鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

ビル・ゲイツの経営に狂いが出た

2008-02-02 | Weblog
 米マイクロソフトは1日、総額4兆7500億円を投じてヤフーに買収を提案した、と発表した。1日夜にこのニュースを聞いた時には誤報ではないか、と疑ったが、2日付け朝刊は1面トップで報じており、どうやら本物のようである。自動車業界で言えば、トヨタ自動車が日産自動車に買収提案をかけるようなもので、企業経営の常識から考えられないことである。天才ビル・ゲイツに一体何が起きているのだろうか。いかにも米国の企業らしいやり方とはいえるが、技術の最先端分野でこんなことがまかり通るようでは真面目に企業経営に取り組もうという企業家スピリットが損なわれることになりはしないか、心配になってくる。
 世界最大のソフトウェア会社、マイクロソフトとヤフーは06年から07年にかけて複数回にわたり経営統合を含む提携について協議してきたが、合意には至らなかった。ヤフーは最近の業績低下で07年6月に創業者のジェリー・ヤン氏をCEOに戻して経営改革に取り組み、独力で業績向上を図ることができるとしてマイクロソフトの呼びかけを拒否してきたからだ。しかし、環境は好転していない、として、マイクロソフトは今回、買収提案に踏み切った。
 その内容は現金と株式を組み合わせて、ヤフー株1株を31ドルで取得しよう、というもので、前日の終値を62%上回る。1日の株式市場でヤフー株は一時、前日比50%以上急騰した、という。
 マイクロソフトがこの買収でねらっているのは米ネット市場での広告シェアのアップで、米国ではトップのグーグルを追撃したい構え。ネット広告市場は07年の約400億ドルから10年には800億ドルに急拡大すると見られており、グーグルだけがその恩恵に預かっている、とされている。
 年間売上高ではマイクロソフトの511億ドルに対してグーグルは165億ドルだが、時価総額ではマイクロソフトの3034億ドルに対しグーグルは1765億ドルとその差は急速に近づいている。このままいくといずれ、グーグルに抜かれてしまうことにもなりかねない。とりわけネット広告を左右するインターネット検索サービスの分野ではグーグルは世界のシェアの60.8%を抑えており、ヤフーの14%、マイクロソフトの3.6%を圧倒的に上回っている。しかもネット広告ではヤフー、マイクロソフトとも利益を生むには至っておらず、グーグルの1人勝ちの状態となっている。
 だから、買収に踏み切ったわけだが、IT分野の王者、マイクロソフトとしてはなんともお粗末な戦略である。お金を投じればなんでもできる、と思うのはあのホリエモンと同じ発想ではないだろうか。WINDOWSで世界一のソフトウェア会社を築き上げたビル・ゲイツ会長にしてはがっかりの戦略である。
 パソコンソフトの技術とネットの技術が同じものではないことは素人にもわかるが、技術の世界のことは技術開発で追いつくような努力をしてほしい。かつてIBMが大型コンピュータのソフトウェアがあまりにも巨大なものになり、開発にお金がかかり過ぎるようになり、自縄自縛に陥ってしまい、結局パソコンに負けてしまったと同じことがマイクロソフトの社内にも起きているのだろうか。それともWINDOWSの次ぎの成長商品を開発できない状況になってしまっているのか、推測の域を出ないが、成長企業によくみられる現象ではある。
 はっきりしているのはこの買収提案が企業経営の正攻法ではない、ということだ。米司法省も独禁法上、問題がないかどうかの検討に入った、というから、マイクロソフトの思わぬ盲点から横やりが入って、無効とされる可能性もある。

追記 この買収決定から約3カ月経った5月4日(日本時間)になって、マイクロソフトはヤフー買収を断念した。ヤフーの同意が得られなかったためだが、仮に買収しても思うような成果が得られたか、どうか疑わしい。仮に買収が実現しても、ヤフーから頭脳が流出してしまって、カスみたいな会社になることは避けられなかったことだろう。マイクロソフトにとって自力でグーグルを追撃するしかない、と改めて決意することになり、断念してよかっただろう。ただ、こんな愚策の発表を止められなかった経営陣がふがいない。
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