鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

ATM機に置き忘れた50万円の行方をめぐっての”寒い”としか言いようのない民事裁判でした

2017-04-27 | Weblog
 26日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午後2時から625号法廷での老女が老女に対して損害賠償請求している民事裁判を傍聴した。まず証言台に立った原告が代理人の質問に答える形で、一昨年の夏に東京・巣鴨の巣鴨信用金庫本店で、ATMから現金100万円を引き出そうとして、操作した後にカバンの中に判子があるのを知り、途中で操作を終了し、窓口に向かい通帳から100万円を下ろそうとしたら、すでに50万円がATMから引き出されていることを知り、戻って確認したところ、どこにもなかった、と申し立てた。どうやら、あとからATM機に近づいてきた被告が盗んだとして訴えたようだった。

 原告は最初に窓口に行き、判子がないと思ってATMから50万円づつ2回にわたって現金を引き出そうとし、最初の50万円を引き出す操作の途中で、窓口に行ってしまった、という。操作のどの段階で去ったのか記憶になく、とにかくストップし、出てきた通知書の中身も見ずに去ってしまったようだ。直ちに銀行側に届け出て、係員と無くなった50万円の行方を探しまわったが、どこからも出てこなかった、ともいう。その後、巣鴨警察にも届け出たが、警察からは「事件性はない」といわれた、という。そして、被告の所在を知り、無くなった50万円と慰謝料10万円あわせて60万円の損害賠償を求めて起訴するに至った。原告への尋問ではいかなるプロセスで被告の存在を突き止めたかについては明らかにされなかった。

 続いて証言台に立った被告は原告が立ち去った後にATM機の前に立ち、娘さんから預かったお金を入金したあと、自らの通帳に記帳した、と証言した。その前後に「ATM機からは何の異常な音もしなかったし、お金も見ていな。見ていれば係員に届けている」と語った。被告は一人暮らしで、2カ月に27万円の年金をもらっていて、不足があれば娘さんから援助してもらっていて、お金に困っているわけではない、とも語った。事件後、2カ月経ってから警察から事情を聞かれたが、同じことを伝えた、という。そして「犯罪者扱いされて寝不足になり、血圧も上がって、悲しい思いをしている」とも訴えた。

 原告側は最後に「原告がATM機から立ち去った直後に防犯カメラに被告が映っていて、時間的にあなたしか盗れる人はいない。本当に盗んでいないか」と被告を追及したが、被告は「そんなことはしていない」とキッパリと否定した。ずっとなぜ被告の特定ができたのかと疑問に思っていたので、納得した思いはしたものの、ここは刑事裁判の場ではないので、それ以上のきわどい追及はなかった。

 肝心のこの質問時の被告の表情については背後から想像するしかないので、真偽のほどはなんともいえない。事件そのものは単純なものだが、警察が取り上げるに至っていない事件の損害賠償を請求するにはやや無理があるような感じがした。だからか、裁判長は尋問が終わるや否や普通やるような原告被告双方に和解を求めることもなく、いきなり判決日時を決定した。十中八九棄却となるのではなかろうか。傍聴席には被告側に娘さんと思われる親族が2人いただけの寒いとしか言いようのない裁判でもあった。
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安倍首相が国会でみずから「安倍政権は……」と語るのには何か違和感を感じて仕方がない

2017-04-25 | Weblog
 24日川崎市中原区でのかわさき市民アカデミーの市民講座「メディアの危機」で講師の今西光男メディアウオッチ100代表が当面する北朝鮮の核問題について「この先どうなるかわからないものの」と前置きしたうえで、「いまの朝鮮の状況を見る限り核戦争になるような兆しはない」と断言した。にもかかわらず安倍首相はトランプ米大統領と今月だけでも3回目となる電話会談を24日も行い、国民の危機意識を盛り立てるのにやっきとなっている。あたかも足元の火の子であった森友学園問題や閣僚はじめ政府要人の不祥事を振り払おうとしているようにみえて仕方がない。

 北朝鮮は25日に人民軍創建85周年の記念日を迎え、核ミサイル発射などの威嚇活動を起こすのではないか、とテレビ、マスコミ各社は騒ぎたてている。こうした状況を眺めて、今西代表は「それにしてはトランプ米大統領は韓国に駐留する1万3000人の軍、ならびに10万人になる韓国にいる米人に対してなんら避難命令を発していないし、ペンス副大統領、ティラーソン国務長官の主要3役のうち2人が米国を抜け出しているのは理解できない」と語る。確かに口では北朝鮮の核ミサイルの脅威を語り、北朝鮮に対する制裁の強化などを進めるように強調しているが、だからといって万全の核ミサイル投射への備えをしているわけではないようだ。

 具体的に北朝鮮の核ミサイルが果たして日本まで届き、ねらった施設を的確に攻撃できるものなのか、よくわからない。石破茂前政調会長が23日のTBSの時事放談で「日本の要所には核迎撃装置のPAC3などが配備されていて、一応の体制は整えているが、日本全土を隈なくカバーしているわけではない。外気から隔絶した閉じられた空間
なりに避難するのが一番だ」と語っていたが、いま現在、北朝鮮からミサイルが飛んできたら、なんの防備体制を敷いているわけではなく、そのもたらす被害は計り知れないところがある。本当に北朝鮮のミサイルが飛んでくるのなら、市町村なりから市民に避難の場所なり、方法なりを伝えられて然るべきだろう。それがない限り、マスコミがいくら騒いでも市民が肌で危機を感じることにはならないだろう。

 ということは政府は北朝鮮から実際に核ミサイルが飛んでくるような事態にはならない、との確信があるのだろう。日本自体には100%安全との確信はないにしても心の底では米国がなんとかしてくれる、との妄信めいたものがあるのだろう。安倍首相もそんな妄信を抱いている一人といえるだろう。安倍首相としてはこれを機会に森友学園への国有地払下げ問題をきっかけに昭恵夫人をも巻き込んでの火がついたスキャンダルの沈火を図り、さらには中川俊直前経産政務官の辞任や稲田防衛相らの迷走ぶりで国民に広がる内閣への不信を一掃したい、との思いがあるのだろう。

 安倍首相の頭の中には本気でこの日本を安全で安心な国にしたい、との思いなどさらさらないのだろう。ただ、考えているのは一日でも長く総理大臣を続けていきたい、との己の欲だけなのだろう。そう思って安倍首相の言う言葉を聞いているとよく理解できる。その場その場で辻褄合わせをすることしか考えていないし、国会の委員会での答弁を見ていても少しでも自分の気に入らない質問をされるとキレて、声を荒げたり、怒りを表情に表す。「安倍1強」と言われるが、それをもたらしたのは小選挙区制で安倍首相が優れたリーダーだからというわけでは決してない。

 前から気になっていたことだが、安倍首相は国会や記者会見で政権の取っている施策のことを聞かれた際に答えて、「安倍政権では……」と言う。聞いていてなにか違和感がしてならない。過去に首相自らが自己の政権のことを
「〇〇政権は……」というのを聞いたことがない。自らの名前を頭につけて「〇〇首相は……」とか「〇〇社長は……」というのはどこか何も知らない甘えん坊の成り上がりの言としか聞こえない。まだ「わが政権は…」とか、「私の政権では…」というのが普通ではないだろうか。育ちというか、教育のされ方がでてくるのだろう。いつか安倍首相が原稿の「云々」の部分を「でんでん」と高らかに読み上げたのと同じである。これらの事実はいまこそ安倍首相の資質が問われる時期であることを明確に示している、と思う。
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トルコにハイブリッドのディーゼル燃料製造装置を輸出したものの実用化とはならなかった理由は?

2017-04-19 | Weblog
 19日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午後1時15分から631号法廷でのKNC石油なるトルコの企業が日本のオービット・エナジー・ジャパンなる会社を相手どって損害賠償請求している裁判を傍聴した。原告席の近くにはトルコ人が数人陣取り、そのなかから責任者ムスタファと名乗るトルコ人が証人席に座り、弁護士の尋問に答える形で証言を始めた。通訳を介して「5年前に被告会社のディーゼル燃料を製造する機械を購入したが、触れ込み通りに設置して稼働させたが、全く動かなかった」と申し立てた。

 なんでも50%の水と50%の油、それに秘密の原料を混ぜるとハイブリッドのディーゼル燃料ができる筈で、日本から技術者らが4人ばかり来て、装置を作ってくれた。代金の2万5000ドルを支払い、4人の滞在費や設置のための費用を現金で手渡した、という。試運転まではうまくいったようだったが、日本からの技術者が引き上げた後に本格稼働に入ったら、ディ-ゼル燃料どころか、石油製品とはいえないものしかできなかった、という。そもそも両社の間に入った通訳が機能したのかが不分明で、製造の原理や仕組みについて両社間できちんとした了解ができていたのか、が問われるような状況となってきた。そのあたりは解明されないまま、原告側の証人の証言は終わり、ここで、傍聴席にいたトルコのKNC石油の一行は証人を終えたムスタファ氏ともども引き揚げてしまい、裁判は代理人の弁護士任せとなってしまう展開となった。

 続いて被告会社の代表者が証人に立ち、KNC石油との交渉の経過を証言し、原告側が秘密の原料と言った物質は触媒であることを明かし、このプロジェクトはトルコでディーゼル燃料を生産するについて、その触媒をどこで調達するか決まっていなかった、と明かし、「いまに至るまで実現していない」と語った。売買代金も2万5000ドルをもらっただけで、全額を払ってもらっていない、とも語った。もともとこの技術を開発したのは7年前で、いまに至るまで理論通りに生産しているのは国内でも1社しか稼働していない、という。海外ではトルコへの輸出だけで、うまくいけばマレーシア、パキスタンへも輸出する計画だった、という。肝心の触媒をどうするのか、両者間で詰めていなかったのは解せない話ではある。

 裁判ではこの技術そのものに踏み込んだ質問がなされなかったようなので、言い切るのは難しいが、聞いている限り、被告のハイブリッド燃料製造装置は廃油の再生技術に毛の生えた程度のもので、大々的に海外へ輸出と言い切れるようなものではないとの印象を受けた。原告のKNC石油ももともとはトルコで病院経営をしている企業のようで、石油にノウハウがあるわけでなく事業の多角化を図るねらいで、オービット・エナジー・ジャパンと提携したようだった。だから、赤子の手をひねられるような形でまんまと話に乗っかったのだろう。ただ、ここは民事裁判なので、被告の非を認めるようなことで、原告が支払った2万5000ドルのうちなにがしかを戻すようなことで決着するのではなかろうか、と思った。
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戦争の悲惨さをリアルに訴えている安部公房原作の演劇「城塞」は見ごたえがあった

2017-04-16 | Weblog
 15日は東京・初台の新国立劇場で安部公房原作の演劇「城塞」を観賞した。つい数か月前にその作品を読んだばかりなのに全然覚えていなくて戦争を批判した演劇としか思っていなかったが、どうしてどうして戦争をテーマとしているものの戦争によって捻じ曲げられた人間の悲喜劇を扱った演劇で、面白く観賞できた。出演は山西惇、辻萬長ら5人に過ぎないが、それを感じさせない熱演ぶりでたっぷり2時間大いに楽しませてもらった。
 
 「城塞」は中国の満州に位置する都市の街を見下ろす日本人実業家の豪邸の広間に天井から吊るされた死刑囚の男が日本が満州で展開してきた戦争を起こしたことについて罪に問われ、国の行うことに従っただけだ、と答える。場面は一転して、その広間の地下に設けられた居室に実業家、和彦の父が閉じ込めらている。外に飛行機の音が聞こえてくると、従僕がその父を引き上げて、息子の和彦に早く逃げ出すことを迫る。ところが、和彦は「母と妹を置いていくのか」と父をなじり、抵抗し、妹を説得することを迫る。父は「2人分しか座席を確保していない」と怒り、妹を呼びつけて現地に踏みとどまるよう説得する。そうこうするうちに妹は毒を飲んでしまい、家には中国の暴徒が押し寄せてきて、たまらず父は再び地下に潜り込んでしまう。

 どうやら、これは和彦が仕組んだドラマで、気の触れた父の精神を宥めるために過去10数年ずっと行ってきたことだった。そんな和彦の行いを耐えきれない妻は早く父を精神病院送りにしなさいと言ってきかず、夫も父同様の精神病者であり、禁治産者として訴え、財産を自らのものとしてしまう、と脅しにかかってきた。和彦は父の起こした事業を引き継いでさらに財産を築きあげてきたのをみすみす取り上げられてしまうのも業腹で、なんとか思いとどまらせようとするが、うまくいかず結局、父を精神病院送りにすることに同意する。

 そして最後に父にもう一度だけいつもの避難騒動のドラマを仕掛けるが、そこでいままでにないことを仕掛ける。というのはいままで行ってきたのはすべて嘘っぱちで、すべてが仕組まれたものだった、と打ち明ける。そして今回は妻がどうしても父を精神病院送りにしないと禁治産者にする、と言って脅してきたのだ、とも打ち明け、妹役をやらしていた踊り子に裸になっておどることを命令する。たまらず父は「休ませてくれ」といって気絶しかかる。和彦はそんな父に向って「壊れてしまえ」と絶叫して幕となる。

 戦争で日本のために尽くしてきた人々が最後にはこうして壊れてしまう姿を安倍公房は悲喜劇としてとらえ、戦争の悲惨さを訴えているのだろうか。憲法に改悪し、一路戦争に邁進しようとしている安倍首相にこそこの「城塞」を観賞して自らの執っている施策について反省してもらいたいものだ。同日のその時間、安倍首相は新宿御苑で花見をしていたようだが、そんな演劇が行われているとはつゆも知らないことだろう。
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なぜ日本のマスコミは週刊新潮誌の「安倍昭恵夫人のスキャンダル」報道を無視し続けるのか

2017-04-14 | Weblog
 週刊新潮誌がこの2週間、4月13号と4月20日号連続で巻頭特集で安倍首相の昭恵夫人の異常な付き合いを掲載している。見出しは「安倍昭恵と大麻」、「安倍昭恵」と反社会勢力といったもので、読者にはまるで昭恵夫人は極悪犯であると訴えているかのような報道ぶりである。籠池泰憲氏が国会証人に喚問されているのに100万円を渡したとされる昭恵夫人が直接には一切の釈明をしていないし、安倍首相が「妻は私人である」といっているのに週刊新潮誌は大きく反証を唱えているかのようでもある。
 
 週刊新潮誌の記事は昭恵夫人がこれまで大麻およびそれを所持した人らと大っぴらに付き合い、あまつさえ大麻を取り戻すと訴えていることをあからさまに伝えている。さらに自ら経営する酒場とゲストハウスの設立、運営に関して反社会的勢力と関わり合いを持ったと細かく伝えている。これらの記事は週刊新潮の発売日の7日、14日の新聞各紙に広告が掲載されるので、たとえ当該記事を読んでいなくとも多くの国民には意は伝わっている、と思われる。ところが、これだけ大きく報道されているにも拘わらず、普通ならテレビや新聞が取り上げるのが通例なのに、全くの無視である。

 おそらく一強の安倍首相の意向を忖度して、静観の構えを取っているのであろう。いまのマスコミは朝日新聞といえども安倍首相の意向に逆らって報道するような姿勢をみせるようものなら、つまはじきに遭ってしまう、という懸念があるから、おいそれとは取り扱わないのだろう。ネット社会でも一切とりあげるようなことをしていない。表に現れる限りのネット社会では従来は有名人の滑った転んだ類の消息にはあれこれ取りざたするのに沈黙を守ったままである。ここでも安倍首相、ないしその周辺からの反撃を恐れてか、一般の人には伝わらないごく一部のウラネットの世界でしかやりとりされていないようである。

 当の安倍首相、ないしその周辺も何の反応を見せていない。反応するに足らない記事だと」して無視と決め込んでいるのかもしれない。首相官邸も無視するのが最善の策としているのかもしれない。しかし、仮に週刊新潮誌がありえないことを書いているのなら、出版社を相手どって名誉棄損ででも告訴したらいいのにと思われるのに、そうした動きにも出ていない。裁判沙汰になって昭恵夫人が法廷に引っ張り出されるのを恐れている、とも考えられる。

 冷静に見て、書かれた本人はなんらかの反応を公表すべきだろう。籠池氏が国会で「100万円を授受した」と証言した際にはネットで反論したようなことでもすべきだろうが、一切無視している。こんなことでは恐らく事実は当たっているのだろう、と一般に思われても仕方ないことだろう。そういえば、昨日あたりテレビで見る安倍首相の表情は虚ろである。対外的には何の影響もないとしても心の中では「愚妻を持ったせいでこんな目に」とでも思っているに違いないし、じわじわと精神を蝕んでいくことだろう。先月の籠氏の国会池喚問時には離婚か、4月解散かで迷っていただろうが、いまはどんな心境なのだろうか。こんな精神状態で海外の首脳と会談してもきっと足元を見透かされてしまうことだろう。

 一週刊誌が一国の首相の夫人がこんなスキャンダルを抱えている、と報じているのに国内の一切のマスコミが無視しているのはいくら国内が北朝鮮問題で揺れているとしても異常な状態ではなかろうか。日本のマスコミが安倍首相の意のままに動いてきたことの何よりの証明ではなかろうか。本当に日本のマスコミは死にかかっている、といっても過言ではないだろう。

 
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通り一遍に帰宅を促すのではなく、いまこそ被災者の心に寄り沿った施策が求められる

2017-04-12 | Weblog
 12日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午前10時15分から626号法廷での福島県小高町(現南相馬市)の住民が東京電力に対して福島原発で蒙った損害賠償を請求する民事訴訟を傍聴した。先月17日に同じく福島県から群馬県に避難した45世帯が国と東京電力に対して損害賠償請求する裁判で前橋地裁の原道子裁判長が国と東電に対し、国がこの津波を予見できたのに東電に対策を求めなかったとして3853万円の賠償を命じた判決を下した以来のもので、さらに原告側の代理人に長島一茂の名誉棄損裁判を勝利に導いた弘中惇一郎弁護士が加わっているとあって注目の証人尋問であった。

 まず証人に立った南相馬市の仮設住宅に住む老人は弘中弁護士の尋問に答える形で母を原発被害で亡くした経緯を語り、奥さんの母親も新潟で亡くなったし、自身も持病の糖尿病に加えストレス、運動不足、栄養障害で身体が思うように動かない状態である、と訴えた。30年来、地元の少年野球の指導者を務めてきたふが、いまは肝心の子供たちがいなくなり、休部状態だ、という。長男家族は成田に2世帯が住める住宅をみんなで資金を持ち寄り、ローンを組んで立て、もはや小高に帰ってくる気持ちはない、と断言した。「子供たちの将来を考えれば、もうこの地区には住めない」という。

 続いて商人に立った福島原発の下請け作業をしていた男性は事故で仕事もなくなってしまった、という。父親は双葉町の特別養護老人ホームにいたが、消息不明となり、3週間経って消息がわかった。母親は3年前に悪性リンパ腫で亡くなったが、はんの1週間前に悪性リンパ腫であることが判明した、という。父親も半年前に肺炎をこじらせて亡くなってしまった。いずれも原発被害がなければ死ぬようなことはなかった、と思える、と強調していたのが印象的だった。

 さらに証人に立った60代の女性は日立化成の関連会社に勤めていたが、従業員がほとんど帰宅困難者となり、会社も自然消滅で失職した。いずれは夫とともに全国に販売できる米と野菜を作ることを夢としてきたが、いまでは風評被害で全くその夢を絶たれた、と述懐した。母親は震災後亡くなったが、以前に病んでいた十二指腸狭窄は快癒していたのに突如胆管癌になった、という。長男夫婦は茨城県に引っ越したが、2人の孫ともいじめにあってか、不登校状態となった。このこともあって、長男夫婦はもう小高に戻ってくることは決して考えようとしない、という。小高の家は地震、津波だけだったら修復できただろうが、放射能汚染で東電が屋根にかけてあった土嚢を外してブルーシートをかけたせいで、天井は崩れるわ、畳からキノコが生えてくるわ、柱はネズミが食うわでがたがたになってしまい、もう住めるような状態であんくなってしまった、と嘆いた。

 これで午前中の尋問は終わったが、今回の証人尋問で明らかとなったのは被災者のお孫さんが暮らしている各地でいじめにあっていて、それが2度と被災地には戻らないという気持ちにさせていることだ。いくら政府が被災者に帰宅を促しても被災者は孫や子供の将来を考えるととてもそんな気持ちになれない、という現実が改めて実感された。政府も通り一遍の帰宅を促す政策を取るのではなく、真に被災者の心に寄り添った施策を講じることが求められよう。

 
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