鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

国家の品格

2006-01-24 | Weblog
 ホリエモンが遂に逮捕された。号外が出たほか、テレビが護送を生中継するなどまるで極悪人扱いだった。藤原正彦著の「国家の品格」にまさにホリエモンが行った昨年のフジテレビ買収や小泉首相の進める改革を国を売るものとして糾弾している。「国家の品格」というタイトルに魅かれて、一気に読んでしまったが、ホリエモン逮捕で改めてこの書籍はいいことを突いている、とい思った。現在、43万部売れているとのことだが、多分昨年爆発的に売れた「バカの壁」に迫るんぽではなかろうか。と思って、日本経済新聞を見たら、なんと2面の下全5段広告で「国家の品格」の広告が出ていた。発売元の新潮社には目ざとい担当者がいるものだ。
 「国家の品格」は国柄をなくした日本は「孤高の日本」でなければならない、と説く。論理だけでは世界が破綻する、ともいい、自由、平等、民衆主義は欧米が自らの王国を築き上げるために編み出した概念で、日本はそれにのせられてはいけないという。欧米各国に滞在した経験のある筆者は四季の移り変わりに対する感受性、もののあわれを感ずる感性などは世界に誇れる日本人の美点である、とも説く。そして家族愛、郷土愛、祖国愛、人類愛の4つの愛が重要であるとし、真のエリートの条件として第一に文学、哲学、歴史、芸術、科学といった何の役にも立たないような教養をたっぷりと身につけていて、大局感や総合判断力を持っていること、第二にはいざとなれば国家、国民のために喜んで命を捨てる気概があることの2つをあげている。このエリートが日本からいなくなってしまった、と嘆く。ホリエモンと小泉首相に言って聞かせたいくらいだ。
 要するに明治時代に武士道精神を説いた新渡戸稲造を礼賛しているわけで、 美しい国土、自然が豊かな人間性を育むことを強調していたのも新鮮な感じがした。最後に世界を救うのは日本人だ、としているのはご愛敬だが、論理展開もしっかりしていて、説得力もある。固い内容の割には、具体的なエピソードも随所に織り込まれていて、読み物としても面白かった。
 筆者は現在お茶の水大学教授、作家の新田次郎と藤原ていの次男で、恵まれた環境で育ったことがこうしたいいものを書けた理由か。なかで平等に触れた箇所で自身のことを小さい時から女性にもてたことがなかったこと、それに絵と体育の評価が5段階の2であったことを告白している。また、どこかで「世界中にぶん殴りたくなる女性は女房を筆頭に山ほどいる」と書いている。講演録をもとに書き起こしたというが、筆者の強いコンプレックスがこの著作を生んだ原動力だったのかもしれない。
 いずれにしろ、ホリエモン・ショックで混乱しかかっているいま、この「国家の品格」を読むことを心ある人には薦めたい。また、筆者にはこれに続いて「人間の品格」、「会社の品格」、「社長の品格」等の著作を著してもらいたいものだ。
コメント
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