鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

米大統領選に見る民主主義の成熟度

2008-02-06 | Weblog
 米国大統領選の最大のヤマ場である全米21(民主党は20)州の予備選が集中しているスーパーチューズデイが始まった。日本時間6日正午頃には大勢が判明する見通しである。共和党はジョン・マケイン上院議員(71)がミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(60)をリードしているのに対し、民主党はヒラリー・クリントン上院議員(60)とバラク・オバマ上院議員(48)が激しく指名争いを繰り広げている。ここで勝利を得た候補者が今秋の本選に臨むことになるので、天王山とも言われている。
 現大統領のジョージ・ブッシュが対イラク戦争の実施で退任すのので、今度は民主党が政権を取り戻すのは確実で、となると民主党の候補者はそのまま大統領となる。スーパーチューズデイ前まではクリントン候補がリードしていたが、直前になってオバマ候補が追い上げている。米CNNの世論調査によると、クリントン対オバマは49対46なとクリントン候補がリードしているのに、米ABCテレビの世論調査では逆に43対47とオバマ候補がリードしている。
 クリントンが大統領になれば米国初の女性大統領に、オバマ候補がなればこれも米国初の黒人大統領となり、話題性はあるし、民主主義の国、米国らしい。オバマ候補には若さという利点もある。それにクリントン候補はいかに女性とはいえ、選挙戦の最中に支持者からの激励の言葉で涙を見せるのはいかがなものか、と思わせる。大統領になったらもっときつい局面に何回も立つことだろう。こんな人に激職を任せられない、ということになるだろう。しかも前回のニューハンプシャー州予備選に続いて2回目である。クリントン候補の命取りの涙になる、と思えてならない。鈍想愚感子としてはクリントン大統領が誕生すればいいと思っているが、どうやら、流れはオバマ候補にいっているようだ。
 いつも米国の大統領選を見ていて不思議に思うのは新聞社が候補の支持を鮮明に打ち出す点である。ニューヨーク・タイムズ紙はクリントン候補支持を表明したし、ロスアンゼルス・タイムズ紙はオバマ候補支持を打ち出した。日本で自民党の総裁選で、仮に朝日新聞社なり、読売新聞社が福田康夫支持を紙面に掲げたら、不偏不党を標榜する新聞社としてあるまじきこととして、世論が放っておかないだろう。米国の場合、民主・共和党の2大政党制を採っており、どちらの政党が政権を取ろうとも政策面でそんなにぶれない、という信頼感があるので、政党を選択するというより、候補者を決める個人に重点が置かれているのだろうか。
 米国の新聞社は日本ほど発行部数も多くない。ニューヨークタイムズといっても発行部数は100万部足らずで、読売新聞の10分の1しかない。しかも米国には日本のような全国的に販売している新聞はないので、日本の新聞のような役割はむしろテレビが果たしている。テレビといっても政治的な影響力があるのはコメンテーターを務めるキャスターである。
 それと、先日も映画俳優のロバート・デニーロがオバマ候補の政治集会の場に現れて応援演説をしていたが、米国では映画俳優が政治の場で結構影響力を発揮する。米国では映画俳優に限らず、歌手、スポーツ選手までもが大統領選では旗幟を鮮明にする。オバマ陣営ではジョージ・クルーニー、モーガン・フリーマン、ハル・ベリー、エディ・マーフィ。それにバスケットのマイケル・ジョーダンらが支持を明らかにしているし、クリントン陣営にはジャック・ニコルソン、スティーブン・スピルバーグ監督、セリヌ・ディオン、それにマジック・ジョンソンらが支持している。
 政治と映画界の関わりでは俳優のアーノルド・シュワルツネッガー氏がカリフォルニア州の知事になってしまったし、遠くは端役俳優だったドナルド・レーガン氏はなんと大統領にまでなってしまった。日本では俳優出身の政治家はせいぜいタレント候補止まりである。
 日本の場合、政治に関わるのはお父さんなり、お爺さんが政治家だったからという世襲が圧倒的に多い。大学を出て、政治家をめざす学生は一握りで、まず優秀な学生は政治の世界には行かない。
 米国の場合は政党、政治家個人も成熟していて、それなりの人材も集まっているということなのだろう。日本はまだまだ、米国の域にはとても達していない。

追記 注目の民主党のスーパーチュズデイは結局、オバマ候補が12州を、クリントン候補が8州をそれぞれ制したが、累計獲得代議員数ではクリントン候補が783に対しオバマ候補は709で、いずれも総代議員の過半数の2025人にはるか到達せずに、勝敗は大統領選直前の8月末の党大会まで持ち越しとなった。まれに見る接戦。かつ長期戦となったわけで、今後政治的な局面やでスをしたり、大きなスキャンダルが発覚した方が負ける、ということになりそうである。 
コメント
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