過日、NHK朝の「生活ほっとモーニング」の「この人にトキメキ」に俳優の奈良岡朋子が出演していた。高校野球中継があるので、時間を短縮してのダイジェスト編集版の再放送であったが、舞台生活60年を越える芸歴を感じさせる内容で面白かった。奈良岡朋子はNHKの大河ドラマの 語り手を長く務めてきたベテランで発する一言一言が重みを持って伝わってくる。芸の道を極めた人というのはこういうものか、と感心させられた。
まずはいまの大河ドラマ「篤姫」の最新放送の番組終了時の篤姫が船上にて故郷の鹿児島に別れを告げる場面で「生涯二度と故郷に帰ることはありませんでした」と運命の厳しさを伝え、場を盛り立てる抑揚を抑え、それでいて凛とした声がいかに録音されているか、をドキュメンタリーっぽく放送していた。まず、おさらいの読みで時間を計り、それが長いか、短いかを本番ではピタリと秒数におさめてしまう。長年の経験でまず狂うことはない、というから凄い。それも2秒短いから長くするために語尾を伸ばしたり、しなくとも自然と収まってしまう、という。本人は「カンでしかない」としか言わないが、長年培ってきた経験から生み出された職人技といわざるを得ないだろう。司会のNHKのアナウンサーはそうしたことに悩まされてきたのだろう、コツを伝授してもらおうと思ったのがあてが外れたせいもあって、本当に驚いた顔をしていたのが面白かった。
続いて、演劇の話に移り、劇団民芸で同期の大滝秀治と出演した舞台で酔っ払いを演じたのがうまいと誉めたら、奈良岡朋子は「私は飲めませんから、酔っ払いの酔っ払う姿をよく見ているんんです。本当の酔っ払いは自分の姿は見えませんから、演技できなんです」とさらりと言ってのけた。演技者の基本がここにある、と思った。酔っ払いに成りきるためにはよく観察して特徴なり、仕草を真似なくてはならない、酔っ払い以上に酔っ払いに見えるのは演技としかいえないだろう。
そして、奈良岡朋子は宝物として、薄汚れたトートバッグを取り出した。親友の故美空ひばりが「奇跡の人も公演を何回も見に来てくれた時にこのバッグに包帯とか、絆創膏、軟膏など応急薬品をつめてきてくれた、という。「奇跡の人」はヘレンケラーとサリバンが舞台で組んずほぐれつの取っ組み合いをして、傷だらけになる。それで軟膏などを楽屋に持ってきてくれたのだが、そんな人は初めてで感動した、という。わがまま放題の美空ひばりにそんな側面があったのか、と驚きもした。
最後にその美空ひばりが1973年の第1回「広島平和音楽祭」で歌った「一本の鉛筆」を奈良岡朋子が朗読した。
あなたに 聞いてもらいたい
あなたに 読んでもらいたい
あなたに 歌ってもらいたい
あなたに 信じてもらいたい
一本の鉛筆があれば
私は あなたへの愛を書く
一本の鉛筆があれば
戦争はいやだと 私は書く
あなたに 愛をおくりたい
あなたに 夢をおくりたい
あなたに 春をおくりたい
あなたに 世界をおくりたい
一枚のザラ紙があれば
私は子どもがほしいと書く
一枚のザラ紙があれば
あなたを返してと 私は書く
一本の鉛筆があれば
八月六日の朝と書く
一本の鉛筆があれば
人間のいのちと 私は書く
もうひとつの美空ひばりの意外は一面であった。
故石原裕次郎が生前最も尊敬した俳優が奈良岡朋子であった、という。充実した26分の番組であった。
まずはいまの大河ドラマ「篤姫」の最新放送の番組終了時の篤姫が船上にて故郷の鹿児島に別れを告げる場面で「生涯二度と故郷に帰ることはありませんでした」と運命の厳しさを伝え、場を盛り立てる抑揚を抑え、それでいて凛とした声がいかに録音されているか、をドキュメンタリーっぽく放送していた。まず、おさらいの読みで時間を計り、それが長いか、短いかを本番ではピタリと秒数におさめてしまう。長年の経験でまず狂うことはない、というから凄い。それも2秒短いから長くするために語尾を伸ばしたり、しなくとも自然と収まってしまう、という。本人は「カンでしかない」としか言わないが、長年培ってきた経験から生み出された職人技といわざるを得ないだろう。司会のNHKのアナウンサーはそうしたことに悩まされてきたのだろう、コツを伝授してもらおうと思ったのがあてが外れたせいもあって、本当に驚いた顔をしていたのが面白かった。
続いて、演劇の話に移り、劇団民芸で同期の大滝秀治と出演した舞台で酔っ払いを演じたのがうまいと誉めたら、奈良岡朋子は「私は飲めませんから、酔っ払いの酔っ払う姿をよく見ているんんです。本当の酔っ払いは自分の姿は見えませんから、演技できなんです」とさらりと言ってのけた。演技者の基本がここにある、と思った。酔っ払いに成りきるためにはよく観察して特徴なり、仕草を真似なくてはならない、酔っ払い以上に酔っ払いに見えるのは演技としかいえないだろう。
そして、奈良岡朋子は宝物として、薄汚れたトートバッグを取り出した。親友の故美空ひばりが「奇跡の人も公演を何回も見に来てくれた時にこのバッグに包帯とか、絆創膏、軟膏など応急薬品をつめてきてくれた、という。「奇跡の人」はヘレンケラーとサリバンが舞台で組んずほぐれつの取っ組み合いをして、傷だらけになる。それで軟膏などを楽屋に持ってきてくれたのだが、そんな人は初めてで感動した、という。わがまま放題の美空ひばりにそんな側面があったのか、と驚きもした。
最後にその美空ひばりが1973年の第1回「広島平和音楽祭」で歌った「一本の鉛筆」を奈良岡朋子が朗読した。
あなたに 聞いてもらいたい
あなたに 読んでもらいたい
あなたに 歌ってもらいたい
あなたに 信じてもらいたい
一本の鉛筆があれば
私は あなたへの愛を書く
一本の鉛筆があれば
戦争はいやだと 私は書く
あなたに 愛をおくりたい
あなたに 夢をおくりたい
あなたに 春をおくりたい
あなたに 世界をおくりたい
一枚のザラ紙があれば
私は子どもがほしいと書く
一枚のザラ紙があれば
あなたを返してと 私は書く
一本の鉛筆があれば
八月六日の朝と書く
一本の鉛筆があれば
人間のいのちと 私は書く
もうひとつの美空ひばりの意外は一面であった。
故石原裕次郎が生前最も尊敬した俳優が奈良岡朋子であった、という。充実した26分の番組であった。