鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

異才セゲルスタム

2006-01-27 | Weblog
 読売交響楽団の定期演奏会でフィンランドの作曲家兼指揮者、レイフ・セゲルスタムの演奏会を聞きに行った。舞台の手前両端に2台のピアノが置いてあり、パンフレットに指揮者として載っている人物が左のピアノの演奏者席に座ってしきりにピアノの調整をし出し、他の演奏者が揃ってもそのまま、「あれ、指揮者はどこに」との声をよそにセゲルスタム作曲の交響曲第91番”ノスタルジック・ナンバー”の演奏に入ってしまった。舞台の端のピアノ演奏席から、なおかつ自らピアノを演奏しながら指揮するコンサートなんて初めて見る光景であった。
 セゲルスタムは1944年生まれで、ヘルシンキのシベリウス・アカデミーで学び、現在はストックホルム王立歌劇場とヘルシンキ・フィルの首席指揮者を兼任している。白髪の巨人で、その大仰な身体に似合わず、繊細な音楽を奏でる。自身110近くの交響曲を作曲しているが、この交響曲第91番は世界でも初の演奏という。革をなめしたベルトを叩くことで音を出したり、大きな杵で板を打ちつけて音を出したり、通常の演奏会で見られないような楽器がふんだんに登場し、目でも楽しませてくれた。
 なによりも日本で初めて演奏してくれたことに大感激でらう。いつもの演奏会なら、手前に座っているバイオリン、チェロ奏者が目立つのだが、今回に限っては最後列の打楽器奏者が八面六毘の活躍をしていたのが面白かった。
 今年はモーツアルト生誕250周年で、モーツアルト人気が高まっているが、ベートーベンにしろ、バッハにしろ、せいざい200年か300年前のもので、コンサートの定番となっているが、これから200年、300年したら、ベートーベン、モーツアルトに代わってセゲルスタムが大人気の作曲家になっているかもしれない。そんな感じを思わせる演奏会であった。
 続いて演奏したラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」は天才ピアノ演奏家アレクサンダー・ガヴリリュクとの調和が素晴らしく、最後の十八番ノシベリウス「交響曲第5番」もフィンランドの音楽を感じさせてくれた。
 後日、この演奏会を新聞紙面で取り上げ、誉めていたのは読売新聞でなく朝日新聞であったのは意外であった。記事では「つかもどころのない旋律が螺旋状に繰り返され、とてつもない大宇宙へと成長してしまう曲をセゲルスタムが右手の円運動を次第に大きく膨らませながら、悠然と振り、オーケストラがそれによく反応する。若木がいつの間にか巨木となっている。まるで作為が感じられない稀有の音楽体験だった」と絶賛し、「音楽は理屈で作るものではない。おのずと生まれるものだ。そのことが心ゆくまで実感された一夜だった」と結んでいる。全くその通りの演奏会であった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする