国民的大スターである高倉健が10日に亡くなっていたことが18日に明らかとなった。丁度、安倍首相の衆院解散会見と重なったが、翌19日の民放のワイドショーは解散にはひほとんど触れずに高倉健の回想に終始していた。TBSテレビなどは午前7時過ぎkらずっと高倉健のこれまでの足取りを含めた回想を流し続けており、午前8時から始まったフジ、テレ朝のワイドショーも冒頭から高倉健を流し続けた。大義なき解散について報道することなど少しも面白くない、と民放テレビの関係者はこぞって判断し、高倉健一色でいくことにしたのだろう。
とりわけ驚いたのは先週のAPEC首脳会議で習近平主席と安倍首相の会談を冷ややかに扱っていた中国の国営テレビが高倉健の死亡について、大々的に放送していたことだった。いつも日本のことを厳しい表情で報道する中国の洪磊報道官が穏やかな表情で「偉大なスターが亡くなって残念だ」と本当に哀悼の意を込めて報道していた。まるで中国では安倍首相より高倉健の方が人気が高いのだといわんばかりであった。いままで、日本人が亡くなって中国がこんな反応を見せたことがなかっただけに意外な感じがした。
高倉健はこれまで205本の映画に出演しているが、昨年文化勲章を受章した際に「これまで出演した映画のほとんどで前科者の役を演じてきたのに、こんな評価をしていただいていいのかな、と思っている」と語っていたのが印象に残っている。そして、「日本人に生まれてよかったと心底思っている」と受賞の喜びを語っていたのも高倉健の素朴な人柄を物語っていた。
フジテレビで報じていたが、映画人で文化勲章を受章したのは高倉健を含めてこれまで4人いるが、そのうち森繁久弥、森光子、そして高倉健の3人が奇しくも11月10日に亡くなっている、という。11月10日は文化勲章受章日の1週間後であり、たまたまというしかののだろうが、文化勲章は日本人が受賞するなかで最高位のもので、受賞することで心のなかでホッとしてしまうのではなかろうか。最高の位を登りつめれば、もうし残したことはない、と心身とも緩みが出てしまうのだろう。高倉健の場合は文化勲章を受章して丁度1年と1週間後だった。
高倉健は生前、お別れの会などしなくていいと言っていた、という。それでいて、密かに鎌倉の方だかに自らの墓を造っていた、という。フジテレビが報じていたその写真にはもうひとつ墓が用意されていた。その墓は江利チエミとの間にでき、流産した子どもの墓だ、という。それらの墓は40年以上前から手配していた、という。たった一人で40年余生きてきた高倉健にとって、その水子の魂が心の支えだったのかもしれない、と思わせられた。
追記 高倉健の人気にあやかってか、政府のなかに国民栄誉賞を授与しようとの声が上がってきた。森光子、森繁久弥にも与えているので、バランスをとったともいえるが、昨19日のマスコミ報道を見ていてそう思わざるを得なかったのだろう。総選挙モ-ドを一挙に変えてしまった高倉健の人気を改めて認識したのもさることながら、このままでは総選挙が極めて低調なものになってしまう、との危惧から出たは発想なのだろう。いくら策を弄しても、安倍首相の支持率が上向くことはないだろう。