鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

ホリエモン・ショック

2006-01-20 | Weblog
 株価操作疑惑で家宅捜査を受けたホリエモンのライブドア株は丸2日間、売り気配が続き、時価総額3000億円も下げた。東証市場は1日の株式取引数の限界400万件を超え、遂に史上初めての取引停止という事態を引き起こした。その余波は全世界に及び、海外のマスコミでホリエモン・ショックとして称せられている。昨日は市場は持ち直したものの、その前2日間で実に30兆円もの時価総額を下げた。そして、グループの幹部が追求を恐れてか、沖縄のホテルで自殺したことから、刑事事件の様相すら出てきた。終戦後まもなく東大生が確か偽の金貸し業の光クラブなる名前の組織をつくり、大衆を騙し、最後は自殺した事件があったが、ホリエモン・ショックはそれに匹敵する戦後の悪事である。
 大体、テレビに登場する前からオンザエッジなる名前の会社がライブドアを買収し、買収した先の企業名を名乗った時におかしな企業があるものだ、と胡散臭さを感じていた。その前にLINUX企業を買収した時に強引な手法で、周囲の顰蹙を買っていた。その後、フジテレビ買収劇で大々的にマスコミに登場、ふてぶてしい態度で画面に登場する姿を見る度に嫌悪感を感じていた。まず言動に謙虚さがないこと、第二に単なるマネーゲームでビジョンが全く感じられないこと、第三に経営の実態がよくからないのが理由であった。
 次から次へとM&Aを繰り返していて、よく企業活動が続けられるものだ。一つの企業と一つの企業が一緒になる、ということはそれぞれの企業カルチャーを溶け込ませる、ということで、エネルギーと時間がかかる。お互いの従業員にとってハッピーなものでない限り、うまくいくわけがない。企業は法的には株主のものかもしれないが、まずは従業員が幸せに、生きがいを持って働くことが先決だ。企業の第一の使命は人を育てることにある、と言ってもいい。ホリエモンはそのことを忘れていた。ホリエモンがあんなにテレビ出演や、選挙活動で飛び回っていて、経営などできるわけがない。後から勘ぐれば、社長が広告塔となってテレビに出ることを続けなければ会社が存続できなかった、というのが本音かもしれない。また、先日の株主総会で株主からなぜ配当しないのか、と攻められた時に最後は涙を交えて「利益は次ぎの買収にあてる」と力説し、日頃の「会社は株主のもの」と矛盾することを平気で宣ったが。本当は粉飾決算をしていて配当あんんてできない、というところだったのだろう。
 普通、会社の社長が先頭に立って何かをしているのはどこか会社がおかしいから、と見られるだろう。会社経営は片手間にできるようなものではない。あれだけ社長がテレビに出まくっていて、当の従業員は不安に思わないものなのか、それが不思議で仕方なかった。それだけホリエモンのワンマン経営でもあった、ということだ。社長の独走を止められない会社はすでに危険信号が出ている、といっていい。ライブドアは経営不在だった、としかいいようがない。会社をよくするのは社員の力だが、悪くするのは社長だ。社長がだめならまず会社はダメだ。ライズドアにはホリエモン以外に従業員の頼みとなるべき人は恐らくいなかったのだろう。キーパーソンが自殺してさらに人心は離れていくことだろう。
 人間60くらいになると、一目人を見て感じることは結構当たっているものだ、と思う。最初にホリエモンを見て感じた胡散臭さは体型と人を食ったような表情、それに世の中を見下したようなものの言い方からくるものである。そんなホリエモンを育んだのは福岡県大牟田だかそのあたりで生まれ育った家庭、と東大だろう。いつかテレビに父親が写っていたことがあるが、息子に自由気ままにやらしてきたのだろう、という印象だった。ホリエモンをこうかで増長させてしまった背景には戦後教育のあり方があったのは否定できないだろう。東大にさえ入れば、本人、家族とも天下をとったような気分に浸ってしまう風潮がホリエモンを生んだのは間違いない。
昨日、テレビに東大卒業した頃の長髪姿の写真が写っていたが、その頃は真面目なソフトウェア技術者の風体だった。どこかで、技術でなく金へ志向が変わり、実業の世界から虚業の世界へ足を踏み入れていったのだろう。いまのホリエモンの容貌は醜く太った豚でしかない。
 ホリエモンは日本一の企業になり、世界へはばたくことを念願していた、と聞く。皮肉なことに本業のビジネスでなく、東証の取引停止を招き、ホリエモン・ショックとして海外でその名を知らしめたことでは思いを達したわけだ。30兆円の損失を招き、東証の機能を止めた男、ホリエモンは間違いなく、地獄に落ちるが、最後にその思いを遂げさせたわけで、神様の粋な計らいとこいえる。
 今日から通常国会が開会される。昨秋の総選挙で岡山6区に亀井静香の刺客としてホリエモンを擁立し、結果的にはホリエモンの暴走を助長した小泉首相をぜひ糾弾してほしいものだ。小泉首相は「人間をそこまで見抜けない」とうそぶいているようだが、内閣首相官邸、自民党の調査能力はそんな程度のものなのか。そんなことだから米CIAはおろか、ロシアのKGBや北朝鮮のキムジョンイルの率いるNKCIAにいいようにやられるのだ。そんな眼識、危機管理でよく総理大臣が務まるものだ、即刻退陣してもらいたい、と言いたい。

 追伸 20日午後に東京・目黒の比較的大きな書店を覗いてみて、当たり前だが、数日前までビジネス書のコーナーで平積みにして並べていたホリエモンの本が見事に一掃されていた。ホリエモンショックの余波はこんなところにも及んでいる。ことここに至ってホリエモンの本を買おうなんて思う人はいないだろう。出版業界にとっては影響大かもしれない。
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