鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

完全な自由を与えられて戸惑った人間の弱さを見せつけたかイプセンの「海の夫人」

2015-05-23 | Weblog

  23日は東京・初台の新国立劇場でノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの演劇「海の夫人」を観賞した。イプセンの劇は以前に同じ新国立劇場で「ヘッダ・ガーブレル」を観賞して以来で、自由奔放な生き方をする強い女性を描いた演劇で今回もそうかな、と思ってみていたら、意外と結末は平凡なものに落ち着き、ホッとした感は否めなかった。宝塚出身の麻実れいが主演したせいか、会場は女性が目立っていたようだった。あと会場は中央を真っ二つに割った舞台装置で両側に観客を背負った形での演技という形の造りだったのが斬新な感じを与えていた。

 「海の夫人」の舞台はノルウェーのフィヨルドを望む町の海を一望にする医者ヴァンゲルの家の庭で娘たちとなにかのお祝いの飾り付けを手伝う絵描きのシーンから始まる。そこへやってきた若者とヴァンゲル家の噂話に興じる。それによると、ヴァンゲル家の主人は3年前に灯台守の娘のエリーダと再婚したのだが、それで授かった赤ちゃんを失くしてしまい、以来エリーダは精神不安定で、毎日のように海に浸かっていて、周囲では「海の夫人」と言われている。それを気遣ってか、ヴァンゲルがエリーダの旧知の友人、アンホルムを自宅に招くことにした。

 ところが、やってきたアンホルムは夫人と打ち解けるよりもかつての教え子のポレッタと仲良くなってしまい、ヴァンゲルの思惑とは外れることとなってしまう。そして、もうひとりの娘ヒルデは若者と仲良くなってしまう。ところが、その若者はある日、かつて乗船した船の船長が殺された現場に遭遇した話を始め、その時に行方不明となった男がいたことを打ち明ける。それを聞いていたエリーダはその行方不明だった男がかつて愛を誓った男だったことを知り、異様に気持ちを掻き立てられる。それを不審に思ったヴァンゲルはエリーダにその理由を攻め立て、遂に愛していないことを告白されるに至る。

 そうした折り、英国船が港に入った日の夜にエリーダのもとにフリーマンなる男が現われ、かつての約束を果たしに来た、と言い、一緒に船に乗って行こう、という。そのフリーマンこそエリーダが3年前に愛を誓った男で、以来ずっと姿を消していた男だった。その約束を果たしに来たと言い、明日の同じ時刻に再びここへ来るから、それまでに気持ちを固めておけ、と言い置いて立ち去る。エリーダは直ちに部屋に立ち籠り、思案にふけることとなる。で、この3年間が全くの無駄な時間であったことを悟り、家を出ていくことを決意するに至る。

 イプセンの「人形の家」で主人公のノラは自由を求めて家出するので、エリーダもフリーマンに付いていくのかな、と思ってみていたら、翌日にやってきたフリーマンの前で、ヴァンゲルがエリーダに対して「離婚を認める。自由にしていい」と言うのを聞いたエリーダは突如、フリーマンに対し、「付いていかない」と言って突き放し、」フリーマンは1人で船に戻っていき、ヴァンゲルとエリーダは歩み寄って抱き合うシーンで幕となった。意外と穏当な結末となったわけでイプセンも実は保守的な側面を持っていたことが明らかとなった。もっともエリーダは完全な自由を与えられて、その自由に戸惑ったともとれなくもなく、ある意味で人間の弱さを見せつけたといえなくもなさそうだ。

 

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離着陸時の安全性に問題あるオスプレイを自衛隊が17機も導入するのには異議あり

2015-05-08 | Weblog

 7日付けの各紙夕刊を見て驚いた。ワシントン発で「米国防安全保障協力局(DSCA)が垂直離着陸輸送機V22オスプレイ17機や関連装備を推計17億ドル(約3600億円)で日本に売却する方針を米議会に通知した」と報道sれていたからだ。オスプレイについてはここ1、2年米軍が日本に持ち込んできて各地で飛行を重ねてきているが、米国内で離着陸時に事故が続出しており、安全性をめぐって議論が起きていて、まだ決着がついていなかった、と思っていたからである。だから日本でのオスプレイの飛行については国内の米軍基地があるところでは飛行に対し周辺住民の反対運動が起きていたはずである。

 なのに突然、日本の自衛隊がオスプレイ17機を米国から購入するといわれたのでは、これまでの日本政府、および米軍の対応とあまりにもかけ離れた振る舞いで、住民の意思のみならず世論を無視した決定である。まさか、米軍が現在使用しているオスプレイをそのまま日本の自衛隊が譲り受けることになるのではなく、新たに製造された機種を導入することになるのだろうが、そのあたりについて政府の説明も十分には果たされていない。

 新聞の報道によると、日本政府は米国に対しオスプレイ本体のほか、エンジンや赤外線前方監視装置、ミサイル警戒システムなどの売却を求めてきた、という。また、DSCAは今回のオスプレイの購入で日本の自衛隊は人道支援・災害救助能力などを大きく向上させることになり、日本の自衛力の維持・向上を支援することは米国の国益のよってきわめて重要だ、としている、と説明している。

 日本政府は2014年度から5年間の「中期防衛力整備計画」で2018年度までにオスプレイ17機を陸上自衛隊に配備する方針を表明している。ただ、このオスプレイ17機の購入が本年度の予算に計上されているのかどうかは明らかではないし、これまで国会の審議の対象になったのか記憶にはない。今回、安倍首相が日本は米国の飼い犬になりますといった姿勢で訪米し、オバマ大統領と会談したなかで話し合われたのかどうかも定かではない。

 オスプレイの購入価格は付属装置がついているにしても1機当たり211億円強とヘリコプター1機にしては異常に高い価格である。しかも米軍基地周辺の住民が問題視したオスプレイの離着陸時の安全性について立証されたわけだなく、安全飛行だと断言できる段階には至っていない。なのに既成事実のように日本の自衛隊が導入を決めた、というのはどう考えてもおかしなことである。国会でそのあたりを十分に説明したうえで、国会の承認を得てから発表するべきではなかろうか。

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日本橋高島屋のすきやばし次郎での記念の会食が意外な思い出となった

2015-05-05 | Weblog

  今日5月5日は鈍想愚感子の結婚記念日であり、毎年かみさんと記念日らしいことをして過ごすことにしている。今年はかみさんが美味しい寿司を食べたい、と言っていたので、まず前々からいつか行こうと思っていた日本橋高島屋4階にある「すきやばし次郎」に行くことにした。「すきやばし次郎」はミシュランのレストランガイドで3ツ星にランクされていたし、昨年オバマ米大統領が来日した際に安倍首相と会食したお店で、本店の数寄屋橋店はとても敷居が高いので、高島屋店なら気軽に行くことができる、と思っていた。

 で、昼少し前にお店に行ってみると、入口前に椅子席におばあさんが1人客待ちをしていた。店先に立てかけてあったメニューを見ると、その横に座って以前に覚えていた値段から若干安くなっていたので、どうしてかな、と思っていたら、店員がやってきて、「今日は市場が休みなので、魚が揃わなくてメニュー通りにはお出しできない。にぎりで、しかもごく限られたネタしかない、おまかせとなります」という。しかし、結婚記念日で食べにきた手前、そんなことで引き返すわけにはいかず、「構わない」といって座って待っていた。しばらく待っていると、同じように来た母娘の2人連れは「ネタがない」との説明を聞いて帰ってしまった。

 そうこうするうちに店内に案内され、席につくともうお茶とおしぼりがテーブルの上にセットされていた。メニューもなく、注文を聞かれることもなく、本当に「おまかせ」で、ほどなくにぎり2人前が運ばれてきた。鉄火巻きとまぐろ、いか、玉子焼きと本当に限られたネタしかない、「おまかせ」の握りであった。かみさんはさっと食べてしまい、いつもは早く食べる当方はゆっくりと味わって箸を運んだ。これがすきやばし次郎の味なのか、と考えながら食したが、正直こんなものか、という味だった。鈍想愚感子はことお寿司をそんな沢山のお店で食べているわけではないし、どちらかと言えば味に関しては音痴な方なので、評価できるわけではない。

 家に帰ってかみさんに改めて「次郎は美味しかったか」と聞いたら、「イエス。感激した。また、美味しいところへ行こうね」と言ってくれた。少なくともかみさんがこれだけ喜んでくれたのだから、なにはともあれ次郎へ行ったのは大正解で、それだけでも行ったかいがあったということになり、胸のつかえが下りた感じがして、救われた思いがした。

 もちろん、すきやばし次郎に足を踏み入れたのは初めてのことで、前回は店先を通ってチラリと中を窺っただけである。今回は店内のカウンターには3人の職人さんがおり、カウンター内に洗い役の女性がいて、店の大きさの割りには重厚な布陣ぶりである、と思った。お店を出た後に8階の催し場へ行き、京都の老舗の物産展を覗いたところ、以前はすきやばし次郎の奥にあった特別食堂が移動してきていたのを発見した。つまり、すきやばし次郎だけが4階に残されたわけで、そのことがすきやばし次郎の経営戦略の変化をもたらしたようで、価格が若干下がったのもそのあたりに理由がありそうに思えた。まさか、築地市場がお休みなので、今日だけ価格を下げたのではない、と思った。いずれにしろ、結婚記念日のイベントが意外な形となったことだけは確かで、却って忘れられない思い出となった。

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