引き受けてほしい、という要請が舞い込むことも当然予想され、そうなると、上流の出版社経営まで手掛けることにもなることがあるかもしれない。
 それまでは書籍・雑誌んの黒子的存在だった印刷会社がいきなり前面に躍り出てくることになる。となると、従来は出版社の意図なり、企画に基づいて印刷を請け負っていたのが、自ら企画していかなければならなくなり、これまでの経営とはがらりと変わってくることだろう。自ら企画し、切り開いていく人材を多数募らなければならなくなるし、出版事業のもたらす最終結果について全責任を負わなくてはならなくなる。
 ということは印刷会社としては革命的な変革を迫られることになり、常識的にはまず成功するとは思えない。
 と考えてくると、今回の件はたまたま、依頼されてそうなっただけのことで、印刷を超えて企画から販売までの一貫した体制を築こう、とのねらいのもとに行われたものではない、という気がしてならない。万事控え目な大日本印刷の社風からいって、総合商社的な体質は合わない、と見た。
 いずれ、「モチは餅屋」ということで、出過ぎた杭はいつか打たれるものである、ということになることだろう。
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時代を超えて語り継がれる楽曲「ワルキューレ」

2009-03-22 | Weblog
 21日は東京・渋谷へトム・クルーズ主演の映画「ワルキューレ」を見に行った。ワーグナーのオペラ、ワルキューレがどう映画化されるのか、なんら予備知識もなく、映画館へ行くと、上映20分くらい前でもすっと入場できた。事前の宣伝がされていないためか、そんなには入っていない。それでも、ただトム・クルーズ主演というだけでこれだけの観客が入るのだから、トム・クルーズ人気も満更でもない、と思った。
 「ワルキューレ」は第二次世界大戦末期のドイツの話のようで、ドイツ軍の将校、シュタウフェンベルク大佐率いる部隊はアフリカの戦場で連合国軍と相対している。大佐は戦況よくなし、として、軍を引き揚げさせることとして、視察に訪れた将軍と話し、ヒットラーへの反感をほのめかす。聞いた将軍はやむを得ず了承するが、そこへ敵機が来襲し、将軍は即死し、大佐も瀕死の重傷を負い、故国へ送還される。
 ドイツ国内ではヒットラーの統率に対する疑問から、反総督の動きが活発化しており、片腕をなくし、残った左手の薬指と子指を失くしたシュタウフェンベルク大佐に仲間に入るように誘いが来る。二つ返事でOKした大佐はヒットラー総督を暗殺した後にベルリン予備隊をもってナチス親衛隊を制圧し、ドイツ国内を封ずる策を提案する。
 ベルリン予備隊は1万2000人の兵隊を擁し、なにか予期せぬ事が生じた時のための部隊で、その作戦行動を命じるコードネームが「ワルキューレ」となっており、そのワルキューレを発動させることで、ヒットラー総督亡き後の国内平定をもたらそう、というもので、そのための手筈を順次整えていく。趣旨に賛同するものにはカードを持たせ、それを提示することで、決起への行動を進めていくことにもした。
 ヒットラー総督がベルリン郊外の狼の巣と称する別荘で作戦会議をする1944年7月20日に、シュタウフェンベルク大佐は爆弾を持って乗り込み、ヒットラー総督との会議の場で見事爆発させ、同志に蜂起を呼びかける。ところが、首謀者の将軍は総督の死亡の確認ができていない、として直ちには立ち上がろうとはしない。そのまま無為に時間が流れるのを潔しとしない仲間が優柔不断なその将軍を引きづり込むように決起させ、ワルキューレ作戦が動き出す。ベルリン予備隊は首都制圧に乗り出し、国民啓蒙・宣伝担当のゲッペルス大臣を捕えようと出向いたところへ、奇跡的な軽傷で助かったヒットラー総督から電話が入り、反乱軍の鎮圧が発令される。この電話をきっかけに攻守逆転し、改革者は国家反逆者として追われる立場となってしまった。
 官邸は人が引くようにいなくなり、残されたシュタウフェンベルク大佐は予備隊に逮捕され、即日、反逆の罪を問われて、仲間たちと銃殺刑に処せられてしまう。狼の巣でヒットラー総督の死を確認しなかったことと、制圧のための部隊を自前で持てなかったことが命取りとなったようで、ヒットラー施政下でもドイツ国内には良識があったことを後世の人に知らせることだけとなった。
 トム・クルーズは右腕と左の薬・子指のない状態での暗殺決行という難しい役柄をこなしていたので、好演といえるのだろう。映画のどこかで、ワーグナーのワルキューレの音楽が流れていたが、ワーグナーも「戦死者を選ぶ者」との意で用いたワルキューレが意外な局面で使われていることにさぞかし苦笑していることだろう。音楽というのは時代を超えて語り継がれていくものであることがここでも証明されたようだ。
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