ロシアの国をあげての組織的ドーピングは世界反ドーピング機関(WADA)の手によって明らかとされ、IOCはとりあえずロシアの陸上選手のリオ・オリンピック参加を認めないことを決めた。しかし、その後違反を犯していないロシア68選手の訴えを受けて、ロシア全選手の参加をも認めないこととするか、違反をしていない選手については参加を認めるか、IOCは緊急理事会を開いて決めることとしていた。とはいえ、一堂に会しての議論ではなく、電話による持ち回りの理事会開催となった。
で、出された結論が「見送り」となったわけで、これでは大方の納得を得るには至らないことだろう。IOCはこれまでもオリンピック開催国を決めるにあたって理事の幾人かが賄賂をもらっているとの疑惑を投げかけられており、その権威に揺らいでいる。オリンピック開催が多くの利権を生んでいる証拠でもあるが、体質的に公明正大なイメージが損なわれている。
IOC自体が公明正大な組織でないとすれば、そこが下す決定についても疑義が生じてくるのは避けられない。今回のロシア選手のドーピングについて結論を出すのを見送ったのは、自らその嫌疑について解明する能力を持っていないことが明らかとなった、と言わざるを得ない。スポーツ仲裁裁判所とIOCの関係がどうなっているものなのか、は定かではないが、近々にCASの裁定が下るので、それを待ってから結論を下すというのは自ら意思決定ができない組織であることを露呈したものということだろう。IOCは間近に迫ったリオ・オリンピックへの参加を目前にしてロシアに限らず派遣選手は一体どんな気持ちでいま臨んでいるのか、考えたことがあるのだろうか。そんな選手の心情を考えればこんな悠長なことはしていられないことは明らかである。利権にまみれたIOCは少なくとも選手のことには重きを置いていないことは明らかである。
いま日本は2020年の東京オリンピックへの準備に余念がなく、いまは5日から始まるリオ・オリンピックもそのための前哨戦といった感じで、すべては東京オリンピックへの助走として受け止められている。しかし、そのオリンピックの招致についても日本から賄賂を贈られたうえでの決定である、とささやかれているし、東京開催を決めたIOCそのものが肝心のことを自ら決められないどうしようもない組織となり果ててしまっている、ということを考えると、もうオリンピックに浮かれているのはやめにしたら、といった気持ちになってくる。
追記 早速21日夕にCASは世界陸連の「ロシア陸上選手のリオ・オリンピック出場を認めない」との決定を支持するとの発表を行った。これを受けてIOCはロシアの陸上以外の選手のリオ・オリンピック出場を認めるかどうかの決定を行うこととなる。しかし、なぜか24日に理事会を開くとしており、ここでも優柔不断ぶりがうかがえる。こんな結論が見えている決定をするのに3日もかかるのか、理解に苦しむ。ロシアが国がらみでドーピングを行ってきた事実はどう見ても有罪で、ここはロシア選手の出場を認めないのが筋といえるが、IOCはとてもそこまでの度量がなく、無様な結論を出すことだろう。