鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

容貌で選ばれた?芥川賞「乳と卵」

2008-02-09 | Weblog
 文芸春秋3月号に第138回芥川賞を受賞した川上未映子の「乳と卵」が載っている。年2回の恒例のもので、今回の受賞者はクラブホステスや書店員、歯科助手など様々な職業を経験したあと歌手になっている30歳そこそこのいわゆる売れないタレントで、写真を見る限り美人の部類に入る話題性十分の御仁である。選考委員9人のうちの4人の女性作家のいずれもが推しているのは当然としても、作品を読んでもなぜこれが芥川賞受賞なのか、もうひとつピンとこない。
 「乳と卵」は東京に住む主人公のアパートへ大阪から姉と姪が学校の夏休みの3日間、転がり込んでくるところから始まる。姉は豊胸手術をするために上京したのだが、久し振りに見る姉は縮んで、髪もパーマかかって精気がなく、化粧の乗りもよくなく異星人のよう。おまけに姪はフラミンゴのようで、丁度生理が始まったばかりの微妙な時期で、姉とコミュニケーションがとれてないままに連れてこられた感じ。で、3人の奇妙な共同生活が1人称の形で綴られている。
 そして、間に姪の告白が手紙に書かれた文体で綴られているが、いずれもベタで書きなぐられているので、読むのに一苦労する。主人公が姉と銭湯へいく件は女湯での女性の生態をあれこれ描写していて面白いといえば面白いが、なにやら猟奇趣味すら覚えてきて、あまりいい感じがしない。
 結局、3日経って、2人は大阪へ帰っていくところで終わるが、なんということのない共同生活を綴っただけで、なぜこの作品が芥川賞なのか、よくわからない。川上弘美ら女流作家は絶賛しているが、女性には通じる感性を描いている、とでもいうのだろうか。同じ選考委員の石原慎太郎は少しも評価していないところを見ると、女性にしか理解できないものがあるのかもしれない。
 川上未映子のインタビュー記事も載っていて、それんみよると「育った家には一冊も本がなかった」というから、いままでの常識にはかからない作家なのかもしれない。それでも高校の時にカントやニーチェを読んだし、故池田昌子さんの本も好きだというから、全くの型破りの新人ではなさそうである。
 ただ、この「乳と卵」は文芸春秋の缶詰にされて20時間で書き上げたというし、芥川賞発表の直前に文芸春秋に呼ばれていることから、出来レースではないか、と思われても仕方ないだろう。
 それにしても年2回の芥川賞はもう止めてもいいのではないだろうか。せいぜい年1回でいい、と思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする