鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

求められる「出版の品格」

2008-02-14 | Weblog
 13日、紀伊国屋書店の新宿本店の新書の週間ベストセラーが明らかとなったが、ベストテンのなかに、第4位に坂東真理子著の「女性の品格」(PHP研究所刊)、第5位に阿川弘之著の「大人の見識」(新潮社刊)、第7位に坂東真理子著の「親に品格」(PHP研究所刊)と同じような傾向のものがランクインしている。10年連続で市場が縮小している出版業界の状況を象徴しているといえようが、基本のあるべき姿が見失われている現代日本を浮き彫りにしている、とも思えてくる。
 現代はあるべき規範のない、船でいえば羅針盤、もしくは海図のない大海を彷徨っているような時代といえる。社会の指導者ともいえる政治家、官僚、教師。警官、教授、お坊さんが次ぎから次ぎへと不祥事を起こし、だれの言動を信用していいのか、わからない状況となっている。新聞・テレビでは毎日のように親子、夫婦の間の殺人事件が報道されており、これから育つべき子供にまともな生き方を教えるべき人がいなくなってしまった。
 その象徴だったのが、「自民党をぶっつぶす」といって首相になった小泉純一郎元首相で、無手勝流の場当たり手法で政治の世界をひッかき回し、心ある人に日本は一体どうなってしまうのだろうか、との不安を抱かせた。そんな折りにお茶の水大の藤原正彦教授が新書「国家の品格」を書き、世に大きく受け入れられることとなった。ビジョンも哲学もなく政治に取り組んでいる小泉元首相の姿勢を痛烈に批判した同署は新書としては記録的な300万部前後の売れ行きを示した。
 これに着目した出版業界人は柳の下にドジョウが2匹いる、とばかりに同工異曲の本を出版し始めた。なんとかの品格やら、なんとかの常識、見識、挙句の果てには城山三郎の「男子の本懐」をもじって「女子の本懐」(小池百合子著)なるものも出版されるに及んでは行き過ぎの感は否めない。
 出版業界は市場は縮小しているのに出版点数は逆に増えている、という。過当競争の体質はますます強まっている、ということなのだろう。他社が当てれば、うちもといった気風が改まらない限り、自らの首を締めることになることだろう。他社がやらないオリジネルなものを出版する、という本来の出版の姿がいまこそ望まれている。
 出版人こそみずからの胸に「出版の品格」を問うべきだろう。
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